人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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86話 イルミナティとは?

時期は2019年の2月も終わりが近い頃にまで戻る。

 

ペンタグラムとの戦いで全ての魔力をほぼ使い切った尚紀は休息を必要としていた。

 

かつての世界で手に入れた回復道具であるソーマを使い、体力と魔力を回復させ傷を癒やす。

 

月が短い2月に入ってからの尚紀は調べ物が多くなっていく。

 

あのペンタグラム魔法少女の背後で暗躍していたサイファーと呼ばれる存在。

 

そしてイルミナティと呼ばれる秘密結社についての情報収集に躍起になっていたのだ。

 

「サイファーとは英語で暗号、文語では0の意味。HIPHOPでは皆で輪になる…繋がるのか?」

 

謎の存在が何を意味してその名をペンタグラムに伝えたのか調べても答えは出ない。

 

様々な書籍を買い漁り、自宅で独自調査を進めてきたが憶測だけが広がり確信には至らない。

 

「0、輪、魔法陣、ペンタグラム、イルミナティ。全てが輪として繋がっていく円環なのか?」

 

推測の域を出ることもなく、探偵事務所の机に片腕をつき右頬を乗せながら溜息をつく。

 

「あら?何か考え事でもしていたの?」

 

隣から歩いてくる瑠偉が両手に持つ珈琲のうち一つを彼の席に置く。

 

「瑠偉か?悪いな、淹れてもらって」

 

「何かの勉強の時は珈琲って決まってるでしょ?」

 

「ああ。絡まった思考がほぐれていく、スッキリした苦味だ」

 

珈琲を飲みながら、ふと彼女について知りたくなり質問する。

 

「なぁ、瑠偉って名前なんだが…どういう意味があって親に名付けられたか知ってるか?」

 

「まぁ♪尚紀が私に深い興味をもつだなんて、やっぱり私と男女関係になりたいんでしょ?」

 

茶化してくる態度は相変わらず。

 

溜息をついた彼はそっぽを向く態度となる。

 

「聞いた俺がアホだった…忘れてくれ」

 

「ウフ♪良いわ、教えてあげる。瑠偉は瑠璃からきていて、()()()()()()()()()()という意味よ」

 

「ラピスラズリ…あのライトブルーの石か?」

 

「パワーストーン信仰でも有名ね」

 

ラピスラズリは世界でパワーを最初に認識された石と言われ、最強の聖石と言われている。

 

地面の属性である第6チャクラ(額)と第7チャクラ(頭部)を活性化させると信じられていた。

 

「額と頭部…つまり、人間の脳みそに良いってわけか?」

 

「そうね、科学的根拠はないけど頭脳を明晰化させる、強運を導くという風に信仰されてるわ」

 

「ふ~ん。なら啓蒙を有難がる()()()()()達が喜ぶ石なんだろうなぁ」

 

「知識は社会でより良く生きる力となるの。貴方も社会人になって痛感していると思うけど?」

 

「そうだな…社会に出てからは知らない事だらけだと気が付かされて、今頃勉強だ」

 

「勉強を始めるのに遅いは無いわ。高齢者ですら大学に進学して卒業しているというのに」

 

「まぁ、知識の詰め込み過ぎで…最近は物思いに耽る時間が増えた気がする」

 

「あの日以来、貴方の雰囲気も暗くなった気がする。気分転換は大事だし飲みに行きましょう♪」

 

「お?飲み会の話題は聞き捨てならねーな、今夜もいっとくか?」

 

「所長の奢りでヨロシク~♪」

 

「オイオイ、お嬢様なんだし所長に集らずこういう時は割り勘…」

 

丈二が言い終わる前に尚紀が席を立つ。

 

「いや…いい。そんな気分にはなれないから先に帰る」

 

黒いスーツベストの後ろ姿を2人は見送る。

 

事務所のコートハンガーの黒いトレンチコートを取り、上着として着ながら事務所を出ていった。

 

