人修羅×まどマギ まどマギにメガテン足して世界再構築   作:チャーシュー麺愉悦部

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98話 花言葉

孤児となった子供達を救うために尚紀とニコラスが設立したNPO法人が動き出す。

 

非営利法人嘉嶋会という名称となったようだ。

 

公共の福祉を充実させる目的にして活動する事を生業とし、共同代表を設けた財団を設立する。

 

しかし非営利だからといって利益の享受が許されないでは職員である会員が食べていけない。

 

NPO法人の収入として特徴的なのは会費、寄付金、自治体の補助金や収益活動がある。

 

利益の分配を株主や会員達に行わなければこれらの資金源は活動目的として大いに利用出来る。

 

非営利と言えど法人である以上は様々な支出計算が必要となり、目を通すのも共同代表の努め。

 

代表者の嘉嶋尚紀の休日の大半は非営利法人活動によって潰される毎日を送っているようだ。

 

神浜市中央区とほど近い工匠区のマンションオフィスに嘉嶋会のオフィスを構える事になった。

 

「神浜行政の補助金申請が無事に通ってよかったな」

 

オフィス奥の会議室では代表者の尚紀とニコラス、それに何名かの職員が座っている。

 

「しかし効率を求める行政サイドと手厚いサービスをしたい現場との調整関係は難しいそうだ」

 

「大丈夫です。私は前の仕事ではそういう分野を任されていました」

 

「そうなのか、米さん?」

 

「はい、任せてください嘉嶋代表」

 

「尚紀でいいよ」

 

代表と呼ばれるのは苦手なのか、彼は気恥ずかしい態度を見せてくる。

 

「謙遜しないでくれ。東京のホームレスに新しい人生を与えてくれた君を無下には出来ない」

 

「しかしニコラス。なんで東京にオフィスを構えず、神浜市に事務所を作りたかったんだ?」

 

「こちらに生活拠点を移す事を私は前々から決めていたからね」

 

「まぁいい。どこで活動しようが全国の孤児達を支援出来るなら場所など関係ない」

 

「その通りだ」

 

「それと藤堂さん、俺達の福祉活動を広げるための冊子制作作業は進んでいるか?」

 

「勿論だとも、ボス!後は印刷所にデータを送るだけですぜ」

 

「おいおい、ホームレス社会のボスはあんただったろ?」

 

「今は尚紀が俺達のボスさ!本当に感謝しているよ、尚紀」

 

「僕達職員が暮らしていける社宅まで用意してくれるとはね…足を向けて寝れないよ」

 

「法人としてマンションを購入した方が税金を抑えられるんだ」

 

「その上でオフィスとして貴方達の生活空間を提供出来るなら、申し分ないだろう」

 

「全くだ!本当に懐かしいよ…屋根があって風呂に入れてベットで寝られる生活なんてよ」

 

「気持ちは分かる。俺も風見野で佐倉牧師に拾われて生活していた時は同じ事を思った」

 

会議室の時計を見れば昼であり、休憩時間になる。

 

一階に設けたオフィスには何やら両手いっぱいの袋を抱えた小学生ぐらいの少女が現れる。

 

<<すいませ~ん!千秋屋で~す!お弁当をお持ちしました~~!>>

 

「昼休憩にしよう。俺が弁当を持ってくる」

 

「職員に任せてくれよ。代表のあんたが雑用まで…」

 

「ここはホームレス時代と変わらない場所でいい。辛い過去を背負うお互いが支え合いたい」

 

「東京時代のような小さなコミュニティの方がいいのか?」

 

「そうだ。恵まれない子供達の苦しみを…元ホームレスの俺達なら分かってあげられるからな」

 

会議室から出てオフィス玄関に向かい、そこに立っていた人物を見た彼は驚いてしまう。

 

「おいおい…まさか小学生のガキにこれだけの弁当を運ばせたのかよ?」

 

見れば注文した20人分の弁当が詰まった袋を両手いっぱいに持つ女子小学生が立っている。

 

「大丈夫です!私、けっこう力持ちなんですよ♪」

 

「そうか…苦労をかけたな。ありがとう」

 

「私はお弁当屋さんをやってる千秋屋の娘なんです。千秋理子っていいます」

 

「嘉嶋尚紀だ。この嘉嶋会の代表をしている」

 

「えっ?お兄さんがこの会社の代表?見た目が竹細工工房のお姉さんぐらいの若さに見えたよ」

 

「…俺もよくガキ扱いされるんだ。髭でも生えてくれたら社会人らしかったんだがな…」

 

弁当を受け取ろうとした時、後ろから柴犬が飛び出してくる。

 

「ワンワン!」

 

「コラ!マメジ!」

 

足元を周りながら吠える犬を見る彼も微笑んでくれる。

 

「駄目じゃないの!めっ!」

 

飼い主に叱られ、項垂れながら地面に座り込んだマメジの頭を撫でてくれる。

 

「元気な飼い犬だな」

 

「えへへ♪マメジって言うんです、お兄さん♪うちの看板犬なんですよ~」

 

飼い主に自慢されたのが分かったのか、尻尾を振って元気に吠える。

 

「うちも二匹の猫がいるが、言うこと聞かない元気なところがよく似てるよ」

 

「お兄さんはネコ派なんですね!ネコちゃんもとってもカワイイと思いますよ~私♪」

 

