ジョジョとのび太と真夜中のサーカス   作:マメルイージ

1 / 4
勝(とのび太)の幕
プロローグ サーカス団に入ろう


 2000年3月29日。

 春休みももうすぐ終わりだというのに、のび太は今日も部屋でダラダラしていた。

 一緒に古い漫画を読み漁っていたドラえもんが、ふと気付いて声をかける。

 

「のび太くん、宿題はいつやるの?」

「うーん、今日は気分が乗らないんだよね……」

「そう言ってずっとやってないじゃないか。勉強しなきゃ良い仕事に就けないよ」

「仕事だなんて、ピンとこないなぁ。僕まだ小学生だし……」

 

 漫画を開きつつ、ゴロリと寝転がりながらのび太は言った。対照的にドラえもんは漫画を閉じて姿勢を正す。

 

「将来を考えるのに早過ぎるってことは無いよ。もっとモチベーションを高く持たなきゃ。何かやりたい事とか、好きな事とか、目標とか無いの?」

「昼寝とかあやとりは好きだけど」

「そんなものが何の役に立つって言うんだい」

 

 呆れた様子で目を細めつつドラえもんがツッコむ。これを聞いたのび太はムッとしたように起き上がり、姿勢を正して反発する。

 

「ママだけじゃなくドラえもんまでそう言うんだ。好きな事を目標にして頑張れっていう癖に、僕の好きな事は役に立たないって否定するんだ。なんだいなんだい、不公平じゃないか」

「しかし世の中はそういう風に出来てるんだ……」

「じゃあ世の中の仕組みを変えればいい! ドラえもん、もしもボックス出して!」

 

 いつものように掌を差し出し道具をねだるのび太。

 

「現実から逃げたって仕方ないだろ……」

 

 会話が喧嘩の様相を帯びてきたそんな時、ドアを開けてのび太のママ、玉子が入ってきた。手には一枚のチラシを持っている。

 

「のびちゃん、ドラちゃん、今近くでサーカスをやってるんですって。興味あるかしら」

「サーカスだって!?」

 

 ガバッと音が立ちそうな勢いで立ち上がったのび太は、玉子からチラシをぶん取る。

 

『ストローサーカス 東京公演

 3月27日(月)〜6月4日(日)

 開演時刻:11:00、16:00

 演目:空中アクロバット、一輪車曲乗り、チンパンジーによる鉄棒芸、ジャグリング他』

 

 チラシの内容はこうだった。紅潮した顔でチラシを食い入るように見つめるのび太の目は、キラキラと輝いていた。

 

「随分食いつくわね。宿題が終わったら、見に行っても良いわよ」

 

 のび太の反応を見て玉子はにっこり笑うと、下の階へ戻っていった。

 

「これだ、これだよドラえもん!」

 

 のび太はチラシを乱暴に振り回しながら、ドラえもんの方へ膝を進める。

 

「なんだい、サーカスを見たいのかい?」

「見るんじゃなくて、入るんだよ、サーカスに!」

「へ?」

 

 ドラえもんは早くも、のび太が突拍子もない事を言い出した時の呆れた表情になっていたが、のび太は目を輝かせたまま、構わず続ける。

 

「サーカスは芸を見せる仕事だろ、だから僕の得意なあやとりや射撃が役に立つのさ!」

 

 そう言ってすっくと立ち上がり、大仰にポーズを取って見せた。

 

「ミスターのび太による変幻自在のあやとりショー! どんな的でも撃ち抜く百発百中の射撃ショー! どうだい、きっと大盛り上がりだよ!」

 

 ドラえもんはジト目のまま、低い声で窘める。

 

「あのねぇ、サーカスっていうのは芸が出来れば良い訳じゃないの。1日に何度も公演するから体力が無くっちゃいけないし、テントの設営に動物の世話、移動の準備と色んな仕事がある。そもそも子供はサーカスに入れない」

「ウソだね! 子供もサーカスにいるのをテレビで見たもの!」

「それは親が芸人って子だろ。子供は舞台に出ても給料は出ないし、学校にも行かなきゃいけないって法律で決まってる。勉強しなくていい楽な仕事なんて、そんな上手い話は無いんだよ」

「でもさ、サーカスに入ること自体は出来るんでしょ?」

「入れてもらえるようにこのサーカスにお願いするつもり?」

「そうだよ! 僕はもう決めたんだ!」

「何度も言うけど、芸を見せる以外に大変な仕事がたくさんあるんだよ? いいの?」

「構わないさ! サーカスこそ僕の天職だ!」

 

 断言するのび太を前に、ため息をつくドラえもん。

 

「ホント、変な所で決断力があるんだから」

 

 そうは言いつつも、顔には笑みが浮かんでいた。のび太が本気だと分かれば、ドラえもんは友達として本気で後押しをしてくれるロボットなのだ。

 

「君がそんなに言うなら聞きに行ってみればいいさ」

「やったーーー!」

「でも何にしろ宿題はやらないと。ママが外に出してくれないよ」

「うっ……うん、分かった、頑張るよ」

 

 それからドラえもんに手伝ってもらいつつ、必死に宿題に取り組んだのび太。両親が驚くほどの打ち込みぶりで、出来はともかく3月中に全てを片付けた。

 そして4月1日。

 

「じゃあママ、サーカスに行ってくるね!」

「行ってらっしゃい。車に気をつけてね」

 

 のび太はドラえもんを連れ、意気揚々とストローサーカスを目指し出掛けた。

 

 200年に渡って続いてきた、壮大な物語に巻き込まれることになるとも知らずに……

 

────────────────────────

 

「あの……クマさん。僕を……

 サーカスに、連れていってくれませんか……」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。