人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築 作:チャーシュー麺愉悦部
ハロウィンといえば日本を含めて世界で愛されるお祭りであろう。
毎年10月31日にて行われ、古代ケルト人が起源と考えられている祭である。
今となっては祝祭本来の宗教的な意味合いは殆どなくなってしまったようだ。
民間風習としてはカボチャをくりぬいてジャック・オー・ランタンを作って飾ったりする。
子供達が魔女やお化けに仮装して近くの家々を訪れ、お菓子を貰ったりすることもある。
子供達はトリック・オア・トリートと口々に語っていくだろう。
悪戯かご馳走かを大人達に選ばせ、愛らしい訪問者にお菓子をあげていく文化として定着する。
江戸時代より港が整備された神浜市地域では特に異国文化イベントが多い。
欧米から伝わったハロウィン文化は神浜においても根強く残っていたようである。
ハロウィン文化の街、神浜市で生まれてしまった哀れな悪魔が今回は登場するだろう。
その悪魔とハロウィンを愛してやまない魔法少女が出会ってしまった物語となるのだ。
7月某日の夕方。
アスファルトに夏の太陽の熱が溜まっていき、うだるような季節を迎えた神浜市。
夏服を着た道行く人達の中には夏用仕立ての黒スーツ姿をした尚紀が歩く姿が見える。
白シャツには彼の政治カラーを示す赤ネクタイが締められている。
今の彼は神浜市の栄区に来ているようだ。
「一ヶ月近く粘ったが、中々いい物件が見つからないもんだな」
不動産情報誌を見ながら手当り次第当たってみたが、何処も新しい法人が入るものばかり。
ニャー(暑い…暑すぎるニャ。オイラ肉球が火傷しそうだニャ…)
足元の横を歩くのは猫悪魔のケットシー。
人間にはただの猫にしか見えず、声とて猫の泣き声にしか聞こえないだろう。
<だからついてくるなと言ったんだ。東京の家で大人しくしていればいいだろ>
尚紀は外に出ているケットシーに声をかける時は念話を使う。
猫に向かって独り言を喋りだす変人に見られては困るからだ。
<家の中ばっかは退屈だニャ。飼い猫でも外に出て遊ぶ権利があるニャ>
<だからって、俺の仕事にまでついて来ることはねーだろ>
<どうせ物件探しでフラフラしてるぐらいしかニャいんでしょ?なら迷惑にならないニャ>
<ネコマタに聞かれるんじゃなかったよ…俺が神浜に物件探しに行くって>
<そういや、ついて来てたナイチチ猫がいつの間にかいないニャ?>
<どうせクーラー効いた場所に行って、得意の愛想で人間に媚び売りながらくつろいでんだろ>
居場所が気になったのかスマホを取り出してGPSアプリを開く。
ケットシーとネコマタの首輪には発信機が備え付けられているようだ。
「あまり遠くには行っていないようだな」
<車のトランクにでも放り込んでやってた方が良かったかもしれないニャ>
<お前も含めてな>
<暑さで焼け死ぬから勘弁ニャ>
次の物件を当たってみて駄目なら神浜の古株である互助組織に相談する以外に道がなくなる。
そんな心配事を考えていた時、目の前でトラブルが起きたようだ。
<<泥棒ーーッ!!だ、だれかソイツを捕まえてくれぇ!!>>
叫び声が聞こえて顔を前に向ければ向こう側から原付きバイクが猛スピードで迫ってくる。
手にはバックが見える事もあり、引ったくり犯のようだ。
「チッ…」
尚紀の左側を抜け去ろうとした一瞬の出来事でカタがつく。
「アガッ!!?」
左回し蹴りが犯人の顔にクリーンヒットし、引ったくり犯はバイクごと転倒してしまう。
仰向けに倒れた相手の左手首を掴み、背面に寝転がらせながら肘関節を極める。
「ガァァァァァッッ!!!」
フシャーッ!!(これはオマケだニャ!!)