大量の弁当を受け取り、後ろにいる職員に渡した尚紀は財布を出して料金を払う。

 

「ここはどういう職場なんですか?」

 

「親に恵まれなかった辛い立場の子供達を救うための職場さ」

 

「お兄さん達は私ぐらいの子供達を救うヒーローなんですね!とっても素敵です♪」

 

「親を大事にしてやれよ。親に守ってもらえる毎日は……本当に有り難い事なんだ」

 

「はいっ!わかりました!これからも千秋屋をごひいきに~お兄さん♪」

 

工匠学舎制服を着た理子は踵を返し、飼い犬と共に帰っていく。

 

そんな彼女の後ろ姿を見つめる尚紀の表情は重い。

 

「…あんな小学生まで魔法少女になっちまうのか。その時点で…最大級の親不孝なんだよ」

 

視線の先にはマメジの頭を撫でている理子の左手に輝くソウルジェム指輪が見える。

 

脳裏に浮かぶのは小学生時代の杏子であり、魔法少女として破滅していった過去も思い浮かぶ。

 

暗い気分となり、袋の中から自分の弁当を取り出した尚紀は会議室内で食べていく。

 

「お茶ばかり飲んでるが、ニコラスは注文しなかったな?」

 

「私は老人だよ?脂っこい食べ物は辛い。この工匠区は工場街だから揚げ物が売れるのだな」

 

「みたいだな。ところで、うちの正会員が行う通常総会の手配は済んでいるか?」

 

「大丈夫だ、ちゃんと手配してる。新西区市民センターで嘉嶋会の通常総会をする事になる」

 

「NPO法人は年に一回は総会を行わないとならないからな。早めにやっておこう」

 

「一回目の総会になるからね。僕達の指針を説明して、会員達から理解を得なければならない」

 

「議案書はもう出来ているか?」

 

「勿論だ、尚紀。通常総会は今度の週末だからな」

 

「議事録もちゃんと記録する。事務は僕達に任せてくれ」

 

「俺とニコラスも向かおう。週末ぐらいしかここに来れないから、あんた達に任せっきりだな」

 

「これが俺達の役目だ。財団投資家達は自分の職務に励んでくれ」

 

「あんた達に甘えさせてもらう。俺は午後からは東京に向かうんで、そろそろ帰るよ」

 

「東京でまだ仕事してるのか?たしか尚紀が働く聖探偵事務所は神浜に…」

 

「藤堂さん、彼には彼の役目がある。あまり詮索しないでやってくれ」

 

「そうか…まぁ尚紀が何をやっていようが、俺達は恩人の背中に最後までついていくぜ!」

 

オフィスから出た彼は駐車場の嘉嶋会社用車の隣に停めてあるクリスに乗り込む。

 

車を運転しながらも慣れない代表者スピーチの事を考えてしまう。

 

「孤児達を救いたい法人代表である俺が行う…理事長挨拶か」

 

探偵として、NPO法人の代表として、そして人間の守護者としての多忙な毎日は続いていく。

 

それが誰かの人生を守る事に繋がるのなら、多忙であろうと彼の足取りは軽かった。

 

 

週末が近づく頃。

 

神浜市新西区にあるフラワーショップ・ブロッサムに歩みを進めていく3人の少女達がいる。

 

「見て見て葉月!このは!あそこがブロッサムだと思うよ~」

 

「うわ~!綺麗な花が店頭に並んでるよ~見ているだけでアタシは癒やされてきちゃったな~」

 

「本当ね。いい花ばかりだし、ネットの評判通りだといいわね」

 

店内に入り、アルバイトをしている少女に声をかける。

 

「春名さん、こんにちわ」

 

「あ、いらっしゃいま…って、静海さん!それに葉月ちゃんにあやめちゃんじゃない?」

 

「こんにちわ~、春名さん」

 

「やっほ~、このみお姉ちゃん!」

 

「注文していたフラワーアレンジメントブーケを買いに来たの。出来ているかしら?」

 

「勿論よ!うちに注文してくれてほんと嬉しかったからね。やっぱり持つべき友は魔法少女♪」

 

「にっしっし!このみお姉ちゃんは余所者の魔法少女のあちし達に親切にしてくれたしね♪」

 

「たしか、大切な恩人さんに送る予定でよかったんですよね?」

 

「ええ。私達にとっては命の恩人であり…人生の恩人のような人達なの」

 

「う~…それと同時に、あちし達を洗濯機の中みたいなドライブに連れて行った人達なの」

 

「注文した時に送り主について聞いたようだけど…花屋さんとして何か意味があるんですか?」

 

このみは店のブーケが置かれたカウンターまで歩き、カウンターの中で彼女達に向き直る。

 

「ブーケには色々な思いが詰められるんです。だから私…フラワーアレンジメントが大好き!」

 

フラワーアレンジメントを利用すれば様々な思いを相手に伝えられる。

 

花の種類、花の色、本数、花言葉等を用いて気持ちを表現するのだ。

 

「三千円の予算でここまで素敵に、コンパクトにアレンジしてくれるなんて…素晴らしいわ」

 

「そうだね、このは。花屋紹介サイトに載ってるこの店にアタシが高評価をつけておくよ」

 

「優しそうだった紳士お爺さんなら喜ぶかもしれないけど…もう1人の男の人は少し微妙かも」

 

「怖そうなイメージのお兄ちゃんだったし…でも、ちゃんとあちし達の感謝を伝えたい!」

 