「やっぱあいつ、あの日から性格変わった気がするなぁ」

 

「そうねぇ…独りで背負い込むタイプなのよ、彼」

 

事務所倉庫のガレージシャッターの横にある入口から尚紀が外に出てくる。

 

まだ寒い季節の冷たい風を感じ、トレンチコートの襟を立てながら帰っていく姿。

 

「より良く生きる力である啓蒙、知識主義か…」

 

知識と啓蒙という単語が浮かんだ彼の頭にの中にはイルミナティが浮かぶ。

 

「連中も知識と啓蒙を崇めるグノーシス主義。啓明結社だの光明会だのと呼ばれる連中だったな」

 

ラピスラズリの色を考えていると、瑠偉の片目のライトブルーが浮かんでくる。

 

「そういや日本は、エメラルドみたいな()()()()()と呼んでいたっけ」

 

石には力があり、錬金術とも深い関わりがある。

 

エメラルドは地獄や悪魔と関係のある宝石である。

 

古代エジプトの錬金術の文書エメラルド板の作成にも使われた。

 

また天使長ルシファーが被っていた美しい王冠に使われていたと言う。

 

また、ルシファーの額にあった第三の眼がエメラルドでできているとも言われていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

自宅があるタワーマンションの入り口に入る頃、ふと何かを思い出す。

 

「そういや郵便受けを最近見ていないな。考え事しながら仕事に行くと物忘ればかり生まれる」

 

ステンレス製の郵便受けに手を伸ばして自分のポストを開ける。

 

「おいおい?なんだ…この海外からの手紙の数?」

 

ドッサリ入っていた手紙を取り出し、自分の部屋に抱え込みながら移動していった。

 

「おかえりだニャー…って、なんニャ?その山盛りの手紙?」

 

「さぁな?それを軽く晩飯済ませたら確認してみる」

 

「私達のご飯の用意も忘れないでね」

 

部屋の中央の勉強机に手紙の束を置き、服を着替えていく。

 

冷蔵庫の中身で軽く晩飯を済ませた後、机の前に座った。

 

「随分と古風な手紙ね。17世紀の欧州で貴族に愛されたシーリングスタンプで封蝋をしてるわ」

 

「なんニャ?封蝋って?」

 

「貴族は家系を表すシンボルマークにしていたの。本人である証明として使っていたみたいね」

 

「それにしても…なんだか凄い紋章デザインの刻印ばかりだニャ?雰囲気からして凄いニャ」

 

「開け辛いだけだ」

 

手紙の封を開けていき、中身を確認していく。

 

「これ全部外国語で書かれてるニャ…。こんなの尚紀読めるわけないニャ」

 

黙って読み続けていたが、不思議そうな表情を浮かべながら彼は口を開く。

 

「…いや、そうでもない」

 

「えっ…どういう事なわけ?」

 

「分からない…だが読める。何故だ?これは俺の知識じゃ説明がつかない」

 

「悪魔の力なの…?」

 

何かを思い出した表情を浮かべながらネコマタが言葉を発する。

 

「そういえば、死んだママから聞いたことがあるニャ」

 

「何を聞いたのかしらケットシー?」

 

「自分達は違ったけど、本来の悪魔は()()()()()()()()恐ろしさを持っているニャ」

 

「そうね…私達の先祖の中にはそういう恐ろしい連中も多かったそうよ」

 

「喰らった人間の魂から得られた力を、()()()()()()()()()って聞いたんだニャ…」

 

ケットシーが母親悪魔から聞いた話が本当だとすれば、尚紀が何を行ったのかを想像してしまう。

 

「尚紀…貴方まさか?」

 

ネコマタから疑問の視線を投げかけられるが、彼は黙秘を続けたようだ。

 

全ての手紙に目を通し終えた彼は後ろに両手をつき、天井を見上げる姿勢になる。

 

「内容はなんだったの?」

 

