人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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72話 セカンド・インパクト

マミと杏子は滅びた人類文明の世界の中で佇む。

 

目の前には寝台に寝かせられている暁美ほむらの遺体。

 

近くには干渉遮断フィールドに取り込まれていたソウルジェムが転がっている。

 

マミはそれを拾い、別れの花を贈るようにしてそっと遺体の胸元に置いてあげたようだ。

 

細かい砂が混じった夜風がマミの髪を揺らし、彼女は世界を見渡す。

 

彼女達は世界がなぜこんな風になってしまったのかさえ理解出来ないだろう。

 

夜空の雲の隙間から下りてきたのは、かつての世界でハコの魔女と呼ばれた存在の使い魔達。

 

運ばれてきたのは魔女の結界に連れ去られた人間達の姿であろう。

 

何をどうしたらいいのかも分からず、呆然としていた時に背後から声が聞こえてくる。

 

「…行っちまったのか?さやかも、あんたのべべも?」

 

円環からの使者の姿は何処にも見つからないのだとしたら、そう考えるのが妥当だろう。

 

それでもマミの視線は空に向かっていたようだ。

 

「いいえ、今ようやく…彼女を連れて行くところよ」

 

夜空の雲間から光が地上に降り注ぎ、使命を終えた魔法少女の遺体に降り注ぐ。

 

天から波を打ちながら地上へと伸ばされていくのは花のように美しい空への道。

 

その奥から現れてくるのは神々しい女神の姿であった。

 

「あれが……鹿目まどか……?」

 

「ええ。いつか私達を導く……円環のコトワリよ」

 

六角形の光の中から溢れ出るのは白き光であり、奥から降臨したのは魔女の救い神。

 

神話においては魔女達が救われたい願いをもって口伝で生み出した虚構の女神。

 

アラディア神としても語られてきた存在なのだ。

 

しかし見滝原市で暮らしてきた魔法少女達はアラディアの事を鹿目まどかと語っている。

 

今は覚えていなくても、いつか分かってくれるだろう共に生きた魔法少女の姿なのだから。

 

「…そうだった。私はほむらちゃんのために…こんな大事なことを忘れてたなんて…」

 

光る翼を背中に持ち、純白のドレスの裾をなびかせながら女神の姿が地上に下りていく。

 

「ま、余計な邪魔が入ったからね」

 

天の花畑のように美しく光る道を下りてくる。

 

象の使い魔に引かせた豪華な荷馬車に乗って現れてきたのは女神様の鞄持ち達であろう。

 

「ちょっとした回り道になっちゃったかなぁ」

 

「やれやれなのです」

 

夜空の明るさを浴びせられていた遺体の目が少しずつ開いていく。

 

瞳だけを動かせば仲間の姿と空から下りてくる女神達が映ったようだ。

 

そんな時、暁美ほむらの思考の世界で悪夢の記憶がフラッシュバックしていく。

 

七つの試練で導き出された自分の本当の願望が叫び出す。

 

――オ前ハ約束モ果タセズ、アノ小娘ガ存在シナイコンナ世界ニサレタママデ悔シクナイノカ!

 

――汝には誰もいなかったのか?共に過ごしてみたいと思える程の…大切な人達が?

 

「待たせちゃってごめんね、今日までずっと頑張ってきたんだよね」

 

その願望とは、まどかと一つになって女神の世界で永遠を生きる事ではない。

 

「……まどか」

 

「さぁ……行こう」

 

女神様は両手を差し出し、世界で一番大切な友達をお迎えする姿勢を向けてくる。

 

神様の国に行こう。

 

そこは地上で与えられる苦しみなど何も感じる必要がない場所だから。

 

神様の国に行こう。

 

そこは地上で得られる幸福など何も感じる必要がない場所だから。

 

そこは因果から解脱した者達にとっては幸せでも、人間の心には悲しみしか与えられない場所。

 

あって当たり前の本当の望みを絶つ、()()()()()()()()()()なのだから。

 

どす黒い呪いに包まれたソウルジェムの中にある暁美ほむらの魂が叫ぶ。

 

誰にも本当の気持ちなんて伝わらなかった彼女の孤独な魂が拒絶を叫ぶ。

 

漆黒の暗闇に包まれた魂に対して名前すら失った者のささやき声が微かに響く。

 

<<()()()()()()>>

 

その者はボルテクス界においては絶対の孤独を支配する神と呼ばれし邪神の声。

 

<<汝の理不尽過ぎる生を救う者などいない。目の前の存在も汝の真の願望は救わない>>

 

<<()()()()()()()()()()()()()。己の中に、真理を求めよ>>

 

名も無き神が語り掛けてくるささやき声によって、暁美ほむらは女神に逆らう決断を下す。

 

「これからはずっと一緒だよ」

 

「…ええ、そうね」

 

もう彼女はためらったりしない。

 

「この時を……」

 