「ギャァァーーッ!!?」
ついでに引っ掻き傷だらけの顔にされた男は観念したのか大人しくなったようだ。
人だかりが出来た合間を抜け、バックの持ち主が息切れした顔つきでやってくる。
「あ、ありがとう君!その中には銀行に振り込む会社の金が入っていたんだ!」
転がったバックを拾い、中身を確認しながら安堵の表情を男は浮かべてくる。
暫くしてパトカーもやってきたこともあり、犯人は警官達に拘束される。
「バイクのナンバープレートは大東区…また東の仕業か」
「ウルセェ!西側だけ神浜のいい企業に就職出来るくせに!俺達東側はバレたら落とされる!」
東側に格差ばかりを押し付ける西側への意趣返しが込められた犯行だったようだ。
「加害者が被害者を気取るな、見苦しい!!入れ!!」
パトカーに押し込まれた犯人を乗せたまま警官達は去っていく。
「君のお陰で私も経理の妻に怒られずに済んだ。お礼がしたいのだが、時間はあるかい?」
「時間は…まぁ」
「良かった!付いてきてくれないか、案内しよう」
ケットシーと共に男の後をついていき、新西区にある男の家にまで案内される。
「時代錯誤な町並みの水名区と違って、新西区は割と緑が多い地域のようだな」
お礼の品をとってくると家の中に入っていった男が出てくる。
何か重たそうなお礼の品を両腕に抱えていたようだ。
「おい、それ…まさか?」
「うちで採れた今年の夏野菜だ!特別に大きいのが今年は採れたから君に譲るよ!」
「いや…こんな巨大野菜を貰っても…俺は料理が出来ないんだが…」
「カボチャはいいぞー!ビタミン豊富で日本食とも相性がいいし、焼いて豪快に喰うのも…」
「だから、俺は料理が出来ない…」
「今晩はカボチャのグラタンだな!私も食べたくなってきたなぁ…オレサマ、ハラペコ!」
テンションが高い男の口調がまるで獣悪魔のようになっていく。
「オトコタルモノ、野生ヲ見セロ!わいるどナ、ていすと、ダ!」
善意を無下にするわけにもいかず、結局は大きなカボチャを受け取ってしまったようだ。
「どうすんだ…コレ?」
ニャー(オイラ、カボチャのプリンが食べたいニャー)
困惑しながらもハロウィンで使われる橙色の巨大カボチャを持つ男はガックリするのであった。
♦
<それで?こんな大きなカボチャをどうする気なのよ?>
ぶらついていたネコマタと合流した尚紀は公園の椅子に座っている。
机に置かれた巨大カボチャを二匹の猫と共に見つめている。
<料理出来ないし、生ゴミとして捨てるしかないよな…コレ?>
<食い物を粗末にしちゃ駄目信条の尚紀だし、コレを機会に料理を覚えるニャー>
<めんどくせぇし、俺は忙しいんだよ>
<そうねぇ…尚紀でも作れる簡単レシピでもタブレット使って探しましょうか>
<俺に料理やらせる気なのか…>
<インスタントと外食で食事を賄うような尚紀にはいい経験ね>
悪魔同士で念話のやり取りをしていた時、別の悪魔が念話で絡んでくる。
<ヒホホーッッ!?オマエら…もしかして俺と同じ悪魔かホ!?>
突然の念話乱入者に驚きの表情となった男悪魔と猫悪魔が目の前のカボチャに視線を移す。
「こ…この声…まさかお前は!?」
尚紀の脳裏にはかつての世界に存在したマントラ軍との出会いの記憶が蘇ってくる。
「お前…マントラ軍の…あの牢獄看守野郎か!?」
<ヒホ?俺にはチンプンカンプンだホ?他人の味噌煮だホー>
「お前はかつての世界の事を覚えてないのか?どうやら…この世界のカボチャ悪魔のようだな」
<尚紀?このカボチャ悪魔の事を知ってるの?>
<ああ、こいつはかつての世界で世話になった…ジャックランタンだ>
【ジャックランタン】
ハロウィンのかぼちゃお化けとして知られる存在。
元々は英国のコーンウォール地方に見られたウィル・オ・ウィスプと呼ばれる鬼火である。
その性質は日本の人魂に近く、道行く人を脅かしたり道に迷わせたりするようだ。