「…くだらない社交界のご招待だ。悪魔の俺をヨーロッパ大貴族連中が祝福したいんだとさ」

 

「え”っ…?な、何で貴方を祝福したいだなんて言い出すのよ?会ったことないでしょ?」

 

「…向こうは俺を知っているようだ。あの1・28事件の時に…俺の姿は全世界に報道された」

 

「ど…どんな大貴族からご招待を受けたんだニャ?」

 

彼は手紙に書かれていた大貴族の名を語っていく。

 

スフォルツァ家、サボイ家、フィッツジェームス家、トロルニア家、アルドブランディーニ家。

 

マッシモ家、パルバシーニ家、ドリア家、ファルネーゼ家、ブルボン家、ロスチャイルド家。

 

他にも沢山あるが割愛する程の数の招待状が届いていたようだ。

 

「な…なんか凄い名家っぽい名前がどんどん出てくるニャ」

 

「それだけじゃない。世界3大権威である天皇家、ローマ法王、英国王室からも招待状が来てた」

 

「どえらいビックスターになっちまったんだニャー…尚紀?」

 

「変な話ね…何で悪魔の尚紀が正体を現しただけで、世界を導く存在達から注目されるの?」

 

「共通して書かれてるのは…俺を混沌王だの啓蒙の現人神だの最高神エンキだのとほざく内容だ」

 

「エンキ…?尚紀は前の世界じゃ人修羅って通り名の悪魔じゃなかったのかニャ?」

 

「一角獣の神エンキか…。確かに俺は()()()()()()かもしれないな」

 

首の裏を右手で擦る。

 

今は生やしていないが、悪魔の姿に戻った時には必ずある感触を思い出してしまう。

 

「少し…エンキとかいう神について調べさせてくれ」

 

PC椅子に座り、検索し始める。

 

「エンキ…古代シュメールの最高神であり、同じ最高神であるエンリルと並ぶ存在か」

 

【エンキ】

 

地の王と呼ばれ、バビロニア神話では都市エリドゥの守護神『エア』としても知られる神。

 

エンキは世界の創造者であり、知識および魔法を司る神と言われる。

 

地下の淡水の海であるアプスー(ギリシャ語ではアビス※深淵、奈落)の主とされた。

 

アッカド人による称号は水の家の主と呼ばれる。

 

また、人類に文明生活をもたらすメーと呼ばれる聖なる力の守護者と呼ばれる存在。

 

後期バビロニアの文書『エヌマ・エリシュ』にも神々の父アプスーとエンキが描かれていた。

 

「深淵…奈落…水…」

 

彼の脳裏に浮かぶのは、辿り着いてしまった原初の海である混沌の羊水世界が浮かび上がる。

 

「アプスーの孫がエンキ…エンキは人間に魔法と知識を授ける啓蒙の神…」

 

――ルシファー…なのか?

 

「ルシファーがアプスーの孫なら、アプスーから生まれた最初の息子って?」

 

「ルシファーの父は、大いなる神だ。ならばアプスーとは…大いなる意思?」

 

「つまり…尚紀は世界権威や大貴族達からルシファーと同一視されているってこと?」

 

「冗談じゃねぇ、悪いジョークだ。それにルシファーは二本角の悪魔だ」

 

「だからより一角獣に近い貴方がエンキとして持ち上げられているのかも…?」

 

「…笑えねぇな」

 

「エンキって神様がどうしてそんなに世界中の偉い人らから尊ばれてるニャ?」

 

「今調べる…」

 

手紙が送られてきた大貴族達とエンキに関連する項目を調べていく。

 

封蝋の紋章が頭に浮かんだ彼はそれを頼りに検索していった。

 

「何か分かった?」

 

「エンキを模した一角獣やエンリルを模した獅子は、世界の王族や貴族の紋章として使ってるな」

 

向かい合う獅子と一角獣の紋章は世界の権威から愛されてきた存在。

 

