人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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70話 砂の世界

王の書斎のような豪華な主舞台で独り佇むのは山羊の形をした銀の飾り杖を持った金髪少女。

 

もう直ぐアマラ深界にやってくるだろう者を静かに待ち続けている。

 

座っている椅子の後ろで燃える暖炉の上には飾られたいくつものモノクロ写真が見えるだろう。

 

そこに写っていた人物とは眼鏡をかけた小さい女の子のメモリアル。

 

親に面倒を見てもらわなければ生きる力も無いだろう、小学生の子供の写真がいくつもあった。

 

「……6体の魔人を倒せたか。上出来だよ、暁美ほむら」

 

暖炉の薪が弾ける音が響く主舞台の書斎で金髪の少女の姿をした者は語っていくだろう。

 

このモノクロ写真に写る人物の最後の真実を伝える者として暁美ほむらを待ち続けていた。

 

 

メノラーの明かりが()()灯った明るい光に照らされた女神の絵画をほむらは見つめる。

 

「私…きっと貴女を傷つける。私の望みは貴女が選んだ道を…否定するものなのだから…」

 

祭壇机に置かれた白い花を見つめるほむらは自分の想いからは逃げない覚悟を決める。

 

「拒絶されてもいい…私が望むのは貴女の人間としての幸せ…そして……」

 

<小娘よ……教会の入り口に向かえ。あの御方がお待ちだ>

 

少しだけ目を瞑り、最後の問いに答えてもらうためにほむらは踵を返して入り口へ向かう。

 

教会の出入り口を開けばそこは王の控えの間と直接繋がっていたようだ。

 

何も言わずにメノラーの台座まで歩いていき、右手に持たれたメノラーを置く。

 

灯りが今まで見た中で一番大きく燃え上がり、連なる炎のように輝いていく。

 

6つの蝋燭の灯りはまるで火群(ほむら)のように輝いて見えるだろう。

 

金髪の少女の視線を感じ取り、自分の視界がアマラ深界にまで堕ちていく感覚になっていく。

 

ほむらの視界は生物の体内にある細胞壁の隙間のような覗き窓にまで辿り着いている。

 

オペラ劇場の舞台に備わる真紅の舞台カーテンは既に上まで上がりきっていたようだ。

 

主舞台の中央の椅子に座るのは暁美ほむらと瓜二つの姿をした金髪の少女。

 

その両目を静かに開けた後、不気味な笑みを浮かべた後に口を開きだす。

 

<<……何故、私の姿をしたまま私の前に現れたの?>>

 

「……私はお前の鏡。少し先の未来を映している」

 

右に首を向けながら左耳を見せてくる者はアクセサリーのようなものを身に着けている。

 

それはまるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

イヤリングのように吊り下げられているのは紫の菱形宝石のようだ。

 

<<お前達は……私が悪魔となり、黒き希望とやらになるのだと信じているわけ?>>

 

「だからこそ私はお前に7つの試練を与え、それを超えるための道具まで用意した」

 

<<お断りよ。私は魔法少女…それ以上でも以下でもない。私が悪魔になるわけないわ>>

 

「もうお前の意思は関係ない。自分では逆らっているつもりでも、お前は()()()()()()()だ」

 

<<お前達が仕掛けたこの試練を生き残ってみせる…私の力を示せたらもう関わらないで!>>

 

「いいだろう。お前は6つの死を超えた…後一つ超えれたならば…そっとしておいてやろう」

 

<<悪魔の言葉なんて信じない…でも信じる以外に…私が平穏に暮らせる方法はないわね>>

 

「聞きたい事は…それだけか?」

 

<<…あの鹿目詢子さんに化けた悪魔と、梟は何処に消えたの?>>

 

「席を外してもらった。これからお前に語る最後の真実は…私が語るべきだからな」

 

<<最後の…真実?>>

 

椅子から立ち上がった金髪の少女は山羊の形をした銀の飾り杖をかざす。

 