「その人達は貴女達から大切に思ってくれているのね。どんな人達なのか聞いていい?」

 

「私達みたいな孤児を支援してくれるNPO法人の代表者達なの」

 

「その人達の支援のおかげで…アタシ達は株取引という不確かな綱渡りから解放されたんです」

 

「さっきの言葉通り貴女達の人生を救ってくれた人達なんですね。いつブーケを送るんです?」

 

「ネットの紹介のサイトでね、明日は新西区の市民センターで総会を行う事が分かったの」

 

「アタシ達もその通常総会を行う市民センターに行って感謝の気持ちを渡そうと思って」

 

「昼食会の時間帯なら尚紀お兄ちゃんやニコラスお爺ちゃんが外に出てくるかもしれないし!」

 

「ウフフ♪きっと貴女達の気持ちがその人達に伝わるわ。このみお姉さんが保証する♪」

 

「お花の魔法少女みたいな貴女のフラワーアレンジメントですもの。きっと喜んでくれるわね」

 

精算を済ませた姉妹達はピンク色の薔薇ブーケを受け取って帰路につく。

 

「東京で初めて出会った時以来だもんね~。アタシ達の事を覚えていてくれるかな~?」

 

「大丈夫だよ!だってあちしが車から解放された時に…車酔いで盛大にゲーッ!ってしたし」

 

「そういう覚えられ方をしていると…嫌な顔されないか心配になってきたわ」

 

期待と不安を胸にしつつ彼女達は新西区市民センターに向かう事になるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

日曜日の朝となり、市民センターには嘉嶋会の正会員達が集まっていく。

 

忙しそうに準備に追われる状況の中、このは達は市民センターの前に到着する。

 

「ここが嘉嶋会の社員達が行う通常総会の場所だと思うわ」

 

「中は準備中みたいだね~。朝早く起きてから移動してよかったよ~」

 

「市民センターの中って学校の体育館みたいだね~」

 

「ほらあやめ、邪魔にならない場所で待っていましょう」

 

少しした後、ようやく嘉嶋会の通常総会が始まっていく。

 

共同代表であるニコラスが広いステージの上に登って演説台の前に立ち、開会を述べる。

 

「やっぱりあちし…総会ってのが気になる!ちょっとだけ覗き見してもいいでしょ~?」

 

「あっバカ!あやめったら…もう」

 

13歳のわんぱく娘に振り回される姉達も市民センターに入っていく。

 

総会の流れは開会の言葉の後に続く理事長挨拶と進行していくようだ。

 

「あっ!尚紀お兄ちゃんがステージに登っていくよ」

 

「尚紀さんが…嘉嶋会の理事長だなんてね」

 

「いったい彼はどんな理由があって…孤児を救うNPO法人を作ったのかしらね?」

 

演説台の前に立ち、周りを見渡した尚紀が重い口を開きだす。

 

「今日は集まってくれて有難う。俺が理事長として選ばれた…嘉嶋尚紀だ」

 

嘉嶋会を創設したのは嘉嶋尚紀本人である。

 

若造に過ぎない尚紀が理事長だと聞かされたこのは達姉妹にも驚きの表情が浮かぶ。

 

正会員である社員達と共に市民センターの入り口付近で彼の演説を清聴し続ける。

 

「なぜ、俺が孤児達の支援を行いたいと思い出したか…皆も気になっているはずだ」

 

「尚紀さんが…私達孤児を助けたいって言い出したのね…」

 

「アタシ…てっきりあの優しそうなニコラスお爺さんの方だと思ってたよ…」

 

尚紀が語るのは彼がなぜ孤児達を支えたいと思ったのか、その動機についてだ。

 

「俺は見ての通りの若造だ。親のすねかじりをしているぐらいの歳だが…俺には両親がいない」

 

――両親だと思っていた人達に…捨てられたんだ。

 

「えっ……?」

 

「うそ……でしょ?」

 

このは達姉妹と彼は同じ境遇であり、孤児だったのだと理解する。

 

「親族や友達だと思っていた人達からも捨てられ…行き場も無く彷徨う浮浪者になり果てた…」

 

「尚紀…お兄ちゃん……」

 

「そんな俺を…無償で家族として受け入れてくれる…牧師を営む優しい家族が現れてくれた」

 

「彼を救った牧師さん達は…私達姉妹にとっては…つつじの家の院長先生ね…」

 

言葉を選びながら喋っていた尚紀であったが重い沈黙の後、自分の罪を語ってしまう。

 

「だが、その一家は俺のせいで……焼身自殺に追い込まれた」

 

正会員達から動揺の声が上がり出し、このは達姉妹も驚愕した表情を浮かべてしまう。

 

この世界に流れ着いた嘉嶋尚紀が犯した罪こそが嘉嶋会創立を決意した強い動機部分なのだ。

 

「俺にとっては妹だと思う…生き残ってくれた少女からは…家族を滅ぼした者として憎まれた」

 

場が静まり返り、重苦しい空気に支配されてしまう。

 

「浮浪者の俺は…運良く莫大な資産を手に入れる事が出来た」

 

かつての世界で手に入れた至高の宝石、それは愛した女性を救うために使うはずだった品。

 

彼女を守れず失った尚紀だからこそ、愛する家族のために使いたかったと語っていく。

 

「だが…その人達はもういない…俺が結果として…死なせたんだ」

 