日本の天皇家や英国王室の紋章、ロスチャイルド家等も使用してきた。

 

「それに鷹の紋章も人気よね。ローマを象徴する鳥ですもの、ローマ帝国の名残だと思うわ」

 

「つまりはこの招待状は…尚紀へのゴマすりなのかニャ?」

 

「イギリス王室紋章の下にはフランス語でこう書かれている」

 

――神と我が権利。

 

「…私の権利の行使は、神が行使するのと同じっていう意味だと思うわ」

 

「ようは神の権威を振りかざしたい欲望の現れだろうな」

 

「なら自分達が崇拝する神がこの世に現れたなら、対等な関係を築きたくもなるわね」

 

「皇帝や王権ほど神の権威を振りかざす。恐れ多い存在であり不可侵だと示して皆を従わせる」

 

「なんか急に人間臭い浅ましさを感じるようになってきたニャ」

 

「くだらない…どれもパスだ。知らない奴らに神様扱いされるなんざ、ケツがむず痒くなる」

 

「でもどうして尚紀が住んでる住所までバレたのかしらね?」

 

「……監視されているのかもな」

 

「ぶ、物騒だニャ…オイラ怖くなってきたニャ」

 

「危害を加えてくるなら探し出してぶちのめす。ゴマすりぐらいは無視していればいい」

 

PCを消し、風呂と歯磨きを済ませて部屋を暗くする。

 

ベットの中で目を瞑っていたが、エンリルとエンキの事が気になって中々寝付けない。

 

「エンキはユニコーンや、神社の吽像のような一角獣だけじゃない。()()()()()()()()()()だ」

 

変わらないのは、エンキの横で獅子として描かれたシュメール最高神エンリル。

 

「エンリルとエンキの戦い…旧約聖書のルーツの神話なのか?ヘブライ天使は()()()()()()()?」

 

強引に目を瞑って眠ろうとしていたが、最後に全ての手紙に共通して書かれていた文が頭を過る。

 

「無(完全)へのハシゴの道はきたれり…7つの星が降り立つ時、我らの願いは成就される…」

 

――二匹の蛇に祝福を、三日月と太陽に祝福を、混沌に祝福を。

 

――我ら神の光に照らされし、啓蒙の民なり。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

季節は3月を迎え、給料を振り込まれた尚紀は給料分の金を銀行で下ろして買い物に向かう。

 

両手一杯に持たれたスーパー袋を携えて向かった先は、中央区北側である台東区の上野公園。

 

ここはホームレスが大勢暮らす場所であり、彼が東京に帰ってきてホームレス生活を送った場所。

 

公園の入口に入った彼を見つけた古巣の住人の1人が声をかけてきた。

 

「いつもすまないね…残された我々のために巣立った君が毎月支援してくれるだなんて…」

 

「気にしないでくれ米さん。無趣味な俺は小遣いが余って仕方ないんだ」

 

「遊びたい盛りの若者なのに…本当に優しい子だよ。ここのボスも君に会いたがってるよ」

 

ホームレス社会では見つけた場所に勝手にテントを張るのはご法度である。

 

そこを仕切るボスに許可を得るという慣習があった。

 

公園の中を歩いていくと、ここを仕切る男が声を掛けてくる。

 

「お?尚紀じゃないか!今月も悪いな…」

 

怖そうなボスだが、同じ辛さを背負う仲間を見捨てない義理人情家として知られる人物。

 

ホームレス達は彼を慕っており、ボスと呼んでいるようだ。

 

「藤堂さん、久しぶりだな。あんたの好きな酒とツマミもあるぜ」

 

「流石このホームレス上野公園のメシアだ!お前には助けられっぱなしだな…」

 

「気にするな。あんただって、ここに流れ着いた俺を助けてくれただろ?」

 

「それはそうだが…周りからボスと言われる俺なんか大した支援も出来ない恥ずかしい存在だよ」

 

