ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツ   作:さくらおにぎり

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 初めての方ははじめまして、Pixivでご存知の方はこんにちは。
 Pixivの方から流転して来ました、さくらおにぎりと申します。
 つい最近に完結したガンダムビルドダイバーズの二次創作、『ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツ』を、こちらハーメルンにも投稿開始します。
 ただ、このハーメルンでは初めてのことだらけで試行錯誤しながら右往左往してばかりです。挿絵も投稿したいのにどうすればいいか模索中ですので、挿絵投稿の方法が分かり次第、そちらも用意します。
 なお、この小説に登場するオリキャラの多くは、Pixivの方で懇意にさせていただいている方々から募集していただいたものを使用しております。

 今すぐ続きが読みたい、と言う方はPixivの方へどうぞ。同名のさくらおにぎりで展開しております。
 ハーメルン一筋の方は、更新をお待ちくださいませ。

 と言うわけで皆さん、このさくらおにぎりを御贔屓に、気軽に気長によろしくお願いします。


1話 魂の始動

 ひらり、はらりと、桃色の花弁が舞い落ちた。

 舞い落ちたその場所は、学園内の体育館と併設された道場。

 胴着に身を固め、敷き詰められた畳の上に立つのは、赤みを帯びた黒髪の青年。

 彼ーー『クサナギ・ツルギ』は型通りの拳蹴を繰り出す。

 それらひとつひとつには一切の無駄が無く、なおかつ柔軟である。

 

「それでね、すっごいの!」

 

 そのツルギに嬉々として話し掛けるのは、彼の傍らで座り込んでいる、明るい茶髪の女子生徒『ヒメカワ・ハルナ』。

 

「もーホントにびっくりするくらいすごいんだから!」

 

「あのなハルナ、いくら俺がお前と付き合いの長い幼馴染みでも、その言い方じゃ何がすごいのかさっぱり分からん」

 

 そう言いながらも鍛錬の手足を止めないツルギ。

 

「まぁそう言わずに、ツルギくんも見てよ、この動画」

 

 ハルナは鞄のなかから、三角形の角を切り落としたような端末『ダイバーギア』を取り出す。

 

「分かった分かった……」

 

 しょうがねぇ奴だな、とぼやきながらツルギは鍛錬を止めて、タオルで汗を拭いながらハルナの隣に座り、そのダイバーギアの画面を覗く。

 

 再生される映像は、「今なお一番キテる遊び」と評される『ガンプラバトル・ネクサスオンライン』通称『GBN』の対戦動画のようだ。

 

「これはアレか?最近ハルナがハマり出したって、ガンダムのゲームか」

 

「そうそう、GBNね。去年の、第19回フォースバトルトーナメントの決勝戦だよ」

 

 架空の宇宙空間の中では、様々な色や形をしたガンダムのプラモデルーーガンプラが、集団同士の戦いを繰り広げる。

 ガンプラ、と言うよりガンダムについてもよくは知らないツルギでは、どれが何なのかがさっぱり分からないのだが、とりあえず見流してみる。

 ハルナがすごいと言うからには、まぁすごいのだろう。

 

 膠着状態が続いていた戦況が動き出す中、一機だけ銃も剣も持たずに丸腰で突っ込んでいくガンプラがいた。

 するとその丸腰のガンプラは、相対するガンプラからの砲撃を泳ぐように掻い潜って接近していく。

 

 その瞬間を、ツルギは見逃さなかった。

 

 間合いに踏み込んだのだろう、丸腰のガンプラは一瞬で距離を詰めると、なんと拳を繰り出した。

 

「!」

 

 その拳が敵ガンプラを一撃で打ち抜き、破壊した。

 ただ殴り付けただけではない、拳法としての"型"が、その拳にはあった。

 

「わたし的には、この紅いレギンレイズジュリアがーー」

 

 ハルナはツルギの様子にも気付かずに、自分が気に入ったガンプラのことを語り始める。

 しかし今のツルギにはそんな語りなど聞こえていない。

 

「(今の技は一体……?)」

 

 気が付けば既に勝敗が決まっていたようで、丸腰のガンプラのチームが勝利していた。

 

「……ねぇツルギくん、わたしの話聞いてた?」

 

 ハルナは訝しげにツルギを見やるが、そのツルギは停止した画面から目を離さずに口を開いた。

 

「ハルナ、もう一回再生してくれるか」

 

「え?いいけど……」

 

 ツルギの言うとおり、ハルナはもう一度最初から再生する。

 

 動画が進み、丸腰のガンプラがアップで映し出されたところで、ツルギは動画を一時停止するように頼んだ。

 

「ここだっ、止めてくれ」

 

「うん」

 

 ハルナがダイバーギアを操作して、ピタッと動画が止まる。

 

「こいつ、このガンプラって拳法技とか使うのか?」

 

 ツルギが指すのは、丸腰のガンプラ。

 

「え?このザクの改造ガンプラ?確かに素手で戦ってたけど……拳法技?えっと、ダイバー情報に載ってるかな?」

 

 ハルナは戸惑いながら、一旦動画を切り、別の画面を表示し、検索していく。

 

「えーっと……あ、この人かな?」

 

 画面には『ダークマスター』なるダイバーのプロフィールが表示されている。

 ツルギはそのプロフィールの内容にある文字の羅列を見る。

 

『次元覇王流拳法』と言う七文字を。

 

「次元覇王流拳法……ハルナ、この次元覇王流拳法って何か知ってるか?」

 

 ツルギはハルナにこれが何なのかを訊いて見るが、彼女は首を横に振った。

 

「うぅん、知らないよ?『Gガンダム』のアニメにも、こんな名前の拳法は無かったし……」

 

「そうか……」

 

 落胆も一瞬、ツルギは自分の鞄からケータイを取り出して、『次元覇王流拳法』と打ち込んで検索する。

 しかし検索結果は、先程に見たダークマスターと言うダイバーの公開されている範囲の情報しか現れず、具体的にどのような拳法なのかは全く見当たらない。

 