<とんだハプニングだニャ。こんなところでオイラ達のお仲魔と出会えるなんて>
<でもコレ…完全に見た目がカボチャよ?本当に悪魔なわけ?>
<聞いて欲しいホ…やっと悪魔会話出来る奴と出会えて…俺、嬉しくて堪らないホ!>
<まぁ…聞くだけなら聞いてやる>
口も無いカボチャが淡々とした口調で自分の過去を念話で語り始める。
ジャックランタンの伝承上はこう語られている。
悪賢い遊び人が悪魔を騙し、死んでも地獄に落ちないという契約を取り付ける。
死後、生前の行いの悪さから天国へいくことを拒否されてしまう。
悪魔との契約もあり、地獄に行くことも出来なくなってカボチャに憑依したという。
安住の地を求めこの世を彷徨い続けている姿だともされていたようだ。
<俺…悪さばかりする遊び人だったホ!>
<そうだろうな。ボルテクス時代のお前も悪さばかりする奴だったよ…俺に対してな>
<悪魔と出会ってからかってやったら、恐ろしい契約を結ぶだなんて聞いてなかったホ!>
<徳がない人生を送ったようだな?>
<悪魔の契約にクーリングオフ制度はないものねぇ>
<もう少しであのオッサンのお腹にゴートゥーヘルだったニャー>
<トイレで違う姿に転生させられてたわね>
<想像したくねぇホ!!頼みが…頼みがあるホ!俺を成仏させて欲しいホ!!>
<生前のお前を呪った悪魔と同じ悪魔の俺に頼むな。魔法少女か退魔師にでも頼め>
<そこをナントカお願いしますホー!!俺と同じブラザー!!>
<自業自得…なのは、俺も同じか。お前も自分の行動が原因で悪魔の道に進んだ者だったな>
尚紀は立ち上がり、巨大カボチャを持ち上げながら歩き始める。
<俺は坊さんじゃない。魂を成仏させる方法なんざ分からないから…荒っぽくなるぞ>
<ヒーホー!嬉しいホ!感激の涙が止めどなーく溢れるホ!>
<オマエ目玉ついてないニャー>
<何処でこいつを成仏させる気なのよ…尚紀?>
<そうだなぁ…人気のない場所を探そう>
ひょんなことからカボチャ悪魔のジャックランタンと再び出会ってしまった尚紀。
成り行き上仕方なく、カボチャ魂の供養儀式をする羽目になるのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
日も沈み、時刻は夜。
人通りの少ない雑居ビル建設現場の空き地には巨大カボチャを抱えた尚紀と猫悪魔達がいる。
「丁度いい空っぽのドラム缶を見つけたし、人通りもない…始めるか」
<お手柔らかに頼むホー>
ドラム缶の蓋を開け、中にカボチャを放り込む。
<どうやってこいつを成仏させる気なのかニャー?>
<御焚上って知ってるか?古い縁起物や人形とかを神社で燃やすんだ>
<大切な人の遺品を供養し、天に返すための儀式ね。でも人の魂まで天に返せるかしら?>
<やってみるしかないだろ>
右手にドラム缶の蓋を持ち、左手には『マハラギの石』が握られている。
「あのオッサンも言ってたな。豪快に焼いて、ワイルドなテイストでいくぜ」
<ヒホホホホー!?なんか怖くなってきたホーーッッ!!?>
石を投げ込み、急いで蓋を閉める。
蓋の隙間から噴き出す程の豪快でワイルドな炎と叫び声。
<アギィィィーーーーーーッッ!!!!>
炎が静まったので蓋を開け、中を覗き込む。
「ん?まだ成仏しきれていないようだな?」
<ヒホ…ホ…俺…黒焦げ…カボチャ……>
「火力を上げるか」
石を二つ投げ込み、急いで蓋を閉める。
<アギラォォォーーーーッッ!!!!>
炎が静まったので蓋を開け、中を覗き込む。
「ん?火加減を間違ったかな?」
<ヒ…ホ…俺…消し炭…カボチャ……>
「さらに火力を上げるか」
石を三つ投げ込み、急いで蓋を閉める。
<アギダインンンーーッッ!!!!>
ニャー(…なんか、楽しそうだニャー尚紀)
ニャー(かつての世界で何か…あのカボチャ悪魔に恨みでもあったのかしら?)