ステージ前の空間に現れたのは赤く逆巻く渦の柱。

 

渦の中心に横たわりながら浮かんでいる人物を見たほむらは愕然とした声を零す。

 

<<わ……私の……小さかった頃……?>>

 

あまり思い出す事も出来ない小学校高学年時代ぐらいのほむらの姿に対し、質問してくる。

 

「お前は小さい頃の記憶を持っているか?」

 

<<小さかった頃の記憶ですって?あまり思い出せないけど…小学校ぐらいまでなら…>>

 

「それより以前の記憶は?両親の顔は覚えているか?何処の病院で産まれたか覚えているか?」

 

<<それは…その…そんな事が一体何の意味があるって言うのよ!?>>

 

「お前は自分を知らなさ過ぎる事にさえ気が付かず、人間としての人生を生きてきた娘なのだ」

 

自分の置かれている環境が周りの人間と比べておかしいと感じた事はないかと質問される。

 

思い当たる節を考えたなら、普通の家庭環境の常識から見てもおかしい部分はいくらでもある。

 

先ず挙げるなら、()()()()()()()()()()()()()

 

亡くなったというわけではないのだろうが、ほむらの周囲には決して現れない。

 

普通なら我が子を東京から遠くの街の病院に移したりすれば付き添うのが親として当たり前。

 

病み上がりの子供を独り暮らしさせるなど考えられない態度であろう。

 

繰り返された一ヶ月のうち、心配しながら顔を見せに訪れるのが親として当たり前の行動だ。

 

だがほむらが繰り返してきた時間渡航の中で、両親が顔を見せに現れた事など一度もない。

 

病弱な中学生の子供を一人暮らしさせていようがお構いなしのDVに等しい放任主義者であろう。

 

そもそも小さかった頃の記憶を思い出していっても両親の顔など浮かんでこないのだ。

 

「お前は言えるのか?両親の名前を?何処で働いているのかを?いつ結婚したのかを?」

 

「私の家庭環境は…確かに不自然だった。両親の顔さえ思い出せないし、そもそも……」

 

――私は両親と会った事さえ…無かったわ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

東京で暮らす大富豪のお嬢様しか通えない格式高いミッション系学校がほむらの出身校である。

 

現代の貴族とも言えるだろう子供達の中でも一際羨望と嫉妬を向けられるお嬢様がいたようだ。

 

彼女の名前は暁美ほむら。

 

東京郊外にある美しい大庭園に囲まれた豪邸の屋敷で暮らし、通学でさえ護衛を引き連れる。

 

大統領が乗っていても不思議ではない最高級リムジンに乗り、護衛の車列と共に通学する。

 

小学校でも教師から特別待遇を受け、王族権威のようなお嬢様暮らしをしてきたようだ。

 

屋敷に帰れば使用人達が沢山働いている。

 

食事も城の大食堂にあるような長い机の奥に座り、執事とメイドを両端に立たせて食事をする。

 

そんな豪華さとは裏腹に家族と共に夕餉を楽しむ景色は無く、独りで食事をとる毎日。

 

これ程まで金に困らない羨望的な生活を送ってきながらも不自然過ぎるだろう。

 

屋敷で働いている使用人に親の事を聞いても、はぐらかされるばかりで語ってはくれない。

 

辛くて枕を濡らす日々が記憶の奥に眠っているが、いつの間にかそれが当たり前となっていく。

 

ミッション校の中学に進学した頃、ほむらは突然倒れる事となる。

 

重い心臓病を患い、東京の大学病院を転々としながら命を繋ぎとめてきたが病状が悪化する。

 

そのため世界的な権威をもつ心臓外科医がいる見滝原総合病院に転院する事となるのだ。

 

我が子が重い病魔に倒れた時でさえ両親は現れてくれなかったのを今でも彼女は覚えている。

 

委任を受けた使用人達が必要な事は全て代理で行ってくれた光景も微かにだが覚えている。

 

見滝原の名家組でしか入院出来ないような個室を用意された彼女の入院生活が始まっていく。

 