「ツルギくん、この次元覇王流拳法って言うの、気になるの?」

 

 ハルナは、ツルギとその彼のケータイを見比べる。

 

「俺は今まで、色んな武道や拳法を修めてきたが、こんな拳法は初めて聞いた」

 

 ツルギはダークマスターの公開プロフィールに目を落としたまま続ける。

 

「だがこれは、一般に知られない拳法なんだろう。だったら、その使い手に会うしか知ることが出来ない」

 

 右の拳を握り締めて、ハルナに向き直る。

 

「ハルナ、俺にGBNを教えてくれ!」

 

 

 

 

 

 ガンプラバトル・ネクサスオンライン。

 通称『GBN』。

 電脳仮想空間「ディメンション」内で、自らが創り上げたガンプラに乗り込み、ガンプラバトルを中心としたミッションを楽しむ、世界規模の最新ネットワークゲーム。

 二千万人近いユーザーを引き込むほどに熱狂的なゲームだが、それらの中には『マスダイバー』と言う不正行為を行う者も少なくなかった。

 

 サービス開始から十数年の時が経ったある時、『ブレイクデカール』と呼ばれる極めて秘匿性の高い不正ツールが蔓延した。

 違法にガンプラの性能を引き上げる反面、その正体は一種のデリートプログラムであり、その影響によって一時はGBNの崩壊の恐れもあった程だったが、ある一人のダイバーのガンプラが発現させた『光の翼』によってブレイクデカールを無効化、それをベースとしたパッチが開発されたことによって、一連の事件は一応の収束を見た。

 

 その後に電子生命体『ELダイバー・サラ』を巡ってのバトルや、直後のレイドボスの凶暴化事件も無事に収束し、GBNは元の姿を取り戻しーー否、新たな一歩を歩み出していた。

 

 それ以降も紆余曲折はあったものの、大きな問題が提起されることもなく、五年の時が経った今も、GBNの人気は変わらずーー否、年々上がり続けている。

 

 世界に名を馳せるダイバー達が歴史に名を残しながら、一人、また一人と表舞台から身を引いていく一方で、次の時代のダイバー達がバトンを受け取り、彼らの"魂"を紡いでいく。

 

 GBN20周年を迎えるその年に、一人の青年が降り立った。

 

 これは、『次元覇王流拳法』なる武術を求めるべくガンプラを手に取った武闘家と、彼を取り巻く次代のダイバー達の、魂の物語ーーーーー。

 

 

 

 

 日曜日。

 ハルナからの待ち合わせの場所と時間の通り、ツルギは駅前広場に来ていた。

 今日の目的は二つ。

 

 ひとつはGBNで活動するためのガンプラを作ること。

 

 もうひとつはGBNに慣れること。

 

 ツルギの最終目的は『次元覇王流拳法の会得』なのだが、そのためにGBNで動くための手足ーーガンプラが必要になる。

 そして、ダークマスターなるダイバーはトップレベルの実力を持っているため、その彼と接触する機会を得るために、ツルギも相応のダイバーにならなくてはならないだろう。

 とてつもない回り道だが、これも次元覇王流拳法の会得のためだと、ツルギ自身も受け入れるつもりだ。

 

 そろそろ、待ち合わせ時間の10時になる頃合いで、人並みからハルナがやって来る。

 

「ツルギくんおはよー」

 

「おぅ、おはようさん」

 

「それじゃ、早速ガンプラの聖地へレッツゴー♪」

 

 挨拶を交わしたところで、ハルナに目的の場所へ案内される。

 

 駅前から然程もないの距離にある『ガンダムベース』だ。

 以前までは東京にしかない施設であったが、GBNの絶大な人気によって、ガンプラやGBNの筐体の需要が爆発的に増えたために、世界各地にマイナーチェンジされた店舗が数多く展開されている。

 

 まずはツルギのガンプラ選びからだ。

 入店して真っ直ぐに販売ブースへ向かい、ガンプラの中でもオーソドックスなラインナップである『HG(1/144)シリーズ』のコーナーに足を向ける。

 

 

「格闘技が得意なツルギくんならゴッドガンダムかな?それとも剣道やってるならレッドフレーム?あ、ここは敢えて獅電って言うのもアリかな?」

 

 などと言いながら、ハルナの腕にはガンプラのパッケージが積み重なっていく。

 ツルギとの相性が良さそうなガンプラを見繕ってくれているのだろうが、いかんせん数が多い。

 あの様子では、まだまだ積み重なるだろう。

 そう判断したツルギは、あれやこれやとしているハルナを尻目に、一人でガンプラを見て回る。

 

「(しかし、どれが何なのかサッパリ分からんな……)」

 

 ガンダムとシャア専用ザクⅡぐらいしか知らないツルギでは、この無数と言っても過言ではない種類の中から選ぶのは難しいので、デザインを見て直感で判断するしかない。

 片っ端からパッケージを手にとって見ていてはそれこそ日が暮れるので、とりあえず見流していく。

 ーーその中で、ふと目に止まる名前を見つけた。

 

「ん?」

 

 それは『マスラオ』と言う、ガンダムの割には随分と和風な名前だ。

 パッケージを手に取って見れば、見た目からしてかなり風変わりなガンプラだった。

 

 まず、頭部の形状がまるで戦国武将の兜。

 華奢ささえ感じるひょろ長い四肢。

 黒を基調とした装甲を、赤い装飾が派手に彩る。

 銃火器の類などない、まともな武器は日本刀のような二本のビームサーベルだけ。

 極めつけは、パイロットは『ミスターブシドー』と言う、何の冗談かと思うようなネーミングだ。しかも仮面に派手な陣羽織付き。

 