静まり返ったドラム缶内部であるが、妙な異変を感じてしまう。
ニャ?(ん?何か…魔力を感じないかしら?ドラム缶の中から?)
ニャー?(ゲッ、オイラ達と同じ悪魔の魔力…ヤな予感だニャー)
蓋を内側からノックする音が響いてきたので蓋を開ける。
投げ込んだ石は炎の属性魔法の力が込められた魔法石。
相手が鬼火の悪魔であるのなら、鬼火の力をさらに高めてくれるだろう。
「あ、忘れてた。お前は炎を吸収する悪魔だったな」
ドラム缶から伸びたのはハロウィンパーティなどで被られる三角帽子。
目と鼻と口をくり抜いて顔を作った鬼火カボチャの悪魔姿まで這い出てきたようだ。
「ヒホ…俺…悪魔先祖返り…成仏出来ず…無念だホ」
「まぁ、俺がやってもこんなもんだ。悪魔になる道を選んだ者同士、諦めようぜ」
腕時計の時刻を見ると東京に帰らないといけない時刻を過ぎている。
「俺は東京モンだから向こうにも用事を抱えてる。お前ばかりの面倒は見てられないからな」
「待ってくれホ!!俺はこれからどうやって成仏の道を模索したらいいんだホ!?」
「自分で探せ」
「死の安らぎは等しく訪れるべきだホ!人に非ずとも悪魔に非ずともだホー!!」
「かつての世界でいちばん聞きたくないセリフを俺に言うな」
「せめて俺を仲魔にしてくれホ!!成仏の道を一緒に考えて欲しいホー!!」
「俺はまだ成仏の道を模索する気はねぇよ」
「そんなーーっ!!鬼!悪魔!!」
「そうだよ」
二匹の猫悪魔達と共に車を駐車してある場所に向かう後ろ姿に対し、ワンワン泣く声が響く。
「ビェェェーン!!これから俺…どうやって生きたらいいホーッッ!?」
くり抜いた穴の目から洪水の涙と共にカボチャの種まで撒き散らす。
哀れなジャックランタンの姿に対していたたまれないのか、後ろを振り返ってくれる。
「俺はこの世界で新たな生き方を見つけた。お前も自分なりの善行でも考えてみたらどうだ?」
「ヒホ?悪ガキだった俺が善行を積んだら何かあるのかホ?」
「もしかしたら、善行の積み重ねで天国への迎えの天使共が死の淵で現れるかもな」
建設現場を去っていったのは、この世界で新たな生き方を見つけた東京の守護者。
残されたのは青いマントをカボチャの下に纏い、三角帽と白手袋を身に着けカボチャ悪魔のみ。
夜の神浜の街を歩く尚紀に対してケットシーが声をかけてくる。
<誰か拾ってくれる奇特な人でも現れてくれたら、オイラ達みたいに救われるかもニャ>
<奴のように四六時中ハロウィンマントと三角帽子を被るような変人なら拾ってくれるかもな>
<いるのかしら?そんなハロウィン世界に陶酔したような中二病患者が?>
噂をすれば影が差す。
彼らが語っていた中二病患者なら、この神浜市にはいたのであった。
♦
同日の神浜市、栄区の夜。
「ハックシュ!誰かわたしの噂をしているの…やはり我の助けを呼ぶ声と考えていいだろう!」
黒いハロウィンマントと三角帽子を被るのは魔法少女と思われる季節外れな少女である。
「今宵も我の力を求めし魔法少女の元へと向かうとしよう!我が友ジャックデスサイズよ!」
左手に生み出した魔法武器は大鎌のような見た目だが、手から離すと浮遊し始める。
鎌の長い柄にお尻を乗せて座り込み、鎌と共に空に向かって飛翔していく。
武器であり乗り物としての運用も出来る妙な名前をつけられてしまった魔法武器であろう。
「我が名は正義の怪盗マジカルかりん!!魔獣共の命を刈り取り、命を盗む死神なり!!」
黙示録の四騎士であるペイルライダーにでもなったかのように振る舞う姿が痛々しい。
コミックのような非日常世界を現実にまで求める彼女の名前は御園かりん。
栄総合学園に通う中学2年生であり、アリナ・グレイの後輩に当たる人物であろう。
彼女は魔法少女であり、こうして他の魔法少女の救援に向かう毎日を送っているようだ。
