人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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8話 穏やかな日々

季節は10月となり、紅葉が森に茂り美しい秋の季節を感じさせてくれる季節となるだろう。

 

その頃の風華は暫く教会に来るのが遅くなるという。

 

「あいつも中学3年生だし、受験に追われてるよな…中学時代の俺も頑張ったもんだ」

 

「ふう姉ちゃんはね、神学部のある大学の付属高校に進学を希望してるんだよ」

 

「そうなのか、杏子?」

 

「将来は牧師になる人だからねー。教会のあたしよりも牧師の娘みたいだよね」

 

「ねぇ~かくれんぼしてあそぼうよ~」

 

「分かった分かった。それじゃ、俺が探すからお前ら隠れてこい」

 

「「は~い」」

 

彼は彼女がいない間の時間を使ってモモと杏子の面倒を見ている。

 

「俺は一人息子だったしな…あんな妹達がいてくれたらどんな人生を生きてたんだろ…」

 

「おーい、尚紀君。杏子やモモは隠れんぼに行ったのかい?」

 

布教活動から教会に帰ってきて佐倉牧師が声をかけてくる。

 

紙袋を持っているのを隠れた場所で見つけた子供達は隠れんぼを中断して戻ってきたようだ。

 

「父さん、その袋は何?」

 

杏子は興味津々で佐倉牧師の袋の中身を気にしてくる。

 

「信者になってくれた人からおすそ分けを貰えたんだ。サツマイモが沢山入っている」

 

「「サツマイモ!?」」

 

それを聞いた子供達は喜んではしゃいでくる。

 

「秋の味覚のサツマイモだし、それを美味しく食べる方法は一つだろうな」

 

「焼き芋にしようと思うが…落ち葉が必要だな。庭に沢山落ちているし、集めてくれるかい?」

 

「「やったー!!」」

 

杏子とモモは手を取り合って喜びを露わにしてくる。

 

「二人は仲良しだな」

 

そんな娘達の喜びように佐倉牧師も嬉しそうだ。

 

「俺が落ち葉を集めよう」

 

いつの間にかホウキを持ってきていた彼が落ち葉掃除を始めていく。

 

「あたしも、あたしも!おそうじする!」

 

子供も張り切って手伝いをしてくれる。

 

家族揃って教会周りの落ち葉を集める作業に取り掛かっていくだろう。

 

「集めた落ち葉も山のように積み重なったな」

 

「これだけあれば十分だろう」

 

教会の敷地で火の跡が残らないよう自宅の裏で作ることになる。

 

佐倉牧師はマッチを使って落ち葉に火を点けていく。

 

「うわ~よく燃えるね。これにお芋を入れたらいいの?」

 

「火が落ち着いた熾火の状態にしてから入れるんだよ」

 

「う~、お腹空いてきちゃったな~あたし」

 

勢いよく燃え上がる落ち葉も時間が立つ頃には熾火の状態になっていく。

 

杏子はサツマイモを洗ってアルミホイルで二重に包んで持ってくる。

 

「もう少しだけ待とうか」

 

「できあがるのがたのしみだね~」

 

30分ぐらい待ち、出来上がった焼き芋に竹串を刺してみる。

 

「中までしっかり火が通っているな。そろそろ食べ頃だ」

 

「待ってましたーっ!」

 

「さぁ、召し上がれ。モモの分は私がアルミホイルを剥いてあげよう」

 

佐倉牧師が杏子とモモに焼き芋を渡す。

 

「「いただきまーす♪」」

 

杏子とモモは美味しそうに焼き芋を食べていく。

 

ホクホクで柔らかく、甘みもあって秋のお菓子としては十分だろう。

 

「二人とも、神様に感謝していただくんだよ」

 

幸せそうな娘達を見つめる佐倉牧師も満足そうだ。

 

彼も佐倉牧師から焼き芋を受け取り、アルミホイルを剥がして齧りつく。

 

「優しくて甘い味だな…穏やかな秋の季節を感じさせてくれる…」

 

ボルテクス界という地獄を生きた尚紀の無表情な顔つきにも穏やかな笑みが生まれていく。

 

「あっ!ここにいたんですか、皆さん?」

 

訪れていた風華は自分達を探してくれていたようだ。

 