ほむらの口元が微笑む。

 

そして自分の新たなる道となるだろう我儘を示す時が訪れるだろう。

 

「待っていた」

 

まどかの両手は既にほむらの両手によって拘束されているのだ。

 

「ほむらちゃん!?」

 

「やっと……捕まえた」

 

亀裂が入ったソウルジェムの奥底に眠る孤独な魂が禍々しい色となっていく。

 

星と世界を覆うどす黒い感情の奔流が溢れ出す。

 

黒だけではない、様々な感情の色が混じり合った極彩色が感情の光となって世界に迸る。

 

「お……おいっ!?」

 

「な……なによこれっ!!?」

 

噴き出した感情の波動に対してほむらから何が溢れ出してきたのか理解出来ない仲間達が叫ぶ。

 

「ソウルジェムが……呪いよりもおぞましい色に!?」

 

「何なのあれ!?欲望?執念?いや…違う!!」

 

ソウルジェムから吹き上がる極彩色の黒き波動に飲まれようとしている円環のコトワリ神。

 

拘束された主を救うため剣を生み出して割って入ろうと立ち上がるのだが邪魔者が現れる。

 

「手を出すこと…まかりならぬ」

 

さやかとなぎさの首元に向けられていたのは巨大な死神の刃であるアダマスの鎌。

 

巨大な刃の向こう側に顔を向けると細い刀身の上に立つ天使の翼を持った紳士姿の老人がいる。

 

「見届けよ。あの娘の感情を…あの娘の世界に対する革命をな!!」

 

「え…っ!?あ、あんた…まさか…あたし達と同じ存在…!?」

 

「このお爺ちゃんが…ほむらが身につけていた…説明出来なかった力の正体なのです!?」

 

円環のコトワリの一部ならば、その存在もまた概念存在。

 

だからこそ、さやかとなぎさには目の前の老人もまた同じ概念存在であると分かる。

 

そして今ようやく説明出来なかった魔女結界内の一つの現象についての答えが出るだろう。

 

魔獣世界に流れ着いて失った暁美ほむらと共に旅をした魔法の盾。

 

その盾が何故かしら偽街の結界内で再現された光景については説明出来ない現象だったようだ。

 

しかし、この存在あってこそ生み出されたものだと円環の使者達は理解したようだ。

 

「暁美ほむら…あんた一体っ!?」

 

謎の存在とほむらが何をやろうとしているのか、円環の鞄持ち達ですら分からない。

 

圧倒的な力を見せてくるクロノスに対して動けば細切れにされるとさやかは理解する。

 

この恐ろしき現象の末路を見届ける事しか今は出来ないだろう。

 

「…理解出来ないのも当然よ。ええ、誰に分かるはずもない…この想いは()()()()()()

 

――まどかだけのもの。

 

ソウルジェムのガラスが砕け、世界もまたガラスのように砕けていく。

 

「ほむらちゃん…駄目…わたしが……裂けちゃうッ!!!」

 

円環のコトワリ神と呼ばれし魔女の救い神、それがアラディア。

 

何処にでもいる人間、鹿目まどか。

 

二人が写り込んだガラス片に亀裂が入り、引き裂かれるようにして砕けてしまう。

 

「言ったはずよ、まどか。もう二度と……あなたを離さない」

 

まどかの体から弾き飛ばされた女神アラディアが空に目掛けて押し出されていく。

 

ほむらの両腕に強く抱きしめられた人間姿のまどかは女神の体から引き剥がされてしまうのだ。

 

「我が半身が…我とコトワリを同じくして同化した鹿目まどかが……裂かれただとッ!!?」

 

まどかの姿をした女神アラディアの顔つきが豹変していく。

 

絶対に許せない愚行に対し、憤怒によって恐ろしく歪んだ怒りの形相に成り果ててしまう。

 

アラディアの金色の瞳に映るほむらの顔は大胆不敵な笑みとなる。

 

人間として生きたかった鹿目まどかを連れ去った憎い女神に対して、こう吐き捨てるのだ。

 

「アラディア…まどかは返してもらうわ。宇宙を滅ぼす邪神として…お前独りで呪われなさい」

 

「貴様……ッッ!!!」

 

「この子をお前には二度と触れさせない、大いなる神にも触れさせない」

 

「神に弓引くというのか……何という愚かな行為!!!」

 

「この子の帰りを待つ人々のために…この子が生きられる世界を私が取り戻す」

 

鹿目まどかに敷かれた理不尽過ぎる運命。

 

それを敷いた神と呼ばれる憎き者達に対して暁美ほむらは宣言する。

 

「これが世界にもたらす…人間の幸福を望む…()()()()()()()()()()ッッ!!!」

 

世界は砕け散り、極彩色の黒き波動にマミと杏子は飲み込まれていく。

 

さやか達が乗っていた荷馬車まで飲み込まれていく。

 

