人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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65話 ホワイトライダー

夕方頃、ほむらは仲間達を連れて見滝原政治行政区地下にある新たな武器庫へ向かう。

 

彼女について行く仲間達は不安を隠せずに質問してくるようだ。

 

「暁美さん?私達を何処に連れて行く気なの…?」

 

「政治に興味ねーあたしが一番立ち入りたくねーエリアじゃねーか…」

 

「驚くかもしれないけど、ついてきて」

 

たどり着いた場所は海沿いに立つ商業施設ビルの前であり、仲間達は建物を見上げていく。

 

「ここなの…?まだ開業もしていない商業施設よね?」

 

「あたし達に何を見せてくれるっていうんだよ…ほむら?」

 

「…私のアジトみたいなものかもね」

 

「「えっ?」」

 

冗談には聞こえないセリフに怪訝な顔を浮かべつつもビルの内部に入っていく。

 

「誰も…いないのかしら…?」

 

「ここのビルって…何で政治のエリアにわざわざ作られたんだろうなぁ…?」

 

「こっちよ」

 

薄暗いエレベーターに入り、ボタンパネルの下の蓋を開ける。

 

地下に向かうボタンを押し、エレベーターは武器庫に降りていく。

 

「マジで漫画の世界にありそうなアジトみたいじゃねーか…」

 

「暁美さん…こんな場所を用意出来る当てがあったの…?」

 

「魔人の試練を与えてきた存在が私のために用意してくれたわ」

 

「ますます分からねーな…殺す目的の相手に…こんなアジトを用意するなんてよ?」

 

エレベーターは目的の階に辿り着き、薄暗い空間に光が入り込む。

 

「うわぁ…まるで欧米の巨大スーパーマーケットみたいじゃねーか…!」

 

「並んでる商品は…どれも日本人が買っていい代物じゃないわね…」

 

「私は装備を整えるわ。そしてここに…私に襲いかかってきた魔人もいるのよ」

 

「どういう事だよ…?」

 

「警戒して。もうここは…いつ奴に襲われるか分からない空間となったのよ…」

 

ほむら達は魔法少女姿に変身し、彼女が装備を整える時間の間は仲間達に警戒してもらう。

 

整え終えた彼女は敵を見つけるために仲間達と共に施設内を警戒しながら索敵していく。

 

「魔人がここにいるってどういう意味なんだ…?どうしてそんな事が分かるんだよ?」

 

「ホワイトと名乗る男が私に弓の技術を仕込んでくれたの。その男はきっと…魔人よ」

 

「魔人が暁美さんに魔法武器の扱い方を教えてくれたですって!?何故そんなマネを?」

 

「分からないわ。それだけ魔人を倒してもらいたいのかしらね…」

 

「ほむらに魔人をけしかけてくる奴の目星もついてるのか?」

 

「ええ。でもその存在を相手には出来ない…挑めば私達なんて…一瞬でこの世から消されるわ」

 

「魔人を従える程の存在…見当もつかない次元の存在がこの街にいるなんて信じられないわ…」

 

「今は…魔人を倒す事だけに集中しましょう」

 

施設内を見回っていくが、ホワイトの姿は見つからない。

 

後は奥の広大な射撃場を索敵するのみであろう。

 

武器装備品エリア奥の防弾ガラス製の自動ドアを開けた少女達は地下射撃場エリアへ入る。

 

電気がついていないようなので自動ドアの横にある電源をほむらが入れていく。

 

すると奥側から射撃場の明かりがついていき、そして奥からは逃れられない死の気配が漂う。

 

射撃ブースの端にあるドアを開け、射撃場の奥へと入ると奥に立つ兵士が拍手を送ってくる。

 

「…よくぞあの騎士達を打ち倒し、勝者となった。俺が鍛えた甲斐もあったな」

 

待ち構えていたのはホワイトであり、背中には弓矢を背負う。

 

「この男が…あの黙示録の髑髏騎士だって言うのかよ…?」

 

「悪魔は人間の姿になれるっていうの…?」

 

人間の姿をした悪魔の底知れない能力を感じるマミと杏子は冷や汗が浮かんでしまう。

 

「残された騎士はお前だけよ。まさか…私を鍛えてくれた男が悪魔だったなんてね」

 

「閣下に頼まれなければ俺とてお断りだったが、能力の高い矢じりを磨くのも悪くなかった」

 

「私を褒めてるの、それ?」

 

「誇るがいい小娘。魔人を相手にここまでやれる魔法少女など…世界を探してもお前ぐらいだ」

 

ホワイトは目元のサングラス風戦術ゴーグルを右手で外した後、地面に捨てる。

 

「だがそれもここまでだ。俺の鍛えた矢は射手の元に帰る事なく戦場で貫いた敵の墓標となる」

 

サングラスの奥にあるはずの両目が無いのが見えた魔法少女達は息を飲み込む。

 

魔人として正体を表した男が左手で背中の弓を取り、右手で指を鳴らす。

 

ホワイトの背後の地面から白煙が溢れ出し、地面から跳躍して現れ出たのは白馬の姿。

 

身体を覆う漆黒の兵士衣装からもどす黒い煙が吹き出し、全身を包み込む。

 

黒き煙の中から現れでたのは黄金の兜を被った髑髏顔。

 

背後に立つ白馬を背にするのは黙示録における第一の騎士なのだ。

 

