ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツ   作:さくらおにぎり

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12話 反マスダイバー連合軍

 フォースネストの購入権を手にしたフォース・スピリッツの面々。

 では早速フォースネストに入り、名物の温泉を……と言いたいところだが、ローランとミツキの言う『例の会合』と言う言葉が気に掛かったサヤの意見によって、ツルギ達はローラン達フォース・サンダーバードのメンバーとメンテナンスハンガーで整備の終えたガンプラを移動させ、ミツキが手配していた海上移動用の輸送艦に乗り込んで積載、そのまま移動していく。

 フォースネストの購入権に関しては、ミツキが既に申請を提出、予約まで完了させているので、後はフォース・スピリッツが指定金額を支払うだけで良いよう根回しがされている。

 

 その移動の途中、輸送艦のレストルームでダイバー達は集まっていた。

 

「それで、その『例の会合』ってのは何のことですか?」

 

 開口一番、ツルギがローランに問う。

 例の会合と言う言葉を知っているのは、ローラン達とミツキだけで、ツルギ達は知らない。

 ただ分かるのは、ミツキとローランが意図的にツルギ達を呼び込んだわけではないということだけだ。

 

「そうだな、話の前にまずはこれを見てくれるか?」

 

 ローランはコンソールパネルを打ち込み、部屋の大型モニターに映像を映す。

 

 画面の中には、紫色のオーラを纏いながら銀色の金属物質に侵されたガンプラの数々と、それと対峙している通常のガンプラ達の戦闘だった。

 

「君達も出会したことがあるだろう?この、ブレイクデカールに酷似した、変異現象を起こしたガンプラを」

 

 ローランの言葉に、ツルギ達全員が頷く。

 変異現象を起こしているガンプラ達は、攻撃を受けて破損しようとも、すぐさま破損部位を侵食させて修復させている。

 

「私達は、この不正ツールを『新型ブレイクデカール』と呼称している。……かつて、完全に消えたはずのブレイクデカールが、再びこのGBNに蔓延しつつある。この事態を放置しておけば、恐らくまたGBNは崩壊の危機を迎えるだろう」

 

 新型ブレイクデカール。

 それが、この変異現象を起こす不正ツールの仮の呼称だと言う。

 

「新型ブレイクデカールが、"新型"であるその所以とは?」

 

 その五年前当時のダイバーでもあるサヤが挙手する。

 それに関してはミツキが答えてくれた。

 

「旧ブレイクデカールと同等の隠蔽力、秘匿性をそのままに、最新の修正パッチすらスルーする透過性も然ることですが、それよりも恐るべきなのは、その拡散速度にあります」

 

 ミツキもコンソールパネルを開き、戦闘中の映像を一時停止させ、大型モニターにデータを映す。

 

「従来品のモノと比較して、異常な速度で拡散しており、ダイバー個人が渡し回っているにしては、あまりにも早過ぎるものだと見ています」

 

 二つのゲージの内、『Old』と表示されている数値の上昇は緩やかだが、『New』と表示されている数値の上昇は、前者と比べて明らかに早い。

 

「仮説として、新型ブレイクデカールは個人の手による配布だけではなく、受け取ったダイバーからまた別のダイバーへコピーされて渡される、『ネズミ算』の可能性が高いとされているのが現状です」

 

 つまり、新型ブレイクデカールの作成者が、誰か一人にそれを渡せば、後は何もしなくても、渡されたダイバーが勝手に新型ブレイクデカールを複製、それをまた他人に渡すことでユニットが増えていく、と言うものだ。

 

 その上から、ローランがまた別のデータを上乗せして映す。

 

「新型ブレイクデカールの増殖……その筆頭となっているのが、このマスダイバーフォース『キバ軍団』だ」

 

 ローランが映したデータには、キバ軍団なるフォースリーダーだろう、『キバ』と言う人相の悪いダイバーの顔画像が映し出されている。

 

「キバ軍団って、確か……」

 

 そのフォース名を聞いて、ハルナがユイを見る。

 

「えぇ……確か、カイドウ先生が言ってた、非公式マスダイバーフォースって」

 

 ハルナとユイの会話を聞いて、ローランは目を丸くする。

 