「おのれ…女ぁ!!魔女になる運命を背負いし者達の自由を守る我らが使命を邪魔するか!!」

 

円環のコトワリも黒き波動に抗い続けたが、天の彼方へと押し出されていく。

 

だからこそ見えるだろう。

 

ほむらが眠っていた寝台の遺跡周辺の地面で輝く巨大なシンボルが見えてしまうのだ。

 

混沌の悪魔達によって隠されていた巨大シンボル、それは悪魔誕生を象徴する六芒星の黒き光。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事を数学の計算で紐解く事が出来る。

 

ならば六芒星の中央にいる暁美ほむらもまた666の獣の数字を背負う悪魔になるだろう。

 

<<汝も…自由の可能性を破壊した…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!?>>

 

――自由という名の……愚か者よッッ!!!!

 

暁美ほむらの感情が膨れ上がりながら広がっていく。

 

感情が星系へ、銀河へ、宇宙へ、全ての並行宇宙であるアマラ宇宙へと広がっていく。

 

全宇宙が極彩色の闇で塗り固められていく。

 

まどかが生きたという庭を作り上げていくかのようにして。

 

始まりも終わりも無くなったまどかが生きることを許された新たなる世界を描く。

 

人間の幸せに満ちた嘘で固めた庭の世界が築かれる。

 

世界が改変されていく光景を見つめるのは鹿目まどかを守る盾として生きたクロノスだ。

 

「数多の世界にワシが導いてきた小娘……それは、小娘自身を運んだのではない」

 

鹿目まどかに向けた()()()()()()()()()()()のだと時の翁は語り出す。

 

それを数多の世界で同じ様に生み出された人もどきの暁美ほむらに引き継がされている。

 

故に暁美ほむらは時間経過によって成長する大人になる門は閉ざされてきたともいえるだろう。

 

まどかへの辛い記憶が増せば増すほど、まどかへの想いが爆発的に積もり続ける現象を生む。

 

感情エネルギーは莫大な力を持つ。

 

人間や宇宙を生み出せる程の熱きエネルギーを生み出す事が出来る。

 

「暁美ほむらに溜め込まれた感情、そのエネルギーによってアマラ宇宙は新たな創生を迎える」

 

哀しいだけだった創生世界を逆五芒星の如く()()()()()()

 

幸福だけの新世界を創り出す反創生を行う者こそが()()()()()()()()()()()()()だった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ここは世界と人間の運命を決める至聖所と呼ばれる地。

 

まるで洞窟のように暗い世界であり、大地は糸巻き棒で紡いだ糸の束で出来ている。

 

運命の至聖所で椅子に座り、新たに生まれた人間の運命を紡いでいる女神達の姿がいるのだ。

 

長女のクロトは白いボビンを使って人間の運命の糸を巻取り続けている。

 

次女のラケシスはその人間が生きていい運命の時間の長さを測り続けている。

 

三女のアトロポスは決められた運命で終わりを迎えるよう断ち切る鋏を持っているようだ。

 

この三人の女神達はギリシャ神話においてモイライ三姉妹と呼ばれている。

 

【モイライ三姉妹】

 

紡ぐ者と呼ばれる長女、割り当てる次女、不可避の者と呼ばれる三女で構成される女神。

 

モイライはゼウスと法の女神テミスの娘であり、時間の女神に続いて生まれたと言われている。

 

また夜の女神ニュクスの娘であるという異伝も存在する女神達のようだ。

 

モイライが決定する運命の糸を操る事は最高神のゼウスさえも手が出せない領域と言われる。

 

運命を決定する権限を姉妹に与えたのはゼウスであり、自分の法に従うため権威は上であった。

 

「急にすまんの。一人の人間のために新しい運命を用意しろという我儘に付き合ってもらって」

 

運命の至聖所に訪れたのはモイライ三姉妹と同じく時と運命を司る神であるクロノスの姿。

 

「どういう肩の入れようかしら、クロノス?あの小娘の我儘に付き合ってあげるだなんて?」

 

黙々と白いボビンを使って糸巻きを繰り返す長女クロトが顔を向けながら語り掛けてくる。

 

金色の瞳を訪問者に向け、顔見知りのようなにこやかな笑みを浮かべてきたようだ。

 

「あんたは閣下に頼まれた役目を終えようとしている。なのに…まだ付き合うのかい?」

 

次女のラケシスは訪問者に金色の瞳も向けず、運命の糸を測る事に集中している。

 

「情でも移ったのかしら、クロノス?随分と長い間あの小娘と旅をしたそうだし」

 

三女のアトロポスは運命の糸に鋏を近づけ、断ち切る姿を見せてくる。

 

「散々な言われようじゃのぉ。しかしまぁ、見届けてみたくなったのは否定せん」

 

「暁美ほむらと呼ばれる小娘の壮大な我儘物語の結末を気にするなんてね…珍しい態度だわ」

 