「ソノ墓標トナルノハ小娘…貴様ダ」

 

「やはり私の体を貫いた矢を放ってきた魔人ね!どうりでお前を見た時に古傷が痛むわけよ!」

 

「マジかよ…ほむらを鍛えていたのは…本当に魔人だったなんて…」

 

「自分で鍛えた弟子を殺すために育てたなんて…魔法少女の師として許せないわ!」

 

「ホワイト…お前は何者なの?騎士らしく名乗ったらどう?」

 

白き馬に飛び乗り、魔法少女達に左手の神弓を構えながら高らかに宣言してくる。

 

「4ツノ死ノ最後ハ()()()()()ダ!()()()()()()()()()()()()()、征服ヲ司ル勝利ノ騎士!!」

 

――我ガ名ハ…()()()()ライダーダ!!

 

主の掛け声と共に白き馬の全身を覆う目も一気に開き、射殺す獲物達を睨む。

 

魔法少女達の足元に魔人の結界が開き、彼女達は魔人結界の中へと連れ去られていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

魔法少女達が起き上がったのは魔人結界内であり、周囲を見回していく。

 

「酷い場所だな…まるで地獄の山岳地帯だぜ…」

 

ループ現象の中で魔人世界を初めて見る反応を示す杏子であるが、マミは質問してくる。

 

「最後となるって…言ってたわよね?じゃあ他の三体の騎士はいつの間に倒されたの?」

 

「警戒して。今は魔人の言葉の真意を考えている場合ではないわ」

 

ループ現象を伝えた所で無駄なのはかつてと同じである事ぐらい分かっているため伝えない。

 

ホワイトライダーの姿は何処にも見当たらず、周囲を警戒しながら渓谷の谷を進む。

 

そんな中、魔法少女が魔力の索敵を行える範囲外の距離にある渓谷高台の頂上には魔人の姿。

 

鷹の目によって居場所を見抜かれている獲物に対して引き絞られていくのは神弓の弦である。

 

神矢が金色の光を放ち、極限の一射となるのは明白であろう。

 

「なんだ…?」

 

遠くの方が一瞬光ったのを杏子が見つけた時、それは既に放たれている。

 

「なにか来るぞ!!」

 

槍を構え、放たれた一撃を叩き落とそうと身構える。

 

金色の矢は放たれてなお加速し、目にも留まらぬ金の流線を描きながら速度を増して飛来する。

 

対して杏子は左切り上げで撃墜しようとするが、槍の矛先が神矢に触れた瞬間に砕けてしまう。

 

「ガッ……あ……っ?」

 

「佐倉さんっ!!?」

 

飛来した矢は杏子の右肺に突き刺さっている。

 

その瞬間、杏子の体は眩い浄化の光に包まれてしまう。

 

ソウルジェムという歪な形にされてしまった魂まで浄化されながら消滅していく。

 

後ろに倒れ込んだのは役目を果たし終えた外付けハードディスクの死体のみ。

 

「嫌ぁ!!しっかりして佐倉さん!!返事をして!!」

 

「そんな…たった一撃で…どうやって!?」

 

この一撃と類似する悪魔の魔法とはレッドライダー戦の天使達が見せた破魔の力であろう。

 

人間ではない存在に対して破魔耐性が無いならば即死させる力を持つ魔法である。

 

泣き崩れるマミから視線を移す。

 

空を駆け抜けて崖の上に降り立ったのは恐ろしい魔力を放つ魔人の姿なのだ。

 

「コレデ無粋ナ輩ハ消エ、射手ノミガ戦場ニ残ル。優レタ射手ハ誰ナノカヲ決メヨウ」

 

「よくも杏子を…射手のプライドを満たす為に先に殺すだなんて!!」

 

「伏撃トイウ()()()()ハ余リ好マナイガ、コレモマタ第一ノ騎士ヲ象徴スル()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()わけ…?それが()()()の卑劣な態度なの!?」

 

「俺ハ象徴ニ過ギナイ。太古ヨリ第一ノ騎士トナリシ者達ハ、()()()()

 

世界を裏で支配しながらも決して存在を民衆に分からせない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と白騎士は伝えてくれる。

 

「太古より第一の騎士となりし者達…?ペイルライダーも同じ事を言っていたわ…」

 

「アノ存在共ト貴様ハ…深イ関係ニアル」

 

「どういう意味よ…それ!?」

 

「ソレヲ知リタケレバ、コノ勝負ニ生キ残ル以外ニナイ」

 

強い風が赤い渓谷の大地に吹き抜けていき、魔人の黒衣や魔法少女達の髪を揺らす。

 

「暁美ホムラ、貴様ハアノ御方ノ刻印ヲ授カリシ魔法少女…人修羅ト同ジク刻印ヲ背負ウ者ダ」

 

「あの御方の刻印…?人修羅と同じですって…?」

 

「世界ヲ知リ、己ヲ知リ、破壊ノ霊トナリテ深淵ニ堕チ…アノ御方ニ会ワネバナラヌ」

 

「世界と自分を知り…お前達みたいな邪悪な破壊の霊に…私がなるですって!?」

 

「ダガソレモ俺ヲ超エラレタラノ話。タカガ魔法少女ガ定メラレタ死ヲ超エル存在トナルカ…」

 

