ジョジョとのび太と真夜中のサーカス   作:マメルイージ

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第2幕から大分時間が経ってしまい申し訳ありません。大変お待たせしました第3幕です。
一人しかご参加いただけませんでしたが、アンケート結果に従って展開いたします。


第3幕 人形使いとの邂逅

 トランクの少年を人形から逃すか、人形の攻撃に巻き込まれて怪我を負った人々の応急処置にあたるか。

 人形達を足止めしているころばし屋の弾数は残り僅か。切迫した状況の中、のび太は決断を迫られる。

 

「僕、ケガの手当てなんて出来ないよ!」

「大丈夫、丁度『お医者さんカバン』を持ってたんだ。これの指示通りに応急処置すれば失敗はしないよ」

 

 ポケットから取り出されたのは、手提げカバンの形をした白い機械。あらゆる傷病を正確に診断し、特効薬まで処方する高性能なひみつ道具である。これさえ有れば、のび太でも処置を誤る恐れは少ない。

 そもそも一貫してトランクの少年だけを狙っていた人形達に、治療側が襲われる可能性は低いと言える。この上誰がやっても確実に治療出来るのなら、どちらが楽な役割かは明白。そしてドラえもんは、のび太が治療にあたれと言わんばかりにお医者さんカバンを差し出していた。

 しかし、それ故にのび太は余計に迷った。このまま危険な役割をドラえもんに押し付けるなど、友達のする事か、と。彼の事は僕に任せて、と言いたかった。言おうとした。

 

(……ダメだ……)

 

 だが口を開こうとするたびに、数分前の光景が思い浮かぶ。空気砲が効かず、着ぐるみの青年が投げ飛ばされ、あわや少年を捕らわれかけた。3人がかりでもあの有様だったというのに、体力の無い自分一人でどうにかなるものか。

 時間が無いのは分かっていても、のび太の思考は堂々巡りするばかり。考えれば考えるほど自分の力不足が身に染みて悔しく、歯を食いしばる。

 

「……のび太くんは手当てをお願い。この子は僕が連れて逃げるよ」

 

 のび太には決められそうに無いと見たドラえもんが、とうとうはっきりと口にした。

 その時だった。

 

「ごめん……」

「え」

 

 のび太は聞いた。少年が消え入りそうな声で絞り出した謝罪の言葉を。そして感じた。少年がのび太の手を握る力が、痛いほど強くなった事を。

(君はせいじゃないのに)

 瞬間、のび太の心の内を占めていた感情が一変した。

 

「僕が行くよっ!」

 

 一歩踏み出しながら啖呵を切ったのび太自身、言ってから自分の発言に気付く程、まさに「口を突いて出た」言葉だった。隣で突然叫ばれた少年は驚きのあまり呆けた顔をしている。

 ドラえもんものび太の急な変化に目を丸くしたが、

 

「分かった。じゃあこのポケットを預けるから、上手くやってくれよ」

 

と、再確認はせずすぐさま腹の四次元ポケットを引き渡す。時間が惜しかったのもあるが、のび太にそんな物は不要だと確信していたからだった。

 

「任せて! さあ、行こう!」

「えっ、う、うん」

 

 のび太はポケットを自分の服の腹あたりに貼り付けると、少年の手を引き、少し先にある細い路地へと駆け込んでいった。

 その十数m上方。名も知らぬ小さなビルの屋上で、のび太達の動向を窺う人影があった。

 少年の方ばかり気にしているのび太も、既にお医者さんカバンを起動して治療を始めていたドラえもんも、その人影に気付く事は無かった。

 

─────────────────────────────────

 

 決意した勢いのまま弾けるように駆け出したのび太。少年を引き連れ入り組んだオフィス街の路地を滅茶苦茶に走り回った。しかし所詮は運動音痴。200mも走るとすっかり息が切れてしまい、脚がもつれて転んでしまった。

 

「だ、大丈夫!?」

「あはは……へっちゃらさ、このくらい」

 

 今度はのび太が少年の手を借りて立ち上がる。二人は息を整えながら急いで周囲を見回し、追手が姿を現さない事を確認した。

 