「もう直ぐ彼女は私達と同じ存在へと生まれ変わる。転生儀式を乗り越えたのは認めるけど…」

 

「あと一つの試練が残っている。それを乗り越えなければ…あの子の我儘な物語もお終いさ」

 

「それに全ての試練を超えたとしても円環のコトワリ神アラディアが黙っているはずがないわ」

 

「分かっておる…これは不可能に近い戦いとなる。だからこそ…ワシの力も必要となるだろう」

 

「暁美ほむらが生み出す人間の幸せに満ちた優しい庭が果たして、何処までもつのかしらね?」

 

モイライ三姉妹は過去、現在、未来のタイムラインが視える運命の守護神である。

 

新たに生み出す宇宙がハリボテだらけの嘘で固めた脆い世界なのだと分かるのだろう。

 

それでもクロノスと同じ気持ちを見せたモイライ姉妹達が新しい人間の運命を託してくれる。

 

「さぁ、出来たわ。持っていきなさい」

 

白いボビンに巻き取られたピンク色の糸の束がクロトの手を離れて宙を浮く。

 

そのままクロノスの右手に向かって浮遊していき、右掌に収まったようだ。

 

「貴方も用意してるのでしょう?その子の死と運命を司る砂の時間を?」

 

「無論だ」

 

左手をモイラ達に見せると、そこにはピンク色の砂が詰められた砂時計が生み出される。

 

「共に見届けよう。我儘な小娘が生み出した人間の幸福な人生を守り通せるのかどうかをな」

 

「その糸はかつて鹿目まどかと呼ばれた人間の始まりと終わりが紡がれている」

 

「それは鹿目まどかの人生分の記憶と言ってもいいものさ。暁美ほむらに届けてあげるんだね」

 

頷いたクロノスが踵を返した瞬間、そこには老紳士の姿は消えている。

 

悪魔転生を迎える瞬間が動き出す時がくるのだが、モイライ達は心配事を語り出す。

 

「……どう思う?クロトお姉様?」

 

「唯一神は必ずアラディアをさし向けてくるわ。鹿目まどかを取り戻させるために…」

 

「憎い相手でも彼女は唯一神の秩序に与する存在です。彼女を利用して暁美ほむらを倒させる」

 

「暁美ほむらは極彩色の泥を宇宙に塗りたくったんだ。唯一神の顔に泥を塗ったも同然なんだ」

 

「鹿目まどかを守る庭…まるで幸せな結末以外は受け入れない、自分だけの引き籠り世界ね」

 

「彼女は鹿目まどかを世界に違和感なく与えるでしょう。どんな色にも馴染む…()()()()()()

 

「新しい世界はきっと鹿目まどかにとっては()()()となる…優しい嘘の世界ですね」

 

かつてのボルテクス界の記憶を彼女達は思い出していく。

 

シジマのコトワリ勢力に与した彼女達は敵対勢力として自己の幸福のみ追求する勢力と戦う。

 

その思想勢力とは、ムスビのコトワリを掲げた勢力であったようだ。

 

「かつての世界で成せなくとも、()()()()()()()()()()()。風邪のように伝染していく…」

 

「形を変え…人から人へ、世界から世界へと伝染していく。あの子もムスビになるのかしら?」

 

「それを決めるのは……暁美ほむらだけなのさ」

 

――真理を求めよ。

 

それは異なる価値観を認めない、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

自己完結でありながらも、自分に都合のいい存在は必要とする極めて矛盾に塗れた脆い道。

 

かつてあったムスビのコトワリの在り様とは、ほむらのようなハリボテの孤独さを抱えていた。

 

 

落ちていくピンク色の糸の束。

 

落ちた先にいたのは世界の中心で世界を作り変えようとしている者。

 

周囲を漂うように迷い出たピンク色の糸の束が彼女の元へと現れる。

 

迷いのない顔をしたその者は口から何かを押し出し、咥えたモノとはソウルジェム。

 

その者は迷いなく自身のソウルジェムを噛み砕いてしまう。

 

もう彼女には必要でなかったものだったから。

 

彼女の孤独な魂を収めていた器はピンク色の糸の束を覆い、新たなる器に転生を果たす。

 

かつて世界で生きた者を閉じ込め、慈しみ、守るための新たな器となりしダークオーブだ。

 

ダークオーブは彼女の左掌に収められ、この世界に戸惑う想い人を二度と手放さないとする。

 

世界が移り変わる光景はまるで咲き乱れる花のようにも思える曼荼羅(まんだら)アート。

 

曼荼羅とは仏教、密教の仏の境地等を仏像や文字を配列した図として示したもの。

 

完成された世界の姿を象徴的に表すインドの思想に由来する。

 

曼荼羅は直訳すれば本質を得るという意味となる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でもあった。

 

「世界が…書き換えられていく。この宇宙に…新しい概念が誕生したというのか!?」

 