右手を天に向けて構え、白騎士の全身から業火が噴き上がっていく。

 

「黙示録最後ノ騎士、コノホワイトライダーガ…終審シテヤル!!」

 

全身の業火が収束していき、大火球が頭上に生み出される。

 

「危ない!!」

 

泣き崩れた姿勢のマミの手を掴み、黒き翼を生み出して高速飛翔を行う。

 

すぐ後の地上で起こったのは大爆発。

 

これは人修羅が見せた地獄の業火と同じ火炎魔法である『プロミネンス』の一撃であろう。

 

手加減抜きの威力は核爆発の次に威力があるという気化爆弾の最大サイズに匹敵する規模だ。

 

白き馬も足元から白煙を生み出しながら天に向かい、魔法少女達を追いながら駆けてゆく。

 

「攻メテコイッ!!臆病風ナ守リナド、俺ガ許サンッ!!」

 

ホワイトライダーは死天を召喚していない。

 

魔法少女よりも強き者であるのに仲魔を引き連れて襲いかかる臆病風など見せはしない魔人。

 

それこそが黙示録最後の騎士のプライドであり、射手同士の戦いが始まるのであった。

 

 

「放して暁美さん!!佐倉さんが…佐倉さんがぁ!!」

 

「杏子は死んだわ!!気をしっかり持って!!」

 

背後から迫りくる追跡者の神矢の攻撃に対して旋回を繰り返しながら避け続ける。

 

「過ちを繰り返さないって決めたのに!!どうして…どうして!!」

 

大切な人を守ると誓ってなお守れない姿をもう一度見せつけられていく。

 

ほむらの心もまた引き裂かれる程にまで痛む苦しみを抱えている。

 

仲間を巻き込むべきではなかったと後悔するが、今この場で考えても死に飲まれるのみ。

 

「ごめんなさい…巻き込んで…それでも貴女にまで死なれたら…私はどうなるのよ!!」

 

「私…私まで…死ぬの…?」

 

「今の貴女では確実に殺されるわ!貴女が殺されてしまったら私は…独りぼっちになるの!」

 

「独りぼっち…」

 

「独りぼっちは嫌!!お願い…私を独りにしないで…貴女の孤独の寂しさは私も同じよ!!」

 

「暁美さん…わ、私を…そこまで必要としてくれるの…?」

 

背後から迫る追跡者は背中の矢筒から神矢を束ねて掴み、扇状に広げながら神弓の弦にかける。

 

金色に輝く神矢が一斉に放たれようとする中、迷いが晴れたマミが叫んでくる。

 

「暁美さん…手を放して!私なら大丈夫…貴女の力になるから!」

 

扇撃ちで金色の流線を空に描くのはホワイトライダーを象徴する『ゴッドアロー』の一撃。

 

目標に目掛けて自動追尾し、高速で突き進む光景は自動追尾レーザーのようにも見えるだろう。

 

低空からマミの手を放し、一気にループ飛行からの旋回行動を繰り返す。

 

一撃でも当たれば即死のため、空中機動を描きながら複数の神矢から逃れようとする。

 

「杏子の槍でさえ粉々にする魔力武器…爆弾をフレアとしてばら撒いても通用しないわね…」

 

黒き翼の力である世界を侵食する力を後方に放ち、侵食領域に神矢を飲み込ませて相殺する。

 

「貴様ガ我々ニ行ッタ愚行ノ際ニ見セタ極大魔法カ!素晴ラシキ闇ノ魔力ダ!!」

 

左空域に弓を構えて矢を放ち、前方にも構えながら目標に目掛けて無数の神矢を放つ。

 

侵食する黒き翼をもって迎撃したほむらは左旋回飛行を行う。

 

そんな中、魔人結界世界で吹きすさぶ風に乗った脅威が彼女を襲う時がくるだろう。

 

「あっ!!?」

 

左旋回する彼女の眼前から飛び込んで来たのは先程のホワイトライダーが放った矢。

 

空域の強風に煽られながら弧を描くようにして飛来してくる。

 

風の流れと矢の空気抵抗を瞬時に把握し、獲物の旋回範囲を予測した上でのトリックアローだ。

 

「ぐっ!!」

 

右肩を矢じりが深く貫き、胸骨を貫通した矢じりが右肺を切り裂く。

 

突然の一撃で体勢を崩し、低空飛行となったほむらは眼前の渓谷斜面にぶつかりそうになる。

 

その前に翼を羽ばたかせてブレーキをかけながら地面に落下するのだ。

 

「くっ……うぅ!!」

 

左手で右肩の矢を強引に抜き、右肺を傷つけられたせいで息が乱れるほむら。

 

そんな彼女に対し、渓谷の高台に着地した弓兵が容赦ない速射を狙ってくる。

 

矢を潜りながら走り、ぶら下げた自動小銃を両手で構え、精度を犠牲にした弾幕を張る。

 

ホワイトライダーも追走しながら互いの射撃武器を撃ち合う光景が続く。

 

「奴の矢は底がないの!?」

 

相手の矢筒には魔力消費によって次々と追加の矢が生み出されていき、弾切れを感じさせない。

 

急停止したほむらは相手に向けてM203タイプのグレネードランチャーを撃ち込む。

 

前方が爆発して視界が遮られたため急停止した相手に対し、尚も追撃射撃を行う。

 