「そんな事はない。ホームレスとしての生き方を教えてくれた恩を、俺は一生忘れることはない」

 

「尚紀……」

 

「借りは返す…そうだろ?」

 

「そうか…へへ!湿っぽいのは酒の席ではやめとこうぜ!オーイ!尚紀の差し入れだー!!」

 

持ってきたスーパー袋の中身は飲料や酒、それに食料品や医薬品といった品々ばかり。

 

ホームレス経験のある尚紀には、彼らが何を必要としているのか分かっている。

 

ボスが周りに声を掛けていき、古巣の住人達が大勢集まってきたようだ。

 

ちょっとした宴会のようになり、彼も安酒のビールをボスの横で飲んでいた。

 

「今年も寒い季節だ。この公園も何人残っているんだ?」

 

「入れ替わりで減っては増えの繰り返しだ。地域生活移行支援事業が始まったのが救いだな」

 

「ここに残ってるのは古株ばかりか。新しいテントを張るのも…今は行政の目があるからなぁ」

 

「そういう連中よりも今日を寝る場所を探す…かつてのお前のような奴らが流れてくるんだ」

 

「…あいつのような連中か?」

 

尚紀の視線の先には、擦り切れたビジネススーツを着た初老前の男性がいる。

 

「ああ、あいつも最近流れてきたんだ。だけどな…変な事を言う奴なんだよ」

 

「どういう風に?」

 

「あいつなぁ…悪魔と関わるのが嫌になって落ちぶれ果てたんだってさ」

 

悪魔と関わった存在だと聞かされた尚紀の表情が変わる。

 

「…少し席を外す」

 

立ち上がり、周りから離れた場所で渡された酒を少しずつ飲んでいる男に近づいた。

 

「ちょっといいか、あんた」

 

「えっ…?わ、私に何か…?」

 

「聞きたいことがあるんだ」

 

隣に座り、彼の分として蓋が開いていない安酒を渡す。

 

親切にしてくれる彼に少しだけ心が開いたのか、かつての自分を語ってくれたようだ。

 

「私は国際金融会社を創設し、平民から富裕層に成り上がったんだ」

 

「どれぐらいの規模の金融屋だったんだ?」

 

「日本だけでなく欧米経済界にも名を知られるまでに成長した程だったよ…」

 

「へぇ、それは立派なもんだな」

 

「立派なものか。幼い頃に虐待を繰り返され…喜怒哀楽が欠如していたから金融に進めた男さ」

 

金融界とは血も涙もない弱肉強食の世界だと彼は語る。

 

社会的弱者を食い物にしても良心が痛まないからこそ、彼はこの道を進む事が出来たという。

 

「金融は情を捨てなければならない地獄。それでも成功出来た私に…声をかけてきた連中がいた」

 

「声をかけてきた連中だと…?」

 

世界の富のほとんどを牛耳っている富裕層は8000人~8500人。

 

男もそのうちの1人になれたために関わる羽目になったのだと教えてくれた。

 

「奴らは…有り余る資本で政治家から諜報機関、経済界、マフィアに至るまで支配出来る…」

 

男の体が震えだす。

 

何かおぞましい記憶を掘り出す事に耐えられない緊張感を感じさせる。

 

「資本主義構造世界だからこそ可能な投資の糸…()()()()()()()だ」

 

「その連中が…お前が言っている悪魔なのか?」

 

儲かるとわかれば平気でテロリストにも金を貸すし武器も渡す悪魔。

 

意図的にカオスを撒き散らし、企業がダメージを受け社長が自殺すればゲラゲラと笑う悪魔。

 

「あの国際金融資本家共は……()()()()()なんだ!!」

 

恐怖心に耐えられなくなり、興奮しながらまくし立ててくる。

 

麻薬から武器弾薬、臓器売買、マネーロンダリング…あらゆる儲け話を裏から支配する存在。

 

違法だが世界を代表する8500人を法律で裁く事は不可能。

 