「よかった、逃げ切れたみたい」

 

 胸を撫で下ろしたのび太は、四次元ポケットを探り始めた。

 

「えっと、何してるの?」

「どこでもドアを出すんだよ。これで君を安全な所に送るんだ」

「うーん……?」

 

 少年はのび太が言っている事がイメージ出来ず、首を傾げる。

 

「そういえば君、名前は? 僕はのび太。野比のび太っていうんだ」

「あ、才賀 勝……です」

「勝くんだね、よろしく! お、あったあった」

 

 互いにようやくの自己紹介を済ますと、のび太がポケットからピンク色のドアを取り出した。道路の片隅にドアだけが鎮座する、珍妙な光景が広がる。

 

「ええっ!? それ、どうやって入れてたの!?」

「これは四次元ポケットだから、どんなに大きな物でも入るんだ。さあさあ、ドアに向かって行きたい場所を言ってみて」

 

 のび太は勝の手を取ってドアノブを掴ませつつ説明する。勝はしばらく考えると、

 

「ここから一番近いサーカス」

 

と口にした。のび太は思わず「え」と驚きの声を漏らす。何しろ勝はその一番近いサーカスのすぐ近くで襲われたのだ。敵地に戻るようなものである。

 

「それでいいの? もっとうーんと遠くでもいいんだよ?」

「うん、ちょっとあてがあるんだ」

「ふーん……まあいいや。開けてごらん」

 

 意図は分からないが勝の判断なのだからと自分を納得させたのび太は、どこでもドアを開けるよう勝に促す。勝が半信半疑、恐る恐るドアノブを回そうとした時だった。

 

 ガリガリガリガリガリ……!

 

 それは例えるなら、歯車式の装置を高速で動かした時のような、小刻みで激しい鳴動。明らかに異質で不穏な音に二人が振り返ると、

 

 

巨大な棍棒が横薙ぎに迫ってきていた。

 

 

「伏せて!」

 

 のび太が咄嗟に勝を押し倒し地に伏せた事で喰らわずに済んだが、棍棒はそのままどこでもドアの中央辺りに直撃。破砕はしなかったものの大きく歪み、数m先まで吹っ飛んでいった。

 

「ああっ、ドアが!」

 

 緊急脱出の手段が潰されてしまったが、それを嘆く事は状況が許さない。のび太は改めて棍棒の主へと目を向ける。

 その姿は、巨大で異形なピエロだった。とんがり帽子と邪悪な笑みを浮かべた鷲鼻の顔、異様に広い肩幅と長い腕に極端に細い腰、そしてとんがり靴を履いた四本の脚。猫背ながら高さは2mを優に超え、幅も乗用車ほどはある。

 のび太が視認したそれに何らかの感想を抱く間もなく、ピエロの左手に握られた棍棒が第二撃を見舞うが、のび太は勝を伴って地面を転がり、またも間一髪で回避する。そのまま地面に叩きつけられた一撃は道路の舗装を砕いてめり込み、飛び散った破片が2人の顔や腕を掠めていく。これが人体に当たっていたら……と、2人は肝を冷やした。

 

「よく避けたなボウズ。やっぱり只者じゃねえな」

「だ、誰だ!」

 

 ピエロの後ろからのび太に呼びかける声がする。見ればそこには黒いコートを纏った男が立っていた。痩身で長髪、顔も目も細く、冷たい笑みを浮かべている。

 その指先からは無数の糸が伸びており、辿るとピエロのあちこちに繋がっている。則ち、ピエロはこの男のマリオネット。それも、のび太が知るものとは比較にならない巨大なマリオネットだ。

 

「冥途の土産と思って教えてあげましょ。あたしは阿紫花(アシハナ)。見ての通り人形使いをやってるもんです」




というわけでのび太は勝と一緒に逃げることになりましたが、原作より早い阿紫花登場で大ピンチ。どうなる勝、どうなるのび太。

今回、心理描写が婉曲で分かりづらいかと思いますが、後々のび太に全部言わせるつもりですのでご安心ください。
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