感情が高ぶった彼の顔が俯いてしまい、演説台に置かれた両手にも力が籠って震えだす。

 

「俺は……家族から捨てられる苦しみを…知る者だ」

 

それだけではなく、ホームレスになる苦しみさえ知っている。

 

支えてくれた人達の優しさを知り、その人達を死なせた苦しみさえ知る者であろう。

 

失うばかりの人生だったからこそ、自分の心の痛みを通して誰かの心の痛みにも寄り添える。

 

「だからこそ俺は……その人達の優しさを継ぐ」

 

後悔と決意が入り混じる演説内容を清聴しているニコラスの表情も重い。

 

(ナオキ君…私と出会う前は…それ程の業を背負っていたか)

 

「嬉しかったんだ…行き場のない俺に手を差し伸べてくれた人達の優しさが…嬉しかった」

 

声に感情の熱が籠り、顔を上げて大声を出す。

 

「俺は!!同じ苦しみを持つ子供達に手を差し伸べたい…その為なら財産を使い切っていい!」

 

静かな会場だったがすすり泣く音が響き出す。

 

ここに集まった者達も社会から切り捨てられた元ホームレス達。

 

彼の苦しみが痛いほど心に突き刺さる気持ちは入り口付近にいる姉妹達とて同じであろう。

 

「俺は罪人だ!世俗的欲望など優先しない!個人の幸福よりも、公共の福祉こそ優先したい!」

 

――それが俺の…社会主義精神なんだ!!

 

入り口付近にいる姉妹の三女から嗚咽を堪える声が漏れる。

 

「うっ…グスッ…うぁぁぁぁぁ~~~……ッッ!!」

 

尚紀の言葉の一つ一つが彼女達が経験してきた地獄の苦しみに寄り添ってくれる。

 

「俺と同じ苦しみを背負う、社会の子供達が救われた笑顔こそ…俺の最高の喜びだ!!」

 

次女も堪えきれずに泣き始めてしまう。

 

「尚紀さん…尚紀さん…アタシ…アタ…あ…あぁぁぁ~~~……ッッ!!」

 

「こんな罪人の俺でも…同じ苦しみを感じてくれたなら…ついてきてくれ…頼む!!」

 

涙が止まらない長女は演説する尚紀の姿に大切な人の面影を感じている。

 

「院長先生だけじゃなかった…自分が辛くても…私達孤児に…手を差し伸べてくれる…!」

 

「これが理事長を務める嘉嶋尚紀の……嘉嶋会創立動機とする!!」

 

「こんなにも優しい人がいてくれ……うあぁぁぁぁ~~~……ッッ!!」

 

皆が泣き出してしまう周囲を見つめる彼は一歩下がった後、深くお辞儀をする。

 

「ご清聴…有難うございました」

 

正会員の皆が立ち上がり、泣きながら盛大な拍手を送りだす。

 

感情が高ぶってしまった彼も目元が熱くなっていたが、その視線が入り口付近に向けられる。

 

「…今日来てくれたあいつらのような子供達を…俺達は救っていくんだ」

 

入り口付近では泣きじゃくりながら抱きしめ合う孤児達がいてくれる。

 

彼女達の元に駆け寄り、ハンカチを与えてくれる正会員の職員達。

 

彼女達の涙がどんな熱さを持っているのか知っている元ホームレス達なのだ。

 

場が熱くなってしまった事もあり、総会進行を一時中断する小休止となっていった。

 

 

「…そうか。お前達も児童養護施設に流れ着いた孤児達だったか」

 

小休止中であるが外のベンチで座る彼とニコラスの前にはこのは達がいる。

 

3人は自己紹介を済ませ、自分達が何故この場に現れたのかを沈痛な表情のまま語っていく。

 

長女である静海このははこう語る。

 

産まれた時期から家族が事業失敗を繰り返し、借金地獄の果てに両親に死なれたこと。

 

親族達からも見捨てられ、児童養護施設のつつじの家に流れ着いたことを語っていく。

 

次女である遊佐葉月もこう語る。

 

小さい頃、旅行中に家族に死なれてからは親戚をたらい回しにされたこと。

 

疎まれまいと愛想笑いを繰り返すが捨てられてしまい、つつじの家に流れ着いたと語っていく。

 

三女である三栗あやめもこう語る。

 

1歳の頃、路地裏に捨てられていたため産んでくれた家族の事は知らないこと。

 

乳児院に流れた後、つつじの家に保護されたことを語ってくれる。

 

だからこそ、つつじの家の院長先生は彼女達にとっては母親だったのだろう。

 

「現在の私達はとある事情からつつじの家を離れ、3人の力で生きていくしかなかったんです」

 

「このはの両親が残した僅かな資金を使って株取引収入で暮らしてきたんです…」

 

姉妹にも事情があるのだろうが嘉嶋会共同代表である尚紀とニコラスは沈んだ表情を浮かべる。

 

「酷い博打人生だな…三世帯であろうが月に30万円は生活費がかかるし、投資資金も必要だ」

 

「PCの前で座り続るデイトレードで生きていくにしても1日1万9000円の運用益が必要だ」

 

「一つの銘柄で一日の暴騰率が3%前後を狙う生活もあるが…56万円以上は資金が必要だな」

 

株価は企業によって異なるが、100株単位での購入手段もある。

 

600円前後のものを狙えば60万円で1日1万7000円も不可能ではないがリスクも高い。

 