「法とは奴らのために生み出される…資本主義がそうさせる……あぁ恐ろしい!!」

 

「おいっ!!」

 

ガチガチ震えだした男にミネラルウォーターを持ってきて飲ませて落ち着かせる。

 

冷静さを取り戻そうが、唇が震えながらも出会ってしまった国際金融資本家を語ってくれる。

 

「私は…出会ってしまった…奴らに…()()()()()()()共に…」

 

「ルシフェリアンだと…?」

 

「ルシファーを神と崇める…悪魔崇拝者という…人の心無き悪魔共ッッ!!」

 

――ユダヤの皮を被った()()()()……カナン族の末裔共にッッ!!!

 

……………。

 

上野公園を出ていく尚紀の姿。

 

彼は語ってくれた内容のところどころを呟きながら歩く。

 

「ルシファーやバアル神に捧げる儀式…血の中傷…リチュアル・マーダー(儀式殺人)か…」

 

震えながらも語ってくれた内容を歩きながら思い出す。

 

拉致されてきた子供達を凄惨な虐待をして生贄にする儀式、リチュアル・マーダーのこと。

 

男もやれと脅されたが、自分の子供時代の虐待の記憶が蘇り拒否して逃げたこと。

 

この時の儀式の様子などはビデオに撮られ共犯者扱いで歯向かえないこと等だ。

 

男が築き上げた栄華の人生が終わりを告げた恐ろしい過去の内容を尚紀は知る事が出来た。

 

「その後は仕事にも就けなくなり…精神も病んでしまい…トップの富裕層からの転落か」

 

金融業界、イルミナティ、悪魔教団、一つ一つが線で繋がっていく感触を彼は感じている。

 

「世界を金融支配する国境なきグローバル・エリートと言う名の悪魔崇拝者連中…」

 

こういうのに詳しいと言えば、尚紀が知る限りではニコラスしか思いつかない。

 

今日の日付を思い出し、土曜日ならBARマダムにいるだろう事は判っている。

 

家に帰り、フォーマルスーツに着替え終えた彼はタクシーを拾い銀座に向かった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

日付もそろそろ変わりそうな時間。

 

やってきた尚紀は豪華な扉を開けて中に入店する。

 

相変わらず店内は非日常を味わえる上流階級の社交場空間が広がっているようだ。

 

しかし、そこで楽しんでいた日本を代表する富裕層達の光景に異変が生じた。

 

「…何だよ?」

 

店内に入っていた客が全員尚紀の方に視線を向け、談笑光景が止まってしまう。

 

「……神だ」

 

富裕層の身なりをした男の呟きを合図に、大勢の客達が彼の元に集まってきた。

 

「おいっ!?」

 

政財界の大物達が彼の前で平伏し、仰ぎ見ながら神を賛美する光景が広がってしまう。

 

まるでカルト宗教団体のようにも見えるかもしれない。

 

「啓蒙の神よ!自由と平等のメシアよ!我らに神の光をお与え下さい!!」

 

「我ら皆、貴方様が支配すべき民であり信者!決してメシア様を裏切りません!!」

 

「イルミナティに祝福を!神の信徒達に祝福をーッ!!」

 

皆が尚紀にハンドサインを向けていく。

 

悪魔崇拝と関係していると言われるコルナサインやメロイックサインを形作り信仰心を示す者達。

 

おぞましい光景を前にした尚紀も背筋が寒くなっていく。

 

「ナオキ君!!」

 

知っている声の方に振り向く。

 

ゲストルームの扉前に立っていたのはニコラスとニュクスだ。

 

身勝手に崇拝してくる者達の横を通り過ぎようとした時、カルト連中の顔に違和感を感じた。

 

(なんだ…?よく見れば医療用眼帯をしている奴が多いな?)