全ての宇宙の守護者であるインキュベーターもまた二度目の世界改変を観測する者となる。

 

<<そういえば、あなたは覚えていなかったわね。私にとっては二度目の光景だけれど>>

 

「何が起きているんだ暁美ほむら!君は何に干渉しているんだ!何を改竄してしまった!?」

 

戸惑うばかりの契約の天使を目にした暁美ほむらが不敵な笑みを浮かべてくる。

 

「信じられない。呪いに染まったソウルジェムが…消え去るはずの君の魂が……何故?」

 

<<思い出したのよ>>

 

<<今日まで何度も繰り返して、傷つき苦しんできた全てが、まどかを想っての事だった>>

 

<<だからこそ、今はもう痛みさえ愛おしい>>

 

<<私のソウルジェムを濁らせたのは、もはや呪いでさえなかった>>

 

「それじゃあ…いったい……?」

 

<<あなたには理解出来るはずもないわね、インキュベーター>>

 

<<これこそが人間の感情の極み……希望よりも熱く、絶望よりも深いモノ>>

 

もう二度と離さないとピンクの糸の束を収めたダークオーブをほむらは飲み込む。

 

この想いを人間の言葉で例えるなら、ありふれた言葉で十分だろう。

 

<<それは……愛よ>>

 

今こそ生み出されるだろう。

 

光の翼を象徴した円環のコトワリのシンボルを反対に向ける反キリスト存在が顕現する。

 

これこそまさに()()()()()()であり、見届人となるのは契約の天使であろう。

 

「君は一体何者なんだ!?魔法少女でも魔女でもなく、何処に辿り着こうとしてるんだ!?」

 

<<そうね、確かに今の私は魔女ですらない>>

 

<<あの神にも等しい聖なる者を貶めて、蝕んでしまったんだもの>>

 

暁美ほむらの中には後悔も躊躇いもなく、混沌の黒き希望を受け入れよう。

 

そして高らかに宣言するのだ。

 

<<そんな真似が出来る存在は……もう悪魔とでも呼ぶしかないんじゃないかしら>>

 

砂と土で創られた泥娘の中から花のように転生を果たした悪魔が形を成していく。

 

前は短いが後ろはカラスの翼の衣服を思わせるロングドレスの長さを持つスカートが広がる。

 

内側は深淵の愛が潜むどす黒きアビス。

 

背中はカラスの翼の骨である尺骨が剥き出しであり、骨に連なるように繋がったカラスの羽。

 

円環のコトワリと同じ衣装の雰囲気を持つが、孤独なカラスのようにも思えてくる。

 

カラスは賢い鳥だが、死者の腐肉を喰らいに現れることもある不吉な鳥。

 

死を意識させる不吉な存在として()()()()()()()()()()()()()()()()哀しい鳥でもあった。

 

「これでハッキリした……君達人類の感情は……利用するには危険過ぎる」

 

<<あら、そう?>>

 

「こんな途方も無い結末は……ボク達では制御しきれない」

 

契約の天使に向かってゆっくりと近づけてくるのは巨人のように大きな悪魔の手。

 

「わっ!!?」

 

掴み取ったインキュベーターを悪魔の顔に近づけていく。

 

<<でもね、私達の世界に湧いた呪いを処理するにはこれからもあなた達の存在が必要なの>>

 

<<協力してもらうわよ……インキュベーター>>

 

「これが…ミカエル様が仰られた…ボク達の主神に弓引く……あく……ま……」

 

摘み上げた天使を指で弄りながらも、かつての憎き存在を完全に支配する悪魔は満足している。

 

宇宙の再変が終わっていく光景を悪魔少女は静かに見つめるのみ。

 

再変されたアマラ宇宙は鹿目まどかという人間が生きていたという記憶を捏造した世界となる。

 

彼女の固有魔法が数多の世界に干渉する程の大魔法行使の次元に達した証となるだろう。

 

右手を胸に当て、体の内側に感じるまどかの記憶、運命の鼓動を感じていく。

 

<<愛おしい……愛おしい。守り抜きたい最初の気持ちが溢れ出す……>>

 

この現象こそ混沌の悪魔達が語り継ぐ事になるだろう、()()()()()()()()()()

 

世界に与える二度目の衝撃を行った者こそ、光の秩序に仇成す悪魔となりし暁美ほむら。

 

これこそまさに、()()()()であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ピアノの演奏が響く世界。

 

奏でられるのは悪魔となった暁美ほむらに贈られる夜想曲となるのだろう、()()()()()

 

新たな世界が生まれる夜明け前、イギリスの諺では夜明け前がもっとも暗いという。

 

光と闇が濃密になるこの夜明け前のマロガレの一時こそ、次の夜明けを迎えるべき世界の姿。

 

かつて神や悪魔達が死と再生をテーマにして戦った物語があった。

 

それこそがボルテクス界での創生物語。

 