不自由ない入院生活を送れたようだが、心は空虚なまま。

 

中学にも通えず周りと比べて勉強が遅れていく長い入院生活が続いていく。

 

見舞いに訪れる他の病室の人達を廊下で見た時、どれだけ嫉妬心が芽生えたか分からない。

 

お金はあっても家族の愛は何処にもなかった記憶こそがほむらの頭に焼き付く孤独な人生。

 

数回の手術も成功して退院出来るまでに体が持ち直した頃、ほむらは訪れた使用人にこう語る。

 

「私も普通の子が通うような学校に行きたい。それに貴方達がいなくても一人暮らし出来るわ」

 

お嬢様の要望に応えるため使用人達は取り計らうよう動いていく。

 

中流層の子供が通学する見滝原中学に転校する手続きを行い、一人暮らしする住居も用意する。

 

暁美ほむらは病院から無事に退院し、現在の学生生活を送る毎日へと至った者なのだ。

 

「あれだけのお嬢様暮らし…使用人を沢山雇っている親がいて当然。なのに顔を見せに来ない」

 

<<そうよ……あんなのおかし過ぎるわ!!普通の家庭なんかじゃなかった!!>>

 

「今でも多額の仕送りを何処かから送るのみの両親に対して…疑問や怒りは無かったのか?」

 

<<あるわ…数え切れない程にね。それでも今となっては薄情な親の事などどうでもいいわ>>

 

「フッ…話を戻そう。小さい頃の記憶は何処まで覚えている?」

 

<<微かに思い出せるのは精々11歳頃までよ。あの頃は…寂しくて毎日泣いてたわ…>>

 

いつ住んでいるのかも記憶にない我が家の中で、気がついたら沢山の使用人に囲まれている。

 

全てが分からず苦しくて泣いていた記憶を思い出した彼女は両親に対する怒りがこみ上げる。

 

<<どれだけ両親を憎んだか分からない…私を鳥籠に閉じ込めてきた理由さえ分からない!>>

 

「意味はあるさ。何故ならお前は成長して魔法少女となり…今この場所に立っている」

 

<<……えっ?>>

 

「全ては計画通り。言っただろう?お前は()()()()()()()なのだとね」

 

顔面蒼白になっているほむらは何が言いたいのか問い詰めてくる。

 

それに答えるようにして金髪の少女は()()()()について語ってくれるのだ。

 

偽装結婚とは一般的に結婚の実態を伴わない結婚とされ、犯罪目的として使われる事が多い。

 

日本の刑法上存在しないが結婚の実態が全く無いなどということが判明すれば罪に問われる。

 

婚姻届の公正証書原本不実記載等罪(刑法157条)に該当する罪として知られるものだ。

 

子供を育てる扶養を目的とした偽装結婚も存在する。

 

扶養義務は同居生活していなくても一定の扶養料を支払うことで扶養義務を果すことは出来る。

 

人身売買された他人の子供を育ての親として偽装しながら扶養する事さえ出来るのだ。

 

「お前の両親は法律上存在している。役場に届けた両親と子供の戸籍が共にあるのが証拠だ」

 

<<なら…私の性である暁美って…誰の性なの?父親側…?それとも母親側なの…?>>

 

「お前の性である暁美とは父の性なのだ」

 

<<私の父の性が…暁美なのね…?>>

 

「だがそれはニンベン師に用意させた偽造証書であり、暁美という性はその男のものではない」

 

<<偽造証書…?暁美という性は…父のモノではないですって…っ!?>>

 

「お前の両親は偽装結婚しており、結婚の実態は子供の扶養義務を養育費で証明してるだけさ」

 

向こう側の女の顔がどれ程の苦痛で歪んでいるのか考えただけで金髪少女は愉悦を感じていく。

 

「つまりは……お互いに名前も知らない()()()()()()だったのさ」

 

<<嘘よ……そんな話……>>

 