「その結果を私は…毎日残し続ける必要があったんです」

 

「あまりにもハードルが高過ぎる毎日です…このはだけに無茶を押し付けてアタシも辛かった」

 

億単位の資金が用意出来たなら配当利回りの高い長期保有株の配当金生活も出来る。

 

しかし借金地獄で死んだこのはの家族にそんな資金を用意する手段などなかったのだろう。

 

「尚紀お兄ちゃんやニコラスお爺ちゃんがあちし達に給付金を出してくれて…嬉しかったの」

 

「だからこそ私達姉妹は貴方達にお礼を言いに来たんです」

 

「…児童養護施設での生活は苦しかったろ?」

 

彼の一言で姉妹達が俯いてしまうが、長女であるこのはが顔を上げながら事情を語り出す。

 

「院長先生は優しかった…でも児童養護施設は…深刻な職員不足なんです」

 

「知ってる。日本社会が孤児達に関心が低いために教育向けの支出が先進国最低レベルなんだ」

 

「お詳しいんですね…」

 

「児童養護施設で暮らしていたお前達と同じぐらいの年齢だった少女が…かつていたんだよ」

 

あやめと同じく産まれた頃にゴミ箱に捨てられていた少女がいたと聞かされる。

 

その人物こそが嘉嶋尚紀を救ってくれた最初の人だったと伝えてくれたようだ。

 

「やっぱり…あちしだけじゃなかったんだ。家族にゴミのように捨てられた子がいたんだね…」

 

「かつていた…?」

 

「その子は親に捨てられたショックで塞ぎ込み、児童養護施設職員に当たり散らしてきた…」

 

「アタシ…分かります。つつじの家の子供の中にも…そんな可哀想な子が沢山いたんです…」

 

「その子達に職員達は薬を投与するのよ…」

 

孤児の精神を無理やり抑え込む薬漬けをしていると院長先生がこのはに語ったことがある。

 

職員不足に苦しむ他の児童養護施設の事情をその時に知ったようだ。

 

「あの精神薬だけはあちし…やだよ。飲まされかけたけど…院長先生が止めてくれたの」

 

「その子の心を救ってくれたのは聖書だった。聖書の言葉があったからこそ前に進めた」

 

尚紀を救った少女には牧師になりたい夢があったと聞かされる。

 

だからこそ迷える羊のような存在になり果てた尚紀に手を差し伸べてくれたのだろう。

 

「尚紀さんを最初に救ってくれた人物だったんですか?」

 

「そうだ。浮浪者の俺に手を差し伸べてくれた人となり…佐倉牧師の元に導いてくれた」

 

救ってくれた少女に心から感謝したが、その少女はもうこの世にはいない。

 

彼女を失った日の記憶が蘇り、尚紀の顔は苦悶を浮かべてしまう。

 

「俺にとって、その少女は心から感謝したかった存在だったが……死んだ」

 

彼の沈痛な言葉を聞かされた姉妹達の顔が俯いていく。

 

彼女達にとっては自分と同じ境遇の少女が死んだ出来事を語られたからだろう。

 

「そんな…どうしてアタシ達と同じ苦しみを背負った子が…そんな目に?」

 

「…殺されたんだ。理不尽な力を持つ…魔法少女と呼ばれる存在にな」

 

事情を聞かされたこのは達の肩がビクッと震える。

 

「その子も魔法少女だ。自分を犠牲にしてでも他人を優先する…聖書の教えが羅針盤だった」

 

だからこそ魔力切れになろうが人間を助けようとする。

 

そして他の魔法少女に襲われて殺されたのだと語ってくれる。

 

それを聞いたこのは達の表情にも怒りが浮かんでしまう。

 

「酷い…酷過ぎるよ…そんなの!!」

 

「アタシは許せない…!!どうして魔法少女が魔法少女を襲うわけよ!?」

 

「尚紀さんは…魔法少女の存在をその人から教わっていたんですね…」

 

「ああ。だからこそお前達が魔法少女だという事も分かる…隠しても無駄だ」

 

正体を見破られていた事を知り、今更隠すつもりもなくなったようだ。

 

「ごめんなさい、隠すつもりはなかったんですが…分かる人でないと伝わらないんです」

 

「俺はその子の人生を守ると約束した。だが…約束は守れなかった…情けない負け犬さ」

 

「そんなことない!尚紀お兄ちゃんはその子は守れなくても…あちし達を守ってくれた!」

 

「お願い!その子の名前を教えて下さい!私達と同じ運命を背負った人を知る権利があるわ!」

 

彼女達の切実な思いを向けられた尚紀が空を見上げながら遠い眼差しとなっていく。

 

「風が実りを運び…風が華を咲かせる…。生きていたら、このはの一つ上のお姉さんだった…」

 

長い話となったが小休止時間も終わりを迎える。

 

尚紀とニコラスは会場内に戻っていくのだが、彼らの手には姉妹から送られた品が見える。

 

送られた品は薔薇のブーケであり、ニコラスはサンドイッチが入ったランチボックスを持つ。

 

「…いい子達だったな。だからこそ、私達は孤児達を守り抜かなければならない」

 

「この薔薇のブーケは…俺達が孤児を救っているという証となってくれるさ」

 

「ピンク色の薔薇か…花言葉を知っているかね?」

 

「花の知識を俺が知るわけないだろ」

 