この世界ではグリーフシードの奪い合いで命を落とす魔法少女はいない。
ならば彼女が固有魔法を使ってでもグリーフシードを盗む必要などはない。
数の力で攻めて来る魔獣を相手に1人で戦わねばならない状況になった魔法少女達のお助け人。
それが違う可能性宇宙で生きる御園かりんとは違う、この世界の御園かりんの生き方なのだ。
新西区において、今日も誰かが不幸にも大勢の魔獣に襲われている。
「ひぃ~っ!!ももこちゃんやレナちゃんと離れた後に現れるなんて聞いてないよ~!!」
魔獣結界世界をひたすら走り回って逃げ惑うのはかえでの姿。
後方からは複数体の魔獣が瞬間移動を繰り返しながら攻めてくる。
<ももこちゃん!レナちゃん!早くきて~!!>
念話を遠くの仲間に送り2人の魔力も近づいてきてくれているが、間に合うかは微妙だ。
「ああっ!!?」
逃げ惑っていたら地面に躓いてしまう。
倒れたまま後ろに首を向けるのだが、後ろは既に複数の魔獣達がレーザーを放つ構えである。
「い…いや…もうダメぇぇぇーーっ!!」
諦めかけた時、空から奇妙な怪盗の声が響き渡る。
<<キャンディーデススコール!!>>
空から何かがばら撒かれ、無数の飛弾となって魔獣共を次々と穿つ。
複数の魔獣は空からの奇襲攻撃を受けて消滅するだろう。
「えっ…?だ、誰なの!?」
空に浮いている人物に声をかけたら鎌を片手で握りながら空から急降下着地してくる。
「ふっふっふ!よくぞ聞いてくれた!我が名は怪盗かりん!」
――ハロウィンが生んだ、魔法少女だ!!
素っ頓狂な叫びを聞かされたかえでは思考が数秒止まってしまう。
どういう反応を返せばいいのか分からず、助けてくれたお礼を言おうとした時だった。
「「えっ…?」」
さらに増援として現れてきたのは複数の魔獣の群れ。
「そ…そんな!数が多過ぎるの!!」
「あの!さ、さっきの凄い魔法攻撃でもう一度一気に倒せないんですか!?」
「ダメなの…投げれるモノがないと魔力が込められないの!!」
先程魔力を込めて投げつけたモノとは石ころだったようだが、魔力を込めればあの威力。
だが後続の増援を考えていなかったため、残弾を使い果たしたようだ。
複数の魔獣達が整列射撃を仕掛けようと構えた時、救援が現れる。
「チャンス逃してたまるかぁーーッッ!!」
「売られた喧嘩は買うわよ!!」
横に隊列を組んだ魔獣の端から交差するようにして2人の人物が隊列を通り抜ける。
魔獣達は雑草を刈り取られるかの如く突進で放たれた斬撃によって瞬断されてしまう。
魔獣結界が消失していき、あれが最後の後続であったのだと魔法少女達は理解する。
「ももこちゃん!レナちゃん!!」
安心した表情を浮かべたかえでが仲間達の元まで駆け寄ってくる。
「たく!かえで、アンタは魔獣を引き寄せるフェロモンでも体から出してるわけ?」
「出してないもん!こんな禿げた男の人を沢山引き寄せるフェロモンなんかいらないし!」
「まぁまぁ…今回はバットタイミングだったんだし、しょうがないよ」
「バットタイミングのももこがそれを言うっての?」
「ははは、レナは手厳しいなぁ。それよりも…君は?」
ももこはバツが悪そうにしているかりんに向き直る。
「この子が私の危ないところに助っ人として現れてくれたから助かったんだよ」
「有難う、大事な仲間を助けてくれて。見ない魔法少女だけど、名前はなんて言うんだい?」
「わ、わたし…助けてなんていないの。カッコよく最後を飾ったのは貴女達だし…」
「力の強い弱いじゃない、アタシ達の仲間のために戦ってくれた事に感謝してるんだよ」
「どうせ最近契約したばかりで活動する他の区の子でしょ?レナも西じゃ初めて見る顔だし」
「本当にありがとうね!貴女がいなかったらきっと…私はダメだったと思うよぉ」