「偽装結婚していても顔を見せに来る事も出来たがあの者共はしなかった。何故か分かるか?」

 

<<分からない……分からないわよ……>>

 

「その者達が()()()()()()()()()()()()()()()だからだ。商品の子供に情が移りたくなかった」

 

<<そんなの嘘よっ!!悪魔の惑わしよ!!>>

 

「使用人でさえ仕えている建前はあっても、お前を子供のように愛してはくれなかったはずだ」

 

ほむらの脳裏に収められた古い記憶が蘇っていく。

 

使用人達が自分を見る眼差しはモノを見るような冷たい眼差しであった記憶が頭に溢れ出す。

 

「私はイルミナティに用意させた。第二次性徴期を迎えた魔法少女にするまで育てるようにと」

 

<<イルミナティ……ですって……?>>

 

イルミナティは人身売買によって子供という商品を手に入れる世界規模のネットワークをもつ。

 

反キリスト行為の生贄とするため人身売買組織を経由して代理の親を用意させたと語っていく。

 

「お前も見滝原総合病院の地下でアドレナクロムを見たはずだ」

 

<<あの袋に詰まった…輸血用の血液のようなもの…?>>

 

脳にある視床と呼ばれるホルモンやメラトニンを分泌する内分泌器部位は宗教的意味がある。

 

宗教的には魂の松果体と呼び、分泌する液体を高純度で摘出するために子供を虐待する。

 

ほむらの記憶に蘇るのは、あのおぞましい見滝原総合病院の地下空間の手術室。

 

眼を器具で固定して麻酔目薬をかけ、吸引器の針を直接眼球奥部の脳に刺して吸引する。

 

恐怖と痛みで大量に分泌されたアドレナクロムは若返りの麻薬となると聞かされていく。

 

話の内容こそクロノスから聞いた反キリスト行為と合致する所業だとほむらは理解するだろう。

 

「日本の芸能界など世界のセレブは何故あれ程年齢を感じさせない見た目をしていると思う?」

 

<<分からない……そんなの……知りたくない……>>

 

「反キリスト行為をしているからだ。そのために子供を……」

 

<<言わないで!!悪魔の嘘になんて絶対に騙されてやるものですかぁ!!>>

 

ソウルジェムを喰らう悪魔のように人の魂を司る松果体を悪魔崇拝者達から摘出される。

 

自分もそんな生贄として用意された子供なのだと怖くなったほむらが罵声を浴びせてくる。

 

「怖くなったか?安心しろ、お前には別の目的がある。そのためにこそ……」

 

――()()()()()()()()()()

 

それを聞かされた暁美ほむらの思考と激情が止まってしまう。

 

旧約聖書創世記2章7~8。

 

―― 主なる神は()()()()()()()()()、命の息をその鼻に吹きいれられた。

 

――そこで人は生きた者となった。

 

――主なる神は東のかた、エデンに一つの園を設けて、その造った人をそこに置かれた。

 

<<なんなの…?お前は何を言い出すの…?この上……何を言い出すのよぉ!!?>>

 

「私は大いなる神のマネごとをするのが好きだ。だから創世記と同じ事をした」

 

<<創世記…?た、たしか…大いなる神が行った天地創造…?>>

 

土とは命へ最も近い物質であり、礫や砂や泥に有機物が付着して生まれる。

 

土の元とは風化した岩石から削れて細かくなった()()()()と伝えてくれる。

 

<<土…砂…?創世記のその一節は……まさか……>>

 

「人は感情エネルギーを持つ。それは宇宙を生かす命にも、神という命さえも生み出す」

 

因果を持たない人の感情エネルギーは微々であるが、時に命を生み出す程のエネルギーを生む。

 

その感情エネルギーこそ、人修羅が生きたボルテクス界で生まれた人々の形になるだろう。

 

<<人間の……命……?>>

 

「時の砂の流れと共に数々の時間渡航世界を生きた娘よ。お前の人生もそれをなぞるが如しだ」

 

<<い……いや……その先を言わないで……言っちゃ嫌ァァァァ!!>>

 