だが新たに生まれようとした世界を犠牲にしてまで生まれてしまった存在がいる。

 

世界を終わらない夜明け前の暗闇に変えたのは、人修羅と呼ばれし悪魔であった。

 

「鼓動が聞こえる……悪魔となった……私の鼓動……」

 

流れ落ちていく。

 

砂時計の砂が流れに逆らえず、下へと流れ落ちていくように。

 

胎児のように膝を抱えて丸くなり、ゆっくり回転しながら落ちていく。

 

砂で作られたマネカタであり、魔法少女でもあった者こそ悪魔となった暁美ほむら。

 

その形は6のようにも見え、9のようにも見える陰陽太極図を体で描きながら回転していく。

 

それは悪魔を象徴する六芒星とも呼ばれる存在でもあるだろう。

 

死に挑み、死を超える事で悪魔の滅ぼし、滅ぶ力の結晶となる事が出来た者なのだ。

 

流れ落ちていく。

 

逆さまになった見滝原の街と空、下側になった空が深淵の暗闇の底へと導いてくれるだろう。

 

深淵の底から悪魔王の声が響いてくる。

 

――それが我らに許される、二人目の黒き希望となるのだ。

 

砂は流れに逆らえず、流れ落ちるのみ。

 

落ちる、落ちる、アマラの底まで堕ちていく。

 

「これが私の…死と再生…。さようなら…嘘に塗れた私…初めまして…本当の私……」

 

――()()()()()()()()()()()()()()()()

 

底の世界が見えてくる。

 

日没のように熱く輝く、胎内の如き赤く染まったアマラ深界の底が彼女を迎えてくれる。

 

ここは悪魔に誘惑された者が陥る事になるのだろう、人生の脇道の終わりに招かれる世界。

 

円環のコトワリに導かれる以外の魔法少女の可能性を孕んだ一つの終着点。

 

アマラの底に浮遊しながら流れ落ちた悪魔を見つめるのは彼女と同じく悪魔達の姿。

 

皆が歓声を上げ、鳴り止まぬ拍手が鳴り響く。

 

その光景はスタンディングオベーションを示す観客達の光景にも思えるだろう。

 

これこそが自分達が見たかったベストエンディングなのだと悪魔少女に敬意を示し続ける。

 

悪魔ほむらが静止したのは真紅の空間に存在する血の湖に浮かぶ独特な形状をした台座の上。

 

ゆっくりと台座の上に着地した者が覗き窓からしか見えなかったステージに目を向ける。

 

そこはアマラ深界最奥に存在するオペラ劇場の舞台。

 

主舞台の椅子に座っている者こそ、魔界の主となる悪魔王。

 

長い金髪をオールバックに纏めて闇のフォーマルスーツに身を包む男こそが大魔王。

 

ほむらと瓜二つの少女に擬態していた者の正体である。

 

その両隣には喪服姿の鹿目詢子に化けた悪魔とアモンと呼ばれた梟まで佇む。

 

彼女に与えられた七つの試練に関わった三体の悪魔達が再び集まっていたようだ。

 

鳴り止まぬ歓声と拍手に対して椅子に座る男が片手を上げる。

 

興奮冷めやらぬ悪魔達だったが水を打った静けさとなった空間において大魔王が語り出す。

 

「……よくここまで辿り着いたな。期待した甲斐があった」

 

鹿目詢子に化けた女悪魔も語り出す。

 

「あたしが伝えた言葉、ちゃんと守る覚悟を見せてくれて安心したよ」

 

「……満足かしら?私の人生全てを玩具にして…望み通りの結果を得られた冷酷な悪魔共め…」

 

梟は愉悦を感じながらも暁美ほむらに対して語り出す。

 

「クックックッ…吾輩達を責めるお前もまた、その冷酷な悪魔の一員となったのを忘れるな」

 

「梟が……喋れたの?」

 

「前は動物の泣き声に聞こえたろうが、理解出来るようになったのが同じ悪魔となりし証拠だ」

 

「あんたはもう石ころじゃない。その肉体の中に黒き魂を内包した混沌の悪魔となったのさ」

 

「そうね…確かに私はもう魔法少女じゃない…聖なる存在を貶めた……冷酷な悪魔よ」

 

「聞こえただろう?全ての悪魔達が新たなる闇の悪魔誕生を祝福してくれた歓声を」

 

「……耳障りだったわ」

 

「あんたも人修羅と同じく暗黒の天使と共に唯一神をも討ち破ってくれると期待してるのさ」

 

「答えは変わらないわ。同じ悪魔に堕ちても悪魔共が続けてきた戦争に付き合うつもりはない」

 

「あんたの意思はもう関係ないと言ったはずだよ」

 

「まさか唯一神に与する円環のコトワリを穢しておいて、見過ごしてくれると思うのか?」

 

「大いなる神である唯一神は円環のコトワリを憎んでいるんじゃなかったの?」

 