「ふう姉ちゃんも食べようよ!」

 

杏子は焼き芋が包まれたアルミホイルを風華に渡す。

 

風華も杏子達の好意に甘えてアルミホイルを剥がし、焼き芋を食べる。

 

「あ、美味しいです♪」

 

(皆でこんな優しい日常を生きられたらどれだけ幸せだったか…いや、考えても仕方ないか)

 

尚紀の心も少しずつだが人間だった頃に帰れていくような気がしているのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

秋の紅葉とした教会に続く森からそう離れていない場所には大きく開けた野原がある。

 

緑生い茂り花も咲いているこの場所は杏子やモモもよく遊びに訪れる場所。

 

その野原には尚紀と風華がいるようだ。

 

「それじゃ、風の魔法の応用とやらを教えてくれ」

 

「いいですか、風の魔法はただ闇雲に力を巻き上げるだけのものではありません」

 

「俺も風の魔法なら色々見てきたが、お前のように使っている奴らは…あまり見かけなかった」

 

悪魔の風魔法とは直接叩きつけるような類の荒々しい魔法であり、体に纏うような類ではない。

 

「風には空気の流れがあるんです。空気は温めると軽くなり上に上がる力になります」

 

対流から風が発生するというのが自然の仕組みを伝えられるが彼は上手くイメージ出来ない。

 

「小難しい理屈はあまり聞きたくないんだがな…学生時代の成績はよくなかった方だし…」

 

「しょうがない人ですね…私の魔法の応用とは、風向きと風速のコントロールなんです」

 

「風をあらゆる方位から吹かせて風速さえ操るって事か?それであんな芸当が出来るのか?」

 

「風速によって風力を得た人間の力を見ててくださいね」

 

彼女は両手を広げた後、風が吹いてくる。

 

彼女の体がまるで熱気球のように浮かんでいく。

 

水平にした両手が翼のような揚力を持たせたかのように、その風に乗って空を滑空してくる。

 

「凄いな…まるでムササビか…ウイングスーツを纏った人間だぞ」

 

風を使う悪魔も大概は翼を持った悪魔ばかりであり、彼らも鳥の如く舞う戦いをしている。

 

風魔法を理解しなければぶつけるだけのかまいたち道具にしかならないのは悪魔も同じなのだ。

 

飛行していった彼女が遠くから手を振っている光景を見つめる中、彼女は突然走ってくる。

 

「…早い!時速80キロは出てそうな速度でこっちに来やがった…」

 

一気に彼の元まで駆け抜けて戻ってきた彼女は笑顔で説明してくれる。

 

「大気の空気抵抗が加速を減速させるんですが、私は風を纏って酸素を操れるんです」

 

酸素を得ると同時に周りの大気を薄くして風の抵抗を抑えて走れるという。

 

これによって空気抵抗を超えるエネルギーを減らせるのだと説明されたようだ。

 

「陸上選手の加速エネルギーも9割以上が空気抵抗で殺されるって話を聞いた事があるな」

 

体を動かすエネルギーそのものは極僅かの消費に過ぎない。

 

大気が薄くなるという事は人間に必要な量の酸素が得られなくなる事になるだろう。

 

しかし風を纏うことで空気を得る事が出来るという。

 

空気ガスとエアラインマスクを装備するようなものを風魔法で再現してくるのが彼女なのだ。

 

「身体能力が人間より優れる魔法少女が空気抵抗無しで走ればこれだけの速さが出せるのか…」

 

「貴方にだって出来ますよ」

 

「風を纏うというイメージがあまり湧かないな…仕方ない、見様見真似でやってみるか」

 

自分自身に風を纏う感覚で風の魔法を放ったのはいいのだが制御は難しい。

 

「あら?」

 

彼の体は暴風に吹き飛ばされて空高く飛んでいってしまう間抜けな失敗例が生まれてしまう。

 

「尚紀ーっ!?」

 

彼が飛ばされていった森にまで彼女が走ってくるのだが、木に引っかかった男は無事な様子。

 

「………なかなか、上手くいかないもんだな」

 

先が不安になってきた彼であるが、その後も練習を続ける。

 

それでもやはり風華のようには上手く風を使いこなせなかったみたいだ。

 

「最初はそんなものですよ」

 

「まぁ……努力は続けるさ」

 