 果たしてこんな変としか言えないものを欲しがる者がいるのだろうか、とツルギは声に出さずに腹の底で呟く。

 しかし仮にも自分が興味を持ったガンプラだ、このまま散策を続けたところで他のガンプラを選ぶことなどないだろう。

 見た感じ、接近戦を得意とする……と言うより接近戦しか出来なさそうなガンプラだが、ツルギにとってはちょうどいいかもしれない。

 ツルギは手にしていたそれを引っ張り出して、今なお積み重ねているだろうハルナの元へ向かう。

 

「おーい、ハルナ」

 

「バルバトスでも……あれ、ツルギくんいつの間に?」

 

 10個近くパッケージを重ねているハルナは、ツルギの声に振り返り、彼の手にしているパッケージを見る。

 

「あっ、マスラオスサノオがあったかぁ……盲点っ」

 

「一応聞くが、これはGBNに使えないってことはないよな?」

 

「うぅん、全然大丈夫。じゃ、それ買ったら作ろっか」

 

 ハルナの確認を得て、ツルギはそのガンプラ『マスラオ』を購入した。

 

 販売ブースから製作ブースへと移動し、ニッパーやヤスリなどを借りて、ツルギとハルナはマスラオの製作にかかる。

 ツルギはランナーをひとつずつ確認して、目を細めた。

 

「……これ、『スサノオ』って書いてるが、間違ってるとかじゃねぇよな?」

 

 確かにこのキットは『マスラオ』のはずだが、一部には何故かランナーの表記には『スサノオ』と書かれている。

 これはどういうことかと疑問に思ったツルギだが、ハルナは「あぁそれね」と頷く。

 

「マスラオは、スサノオってガンプラとほとんど同じだから、一部は使いまわしてるってだけ。だから、余っちゃうパーツもあるけど、大丈夫だよ」

 

「ふーん?」

 

 とにかく不良品か何かでは無さそうなので、ツルギは説明書通りに作り始める。

 

 

 

 作り始めてから1時間半が過ぎた頃。

 

「ふー……出来たな」

 

 一息つくツルギの手元には、黒紅の鎧武者、マスラオが立っている。

 ハルナからのアドバイスで、スミ入れをした以外はこれと言った塗装も改造も施されていないが、初心者が作ったにしては上出来な完成度だ。

 

「これでGBNが出来るようになるんだよな?」

 

 このマスラオを完成させたことで、今日の一つ目の目的は完遂。

 もう一つの目的である『GBNに慣れること』は、これからGBNにダイブしなければ出来ないことだ。

 

「その前にツルギくん。今は何時でしょう?」

 

「ん?12時前くらいだな」

 

 ツルギは振り返って時計を見て時刻を確認する。

 あと数分ほどで正午になる時間帯だ。

 

「それがどうかしたか?」

 

「昔の人はいいました。「腹が減っては戦は出来ぬ」と」

 

「あぁ、そういうことか」

 

 つまり、GBNを始める前に昼食を取りたいと言うことだ。

 一旦ガンダムベースを後にして、食事処へ行く。

 

 

 

 

 

 昼食を終えてから、ツルギとハルナは再びガンダムベースに訪れる。

 販売ブースのカウンターで、GBNへダイブするために必要な端末機器『ダイバーギア』を受け取り、ツルギ自身の情報を書き込む。

 それが終われば、いよいよGBNへダイブだ。

 

 専用のダイブルームに入れば、何人かがGBNをプレイしているようだが、二人分の筐体は空いているので問題ない。

 ツルギは筐体にダイバーギア、そして先程完成させたばかりのマスラオをセットする。

 ハルナもダイバーギアをセットするものの、ガンプラはセットしていない。

 

「ガンプラ無しでも出来るのか?」

 

「うん。ただ、出来ることは限られるけどね」

 

 それだけ交わしてから、ツルギとハルナはヘッドギアを装着し、GBNを起動、ログインしていく。

 

 

 

 ログインが完了したらしく、ディメンション内にダイブしたツルギは、様々な格好をした人々が行き交う、エントランスらしきエリアに到達する。

 

「ここがGBNか……」

 

 最初の初期設定で、とりあえず比較的自分に近い容姿と、侍を思わせる和装(オプションで太刀も付属していた)を選択したツルギは、キョロキョロと周りを見回してみる。

 人間型だけでなく、獣人やエルフ、さらにはゆるキャラのようなものまでいる。

 

「あ、ツルギくん?」

 

 ふと、声を掛けられてツルギはその声の方に振り返る。

 振り返った先には、見るからに「ハルナだ」と分かるようなダイバーがいた。

 ツルギと同じような和装だが、女性仕様なのか男性仕様の和装と比べても露出が多い。

 

「ハルナか。それに……」

 

 ハルナの一歩後ろには、もう一人ダイバーがいた。

 

 男女の判別がつかない中性的な容姿。

 神秘的な薄紫色の髪。

 身に纏う服は、清潔味のある青白くヒラヒラしたもの。

 

 ツルギは知らないが『ガンダム00』に登場する『イノベイド』のそれだ。

 

「あなたが、クサナギ・ツルギですね。お話はハルナからお伺いしています」

 

 彼(彼女?)は一歩前に出てハルナの隣に立つと、行儀良く一礼する。

 

「私は『ミツキ』。ご覧の通り中性です。今日は、GBN初心者のあなたのために、未熟ながらナビゲートを努めさせていただきます」

 

 ハルナからの口利きで、ツルギをナビゲートするように頼まれたようだ。

 

「クサナギ・ツルギです。こちらこそ、今日はよろしくお願いします」

 

 相手に倣うように、ツルギも深々と頭を下げて礼儀を示す。

 

「礼儀正しい方ですね。そう固くならなくとも結構です。普段通りでお願いします」

 

 ツルギとミツキ、双方の自己紹介を終えたところで、ハルナが話を切り出してくる。

 

「それじゃ、早速ミッションを受けてみよっか」

 

 ハルナの指すのは、このエントランスのほぼ中央に位置するカウンターテーブル。

 あそこからミッションを受注するようだ。

 

「チュートリアルミッションって言うのもあるけど、ツルギくんってゲームとか全然やらないでしょ?だから、まずは時間を気にせず思い切り動かせる、トレーニングモードがいいと思うの」