 

()()()()()()()()()のような跡を眼帯で隠している人物達がチラホラ見えたようだ。

 

ニコラスとニュクスに促されながらゲストルームに入っていく。

 

席に座った彼に向け、店主として申し訳ない表情をニュクスは浮かべるのだ。

 

「ごめんなさい尚紀…貴方を不快にさせてしまったわ」

 

「あいつらは…何なんだ?」

 

「彼らは政財界の大物達であり、()()()()()()()している世界規模の団体に属している者達よ」

 

「メイソンメンバー達だ。イルミナティが世界を管理支配するために使っている末端連中さ」

 

「やはり詳しいな、ニコラス?教えてくれ、フリーメイソンとイルミナティについて」

 

溜息をつき、長い話になるからとニュクスに酒を注文する。

 

「フリーメイソンとイルミナティは、切っても切れない()()()()の秘密結社だ」

 

フリーメイソンという秘密結社をヒエラルキーで語れば頂点部位こそがイルミナティ。

 

グランドロッジ支配者たるグランドマスター地位に昇り、初めて開かれる領域だと語られる。

 

「友愛団体のフリーメイソンと政治屋であるイルミナティとの間に繋がりがあるとは考え難いな」

 

「確かにフリーメイソン理念とイルミナティ理念は似て非なるものだ」

 

メイソンは宗教を尊ぶが、イルミナティは知識主義故に宗教を蔑視する。

 

「それでも従ってしまうのは…この世が資本主義だからさ」

 

「フリーメイソンはユダヤの団体なのよ」

 

その歴史、段階組織、公式任命、暗号、そして解釈は始まりから終わりまでユダヤに基づく。

 

そのように語った存在が19世紀の米国を代表する改革派ラビの中にいたとニュクスは語る。

 

「イルミナティにトップリーダーはいるのか?」

 

「最高指導者はいない。1つの思想を目指し、理想を追求する同志故に各国で代表者が生まれる」

 

「まるでユニオン(組合)だな」

 

「あながち間違いではない」

 

「あんたはヨーロッパ歴史の生き証人だ。イルミナティがいつ頃現れたか、分かるだろうか?」

 

「イルミナティを語る上では、()()()()()()()という秘教を語らねばなるまい」

 

【グノーシス主義】

 

1世紀に生まれ、3世紀から4世紀にかけて地中海世界で勢力を持った宗教・思想。

 

キリスト教から派生し、異端宗教として扱われる。

 

物質と霊の二元論を唱え、自己の本質と真の神についての認識に到達することを求める思想だ。

 

代表的なグノーシス宗教としてマニ教、カタリ派、ボゴミール派が存在する。

 

グノーシス主義には反宇宙的二元論が提唱されているという。

 

否定的な秩序が存在する世界を認めないという思想、あるいは実存の立場をとっていた。

 

そのためか、我々が生きているこの世界を悪の宇宙、あるいは狂った世界だと考えている。

 

原初には真の至高神が創造した善の宇宙があったと捉える思想がグノーシス主義なのだ。

 

グノーシスの神話では、原初の世界は至高神の創造した充溢(プレーローマ)として語る。

 

至高神の神性(アイオーン)の一つであるソフィア(知恵)は、神を生み出す。

 

その神名は『ヤルダバオート』あるいは『デミウルゴス』と呼ばれる…唯一を望む狂った神。

 

ヤルダバオートは自らの出自を忘却しており、自らのほかに神はないという認識を有している。

 

ヤルダバオートの作り出した世界こそが、我々の生きているこの世界であると唱えられていた。

 

「アプスー…ソフィア…そしてヤルダバオート…あるいはデミウルゴスの名を持つ狂った神…」

 

「グノーシス派は、大いなる神こそ真のサタンだと考えるのよ」

 

「ルシファーこそが真の神であり人類の父親たる啓蒙の神であると信じているようだ」

 

「政治的組織団体として結成されたのはいつ頃何だ?」

 

「1776年にバイエルン選帝侯領のインゴルシュタットで創設された説が代表的だな」

 