()()()()()だ。私達への感謝の気持ちと、孤児達の幸福を願った…彼女達の思いの形だ」

 

このは達姉妹の気持ちが籠ったブーケに視線を向ける彼の口元も微笑んでくれる。

 

「そうか…。オフィスで大切に飾ってやらないとな」

 

彼女達と同じ苦しみを背負う孤児達を救いたい気持ちは揺るがぬ信念となっていく。

 

嘉嶋尚紀をこの道に進ませるキッカケとなってくれた魔法少女の事が頭を過るのだ。

 

(風華…今度こそ、お前と同じ苦しみを背負う孤児達を救う。俺の中で…見ていてくれ)

 

その後の総会は滞りなく進み、昼食会となる。

 

席に並べられる弁当だったが、尚紀とニコラスは運ばれた弁当を隣に職員に譲る。

 

彼女達の感謝の気持ちが詰まった手作りの食事を共に頂きたい気持ちは同じだったようだ。

 

その頃、帰り道を進む姉妹達は自分達と同じ運命を背負いながら死んだ魔法少女を語っている。

 

「風実風華さん…かぁ。生きていてくれたら…アタシ達の大切なお姉さんになってたね」

 

「うん…絶対にそうなってたと…あちしは思うよ」

 

前を歩く2人の後ろを俯きながら歩く長女が顔を上げた時、その表情には決意が宿っている。

 

「…葉月、あやめ。聞いて欲しい事があるの」

 

「なにさ、このは?」

 

「尚紀さんの演説を聞いて…私は確信したの」

 

「確信って…?」

 

「私の投資に関する知識は…あの人のためにこそ役立てなければならないって…確信したわ」

 

「えっ…?まさか、このは…?」

 

「私は嘉嶋会に入りたい。私の投資知識を尚紀さんのために役立てて同じ孤児達を救いたいわ」

 

「あちしだって入りたい~!雑務ぐらいならあちしだってやれるし~!!」

 

「人見知りで人間不信だったこのはが変わるもんだね…それだけの人だったとアタシも思うよ」

 

「今度オフィスでお願いしてみるわ!また手作りサンドイッチを持っていかないと♪」

 

それを聞いた妹達の目が点となってしまう。

 

「「えっ?」」

 

「えっ?って何?私だってサンドイッチぐらい作れるから」

 

「いや、まさかとは思うけど…尚紀さん達に渡したランチボックスに…」

 

「あちし…嫌な予感がしてきたよ…」

 

「勿論♪葉月やあやめが作ったサンドイッチだけじゃ量が足りないと思って…」

 

一方、市民センターでは悲惨な光景が広がっている。

 

「「ゴハッ!!」」

 

突然後ろに倒れ込む代表者達を見た会員達が慌てて駆けつける。

 

「ボスゥー!?しっかりしてくれよ!!顔色が虹色だぞぉーっ!?」

 

「ニコラスさんが息をしていない!?誰か救急車をーーっ!!」

 

孤児を救うNPO法人として始まる嘉嶋会の道はこれからも続いていくだろう。

 

しかし突然の()()()()の洗礼を浴び、存続の危機をちょっぴり迎えてしまうのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ねぇねぇ、尚紀お兄ちゃんが言ってた公共の福祉と社会主義ってなんだろうね?」

 

学校からの帰り道、ガードパイプの上を歩くあやめが姉達に呟く内容とは昨日の事だろう。

 

「アタシも政治はよく知らないけど、悪い事したら駄目ってこと?」

 

「ここは私達だけの生活空間じゃないって意味よ。今あやめがやっているような行為が例ね」

 

「確かに公共の福祉に反するっていう悪い事やってるよね~あやめ」

 

「えっ!?あ、あちし降りるね…」

 

子供のヤンチャを姉達にたしなめられたあやめはガードパイプの上から飛び降りてしまう。

 

「私も気になってネットで調べてみたの。社会全体の利益という意味合いがあるのよ」

 

「社会全体?要はあちしだけでなく、このはや葉月、それにつつじの家全部を合わせるの?」

 

「それ以上よ。社会は私達が思っているより大勢の人がいて大勢の利害関係の上で成り立つの」

 

「アタシ達は完全に自由ってわけじゃないもんね。そんな社会考えたらゾッとするよね~」

 

「この国には表現の自由が人権で認められていても、何を言ってもいいなんて理屈になる?」

 

悪い例として語るなら、つつじの家の子供達に対して親に捨てられた社会のゴミ共だとぬかす。

 

そんな表現の自由があってもいいのだろうか?

 

法律で規制はされていないが、人の倫理観が言える自由発言ではないはず。

 

それでも、それもまた表現の自由の範疇内。

 

法律で規制出来ない自由民主主義国においては本人の倫理観任せに留められている。

 

誹謗中傷という自由表現もまた()()()()()()()()()()()()()()()()

 

定義など存在しないため、独裁政府が誹謗中傷だと言えば誹謗中傷にされて罪となるからだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()であり、だからこそ法は倫理の最低限度。

 

これが自由民主主主義国である日本政府が犯してはならない民主主義憲法の根幹であろう。

 

しかしものを考える力が無い人々は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そんなのってない!!許せないし!それに…あちし達みんなが傷つくよ…」

 

「それが公共の福祉の概念よ。社会は大勢の人達の価値観や感情が集まる場所だから」

 

公共の福祉とは全体の幸福概念。

 