いつの間にか日も沈みそうな夕方となり、二人は野原に座って夕日を眺めている。

 

「いい風が吹く秋の夕暮れ…コンクリートビルに覆われた東京では見ることが出来ない空だな」

 

「気持ちがいい風が吹くでしょ?私、そんな風見野が好きです」

 

「…そうだな。風にゆかりのある地名も頷けるよ」

 

彼女は体を野原に沈めて空を眺めながらこんな話を語ってくれる。

 

「知ってます?風は実りを運んで…風が華を咲かせるんですよ」

 

冬の寒さが終わり、草木が開花し、目に見える風景が色鮮やかな花を咲かせる。

 

その花が実りを迎えた時、種子が生まれてそれらが風に乗ってまた別の花を咲かせる。

 

風は幸せの運び手だと彼女は彼に伝えてくれる。

 

「それが…私の名前なんです」

 

「風実風華か…素敵な名前を与えられたようだな」

 

彼女が語った言葉通り、悪魔の尚紀は彼女に出会えたからこそ救われている。

 

少しずつではあるが彼の凍った心に温かさが戻ってきている。

 

(俺の心にも…いつか春の息吹が戻る日が来るのだろうか?)

 

彼も野原に体を預け、彼女と共に夕日の空を眺めていく。

 

こんな穏やかな日常が続く事を彼らは願うばかりの毎日を過ごしていくのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

秋の季節も過ぎていく佐倉牧師の教会では一組のカップルが結婚式をするそうだ。

 

秋は気温や天候に恵まれるために挙式を行う季節としては人気が高い。

 

プロテスタントは信者でなくても結婚式を挙げられる教会が殆どなのだと尚紀は聞かされる。

 

礼拝や勉強会に参加した後、教会から認められれば挙式を行うことが出来るようだ。

 

「日本人がイメージするキリスト式の結婚式はそういう仕組か。佐倉牧師が式を進めるのか?」

 

「私は牧師だからね、それが職務だ。その日は土曜日だから風華ちゃんも手伝いに来てくれる」

 

「ここも忙しくなりそうだな」

 

土曜日となり、親族や友人達が結婚式に参列するための準備を家族総出で行っている。

 

バージンロードの白いカーペット、花道を飾る百合の花を椅子にリボンで結びるける作業。

 

祭壇にも百合の花飾りがいるため尚紀は忙しそうにしながら仕事をこなす。

 

「教会式はね、キリスト教のしきたりにのっとって神に結婚を誓うものなんです」

 

キリスト教において結婚式は礼拝の一つ。

 

人生の節目を祝う通過儀礼として大切に考えられているのだと尚紀は風華から聞かされる。

 

「あまり聞きたくない話だが…まぁいい。飾り付けのお陰で教会も雰囲気が出てきたな」

 

「明日の式が楽しみですね」

 

日曜日となり、多くの参列者が佐倉牧師の教会に集まってくる。

 

教会式のための講習を受けていた新郎新婦の連絡もあり、出席者達の女性の服装は控えめだ。

 

彼と風華はスタッフとして参列者の誘導を行ってくれる。

 

「ようこそ皆様、席はこちらになります」

 

「バージンロードは特別な意味がある道なのでゲストは立ち入らないよう注意をお願いします」

 

撮影は専属のカメラマンが行い、撮影や動画撮影は控えるようお願いしていく。

 

「後日、新郎新婦とゲストの方々に写真が届けられる予定となっておりますので御協力下さい」

 

時間も過ぎていき、いよいよ挙式が始まる流れとなっていく。

 

白いグローブを右手で握った新郎と共に佐倉牧師が教会に入ってくる。

 

牧師の姿は白い礼拝用ローブガウンとストールと呼ばれる青色の布を首から下げているようだ。

 

「見慣れない姿だな」

 

「尚紀、静かにしてください」

 

最前列の椅子の前で新郎は立ち止まり、後ろに振り返りながら新婦を待つ。

 

扉が開き、右手に白いグローブを握る新婦の父とブーケを持った新婦が入ってくる。

 

最前列手前の椅子の横で二人は立ち止まり、新郎と新婦の父はお互いに礼を行う。

 

「白いグローブを上に持って新婦の手を新郎の手に重ね合わせたな…何か意味があるのか?」

 