フォアグリップを取り外したせいで犠牲にした精度の弾を撃ち続けて弾幕を張る。

 

爆炎に飲まれた相手に浴びせられる弾幕射撃であるが手ごたえを感じないようだ。

 

「いないですって!?」

 

爆炎が晴れた場所にはホワイトライダーの姿など存在していない。

 

弾を撃ち尽くしたほむらはドラムマガジンを捨て、マガジンチェンジを行う。

 

マガジンチェンジを終えた彼女は近くに人間と同じ気配を不意に感じた事で振り向く。

 

戦場向けに開発されたイーストンボウを構えるのは高台の上で立つ兵士姿のホワイト。

 

ほむらは銃を向けて射撃しようと敵の姿に集中した時、背後の地面から白煙が吹き出す。

 

「ああっ!!」

 

地面から跳躍して現れた白き馬の猛突進の一撃が背後からぶつかり、空にかち上げられる。

 

そのまま地面に倒れ込み、立ち上がった彼女の眼の前には既にホワイトが立っている。

 

「伏兵に気をつけろと俺は伝えたはずだぞ、小娘」

 

囮を演じていたホワイトにまんまとしてやられた事を悟ったようだが遅過ぎる。

 

右手でほむらの銃身を払いながら射撃を逸らせ、左肘打ちで彼女の右側頭部を強打。

 

体勢を崩したほむらの両足を弓の鳥打部位を用いた打撃で刈り倒す。

 

背中の矢筒から矢を掴み、転んだほむらの左足に直接突き刺してくる。

 

「ぐっ!!」

 

地面に縫い付けられた相手に対し、矢筒から矢を掴んで武器を構えながら頭部を撃たんとする。

 

「暁美さんはやらせないわ!!」

 

跳躍して現れたマミは周囲にマスケット銃を生み出し、ホワイトに目掛けて弾幕を張る。

 

迎え撃つ彼は構えた矢を捨て、背中の矢筒から取り出した矢を弾幕に目掛けて放ってくる。

 

矢じりが特殊な形をした矢が上空から迫る無数の弾の一つに着弾すると空中で炸裂して爆発。

 

爆発の破片を周囲にばら撒き、周りの弾も吹き飛ばす。

 

地面に着地したマミは空中にマスケット銃を整列させ、射撃を行おうとするだろう。

 

それよりも先に駆けつけた白き馬に飛び乗ったホワイトは一気に駆け抜けながら去っていく。

 

「暁美さん大丈夫!?」

 

「してやられたわ…」

 

地面に深く突き刺さった矢をマミが両手で抜き、手を差し出しながらほむらを起こす。

 

「やはり強いわね…私を鍛えた男ですもの…」

 

「それでも師を超えなければならないわ、それが弟子の努めよ」

 

「付け焼き刃の私一人では難しいわね……協力してくれる?」

 

「私を必要としてくれた後輩ですもの。喜んで力を貸すわ」

 

「二人でならやれる…信じてるわ…貴女をね」

 

二人の射手は強き射手を倒さんと行動を開始するが分が悪過ぎるのは変わらない。

 

彼女達はホワイトライダーという最高の狩人の庭とも呼べる領域で彷徨う獲物に過ぎなかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

赤き渓谷を流れるのは血のように赤い川。

 

水がある岸辺は他と比べて木や茂みも多くなっていく。

 

自動小銃を構えて警戒しながら奥に進むのは暁美ほむらの姿である。

 

弓兵である魔人の鷹の目は遠くの獲物の姿を捉えているようだ。

 

「獲物ガ一人……誘イ込ミカ」

 

ほむらは誘導係りを務めているのだとホワイトライダーは見抜いてくる。

 

恐らく罠を張り巡らせたエリアにおびき寄せる役目を背負っているのだろう。

 

上空に上がり、罠を張り巡らせたエリアごと焼き払うのは容易い。

 

冷静な判断ではあるが臆病ともとれる戦い方をホワイトライダーは好まない者のようだ。

 

「イイダロウ…小賢シイ罠ヲ超エ、貴様ヲ射抜キ、隠レタ小娘ヲ燻リ出シテクレル」

 

付け焼刃の罠など踏み越えてやると引き絞られていく矢が金色の光を纏う。

 

「!!」

 

遠くが光ったのを察知したほむらは横っ飛びを行う。

 

ゴッドアローの一撃が直ぐ横をかすめ、木々を一直線に破壊していく程の一撃となるのだ。

 

「女狐狩リトイコウ!!」

 

木々の奥から駆け抜けてくる魔人の魔力に反応したほむらは直様走り逃げていく。

 

揺れ動く馬上ゆえ精度のある射撃をするには接近しなければならない。

 

白き馬は生い茂る木々の枝を高速で走りながらも全身の目玉を使いながら機敏に避ける。

 

速度を落とす素振りを見せない敵が相手では直ぐに追いつかれるだろう。

 

追いかけてくる魔人に対し、ほむらは不規則な跳躍移動を繰り返す。

 

彼女の行動が何を意味するかなら、鷹の目と白き馬の無数の目は見抜いているようだ。

 

「張リ巡ラセタ細イ糸…鋭利ナワイヤートラップカ!」

 

見えたのは極細繊維の糸にまで魔力でリボンを加工し、木々に張り巡らせたトラップエリア。

 