 

 ハルナが受付嬢に話しかけて、トレーニングモードを選択する。

 トレーニングモードとは、ミッションのように目的を達成して報酬を受け取るようなシステムではないが、フィールドやNPD機体の強さなども自由に設定可能であるため、好きなように好きなだけ戦えると言うものだ。

 

「はい、ツルギくんが自分で受けてね」

 

「おぅ」

 

 最終的な決定はツルギが決める。

 トレーニングモードの受注完了。

 

「では、格納庫で機体のチェックを行いましょう。コンソールパネルを開いて、移動コマンドを入力してください」

 

 ミツキが次の指示を出してくる。

 

「コンソールパネル?こうか」

 

 ツルギは軽く指先で押すような動作を見せると、手元に電子キーボードのようなものが現れる。

 表示されている移動コマンドを入力、続いて行き先が表示される。

 その中にある『Mobile suits deck』を選択すると、辺りの風景が切り替わり、無機質な金属的な壁に囲まれた場所に切り替わる。

 ハンガーには、ツルギのものらしいマスラオが、見上げるほどの大きさになって佇んでいる。

 

「これが、俺のマスラオか」

 

 まるで本物のマシンのように黒光りしている。

 

「私はギャラリーモードでナビゲーションを行いますので、後の細かい操作はハルナにお任せします」

 

 ミツキも自分のコンソールパネルを呼び出すと、何かしらの操作を行う。

 

「はいはーい、まっかせてね。じゃぁツルギくん、早速マスラオに乗ろっか」

 

「実際に乗り込むんだな」

 

 ハルナに諭され、ツルギはキャットウォークを渡り、開かれているマスラオのコクピットに滑り込む。

 座るようなシートはなく、立ったままで操縦を行うようだ。

 

「これか……」

 

 ツルギは目に見えている一対のアームレイカーを引き出してみる。

 すると、それに反応して次々にコンソール類が起動していく。

 不意に、ツルギの右手側のモニターが表示され、薄紫色の髪ーーミツキの顔が映る。

 

『こちらから失礼します。ツルギ、聞こえていますね?』

 

「あぁ、聞こえているし、顔も見えるぞ」

 

 モニターに顔を見せて応答する。

 

『私はここから説明するしか出来ないので、もしもの場合はハルナにお任せすることになっています。その辺りのご了承願います』

 

「ハルナ?」

 

「お邪魔しまーす」

 

 すると、まだ閉じられていなかったハッチから、ハルナもコクピットに入り込んでくる。

 

「あぁ、何かあったらハルナに代われってことか」

 

 ミツキのナビとツルギの技量だけで対処出来ない場合は、ハルナが操縦を代わると言うことだ。

 

「よろしくね♪」

 

 ひとまず、ハルナはツルギの隣につく。

 

『それでは、出撃しましょう。コンソールから、ミッションスタートのコマンドをどうぞ』

 

「ん、これだな」

 

 コンソールパネルを引き出し、『Mission start』と言う表示をタッチする。

 すると、ツルギとハルナの搭乗しているマスラオがハンガーから降ろされ、リニアカタパルトへ配置される。

 カタパルトのハッチが開き、カタパルトレールが展開、表示が全てオールグリーンに表示される。

 

『カタパルト展開、出撃どうぞ』

 

「どうやって発進するんだ?」

 

 出撃準備は整ったが、どうやって発進するのかとツルギはモニター越しのミツキの顔とコンソールパネルを見比べる。

 それは、ハルナが答えてくれた。

 

「音声入力だよ。ほら、行きまーすってアレ。設定すれば音声入力無しでも発進出来るけど、どうせやるなら、ね」

 

「なるほどな」

 

 理解したツルギは、深呼吸してアームレイカーを握り直す。

 

「ツルギ、マスラオ、参るッ!」

 

 ツルギがそう発することによって、リニアカタパルトが起動、火花を上げながらマスラオが打ち出される。

 

ベース基地から放たれたマスラオは、各部から放たれる朱い光粒子ーー疑似GN粒子ーーを放出しながら、蒼空を翔ぶ。

 

「これはすげぇな、ゲームだって分かってても、本物みてぇだ」

 

 ツルギはモニター越しのリアルなGBNの世界を見通す。

 

「でしょでしょ?」

 

 隣でハルナも嬉しそうにはしゃいでいる。

 

「で、出撃したのはいいがトレーニングモードってのはどこでやるんだ?」

 

 ツルギはモニター越しのミツキに問いかける。

 

『まずはこのまま真っ直ぐに進んでください。ドーム状の光が見えます。そこが、バトルフィールドの境界線です』

 

「ドーム状の光……あれか」

 

 ミツキのナビゲート通り、前方にドーム状のラインが見えてきた。

 あれを越えると、トレーニングモードが開始されるらしい。

 速度はこのまま、マスラオは真っ直ぐにラインを突っ切る。

 

 トレーニングモード、スタート。

 

『では、まずは着地してみましょう。アームレイカーをゆっくりと下げてください』

 

「着、地……」

 

 ミツキの指示に従い、ツルギは握ったアームレイカーを少しずつ引き下げていく。

 次第にマスラオの速度と高度が下がり始め、やがてマスラオのフット裏が接地する。

 

 半ば崩壊したコロシアムの中のようだ。

 

『それではトレーニングモード、スタートです。思う存分、機体を動かしてみてください』

 

「よし」

 

 周囲に敵機の反応はない。

 誰にも邪魔されずに、のびのびとプレイ出来ると言うわけだ。

 

 まずは両腕を上げてみる。

 

「両手上げ、挙動よーし」

 

 挙動を確認。

 次に歩く、走る、跳ねる、腰の捻り、股関節の可動、首も回してみるなど、基本的な運動を確かめていく。

 

「……こんなもんか」

 

「大体慣れた?」

 

 隣からハルナが調子を聞いてくる。

 