悲鳴を上げるほむらに対し、残酷な真実をついに告げる時が訪れる。

 

暁美ほむらの元となったものこそ、全ての世界において病死してしまう11歳の名もなき少女。

 

一人の少女の感情はエネルギーとなり、砂に宿った存在だと告げられる。

 

「私はその砂を土とし、大いなる神の真似事として人間の少女を形作り、そして生み出した」

 

――お前の正体とは、私が創った人間の真似形(マネカタ)だ。

 

<<あっ……>>

 

「東のかたの国である日本…目もまだ開かぬ少女に私はエデンの如き園を与えた」

 

<<ああっ……>>

 

「私はその少女にこう名付けた。暁の空に燃えるように美しく輝ける子…暁美ほむらとな」

 

<<あああっ……>>

 

「暁の子よ…私がお前の創造主。イルミナティは反キリストの子供を育てた親となるだろう」

 

<<あああああっ……>>

 

「お前も私と同じく…ヘレル・ベン・サハル(暁に輝ける子)に至る者となれ」

 

<<ああああぁぁぁぁぁーーーーッッ!!!!>>

 

少女の世界が崩れていく。

 

人生が砂の城のように崩れおち、流れ落ちていく。

 

まるでそれは傾けた砂時計のように流れ落ちていくのみ。

 

無常に流れる人生の象徴とは砂時計であり、中の砂そのものであり、()()()()()()()()()だ。

 

<<私の人生も……命も……形が無かった……好きに作られた……砂の形……>>

 

覗き窓に亀裂が入って砕け散る。

 

鈍化する視界で砕けた破片が映りながら意識の形も崩れていき、砂となって闇に流れ落ちる。

 

ほむらの最後の視界に映っていたガラス片の向こう側に何かを見出す。

 

ガラス片が金髪の少女を隠し、ゆっくり下に落ちる頃には黒いフォーマルスーツの男が立つ。

 

その人物こそ暁美ほむらの創造主であり、魔法少女契約を持ち掛けた運命の支配者なのだ。

 

<<私の…人生は…魔法少女の…人生は…あの男が…砂で作った…流れ…落ちる…す…な…>>

 

「悪魔を表す6番目の試練こそ、お前を悪魔に覚醒させるものだ。さぁ…お前の死が始まるぞ」

 

――死と再生……人修羅と同じく、悪魔転生の時がきた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

時間渡航の覚醒が起きた魔法少女は体を持ち上げていく。

 

視界に映ったのは満天の蒼き夜空に浮かぶ星々と砂の大地。

 

クロノスに導かれた世界とは繰り返された時間渡航とは違う世界。

 

今の時間渡航の盾には繰り返された一ヶ月分の時間は収まっていない。

 

出会いをやり直したい最初の願いも無かった事となり、ほむらの記憶の中にしか存在しない。

 

<ワシの砂時計に収められておるのは…地球文明の生存出来るまでの時間なのじゃ…>

 

人類の終わりの砂が下に落ちきった事で回転し、人類の終わりの砂部分だけを下に少し流す。

 

そしてもう一度回転させた時間軸こそがハルマゲドンによって滅んだ地球文明の未来である。

 

<お前さんがこの未来を拒み、戦うのは自由…魔法少女の世界を見ながら終わるのも自由じゃ>

 

クロノスの念話など聞こえていないのか、濁った目をしたほむらは呆然と立っている。

 

そして彼女は、発狂した。

 

「アハ…アハハ…あはははははは…ハッ…はっ…アーッハッハッハッハッハッハァーッッ!!」

 

気が触れたように大笑いを始めるほむらに対し、クロノスは悟るだろう。

 

彼女に訪れる死が見えているのか何も言わなくなってしまう。

 

狂った顔つきの目からは涙がとめどなく流れ落ちる。

 

美しい見た目であるが砂で創られた髪の毛を砂が混じった夜風が揺らしていく。

 