「もう、尚紀は落ち着きがない人ですか~?」

 

「珍しい光景だからな。つい口数が多くなった…黙るよ」

 

「そろそろ賛美歌斉唱なので私はオルガン演奏に向かいますね」

 

新郎新婦に対して佐倉牧師は式次第の印刷物を手渡し、ゲストの方々と共に賛美歌を歌う。

 

賛美歌が歌い終わると佐倉牧師が聖書の式辞を述べ始める。

 

(グローブを内ポケットに入れたり結婚式手順ってのがあるんだな…悪魔には関係ないけど…)

 

新婦は横にいるスタッフの風華にブーケと白いドレスのグローブを渡す。

 

新郎新婦は向かい合い、いよいよ誓いの言葉が始めていく。

 

「天の父なる神に夫婦たる誓いをせり。神の定め給いし者、何人もこれを引き離す事あたわず」

 

祭壇前の机に置いてある指輪を包んだ白いリングピローを二人の前に佐倉牧師が持っていく。

 

新郎新婦は左手の薬指に指輪を嵌めていく

 

(新婦の白いベールを持ち上げる次は誓いのキス……悪魔の俺には退屈で眠くなってきたな)

 

新婦の素顔があらわとなり、新郎は誓いのキスを行う。

 

式も滞りなく進み、佐倉牧師は二人の結婚の宣言を行ってくれる。

 

礼拝堂から拍手が沸き起こり、新郎新婦は一礼をしながら感謝を示してくれるのだ。

 

「祝祷も終わりました、退場です」

 

温かい拍手に包まれながら新郎新婦は教会の扉前で向き直り参列者達に一礼をする。

 

挙式に参加した悪魔の尚紀は眠たくて堪らなかったのか席を外してしまったようだ。

 

「いい結婚式でしたね……」

 

結婚式の片付け作業を行うために戻ってきた彼の手伝いをしている風華が呟いてくる。

 

「私達魔法少女も…あんなふうになれたらいいのに…」

 

その一言で片づけ作業を続ける彼の手が止まってしまう。

 

「殺し合いの世界で生きる…明日をも知れない魔法少女達では…叶わない願いだろうな…」

 

「魔法少女の秘密を隠して男性と付き合ったとしても…日常さえ満足に過ごす自由もない…」

 

「隠し事ばかりする女性に対して…どうやったら男性が受け入れてくれるんだろうな?」

 

「きっと不信感と猜疑心を募らせた末に去っていく事になるんでしょうね…無理もないです」

 

「自由恋愛なんて秘匿社会で生きる魔法少女達には許されないか…俺も同じようなもんだ」

 

大いなる神に呪われた悪魔の彼自身もまた人間の幸せなど望むべくもない。

 

魔法少女と同じく人間の幸せから遠ざかった者同士であり、表情も暗くなってしまう。

 

「少し外の空気でも吸いに行く。一緒に来るか?」

 

二人は作業を中断して教会の外に出る。

 

空は秋の夕暮れ頃になっていたようだ。

 

「穏やかな日々を感じられる影の中には…魔法少女社会の苦しみもまたあるんです」

 

()()()ってやつだな。物事には異なる二つの概念がある…光と闇、正義と悪、男と女などだ」

 

「いつか魔法少女達も…二元論の調和を作れる日が訪れることを…私は願います」

 

「それは…そうなれればいいと思うが……何かやりたい事でもあるのか?」

 

「だって…私達魔法少女社会は、その…男の人と付き合えないから…魔法少女同士で…」

 

「魔法少女同士で何かするのか?」

 

「な、何でもないです!片付け作業に戻りましょうか、尚紀♪」

 

慌てて教会に戻っていく彼女の後ろ姿を見つめた後、夕暮れの空に視線を向けていく。

 

「残念だが…きっと叶わない願いだろう。万物全ては…()()()()()()()()()()…」

 

佐倉牧師一家や風華達のような信者が崇める唯一神がそれを行った事を悪魔は知っている。

 

それは終わり無い争いによる苦しみと絶望の日々を永遠にもたらされる人間の原罪。

 

二元論とは二つに分断された六芒星であり、光と闇の永遠の戦いを象徴する形であった。

 




読んで頂き、有難うございます。
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