無数に張り巡らせたなら進軍を阻むブービートラップにもなるだろう。

 

ほむらは張り巡らせた罠のポイントを熟知しているかのように避け、その速度を緩めない。

 

「ソノ程度ノ幼稚ナ罠デ…俺ノ進軍ハ止メラレン!!」

 

手綱を引いたことで白き馬の前足が跳ね上がる。

 

地面に両足を打ち付けると同時に足元から業火が吹き上がり、罠ごと周囲を焼き尽くす。

 

地獄の業火を自在に操る人修羅と同じく炎を纏う魔人こそがホワイトライダーなのだろう。

 

業火によって一気に燃え上がる森と化した地獄をほむらは駆けていく。

 

迫る白き馬が燃える木々を通り超える度に仕掛けられたリボンの罠が獲物を絡みとろうとする。

 

しかし炎の魔人が相手では糸の罠が近寄る前に燃やされていくしかない。

 

無数の目を持つ白き馬の死角を突く事は出来ない光景こそ人馬一体の守りなのだ。

 

次は鈍感化加工された事で燃えて爆発しないプラスチック爆弾エリアに入る。

 

白き馬が火薬の臭いを嗅ぎ取り、起爆される前に空に目掛けて跳躍を行う。

 

白煙を足に纏いながら上空からほむらを追う弓兵が地上に目掛けて弓を構える。

 

ほむらの移動ルートを予測した矢の一撃が放たれた事で偏差撃ちの一撃が迫りくるのだ。

 

「!?」

 

胴体に直撃した矢によってほむらは地面に倒れ込み、藻掻き苦しむ。

 

空から地面に着地したホワイトライダーは獲物にトドメを刺すために弓を構える。

 

絶体絶命の状況の中、それは起こるのだ。

 

「何ッ!!?」

 

苦しむほむらの身体が突然爆ぜたように広がり、内部を構成していた無数のリボンと化す。

 

それらは目の前の獲物に絡みつき、地面に固定させてくるのだ。

 

「馬鹿ナ!?自身ニ擬態シタ偽物ヲ動カス魔法マデ使エル者ガイルノカ!!」

 

これこそが巴マミが魔法の応用で生み出したダミーリボンの魔法であろう。

 

本物と変わらない肉感まで再現しているせいで魔力探知を怠る者では騙されるしかない。

 

だが相手は業火を纏う者であり、燃えるリボンは瞬時に身体から燃やされて拘束が解かれる。

 

その間の僅かな秒に過ぎなかったが、それだけで十分な攻撃チャンスとなるはず。

 

ダミーリボンが解けた気配を察知したマミは自身が立つ足元の巨大大砲に火を点ける。

 

その巨大砲身はまるでロシアにあるという大砲の皇帝と呼ばれる世界最大規模の大砲サイズだ。

 

下側には観測員を担うほむらが立っており、双眼鏡で敵の位置をマミに伝え終えている。

 

「佐倉さんの無念、この一撃に込める!ボンバルダメント!!」

 

巨大砲身から噴き上がる巨大な轟音の咆哮に対して両耳を抑え込むほむら。

 

遠く離れた位置から飛来する巨大な榴弾の風切り音が聞こえた時にはもう遅い。

 

「クッ!!」

 

察知したホワイトライダーは手綱を打ち、馬を走らせるが間に合わないだろう。

 

「弾着、今よ!!」

 

遠く離れた位置の森で大爆発が起こる光景が広がっていく。

 

罠を張っていたエリアから大きく離れた場所で砲撃を行ったが爆風がこちらまで届く規模だ。

 

「……仕留めたかしら?」

 

「分からない……まだ魔人の結界は消えていないわ」

 

「考えたくない事が起こりそうね…」

 

暁美ほむらと巴マミの手持ちの武器や魔力を総動員した罠を行使している。

 

これで仕留められなければ万事休すであろう。

 

「……見ツケタゾ」

 

上空を見上げた二人が目にした者とは空に浮かぶホワイトライダーの姿である。

 

「嘘……でしょ?私は渾身の一撃を放ったのよ……?」

 

「そんな……あれ程の一撃を受けて……倒せないだなんて!?」

 

「他ノ騎士ト俺トデハ魔人ノ悪魔耐性ガ違ウ。業火デ俺ヲヤキ殺セルト思ウナ」

 

天に掲げた右手には大火球のプロミネンスが生み出されており、無慈悲に落としてくる。

 

「危ない!!」

 

黒き翼を生み出したほむらは大砲の砲身に立つマミを掴みながら空に逃げる。

 

地上で起こる大爆発から逃げようとする魔法少女達ではあるが弓兵からは逃れられない。

 

「無駄ダ」

 

顔も向けずに左の空域に目掛けてノールック射撃を行う光景は空間把握が成せる神業の一撃。

 

飛来した矢は獲物の胴体を今度こそ貫き、急降下しながら落ちていくのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「くっ…うぅ…」

 

地面に叩きつけられる前にマミの手を放したほむらは地面に激しく叩きつけられている。

 

「暁美さん!?なんて無茶をしたの!!」

 

無事に着地したマミが駆けつけ、腹部に刺さった矢を抜いて回復魔法をかけ続ける。

 

しかし残りの魔力が殆どないせいで深手を癒しきれないようだ。

 