「まぁ、どこをどう動かしたらどこが動くのかは分かった」

 

「じゃぁ、ちょっと戦ってみよっか。一応、レベルは低めにするね」

 

 ハルナが横からコンソールパネルを操作する。

 数回の入力とスライドを行うと、マスラオの前方から、ライトブルーとグレーのツートーンカラーをしたシンプルなガンプラ、『NPDリーオー』が現れる。

 AI制御による無人機であり、ディメンション内で最もよく見受けられる機体だ。

 

「さぁ、ツルギくんファイト!」

 

 操作を終えたハルナは再びツルギの隣に引っ込む。

 

「よし……」

 

 ツルギはコンソールからフォルダを引き出し、剣状のアイコンが表示されたそれをダブルセレクトする。

 すると、マスラオのサイドスラスター内部から、日本刀の柄のようなそれが飛び出し、マスラオのマニュピレーターがそれをキャッチ、鍔に当たる部位から、やや反り返った朱色のビームサーベルが発振される。

 マスラオ特有のGNビームサーベル『ハワード』と『ダリル』だ。

 

 

 一拍を置いてから、NPDリーオーは手にした105mmマシンガンを撃ちながら前進してくる。

 ツルギはアームレイカーを右に捻り、それに合わせてマスラオも大きく右から回り込むように迂回して機動する。

 一定の距離まで接近されたか、NPDリーオーは105mmマシンガンによる射撃の手を止めて、左手にビームサーベルを抜き放ち、マスラオを迎え撃つ。

 

「うおぉっ」

 

 マスラオが振り下ろした『ハワード』と、NPDリーオーのビームサーベルが衝突し、両者の間にスパークを撒き散らす。

 ビームサーベル同士による鍔迫り合いが数秒続いたところで、マスラオは左手の『ダリル』を振り上げて、NPDリーオーのビームサーベルを持った左腕を斬り飛ばす。

 ビームサーベルを失ったNPDリーオーは、後退りながら105mmマシンガンを向けようとするが、すかさずマスラオはそれに『ハワード』を突き立て、105mmマシンガンも破壊する。

 いよいよ何も出来なくなって棒立ちになるNPDリーオー。

 マスラオは『ハワード』『ダリル』の両方を振り下ろし、NPDリーオーを両断した。

 

 NPDリーオー、撃墜。

 

「ま、こんなもんか」

 

 ツルギは一息ついてから、マスラオに『ハワード』『ダリル』を納めさせる。

 

「操縦に関してはもう大丈夫そうだね。まだトレーニングモード続ける?それとも、ベース基地に戻る?」

 

「そうだな、こうしたらこう動くってのは分かったんだし、後は実戦しながら……」

 

 と言いかけた、

 その時だった。

 

 コンソールの左側面から、『CAUTION!!』の黄色い表示が、鳴り響く。

 

「アラートッ?」

 

 ハルナはそのアラートを見聞きしてすぐに反応する。

 

「何だ、何か起こった?」

 

 ツルギもその左側面を見やる。

 すると、遠方から何かが近付いてくる。

 

 青と白のツートーンカラーの、ガンダムーーアレックスーーだ。

 

「ハルナ、アレもNPDの仲間か?」

 

「うぅん、そんな設定してないけど……」

 

 ハルナは側面のモニターからミツキを呼び出す。

 

「ミツキくん、トレーニングモードは乱入とかないはずだよね?」

 

『そのはずですが……おかしいですね』

 

 ミツキも何が起きているのか把握出来ていないようだ。

 

「何も起きなきゃそれでいいが……」

 

 しかし、ツルギの懸念に反して、アレックスは真っ直ぐにマスラオへと向かってきている。

 確実に、ロックオンされている。

 アレックスもコロシアムに侵入すると、相手からの広域通信が届く。

 

『そこのマスラオのダイバー、君が僕の相手か?』

 

 右手のビームライフルを向けながら、ツルギに問い掛けてくる。

 

「待て、言いたいことがあるのはこっちだ。まさか、トレーニングモードに乱入してきたとか言うなよ?」

 

 ミツキのナビゲートが間違いで無ければ、トレーニングモードでは他のダイバーからの干渉を受けないはずだが、どう言うわけか目の前の相手はツルギのマスラオをターゲットにしている。

 

『トレーニングモードだと?何を言っている、これはフリーバトルだぞ?』

 

「はぁ?フリーバトル?俺は、トレーニングモードを選択したはずだが……ミツキ、何がどうなってるんだ?」

 

 ツルギはモニターの向こう側のミツキに訊いてみるが、そのミツキも的を得ていないような顔をして『待ってください、私にも……』などと視線を左右させている。

 何か行き違いが起きているようだが、この膠着を破ったのはアレックスのダイバーの方だった。

 

『初心者……さては、マスダイバーか?』

 

「は?マス、なんだって?」

 

『惚けても無駄だ。大方、不正なツールを使ってトレーニングモードに介入、初心者狩りでもしていたのだろう?』

 

 アレックスのダイバーは何か盛大に勘違いをしているらしい。

 

「なっ、ちょっと待てっ、こっちは本当に初心者……っ」

 

「ツルギくん代わってッ!」

 

 ハルナはツルギを押し退けてアームレイカーを奪い取った。

 

『なら残念だったな、僕は初心者じゃないんだ』

 

 アレックスは何の躊躇いもなくビームライフルの引き金を引き、銃口からビームが放たれる。

 しかしハルナが代わったおかげで、どうにか回避に成功する。

 

「ちょっとっ、思い込みだけで攻撃してこないでよ!」

 

 反論するハルナだが既に相手は聞く耳を持っておらず、何発もビームライフルを撃ってくる。

 ミツキも対応を急ぎ、ギャラリーモードを通じてアレックスのダイバーに通信を繋ぐ。

 

『IDナンバー541509、ダイバーネーム『リヒター』ですね?こちらは正式にトレーニングモードを受注して行っているものです。今すぐ攻撃を中止してください』

 