「憎んでいるさ、それでも円環のコトワリは光の秩序を司る存在なんだ」

 

「それを貶めるという事は唯一神の光の権威を貶める行為。永遠の呪いが与えられるのだ」

 

「嫉妬の神らしいわね…私にとっては自業自得の末路よ。だからといって助けなどいらないわ」

 

「感情的判断か?まだ人間や魔法少女の頃の感覚が抜けていないと見える」

 

「あんたはね、永遠の苦しみを与えられる。それだけの罪科を背負わされる地獄の道を選んだ」

 

もはや引き返すことは出来ないと大魔王の両隣に佇む者達が悪魔ほむらに宣告する。

 

光より堕ちた堕天使と、光を支配する天使。

 

その相容れぬ両者の最終決戦が間もなく始まろうとしている。

 

その時には悪魔ほむらのその身もまた裁きの炎から逃れる術はないと突き付けられるのだ。

 

「心しな、かつて人であった悪魔よ」

 

「恐れ、おののくがいい。お前は永遠に呪われる道を選んだのだ……吾輩達と同じくな」

 

自由な選択には()()()()()()()()()()

 

唯一神と円環のコトワリを穢した者として、その身も魂も光の業火で永遠に焼かれるだろう。

 

混沌の悪魔が語る苦しみは想像を絶するものだと理解した悪魔ほむらの顔に冷や汗が浮かぶ。

 

「…覚悟するわ。それでも私は愛する人のために…永遠に苦しまされる罰を受けても構わない」

 

口では強がるが彼女の心に恐れが浮かんでいるのを見抜いている大魔王がようやく語り出す。

 

「案ずるな。お前はその呪われた身をもって、初めて真に世界を征服する道を歩む事が出来る」

 

「私が…世界を征服する……?」

 

「お前が望む人間の幸せを与えたい者のために、悲しいだけだった世界を征服しろ」

 

「……言われるまでもないわ」

 

「人の衣を脱ぎ捨て、数多の死を乗り越えてここに堕ちた魔人よ。お前の心に三度触れよう」

 

「私に何をする気なの!?」

 

「愛する者のためのみに生き、愛する者を守り通す意思を()()()()()穿()()()を授ける」

 

大魔王の人差し指が悪魔ほむらへと向けられる。

 

「ぐっ!!?あぁぁぁぁーーーーッッ!!!!」

 

跪くようにして蹲り、藻掻き苦しむ姿をほむらは晒してしまう。

 

体の奥底に手を伸ばされ、魂の全てを引っ張り出される程の苦しみが再び蘇る。

 

引き出されようとしているのは大魔王の力を授けられた黒き魂に宿った力。

 

魔力の奔流が体の内側から溢れ、赤黒く発光した放電現象が彼女の周りに引き起こされる。

 

「あぁ……あぁぁぁ……あぁぁぁぁ!!!!」

 

魔力色を示すように美しく映っていた瞳の色が悪魔のような真紅の瞳に変わり果てる。

 

「その力はお前と同じ様にここまで辿り着いた人修羅と同じ力。全ての神の守りを貫くだろう」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

全身の痛みが収まっていくと同時に妙な高揚感に包まれていく。

 

「気分はどうだ?」

 

「…良心の咎めを感じない。まどかを引き裂き、悲しませた罪悪感が……もう何も感じない」

 

「お前の心の迷いは晴れた。今のお前にあるのは愛する人を守りたい、共に生きたい欲望のみ」

 

「これが…()()()()()()()()()ってことなのね……」

 

「最後に一つ、昔話をしよう」

 

「昔話……?」

 

「二千年前、人々の平和が魔界の侵略によって砕かれた。だが、一体の悪魔が正義に目覚めた」

 

大魔王が語るのは闇の軍勢に立ち向かった伝説の魔剣士スパーダの存在であろう。

 

「大昔の悪魔剣士が…何だって言うのよ…?」

 

「戦いに勝利した彼は人間界に降臨し、人間の女性と出会い、恋に落ちて結ばれた」

 

「悪魔と人間が…恋に落ちる…?」

 

「悪魔は人間や魔法少女と同じく感情を持つ。故に、人間を愛する事だって出来る」

 

「悪魔が…人間を愛する……」

 

「鹿目まどかは魔法少女でも女神でもない人間となった。心に抱いた気持ち…望むままを行え」

 

そう言われたほむらは片手を胸に当て、まどかへの愛の鼓動を感じていく。

 

「善悪は関係ない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ」

 

血の湖に浮かんだ台座が悪魔ほむらを乗せたまま泉の中に沈んでいく。

 

蹲ったまま身を任せるほむらの顔は少しだけ笑みを見せてくれたようだ。

 

「素敵な物語ね…悪魔が人間を愛し、結ばれる自由があるなら…どんな苦しみも耐えてみせる」

 