かりんの片手を両手で握ってくるかえでを見ていると困った表情を浮かべてしまう。
「わたし…他の魔法少女の救援として単独で出向いているの」
「フリーで活動している魔法少女ってことなの?」
「そうなの。でもわたしの力なんて…数の暴力には太刀打ち出来ないって分かったの…」
「魔獣は数で勝負を仕掛けてくるからなぁ。だから魔法少女達は皆チームを組んでるんだよ」
「チームを組む…その方がきっと魔獣との戦いでは効率がいいの。でも、わたしは…」
「チームを組むのは嫌なタイプ?」
「わたし…チームなんて組んだことないし…それにわたしは…」
彼女には何か事情があるようだが、それはももこ達が知る由も無い。
「だったら、アタシらのチームで学んでみない?」
「えっ…?」
「魔法少女同士組んで戦うやり方を学べば、君の力にもなれると思うんだ」
ももこの突然の提案に対して戸惑いを見せるマジカルかりん。
それに仲間達の反応も様々なようだ。
「はぁっ!?またいきなり何言い出すのよ…ももこってば~!!」
「私は賛成だよ~!この子は私を守ってくれる優しい子だもん!」
「かえでまで…またこの展開!?」
「アタシは十咎ももこ。こっちはレナで、こっちはかえで。君は?」
「御園かりん…なの」
「かりんちゃん!これからもよろしくね!友達になってくれたら嬉しいな~♪」
お互いの連絡先を交換し合った後にかりんは帰路につく。
空を飛行して栄区に帰りながら物思いに耽っていたようだ。
「わたしは…孤高の怪盗マジカルきりんに憧れて、マジカルかりんになったの」
憧れた変身ヒロインみたいになりたい。
そう思ってマジカルかりんを名乗ってしまったが、現実は厳しい。
独りで魔獣と戦い続けるのは命を縮めるような行為でしかなかったようだ。
「でも…チームを組んでもやっている事は正義の味方なの!」
正義に準じる生き方に繋がれば、チームを組んでも構わない。
「なに…この魔力?魔獣じゃない…魔法少女でもない…?」
不審な魔力を感じ取ってしまったかりんは自宅方面から方向を転換していく。
栄区にある雑居ビル建設現場に向けて飛行していくのだが、空の上から何かを見つける。
「ええっ!?うそ…あの素敵な姿は…ハロウィンが生んだ魔法少女が忘れるはずがないの!!」
子供の頃、ハロウィンの季節になると街のイベントでよく見かけた置物があるだろう。
ハロウィン衣装で飾った沢山のカボチャ飾りの光景を彼女は思い出す。
小さい頃のかりんは嬉しそうにカボチャの飾りを見つめながらこう言ってきた子供である。
「ヒホホー…俺、善行したら救われるホ?でも俺、悪戯ばかりしたし…何も思いつかな…」
建設現場の外で悩んでいた時、上空から素っ頓狂な叫び声が響く。
<<トリック・オア・トリート!!>>
「ヒホッ!!?」
空から高速で降り立ってきた魔法少女の姿に驚くカボチャ悪魔。
カボチャの奥で光る赤い鬼火も目が点になるように細まったようだ。
突然現れた謎の少女を見ながらジャックランタンは言いしれぬ不安を感じるのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「あー…えーっと、俺に何か用事があるのかホ?」
悪魔が見える少女に対し、尚紀が話していた魔法少女なのだろうとランタンは察してくれる。
「しゃ…喋ったの!!ジャック・オー・ランタンが喋ってくれたの~!!」
目を輝かせながら見つめてくる存在に対し、どう反応を返せばいいのか分からない悪魔である。
「信じられないの!子供の頃から夢見ていた…ハロウィンの精霊と出会えてしまったの~!!」
「いや…俺は精霊じゃなくて悪魔……」
猛ダッシュで詰め寄り、片手の白手袋に目掛けて強引な握手行為をしてくる。
「わたしはマジカルかりん!ハロウィンが生んだ魔法少女なの!!」