 正当な理由を持って、リヒターと言うらしいアレックスのダイバーを説得しようとするが、

 

『ならば何故フリーバトルに干渉している?バグが原因だと言うなら、初心者や下位ランカーのマスダイバーが手に染める、ブレイクデカールの類ではないのかい?』

 

 マスダイバーだのブレイクデカールだのと、ツルギからすれば分けの分からないことばかりを並べては一方的に「相手が悪い」と決めつけては、ミツキの話も聞いていない。

 この手の類は、自己完結して他の意見を聞き入れない、質の悪い相手だ。

 なおもビームライフルを撃ってくるアレックスに対して、ハルナの駆るマスラオは危なげにビームを避けていく。

 

『ふん、チョロチョロと……逃げ足だけは立派だな、マスダイバー』

 

 それなら、とアレックスはビームライフルを納めて、バックパックからビームサーベルを抜刀、マスラオへ突撃してくる。

 

「接近戦なら、なんとかっ」

 

 瞬間、マスラオの『ハワード』と、アレックスのビームサーベルが激突し、コロシアムに閃光の乱反射を撒き散らす。

 鍔迫り合いにはならず、双方が弾き合う。

 

「このぉっ!」

 

 ハルナのマスラオは反撃にもう片方のGNビームサーベル『ダリル』を繰り出そうとする。

 しかしそれよりも早く、アレックスが左手のシールドで体当たりを仕掛け、マスラオを弾き飛ばす。

 

「きゃっ!?」

 

「うおっ!」

 

 シールドバッシュを喰らった衝撃が、コクピット内に響く。

 弾かれながらも、マスラオはどうにか足を踏ん張って体勢が崩れるのを防ぐ。

 

『その程度のガンプラで!』

 

 さらに追撃してくるアレックス。

 迎え撃つべく、マスラオは『ダリル』をもう一度振るうものの、ビーム刃がアレックスに到達するよりも先に、向こうのビームサーベルの切っ先が、『ダリル』を突き飛ばす。

 

「あっ……」

 

『ダリル』を失ったことに動揺するハルナだが、そんな余裕など与えるものかと、アレックスはさらに踏み込んでビームサーベルを振り抜いてくる。

 これに対して、咄嗟に残った『ハワード』で受け止めるマスラオ。

 しかし、咄嗟の受けでは踏ん張りが聞かず、『ハワード』ごと吹き飛ばされ、背中から地面を削る。

 

『ハルナ、トレーニングモードを中止します。バトルフィールドの境界の外まで逃げられますか?』

 

 ミツキからの通信が届くが、ハルナはそれが聞こえていない。

 

『ハワード』も『ダリル』も失った。

 

 ビームチャクラム発生機である頭部のクラビカルアンテナはまだあるものの、これだけでアレックスを倒すのは無理がある。

 

『もうおしまいだ。恨むなら、不正に手を染めた自分の愚かさを恨むんだね』

 

 勝者の余裕故か、アレックスはゆっくりと歩み寄ってはビームサーベルを突き付けてくる。

 

「……ごめん、ツルギくん」

 

 俯いたまま、ハルナはツルギに謝罪の言葉を吐いた。

 

「せっかく、GBNやるって言ってくれたのに、こんなんじゃ……」

 

 初めてのGBNで、こんな分けの分からないトラブルに巻き込まれて、一方的に悪と決めつけられ、まだ何も出来ていないままに敗北してしまう。

 そんな申し訳無さを懺悔している。

 

 アレックスのビームサーベルの切っ先が、マスラオのバイタルバートを焼く、その寸前。

 

「……俺に代われ、ハルナッ!!」

 

 ツルギはハルナからアームレイカーを奪い返した。

 手に取り戻すと同時に、ツルギは行動に出る。

 取り戻したアームレイカーを一気に引き下げると、それに呼応するように仰向けで倒れていたマスラオは跳ね起きて、アレックスのビームサーベルを躱す。

 

「ツ、ツルギくんっ!?」

 

「まだ着いてもない勝負を、途中で放り出すのは好きじゃねぇんだ!」

 

 跳ね起きてから流れるように距離を置いてアレックスと対峙し直すマスラオ。

 

『えぇぃっ、往生際の悪い……』

 

 全ての武器が健在であるアレックスと、主武装である二本のGNビームサーベルを失ったマスラオ。

 圧倒敵不利なのは後者。

 しかしツルギはそんな不利など関係ないと言うように、マスラオに構えを取らせる。

 

「こうやって、こうして……こうだっ」

 

 半身の姿勢に、右手を下げて、左手を前に。

 

 ビームサーベルとシールドを構え直したアレックスは、真っ直ぐに咄咸してくる。

 

『悪足掻きだなぁ!』

 

 迫りくるアレックス。

 だが、マスラオは動かない。

 

 間合いに入り、突き出されるビームサーベル。

 その瞬間、リヒターの視界からマスラオが"消えた"。

 

『なっ……!?』

 

 消えたように見えたのは、ビームサーベルを喰らう寸前に、マスラオがアレックスの懐へ滑り込んだからだ。

 その懐へ、マスラオは控えていた右手を拳へと変えてーー

 

「胴ッ!!」

 

 アレックスの腹部に叩き込んだ。

 重心移動、足腰と腕の捻り、そしてツルギの烈迫と共に放たれたその一撃は、アレックスの腹部装甲をへしゃげさせ、さらに弾丸のようにぶっ飛ばす。

 

『ぅぐわぁッ!?』

 

 あまりにも強烈な一撃をまともに直撃したせいか、アレックスはコロシアムを破壊しながら派手に転がり倒れる。

 

『なっ、なんだ今の動きは!?』

 

 どうにかアレックスを起き上がらせるリヒター。

 何が起きたのか理解しきれていない相手のことなど知らずに、ツルギは辺りを見回す。

 

「サーベルは……あれかっ」

 