この場所こそ暁美ほむらが辿り着いた因果の最果てとなるだろう、()()()()であった。

 

「アーッハッハッハッハッハッハァ…ハッ…ハッ……うああぁぁぁぁぁぁーーーッッ!!!!」

 

誰も寄せ付けなかった寡黙でクールな作られた自分など何処にもいない。

 

病弱だった元の自分さえ何処にもいない。

 

この砂の世界にまで砂時計のように流れ落ちた砂の少女でしかないのだ。

 

ここは彼女の因果が辿り着かせた自分の真実を表す世界であろう。

 

「ああぁぁぁ……!!グスッ!!エッグ!!うぁぁぁぁぁ……ッッ!!!」

 

何者でもない泣きじゃくる子供のように泣き喚き、向かう場所すらないまま砂の海を歩む。

 

彼女のソウルジェムは砂を固めた泥団子に過ぎず、その魂は涙で濡れた泥水のように色褪せる。

 

ソウルジェムから絶望の輝きが迸り、亀裂が入っていく。

 

広がる砂の海、聞こえるのは砂の音、そこは二人で生きたかった世界の亡骸。

 

「まどか……こんな私で……ごめんね……」

 

ソウルジェムがこの世界に呪いの因果をもたらす前に、この世から彼女と共に消えるだろう。

 

一人の友達のために魔法少女として生きた者の物語は終わりを迎え、完結するのであった。

 

 

砂の世界に佇むのは契約の天使であるインキュベーターの姿であろう。

 

「タイムラインを知っているミカエル様が仰られた通り、未来世界に時間渡航していたんだね」

 

天使の足元に倒れているのは世界から消えるはずだった暁美ほむらの遺体であろう。

 

「少しだけ待った甲斐があったよ。お陰でボク達の実験を始める事が出来そうだ」

 

宙に浮かぶのは末席の天使ですら得意とする悪しき者を封印する干渉遮断フィールド。

 

封印された内部で保護されているモノが見える。

 

それは小さいボルトで外側から固定された暁美ほむらのソウルジェムなのだ。

 

「全ては宇宙の熱を増やすため…君が語った魔女という概念を研究させてもらう」

 

――君が語った内容が本当なら、君は魔女になれるはず。そうだよね?暁美ほむら?

 

大いなる神の使いである天使とは神の御使いに過ぎず、人間の守護者などではない。

 

神を害する者あらば打倒し、唯一神の威光を讃える者達でしかないのだと解釈出来る。

 

唯一神の威光は円環のコトワリによって消し去られようとしている。

 

宇宙を温める光と熱の守護者である者がそれを看過するはずがないだろう。

 

その揺るぎなき信仰心の前では人間らしい優しさなど、大いなる神への生贄に過ぎなかった。

 

「円環のコトワリを観測出来るなら…ボク達でも制御出来るはずだ」

 

その後、インキュベーターは様々な魔女という概念の性質を見つける事となるだろう。

 

独自の法則に支配された閉鎖空間の形成と、外部の犠牲者の誘導と捕獲。

 

さらに興味深かったのは、この魔女は時間を超える力まで持っていること。

 

外部の犠牲者の誘導によって捕獲されたのは時間を超えた過去の世界で生きている者達。

 

見滝原市で暮らしていた魔法少女達と、ほむらがかつて接した事がある人間達の姿なのだ。

 

ソウルジェムは干渉遮断フィールド内部でまだ砕けてはいない。

 

ひび割れたソウルジェム内部はかつての世界で存在していた魔女の世界と化しているだろう。

 

この魔女が共に生きたかった人々と暮らしたかった街と似た世界を卵の内側に築き上げていく。

 

今より始まる物語、それはきっと()()()()()となるだろう。

 

暁美ほむらが築き上げた偽物の世界とは、彼女が夢見た終わらない願いの世界であった。

 




読んで頂き、有難うございます。
次の話は映画叛逆の物語を知らない人向けに書いたので、知ってる方は読み飛ばしてもらって大丈夫です。
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