だからこそ人々の表現の自由はそれぞれの倫理観によって封印されていく。

 

この部分が大切だ。

 

中国や北朝鮮のような独裁政府は倫理観を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

道徳や倫理観は人間の心を美しく保ち、社会の人々の幸福として役には立つ。

 

だが道徳や倫理観は果たして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

いつの間にか独裁政府の全体主義を自由と正義を愛する人々が受け入れてしまう。

 

中国や北朝鮮だけの問題ではなく、日本や欧米などの自由主義国家の問題でもあるのだ。

 

「自由なようでいて制限されている。皆の幸福社会を目指すなら、()()()()()()()()()()()

 

「自由だけの社会なんて力を持つ連中だけがのさばってるだけだよね…資本主義なら尚更だよ」

 

「要は自分勝手な事はやめて、皆で仲良く幸せになれる道を目指そうってこと?」

 

「そうね。それが近い表現だと思うけど…その幸せの定義が難しいのよ」

 

人それぞれ価値観や感情、それに幸せの形は違う。

 

だから私の考えだけが正しい、それを優先しろと言い出せばどうなる?

 

独裁政府が独裁に都合の悪い表現の自由は誹謗中傷罪として裁くべきだと言い出せばどうなる?

 

「う~ん…それぞれの自由な幸せの形をぶつけ合ったららきっと…喧嘩にしかならないよね」

 

「だからね、そういう時はお互いの損得で話を纏めるように誘導するんだよ」

 

「葉月はそういうの得意そうだよね~」

 

「それでいて、感づかれなければ~こちらに有利になる文言でも入れておけば~」

 

「はぁ…葉月。それは交渉の概念よ」

 

公共の福祉は片方だけが優遇されればもう片方の不満が爆発する。

 

交渉程度では済まない紛争となり、騙した相手の数が多ければ逆に潰されてしまう。

 

「まぁ…そうだよね。交渉は個人間でやるもんだけど集団だと相手側の怒りを抑えられないよ」

 

「でも、その人の考えだって全体の幸福を考えて言ってくれるんでしょ?」

 

「善意で行った行動は必ず良い結果をもたらす。残念だけど…()()()()()()()()()()

 

他人の善意が必ずしも他の人の幸福には繋がらない、何故ならそれぞれの正しさがあるからだ。

 

「世の中って難しいよ~…それじゃあ皆が喧嘩を始めちゃうだけだし…」

 

「今の世の中を表してる気がするね。SNSじゃ毎日のように大勢が正しさの押し付け合いだし」

 

「あやめ、善意で行う事が良い結果にならないって諦めてしまったら…何も出来なくなるわ」

 

間違いながらでも社会は進むしかなく、だからこそ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「きっと皆…何を優先するかで…自分達の道を違えていくんだろうね…」

 

重いテーマを話し合った事もあり空気が澱んでしまうが、そんな時にあやめが質問してくる。

 

「ねぇ、考えた事なかったけどさ…つつじの家って、公共の福祉になるのかな?」

 

「子供だって公共で暮らす社会の一員よ。児童福祉法や社会福祉法で守られているわ」

 

皆が幸せになれる社会を目指すという公共の福祉という全体の幸福概念。

 

それは独裁政府や思想が偏った団体だけで作るべきものではない。

 

個人一人一人が自由の名の元に自主的に守るべきもの。

 

だからこそ異なる価値観を持つ一人一人が必要とする福祉を叫ぶ必要がある。

 

それを反映させる機関こそが行政府や立法府という政府機関なのだ。

 

「あちし達孤児の子はね、周りの人達から虐められてきたよね…」

 

三女が言った内容を容易く想像出来る経験を持つ姉達の表情が暗くなっていく。

 

「親なし、社会のお荷物、税金泥棒って。そんなあちし達でも…幸せになっていいんだよね?」

 

「あやめ…」

 

「そう願ってくれた先人達がいてくれる…。だからこそ、今の私達がいる…そう思うわ」

 

このはの言葉を聞いたあやめは姉達に振り向き、その顔は何かを決意した表情をしている。

 

「だったらあちし!もう絶対に社会の迷惑な事はしない!」

 

「突然どうしたの、あやめ?」

 

「迷惑をかける奴を見つけたら怒るから!」

 

「ワンパクな子だと思ったのに…突然の変わりようだね?」

 

「だってさ…あちしが知らない社会の誰かが…あちし達の人生を守ってくれたんだよ?」

 

社会は自分達だけのものじゃない、皆のもの。

 

魔法少女達の生活を守り抜く労働を続ける人達が見えないところにいてくれたと理解する。

 

「あちし…それが嬉しい!だからね…恩返しがしたいんだ」

 

「あやめ…そうだよ…その通りだよ!」

 

葉月は周りの街を見渡すと電気が通う街が映る。

 

交通機関で働く人達、医療現場で働く人達、食料を作る人達、製品を作る人達がいる。

 

大勢の人々が互いが互いを支え合い、皆が快適に生きられる社会を作ってくれているのだ。

 

「魔法少女だけの問題ばかり考えてきたけど…それだけを優先しちゃいけなかったんだよ…」

 

「そうね…その通りだわ。つつじの家だけでなく私達が暮らすこの街全てが私達を守ってる…」

 

――魔法少女とは違う人間達によって生かしてもらい、幸福な生活をさせてもらえてる。

 

「なら、その人間社会を蔑ろにするっていう事は…つつじの家を蔑ろにするも同然よ!」

 