 その方向へ手を伸ばせば、『ハワード』がマスラオのマニュピレーターに戻る。

 アレックスへ向き直れば、ビームサーベルを持ったままで右腕の装甲を開いた。

 腕部内に格納されている、90mmガトリング砲だ。

 それをマスラオに向けている。

 

『僕を本気にさせたな!?』

 

 マスラオは『ハワード』を両手に握ると、上段に構え直す。

 放たれるアレックスからのガトリング砲。

 襲い来る90mmの銃弾の嵐に対して、マスラオは瞬時に地面を蹴って往なし、減速することなくアレックスへ肉迫していく。

 

『クソッ、クソッ、クソッ!どうして当たらない!?』

 

 撃っても撃ってもガトリング砲は当たらない、当たる寸前でマスラオは地面を蹴って躱し、躱しながら迫ってくる。

 

 自分の攻撃が通じないと言う、焦りに似た恐怖。

 

 ガトリング砲の射撃を止めてビームサーベルを構え直すアレックス。

 だが、そこは既にマスラオの間合い。

 

『なめるなよッ!』

 

 アレックスはビームサーベルを振り下ろし、マスラオもそれを迎え撃つ。

 激突、しかしマスラオはアレックスのビームサーベルを受け流し、そしてーー

 

「小手ェッ!」

 

 瞬時に『ハワード』を突き出した。

『ハワード』の切っ先がアレックスのマニュピレーターを貫き、ビームサーベルのホルダーもろとも破壊した。

 

『ッ!?』

 

 リヒターは驚愕のあまり動揺して操縦の手を止めてしまった。

 ビームサーベルを失ったことへの動揺ではない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「面ッ!」

 

 次の瞬間には上段の構えから、目にも止まらぬ踏み込みと共に放たれる斬撃。

『ハワード』の一閃が、アレックスの頭部を焼き潰した。

 

『なっ、ぁっ……』

 

 頭部を失ったアレックスは、まともな視界を失って狼狽えるように一歩下がる。

 

「突きィッ!」

 

 間髪なくマスラオは『ハワード』をアレックスの胸部へ突き立てようと迫るが、寸前でアレックスのシールドに防ぎ止められた。

 同時にアレックスはシールドを左腕から切り離し、後方へ飛び下がってマスラオから距離を取る。

 

『クソッ、ふざけるなよこのマスダイバーめ!』

 

 アレックスは両腕とも展開し、左右同時にガトリング砲を撃ちまくる。

 

『貴様のような卑怯者に、僕は負けるわけにはいか……』

 

「誰が卑怯者だッ!!」

 

 悪態をつくリヒターに、ツルギはたたっ斬るように叫んで遮る。

 

「さっきっから黙って聞いてりゃ、不正だの卑怯者だのマスダイバーだのブレイクデカールだの……」

 

 襲いかかる銃弾の暴風に対して、マスラオは姿勢を低くし、地を這うような機動で銃弾を潜り抜けていく。

 

 

 

「人に濡れ衣押し付けて初心者狩りしてんのはてめぇの方だろうがッ!!」

 

 

 

 

 

 間合いに踏み込んだマスラオは再び重心を入れ替えて、今度は『ハワード』を左から右へ薙ぎ払った。

 

「胴ぉぉぉぉぉッ!!」

 

 朱色の閃光が、アレックスのボディを真っ二つに斬り裂き、すれ違うようにマスラオはアレックスの後ろへ立つ。

 

『そっ、そんなっ、この僕がぁぁぁぁぁ!?』

 

 マスラオの背後で、コクピットごと動力部を焼き斬られたアレックスは、一拍を置いて爆ぜ散った。

 

 アレックス、撃墜。

 

「はー……、なんとかなったか」

 

 緊張を吐き出すように、ツルギは一息ついた。

 

「さすがにもう大丈夫だよな、ハルナ?」

 

 目先の外敵を排除したとは言え、また敵が現れないとも限らない。

 しかし一安心するくらいの余裕は出来るだろうとして、ツルギはハルナに声を掛けるが、

 

「……」

 

 そのハルナは、ぼーっとツルギのことを見つめていた。

 

「ハルナ?俺がどうかしたか?」

 

「……はっ」

 

 ようやく我に返ったのか、ハルナの目の焦点がツルギと合う。 

 

「す……凄いよツルギくんっ!初心者なのに、いきなり相手倒しちゃった!」

 

 我に返ったと思えば、手放しに喜ぶハルナ。

 

「って言うか、今の格闘術って……」

 

「日本拳法と剣道だ。ゲームで再現出来るかどうかぶっつけ本番で試してみたが、けっこう動いてくれるもんだな」

 

 ツルギの先程の動き。

 それは、彼自身が身につけてきた格闘技を再現したもの。

 GBNのシステムは、ツルギの一挙手一投足を完璧に読み取り、マスラオが持つ本来のパワー以上の力を引き出したのだ。

 

「えっと、どうする?トレーニングモード続ける?」

 

「いや、もう操縦は覚えた」

 

 と言うより、さっきの戦いでスパルタ的に叩き込まれたと言うべきか。

 

「じゃぁ、フィールドの外に出て、ベース基地に戻ろっか」

 

「よし」

 

『ハワード』を納め、『ダリル』も回収してから、マスラオは踵を返して飛行、コロシアムを後にしていく。

 

ベース基地に帰投し、マスラオを格納庫に降ろしたところで真っ先に迎えに来てくれたのは、ミツキだった。

 

「お二人ともお疲れ様です」

 

 労いの言葉を先に置いてから、ミツキはツルギに向き直った。

 

「先程、運営にこのことを通達しましたが、どうもエラーが発生したせいでトレーニングモードとフリーバトルの回線が混在してしまったようです」

 

「なんだそりゃ……まぁ、結果オーライだったからいいが」

 

「それよりも、先程の格闘技、お見事です。何か、武道を習っているのですか?」

 

 ミツキの問いかけに対して、ツルギは何でもないように答える。

 

「まぁ、小学校に入った頃に剣道、柔道、空手、日本拳法。中学になってからは、薙刀や弓道、少林寺拳法もやって来たな」

 