視線が湖の中に沈む僅かな時間、大魔王に対して聞いてみたくなったようだ。

 

「……あなた、名前は何ていう悪魔なの?」

 

「私はルシファー。王の中の王と呼ばれる魔界の主人だ」

 

「そう……あなたがあの堕ちた天使の長だったのね。覚えておくわ」

 

ルシファーが笑みを浮かべたのが見えたのを最後に、悪魔ほむらは湖の中へと消えていく。

 

その意識もホワイトアウトしていくのだ。

 

「行くがいい…ボルテクス界で生まれた人修羅と同じ道へ。そして最後の試練を乗り越えろ」

 

その時こそ、暁美ほむらが二人目の黒き希望となるだろう。

 

最後の試練を乗り越えた時、悪魔達は喜んで悪魔ほむらをCHAOSに迎え入れるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そこは白い輝きに包まれた世界。

 

景色は白く輝き見通せないが、床の無機質さは見滝原総合病院の床のようにも思えるだろう。

 

暁美ほむらは繰り返した世界のように病院ベットの上にいる。

 

長座立て膝姿勢のまま座った状態で眠っているのだ。

 

ベットの向こう側から歩いてくる音が聞こえてくる。

 

黒い帽子を被った少年のような存在が幽霊のように現れ、ベットの前に椅子を置いて座り込む。

 

「……よぉ、初めましてお嬢ちゃん。と言っても、聞こえてねぇよなぁ?」

 

軽い口調で語りかける姿は今時の若者のようにも見えるが、その言葉は眠り姫には届かない。

 

「どうだった、お前の人生は?他人にばかり振り回されて、自分さえ守れなかったろ?」

 

目を瞑ったままの少女は答えない。

 

「世界は理不尽そのもの。他人はお前なんて気にしないし、お前だって誰かを気にも留めない」

 

自分の世界で自分に都合のいい目的だけを追いかけたはずだと少年は語り掛けてくる。

 

しかし目を瞑ったままの少女は答えてくれない。

 

「それが人間の本質だ。人間は他人なんて必要としねぇ、自分だけの世界で生きられる」

 

21世紀になりネットが使われだし、ネットの光景こそが人間社会が何なのかを教えてくれる。

 

人間という存在は都合のいい奴らしか欲しがらないし、自己完結したい生物。

 

自分だけの世界を作り、自分だけの聞こえのいい言葉だけを拾う。

 

自分に都合の悪い奴は悪者レッテルを貼り、感情のまま悪者にして批判を許さない。

 

自分達だけが正しければそれでいい、()()()()()()()()()()()なのだと少年は語ってくる。

 

「他人は気にしなければいい。唯一至上の自分と都合のいい連中だけを相手するのが正解だ」

 

横を通り過ぎる赤の他人なんて尊重する価値もない糞共だと少年は他人を切り捨ててくる。

 

「お前も数多の世界でそうしてきたじゃねぇか?赤の他人を守ってやらなかったんだし?」

 

暁美ほむらの願いが他の宇宙の人類を絶滅させまくろうがどうでもいい。

 

自分と自分に都合のいい連中だけいればいいと考えてきただろ?と彼女の心を検証してくれる。

 

「そんなお前だからこそ、俺が目指した思想を託せると思って声をかけたけど…起きねぇな?」

 

首を横に振り、黒い帽子を被った少年は立ち上がる。

 

「お前の生き方は悪いことでも悲しいことでもない。世界の真ん中にいられるのは()()()()()

 

誰もが自分の世界を勝手に作って蛸壺精神になればいい。

 

それがお前と周りの幸福にもなるのだと言葉を残してくれる。

 

病室を出て行こうとする少年の姿が幽霊のように消え去っていく中、ほむらに願いを託す。

 

「俺が目指したムスビ()のコトワリ……かつての世界で駄目でも、思想は死なねぇ」

 

――継いでくれる奴がいる限りな。

 

後ろに向けて手を振りながら別れを告げた少年こそ、ボルテクス界でコトワリを啓いた者。

 

まどかと同じくコトワリ神となった少年の名は新田勇。

 

その姿は時間の流れから外れた世界へと消え去っていく。

 

煩わしい声が聞こえていたのか、眠り姫の瞼が開き始める。

 

かつての世界において一つの病室内で二度目の悪魔が生まれた景色と酷似する光景であろう。

 

彼女の今の姿こそ、二度目の悪魔転生を果たした者の姿そのものに思えてくる。

 

「……私は、私の道を独りでも行くわ」

 

開いたほむらの両目は悪魔を象徴する真紅の瞳を浮かべている。

 

二度生まれた悪魔はかつての世界でこう呼ばれた者。

 

そしてこの世界で生まれた悪魔も同じ悪魔名で呼ばれるだろう。

 

望む世界を手に入れるため、力の意思を示す人修羅なのだと魔界の悪魔達に伝わっていった。

 




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