魔獣を倒して回復道具を手に入れていないせいで魔力の回復が出来ていないのもあるだろう。

 

「はっ…!?」

 

逃れられない死がゆっくりと近づいてくるが、それは歩くような速度にまで落ちている。

 

「流石ダ…強キ者達ヨ。我々黙示録ノ騎士ヲ相手ニ生キ残ッテコレタノモ…頷ケル」

 

白き馬とはもはや言えない程にまで全身から血を流し、数多くあった目玉も破片で潰れている。

 

放たれた巨大榴弾の砲弾ケース内には調整破片弾として大量の破片が魔力で内蔵されている。

 

爆発の爆炎を耐えられたとしても、物理的に襲いかかる破片の雨は無効化出来なかったようだ。

 

息も絶え絶えの状態で歩く愛馬からホワイトライダーは降りる。

 

「モウイイ、休メ。後ハ…俺ガヤル」

 

弓兵の主人に促された白き馬は無理が祟ったのか体を倒し込んでしまったようだ。

 

「まだ…私は…戦えるわ…」

 

貫かれた腹部から流れ出る血を片手で抑えながらもほむらは立ち上がってくる。

 

「ソレデコソ、逃レラレヌ死ニ抗ウ者。死ニカケテイヨウガ、俺ハ訓練同様容赦ハシナイ」

 

自動小銃を構えようとするほむらを左手で制したマミが前に出る。

 

「その体では無理よ。私が戦うわ…」

 

「何言ってるの!?貴女だって残りの魔力さえ回復魔法のせいで残ってないはずよ…!!」

 

「魔力は無くても…五体は満足よ」

 

残された魔力でリボンを右手に生み出し、一丁のマスケット銃を掴んで銃剣術のように構える。

 

「…その体で援護は期待しないわ。私に任せて」

 

「行っては駄目!!」

 

ほむらの静止を無視したマミが前に駆け出し、銃床で殴りかからんと魔人に迫る。

 

左側頭部に銃床が迫るよりも先に身を低めたホワイトライダーの体が揺れる。

 

右足を踏み込み、右肘打ちを正中線腹部のみぞおちに打ち込む。

 

「ぐふっ!?」

 

息が出来なくなり、銃を手放した右手を即座に掴み、背負い込んで投げ飛ばす。

 

飛ばされた者は岩に激突して倒れ込むが岩を壁にしながら左手で立ち上がろうとした時だった。

 

「うっ!!?」

 

壁についた左手の肘関節を矢が射抜き、壁に縫い付けられてしまう。

 

引き抜こうとしても矢じりは岩の奥まで深く突き刺さり、びくともしない。

 

「ソコデ見テイロ。小娘ヲ殺シタ後デ…俺ノ愛馬ヲ傷ツケタ礼ヲシテヤル」

 

僅かな間ではあるが師弟関係を結んだ魔法少女に対してその髑髏顔の目を向ける。

 

「待タセタナ。始メルトスルカ」

 

「お前とは何処かで…こうなるって気がしていたわ…ホワイト」

 

「期待ヲシテクレテイタノナラ、応エヨウ」

 

銃と弓を同時に構えた二人が互いに弾と矢を放つ。

 

精度が落ちた射撃を掻い潜った三本の矢が左太腿、左脇腹、左胸を貫いて突き刺さる。

 

「ぐっ!!」

 

「コノママココデ死ヌノカ?人ノ身ヲ辞メ、石コロニ成リ果テテマデ何カヲ成ソウトシタ者ヨ」

 

体勢が崩れた相手になお矢が飛来して右太腿を貫く。

 

右腰のホルスターから早撃ちを仕掛けようとするが銃を向けるよりも早く右肘関節を貫かれる。

 

「友ノタメニ戦イ、友ト交ワシタ約束ヲ貫イテキタ者ヨ。約束ハモウ守レナイ」

 

左手に握る自動小銃を無理やり片腕射撃しようと構えた瞬間、渾身の一矢が胸骨を貫く。

 

心臓を貫き、軽い体のほむらは矢と共に後方の岩にまで弾き飛ばされて縫い付けられてしまう。

 

「約束モ果タセズ、アノ小娘ガ存在シナイ世界ニサレタママデ……悔シクナイノカァ!!」

 

叫んできたホワイトライダーは弟子が縫い付けられた岩に目掛けて一気に跳躍。

 

右飛び蹴りを放ち、胸部に突き刺さった矢筈を蹴り込み、ほむらの体を矢が貫通する。

 

蹴りの衝撃でほむらの胸骨部位と後ろの岩も同時に砕かれてしまうのだ。

 

「暁美さぁぁぁぁーーーーん!!!」

 

もはやトドメを刺されるのみの状況でさえマミは何もしてやれず、殺されるのを待つのみ。

 

それでは先輩を必要としてくれた後輩に対して何もしてやれない情けない先輩のままであろう。

 

胸元のリボンネクタイを右手で解き、残された魔力で加工を加え、極めて鋭利な糸とする。

 

それを右手で左腕の上腕に巻きつけ、口で強く結ぶ。

 

「可愛い後輩のためですもの…もうケーキ作りもオシャレも…出来なくなるわね……」

 

マミは力を振り絞り、鋭利なワイヤーとなったリボンを右手で引っ張り込む。

 

その瞬間、後ろの壁が鮮血で濡れる光景と共にマミの美しい片腕が落ちていくのだ。

 