「それは……まさに武道のエキスパートだと言うことですね」

 

 どおりでお強いはずです、とミツキは感心したように頷く。

 

「そうだよ、ツルギくんは強いんだからね」

 

「なんでそこでお前が偉そうになるんだよ」

 

 まるで自分のことのように言ってのけるハルナにツッコミを入れるツルギ。

 

「あっ、そうそうツルギくん……」

 

 ハルナは得意そうな顔から、心配そうな表情になる。

 

「GBNの初デビューがこんな形になっちゃったけど……」

 

「あぁ、それは気にしてねぇよ。元々、次元覇王流拳法のために始めたようなもんなんだ」

 

 だからハルナも気にすんな、とポンポンと軽く彼女の頭に触れる。

 

「そっか。……えへ」

 

 ツルギがGBNを続けてくれることへの安堵に、ハルナは小さく肩をすくめる。

 

「そっ、そうだっ。まだ時間あるし、今度はチュートリアルミッション受けてみる?」

 

 ミツキのいる前でツルギに触れられているのが気恥ずかしくなって、ハルナはふと思いついたように話題を変える(見ていたミツキが気にした様子は無かったが)。

 トレーニングモードはミッションではないので、クリア報酬やボーナスポイントの類は入手出来ない。

 これから先、ランクを上げていくにはミッションをこなし、時には相手ダイバーを撃破していく必要がある。

 ランクを上げなければ、ツルギの求める次元覇王流拳法の使い手である『ダークマスター』なるダイバーの元には辿り着けないだろう。

 

「そうだな。なら、エントランスへ戻るか」

 

 ハルナの提案に頷いたツルギは、コンソールパネルを呼び出して、エントランスへ移動しようとするが、その前にミツキに向き直る。

 

「ナビゲートはもう大丈夫だが、ミツキはどうする?」

 

「いえ、私はそろそろログアウトするつもりですので。後はご自由にどうぞ」

 

 ツルギのナビゲートと言う目的を果たしたミツキは、他に目的もないのでログアウトするようだ。

 

「そうか。ありがとうな、今日は付き合ってもらって」

 

「どういたしまして。と言っても、あまりお役には立てませんでしたが」

 

 ミツキは一礼してから、ログアウトの準備に入る。

 

「では、私はこれにて失礼します。お二人とも、楽しむのは結構ですが、やり過ぎに注意してくださいね」

 

「分かってる分かってる。ばいばい、ミツキくん」

 

 ハルナは苦笑しながら手を振る。

 ツルギもそれに合わせて軽く手を振れば、ログアウトしたのだろう、ミツキの姿が消える。

 

「じゃぁ、行こっか」

 

「おう」

 

 ミツキを見送ってから、ツルギとハルナはエントランスへ移動する。

 

 

 

 先程にも訪れたミッションカウンターで、チュートリアルミッション『ガンプラ、大地に立つ』を選択するツルギ。

 ネーミングからして、コロニー内に現れた三機のザクⅡの内、二機を撃墜すればクリアしそうなミッションだが、残念ながらミッションに現れるエネミーはNPDリーオーである。

 ミッションを受注、トレーニングモードと同様に格納庫へ移動し、再びマスラオに乗り込む。もちろん、ハルナも一緒にだ。

 

「ツルギ、マスラオ、参るッ!」

 

 

そしてーーーーー次代のダイバー達もまた動き出す。

 

 

 

 

「お姉ちゃん?どこに行くの?」

 

「んー、そうね。『とっても楽しいところ』ね」

 

 唯一無二の矢が、舞い躍る。

 

 

 

 

 

「ここがボクの、新しい世界……」

 

 北の国より、少年は往く。

 

 

 

 

 

「俺は必ずそこへ行く……待っていろ」

 

 鞘より放たれた鍔が、空を裂く。

 

 

 

 

 

「華麗に、優雅に、そして堂々と、ですわ!」

 

 高貴なる姫騎士は、戦場に誇りを掲げた。

 

 

 

 

 

「どいつもこいつも、喧嘩のやり甲斐があるぜェ!」

 

 正義の喧嘩番長とは、拳で全てを語るもの。

 

 

 

 

 

「美しいものは美しいもの。例えそれが、外面だけが綺麗な偽りの世界でも」

 

 紫陽花は、雨上がりの虹に蕾を開く。

 

 

 

 

 

「示す時が来たのだ。偉大なる私の力をな」

 

 鋼鉄の羊飼いに従うは、殺戮の人形達。

 

 

 

 

 

「うるせぇバカ野郎!いいからいっぺん地獄に行って来い!」

 

 地獄を生き抜いた戦士は、今なお戦いへ身を投じる。

 

 

 

 

 

「時代の動く時、か……面白いことになりそうだ」

 

 影は闇の中で、静かに胎動する。

 

 

 

 

 

 今、魂が燃ゆる時ーーーー。

 

 

 

 

 

【次回予告】

 

 ツルギ「いきなり変な奴に突っかかられたが、なんとかなったから良しとするか。目指すは、次元覇王流拳法!」

 

 ハルナ「ねぇねぇツルギくん。私、GBN友達いるから誘ってもいいかな?」

 

 ツルギ「ん?そりゃ構わねぇけど……二人も来るのか?しかもやるのは、二対二のタッグマッチだってな!?

 次回、ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツ

 

『肩を並べて背中を預けて』

 

 いざ勝負!誰が相手でも負けはしねぇ!」





 ひとまずの、1話です。
 挿絵のイラストとか加工画像ってどうやって投稿するんだろう、と思いつつ、まぁまだ改造ガンプラも出てませんから皆様の脳内イメージで補完出来るかなーと信じて、先駆けて投稿しました。
 ひょっとしたら一度削除しての再投稿をするかもしれません。
 ハーメルンで出来る事を探りながらの投稿な上に、メインはPixivでの活動ですので、そこは気軽に気長にお待ちください。
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