大学教授だった()()()()()()()()()()()()と学生のサークルがイルミナティの始まりという説。

 

彼らは政治的イデオロギーに支配され、秘密結社を生み出したと言われる。

 

「アダム・ヴァイスハウプト…?そいつらはどうなっていったんだ?」

 

「彼はフリーメイソン幹部でもあったが弾圧を受け…イルミナティは解散に追い込まれた」

 

「散り散りになったイルミナティは、アダムの力によってフリーメイソンに招き入れられたのよ」

 

「アダムはその後、我が祖国のフランス革命の際にジャコバン党と共に革命を指揮した」

 

「その後のロシア革命へと続く、イルミナティの闇の歴史が始まっていった時代だったわね…」

 

「イルミナティの教義は共産党に受け継がれたって聞いたことがあるな…」

 

「彼らのやり口は()()()()()()()()()()()事だ。その光景はソ連型社会主義の歴史が語ってきた」

 

「暴力革命…恐怖政治…全ては大いなる神の支配が及ばない理想郷を産むためにか?」

 

「ある意味、狂った唯一神が産んだ()()()()()()だったのだ。グノーシス主義の思想で言えばね」

 

「何故そんなに詳しいんだ?」

 

ニコラスは大きく溜息をつき、思い出したくもない過去を語っていく。

 

「私も誘われたからだ…フリーメイソン内部にいるイルミナティメンバーからな」

 

「まさか…ニコラス?」

 

「私はその話を断った。奴らは私の知識が欲しかったようだが、私はグノーシス主義派ではない」

 

「イルミナティの目的は何だと思う?あの1・28事件にも奴らが噛んでやがった」

 

「地球という大自然を守るために…我々ゴイム(非ユダヤ)を間引く…()()()()()()さ」

 

「人口削減計画だと…?」

 

「君は米国ジョージア州()()()()()()()を知っているかね?」

 

1980年に突然現れたこの石碑は、未だに誰が何の目的で建てたのかわかっていない。

 

だが、そこに刻まれた10のガイドラインは明らかに増え過ぎた人類への敵意に満ちていた。

 

「いったい…どれぐらいの人間を殺すつもりだ?」

 

気分を悪くしたように眉間にシワを寄せながらも、その数を語ってくれた。

 

「……()()()()()にするまでだ」

 

あまりにも現実感を感じさせない内容を聞かされた尚紀。

 

驚愕した顔つきで立ち上がり、激昂したまま口を開く。

 

「馬鹿な!?地球人口は2019年で77億人なんだぞ!?72億人も殺すつもりかよ!!」

 

「彼らはそれが必要だと決めている。そのためなら戦争だって起こすだろう」

 

――光と闇の最終戦争…ハルマゲドンでさえも利用するだろう。

 

「ふざけるな!!俺達の戦争が起これば…もはや全ての人類が死滅してもおかしくない!!」

 

「生き残るための準備と地球再生の準備はしてきているだろう。むざむざ自滅の道を歩むものか」

 

「ルシファーとイルミナティが選んだ…5億人の選民しか生きられないのか?」

 

「もっとも…ルシファーだけが人類を間引きたいと考えているとは限らない」

 

「え…?」

 

「人類は…あまりにも悪魔に支配され、堕落し過ぎた。もはや大いなる神も許すまい」

 

「ま…まさか……?」

 

――この地球は天使達に()()()()()()()()()されるかもな。

 

拳が握り込まれ、震えていく。

 

かつてのボルテクス界において、人修羅として生きた嘉嶋尚紀は最終戦争を望んだ筈。

 

そのために全てのコトワリ神を滅ぼし、無限光を破壊する結果を残した悪魔。

 

それなのに、流れ着いた世界で迷いが生まれてしまっている。

 

「ナオキ君…この世界に現れた悪魔よ。君はハルマゲドンを望むかね?」

 

「俺は……」

 

――望むなら、君が守りたい人間達はみんな…滅びるのみだ。

 




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