「かっ……あ……あぁ……」

 

もう立つ力さえほむらは残されておらず、人間ならば即死している程の重体である。

 

「所詮貴様モココマデカ…ソレデハ大イナル神ガ敷イタ運命ヲ変エル力ナドハナイ」

 

地面に倒れた相手に弓を構え、矢が金色の光を放ち、神矢によって弔おうとする。

 

そんな時、最後の力を振り絞りながら駆けてくる者の足音が耳に聞こえてくる。

 

「…順番ヲ待チキレナイカ?魔弾ノ射手!!」

 

左腕を失い、右手には帽子のソウルジェムを持ったまま駆けてくる先輩の姿が迫ってくる。

 

「だ……駄目……逃げ……て……っ!!」

 

「誰かに強く必要とされるのは…独りぼっちだった私にとって…本当に嬉しかった…」

 

――もう……()()()()()()

 

相手が何を狙っているか瞬時に判断した弓兵が神矢をマミに向けようとしたその時だった。

 

「ムゥ!!?」

 

主人の危機に対して最後の力を振り絞って駆けてきたのはホワイトライダーの白き馬。

 

口を開け、歯を剥き出しにしながら自爆攻撃を仕掛けようとする魔法少女に迫る。

 

鈍化した世界。

 

馬は頭部を傾けながら、その細い首に目掛けて迫る。

 

「あっ……?」

 

馬が首に喰らいついた時間が一気に動き出す。

 

最後の力を振り絞り、白き馬の顎の力を用いて()()()()()()()()()()()()

 

その光景こそ聖書の一説にある光景と酷似する凄惨な光景であろう。

 

マルコによる福音書6:24~28。

 

そこで少女は座をはずして、母に何をお願いしましょうかと尋ねる。

 

すると母はバプテスマの()()()()()をと答えた。

 

王はすぐに衛兵をつかわし、ヨハネの首を持って来るように命じた。

 

衛兵は出て行き、獄中でヨハネの首を切り、盆にのせて持ってきて少女に与える。

 

少女はそれを母にわたした。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!」

 

鮮血を撒き散らす首と胴体が倒れ込む恩師の姿に対し、残された命の限りほむらは絶叫する。

 

だが白き馬の最後の攻撃を持ってしても止められないのだ。

 

右手に握り込んだソウルジェムは既に魔力暴走を起こしており、残された死体ごと自爆する。

 

「オオオォォォォォ!!!!」

 

破壊エネルギーが周囲に広がり、ホワイトライダーだけでなく倒れたほむらも吹き飛ばされる。

 

魔法少女の自爆魔法は悪魔の自爆魔法と全く同じ効果をもたらすもの。

 

爆炎ではなく物理的な破壊をもたらす故にホワイトライダーでも無効化出来ない。

 

(巴……さん……)

 

光に包まれた世界の中、ほむらの記憶がフラッシュバックする。

 

あれは眼鏡をかけた弱き魔法少女を守るために戦ってくれた恩師の記憶。

 

身を挺してワルプルギスの夜が放った一撃から守ってくれた違う世界のマミの背中であった。

 

 

「グッ……ヌゥゥゥゥゥ!!!」

 

渓谷の岩場まで飛ばされたホワイトライダーは爆発の余波で崩れた岩が頭上から降り注ぐ。

 

下半身が大岩で潰されたせいで身動きがとれない状態になっているのだ。

 

「主人ヘノ愛故カ……余計ナ真似ヲシテクレタナ……」

 

死天を召喚して岩をどかせ、回復魔法で傷ついた体を癒そうとした時、終わりが訪れる。

 

「フッ……戦場デハ、最後マデ立ッテイタ者コソ……勝者ダ」

 

頭を岩で強打し、流血が両目に流れ込み、血涙を流しているかのようなほむらが立っている。

 

その傷ついた体は最後の力を使いながら魔法の弓を構えているのだ。

 

「巴さん……杏子……私に最後の力を……貸して!!」

 

震える両腕で放たれた一撃によってついに勝負が決まる時が訪れる。

 

「ガッ……ハッ……!!!」

 

真っ直ぐ飛来した矢は髑髏の眉間を貫き、反動で被っていた黄金の王冠が宙を舞う。

 

「勝利の騎士……この一撃をくれたのは……お前のお陰でもあるわ……」

 

――因果なものね。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

魔法の杖を地面について体を引きずりながら魔人の元へと向かって行く。

 

それでもトドメを刺すために体を動かす余力はもう無いであろう。

 

「フフフ……四騎士達ヲ…退ケルトハナ。ソレデコソ…俺ガ鍛エタ…小娘ダ……」

 

「ホワイト…教えなさい。何故…何故こんな酷い殺し合いを…しなければならないの!?」

 

「全テハ…黒キ希望ノタメ…終ノ決戦ノ…タメ…」

 

「私はお前達みたいなおぞましい悪魔には与しない!大切な仲間を殺す者達には関わらない!」

 

「一時ノ感情ガソウ決メテモ…貴様ハモウ…悪魔ガモタラス運命カラハ…逃レラレナイ…」

 

「悪魔の…運命ですって!?」

 

「俺ハ…言ッタハズダゾ…小娘。貴様ハ…アノ御方ノ刻印ヲ…授カリシ…選バレタ…者ダ…」

 