「いや…俺はあんたの名前なんて聞きたかったわけじゃないホ」
「ハロウィンの精霊さんが子供達を守るハロウィン戦士として…この世界に現れてくれたの!」
「俺はハロウィン戦士じゃないホ…」
話を聞かずに捲し立ててくる少女に溜息をつくが、彼女の口から語られた魔獣が気になる様子。
「魔獣って何だホ?俺を喰おうとしたあの恐ろしいオッサンに似た悪魔なのかホ?」
「そうなの!魔獣は怖い男の人で…子供達を野菜のように食べちゃうの!!」
「けしからんホ!でも…何で俺が子供を助ける話の流れになるんだホー?」
「子供を魔獣から救うのは正義の行いなの!」
「ヒホ?それって、善行ってやつなのかホ?」
「なのなの~!!子供達を救えば救うほど、ハロウィンが愛されて善行になっていくの~!」
「ヒホー…子供に悪戯するのは好きホ。でも魔獣から救うってのは…」
「お願いなの!!わたしと…わたしとコンビを組んで欲しいの!!」
「ヒホ?仲魔になれってことなのかホー?」
「そうなの!ハロウィンの魔法少女として…どうしてもハロウィンの精霊さんと組みたいの!」
善行になるという部分は魅力的だが、彼の生前はとびきりの悪戯小僧。
だからだろうか、ちょっとした悪戯心が芽生えてしまったようだ。
「よし、分かったホ。先ずは宝玉を要求するホ」
「えっ…?」
「えっ?じゃないホ。悪魔会話なら、俺の要求にも応えて欲しいホー」
「宝玉…グリーフキューブなの…?」
「そんな魔石は聞いた事もないホ。ないならしょうがないホ、魔力を吸わせるホ」
「魔力を吸うの!?」
返事を聞く間もなく、かりんの体から吸い上げられるのはソウルジェムの魔力であろう。
「あぁ~っ!?わ、わたしの魔力が吸われてるの!?穢れてきてるの!」
「こ、この味は!?お前、もう少し吸わせるホー!!」
「し、死なない程度にして欲しいの!!」
かりんの体からさらに吸い上げられるソウルジェムの魔力。
「グリーフキューブのおすそ分けを貰ってなかったら…やばかったの」
「この味わい!お前とは相性がいいのかもしれないホ。だから最後にお前の考えを聞きたいホ」
「わたしの考え…?」
「生きてるカボチャがあるホ。でもカボチャは呪われていて死にたがってるホ。どうするホ?」
何かの謎掛けかと考えていたが、真っ直ぐな目で見つめてくる。
「一緒に生きて…そのカボチャさんが助かる方法を考えるの!!」
彼女の切実な答えが返ってきた事もあり、色々と考え込むジャックランタン。
暫く沈黙した後、カボチャのギザギザ口から溜息が出たようだ。
「まぁ、こんなもんかホ。オーケー、俺が仲魔になってやるホー」
それが聞きたかったのか、ハロウィンが生んだ魔法少女は大はしゃぎしてしまう。
「やったのぉーっ!!わたしは御園かりん!よろしくね、ジャック・オー・ランタン君!」
「ジャックランタンでいいホ。今後ともヨロシクだホー」
「よろしくね、ランタン君!さっそくうちに来るの!見せたい漫画が沢山あるのーっ!!」
ひょんな事から一体の悪魔が魔法少女に拾われていく。
この先のジャックランタンには何が待ち受けているのであろうか?
「ふはははは!!我が名は怪盗マジカルかりん!我が来たからにはもう大丈夫だ!!」
「ふゆぅ~、季節外れだとハロウィン感はあまりないね、かりんちゃん」
「あんた達!遊んでないで手伝いなさいよ!」
「行くぞ!アタシ達のチームワークを見せてやる!!」
コソコソしながら隠れているジャックランタンは他の魔法少女に見つかる事に不安を感じる。
それだけでなく、魔獣から人間を守る正義の悪魔という立場には違和感しか感じない。
「あんな連中と一緒に戦っていく自信がないホ…特にかりんのノリはその…胃が持たないホ」
この先カボチャの悪魔がどんな悪魔人生を生きるのかは誰にも分からないのであった。
読んで頂き、有難うございます。