彼女達の心の中にも人間社会主義が芽生え始める。

 

魔法少女であろうが人間社会を守る、社会を蔑ろにする者は許さない義憤の感情が生まれる。

 

「こんな感情に目覚められるなんて思わなかったわ…人間不信だった私なのにね…」

 

「きっと尚紀さん達が支えてくれて…安心出来る生活が送れるようになったからだよ」

 

「あちし達…以前までは余裕がなくて周りが見えなかったけど…もう大丈夫!」

 

「そうだ!実はね、親交があるななかさん、それにかこちゃんも同じ事を言ってた気がするの」

 

「ほんとなの!?やっぱりかこは…あちしの最高の相棒だったよ~♪」

 

「ウフフ♪ななかさん達と私達姉妹は思想の合致を得られたみたいね。仲良く出来そうよ♪」

 

姉妹達は頷き合い、今夜の魔獣狩りを常磐組と共にしようと駆け出していく。

 

花言葉、それは相手に送るメッセージであるが、間違ったイメージを送る可能性もある。

 

それでも疑われるリスクを恐れて送らないでは、きっと思いは伝わらない。

 

だからこそ三姉妹は恐れずに人間社会に花言葉を送りたい。

 

私達の為に働いてくれた労働者に感謝し、人間達の幸福を願って戦う社会主義者となった。

 

 

「こんにちわ~!尚紀さんはいらっしゃいますか?」

 

次の週末頃、嘉嶋会のオフィスに顔を出してきたのは常磐ななかと静海このはである。

 

「お前ら…一体何の用事で来たんだよ?それにお前ら…仲良かったのか?」

 

「ウフフ♪このはさん達はね、私や尚紀さんと同じく社会主義に目覚めてくれたんですよ♪」

 

「本当か…?それは俺も嬉しい事だな」

 

「私達姉妹とななかさん達は思想の合致を得ました。そしてそれは…尚紀さんとも同じです」

 

「そうか…ならお前達も人間社会にとっては大事な魔法少女だ。社会のために励めよ」

 

「はいっ!そのために私をここで働かせてください!!」

 

暫しの沈黙の後、目が点になっている尚紀が質問してくる。

 

「すまない、意識が一瞬遠くに行った。今……なんて言った?」

 

「ここで働かせてください!!」

 

「なんでそうなる!?」

 

「私、尚紀さんの演説に感動しました!私も同じ苦しみを背負う者として嘉嶋会で働きたい!」

 

「そう言われてもなぁ…お前は高校生だし…」

 

「こう見えて投資知識は豊富に持ってます。嘉嶋会の財源を拡充させられるかもしれません!」

 

「それは魅力的な提案じゃないか?」

 

尚紀の後ろから現れたのは共同代表を務める者であろう。

 

「おいおい、ニコラス。子供を雇っても給料は出せないぞ?」

 

「この子の熱い志ならボランティアとして受け入れてあげてもいいじゃないか?」

 

「まぁ…ボランティアとしてなら…」

 

共同代表に認められたと判断したこのはの表情が喜びに包まれていく。

 

「本当に!?やったーっ!!ありがとうございます!」

 

<<なら!!あちし達もボランティアメンバーとして頑張るからね~尚紀お兄ちゃん♪>>

 

喧しい声の方に振り向けば葉月とあやめが買い物袋を抱えながら歩いてきている。

 

「アタシ、こう見えて料理が得意なんです。職員の人達にお昼ご飯を作ってあげますよ♪」

 

「それは有り難いんだが…あやめ、お前は何が出来る?」

 

「あちしは……見張り番!!」

 

「そうか…まぁ、妙な訪問者が現れたらワンワン吠えて追い出してやれ」

 

「あちしに任せていいからね!よ~し、やるぞ~!…って!?あちしは犬じゃない!」

 

「それに、ななか?お前は付き添いだけで来たのか?」

 

「お花を送られたと聞きましたので、オフィスでの管理方法をご教授しに来ました♪」

 

「花に詳しかったのか?」

 

「ええ♪こう見えて私は華道の名門出身として生きてきた魔法少女です♪」

 

常盤ななかが華道の名門人物だと聞かされてもイメージに合わず、怪訝な顔つきになる。

 

(最初に俺が見た時の印象は…美雨と同じくヤクザ女のように見えたんだがな)

 

「…何か、よからぬ事を考えましたか?」

 

ムッとする表情を浮かべるななかから視線を逸らす尚紀の横でニコラスが耳打ちしてくる。

 

「ナオキ君、女の勘を敵に回さないほうがいい。私の妻も勘が鋭くて恐ろしかったよ」

 

「仕方ない…中に入れ。このは、お前は実力があるなら…俺の資金管理を任せてもいい」

 

「はいっ!!これから宜しくお願いしますね、嘉嶋代表!」

 

「尚紀でいい」

 

オフィスに入っていく三姉妹の背中を外で見つめる彼は心の中でこう呟く。

 

(孤児として生き、人間達の優しさに触れ、人間社会の大切さを知る…)

 

――()()()()()()()()()な…風華。

 

空を見上げていた時、優しい秋の風が吹き抜けた事で心が懐かしい気持ちとなっていく。

 

風実風華を感じる風が頬を撫でながら、思いを受け継ぐ姉妹達を彼に与えてくれるのであった。

 




読んで頂き、有難うございます。
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