「あの御方の刻印…?私の体の何処に…そんなおぞましい刻印が…印されているのよ!?」

 

「ソレハ…次ノ魔人…アノ年寄リ爺ニデモ…聞クガイイ…」

 

「年寄り爺ですって…?」

 

「ヨハネ黙示録…全テハ…聖書ニ記サレタ運命ヲ辿ル…ソレヲ実行スル者達ガ…イル限リ…」

 

「黙示録を…実行する者達…?」

 

死にゆく体の頭部を横に向ける弓兵は自身の転がった王冠を見つめながらこう語る。

 

エノク書に記された200人の天使からなる集団の長()()()()()はカルメル山に降りた。

 

遠くから人間の娘達に性的な欲望を抱いた奴らは娘達を娶ったという。

 

「エノク書…?200人の天使…?シェムハザ…?」

 

「堕天使達ハ新妻ニ魔術ヲ教エタ…ソノ結果…ネフィリムノ名デ知ラレル巨人ガ…産マレタ…」

 

「ネフィリム…巨人…?」

 

()()()()()()()()()()()()()…巨人ハ恐レラレ…アナク人ハ…イスラエルノ地カラ消エタ…」

 

「まるでミュータントね…ネフィリムという存在は…」

 

ネフィリムはその抗し難い敵愾心と凶暴さで互いに殺し合い、殺した相手を食べていく。

 

ネフィリムとは世界に()()()()()()()()()()()()()()なのだとほむらに伝えてくれる。

 

「カニバル…食人…」

 

ほむらの脳裏に浮かぶのは悪夢で見た見滝原総合病院の地下にあった地獄の光景であろう。

 

サトナ(サタン)ハ、エヴァト交ワリ…人類最初ノ殺人ヲ犯シタ男…()()()ヲ…産ミ出ス…」

 

「カイン…アベルの兄だった創世記の人物ね…」

 

「ココヨリ始マルノダ…数千年モノ間…大イナル神ヲ呪ウ…悪魔崇拝者ノ…歴史ガ…」

 

「カイン…それが悪魔崇拝者の歴史の原点…」

 

後に預言者ノアが産まれ、ノアの孫にいた存在である()()()の名を伝えてくれる。

 

「カナン…?その人物がカナン族の始祖なのね…?」

 

「オゾマシキハ…カインノ血族…カナン族…アレコソマサニ…()()()()()()()()()()…」

 

人々を惑わして殺し、そして人々の子供の肉を喰らう。

 

世界に悪魔崇拝をもたらした()()()()()()()()()なのだとほむらに伝えてくれるのだ。

 

ホワイトライダーの身体を構成していた感情エネルギーが抜け落ちるように輝きを放ち始める。

 

「奴ラハ内側カラ血ヲ乗ッ取ル…モハヤ()()()()共ハ…()()()()()()()()()()()…」

 

()()()()()()()()()()()にこそ…カナンの血族であるカナン族の末裔共がいるのね…?」

 

「欧州ノ王族ハ奴ラ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ノダ…」

 

「それを私に伝えてどうしたいの…?何を企んでいるの…ホワイト…?」

 

「クックッ…黙示録ハ…必ズオコル…ソレニ参加スルモヨシ…世界ノ破滅ヲ傍観スルモヨシ…」

 

「全ては…私次第なのだと…死に際に伝えたかったようね…?」

 

()()()()()デアッタガ…弟子トイウ者ヲ…初メテ持テタ一時……ワルク…ナカッタ…ゾ……」

 

その一言を最後にホワイトライダーの身体を構成する感情エネルギーが爆発する。

 

淡い深碧色エネルギーであるマグネタイトが空にバラ撒かれ、ホワイトライダーの形も消える。

 

身を挺して守ってくれた師と殺し合ったが強くしてくれた師の両方を暁美ほむらは失うだろう。

 

強い風が吹き抜け、血まみれのほむらの髪を揺らす。

 

ほむらの心に残った感情とは、やりきれない程の悲しみと虚しさだけであった。

 

 

魔人結界が解かれて元の武器庫の射撃場に戻ってこれたのは倒れ込んだ暁美ほむらのみ。

 

だが彼女もまた命の限界が近い者である。

 

「ハッ…ハッ…ハッ……意識が……持た……な……い……」

 

死ぬのではないと自分に言い聞かせるが、意識を失えば死んだ肉体が勝手に死を受け入れる。

 

その末路は絶望死と同じ状態となり、ソウルジェムが砕けるだろう。

 

四騎士の試練を超えた者だが、ついにその命は逃れられない死に飲み込まれようとしている。

 

「私……まだ……死ね……な……い……」

 

体の感覚は無いし目も見えない、そして耳さえ聞こえない。

 

ついには視界がブラックアウトした時、ほむらには聞こえない音が地下射撃場内に響く。

 

ブラウンの革靴の歩く音がほむらに近づいてくる中、その足音が止まったようだ。

 

「黙示録の四騎士を打ち破りしその力…見事よ。お前さんは…ワシと戦う資格を得たぞ」

 

謎の人物が右手の指を鳴らすと世界の時間が巻き戻るかのようにして歪んでいく。

 

それに気がつく事もなく、暁美ほむらは彼岸の縁へと行ってしまうのであった。

 




読んで頂き、有難うございます。
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