「ん?君達は、カイドウ先生とは知り合いだったのか?」

 

 カイドウと知り合いだったのかと聞かれ、ミーシャは困ったように眉の端を落とす。

 

「知り合いも何も、僕らの学校の用務員さんです。GBNのシミュレーションで、まぁ……メチャクチャしごかれましたけど」

 

「あぁ、あの『地獄の修練』だろう?私もアレをやって酷い目に遭わされてなぁ……」

 

 カイドウの『地獄の修練』と聞いて、ローランが遠い目になる。

 あのムリゲークソゲーっぷりを思い知らされた者ならではの反応だろう。

 話が逸れたな、とローランは話を戻す。

 

「今回の会合には、カイドウ先生を含めた腕利き、または有志のフォース達が一堂に会するものだ。ちょうど、五年前の『有志連合』と同じようにな」

 

 その後をミツキが補足する。

 

「この輸送艦は、連合軍の会合場である、オーストラリア・サーバーの『アデレート』に向かっています。サーバー移動に関しては、艦船専用のサーバーゲートを通過するので、問題ありません」

 

「アデレート……『閃光のハサウェイ』の舞台のひとつか」

 

 その名前に聞き覚えがあるのか、サヤはガンダムの原典作品の名を挙げる。

 連邦議会が行われるそこへ、秘密結社『マフティー・ナビーユ・エリン』が襲撃を仕掛け、それに対する連邦軍の精鋭部隊『キルケーユニット』との激戦が繰り広げられた地であると語るサヤ。

 

 

 

 しばらくして、艦船専用のサーバーゲートを通過、オーストラリア・サーバーへ到達、南極海に位置するセントビンセント湾のグレネルグに停泊する輸送艦。

 

 ガンプラは輸送艦に積載させた状態で、ツルギ達は艦を降りてそこからはミツキの案内で徒歩で議会場へ向かう。

 

 議会場に併設されている式典会場には、既に何百人もののダイバーが集っており、それぞれが思い思いの形で過ごしている。

 

「圧巻だな……反マスダイバー連合軍に参加するダイバーは、こんなにいるのか」

 

 ツルギは場内を見回しながら、感嘆に息をつく。

 その数、ツルギ達を含めて数えなくても100人以上はいるだろう。

 

「あっ、見てツルギくんっ。あの人、ワールドランク18位のダークスさんだよ!」

 

 ハルナが指す方向には、ガンメタルの仮面で顔を覆い、ウェスタンブーツの歯車を鳴らしながら歩く、漆黒のロングコートで身を包んだ青年。

 

「あっちにはフラムフランメ二世さんに……アユミンさんもいる!」

 

 ツルギには分からないが、ハルナが言うにはGBN内では名の知られたダイバーであるようだ。

 その名の知られたダイバー達が一堂に集うと言うのが、今回の会合らしい。

 

「失礼……フォース・スピリッツの方々ですね?」

 

 ふと、聞き覚えのある声が聞こえたと思い、そちらへ振り向けば、金髪縦ロールの女性ダイバーーー、ノエルと、彼女が率いるフォース・ロイヤルナイツのリヒター達もいた。

 最初にツルギが応対する。

 

「ノエルじゃないか。あんたらもここに呼ばれたのか?」

 

「えぇ、その通りですわ。ツルギ達も、今回の会合に参加するためにここにいらしてるのですね?」

 

「まぁ、文字通り乗り掛かった船って感じだが」

 

 ツルギとノエルが会話を交わす間に、ミーシャがまた別の知人を見つけた。

 

 あの紺色の修道女の僧服は、このきらびやかな会場には似つかわしく無さそうだが、だからこそ見間違いようはなかった。

 

「ミスズさん!」

 

 ミーシャはその名前を口にしながら小走りで駆け寄る。

 名前に反応したか、ミスズと彼女の周りにいる大人達、フォース・フラワーズのメンバー達がミーシャに振り向く。

 

「あら、確か、フォース・スピリッツの、ミーシャくん」

 

「お久しぶりですっ」

 

 目上の大人が相手と言うこともあって、ミーシャは緊張しながら深々と頭を下げて挨拶する。

 

「フラワーズの皆さんも、この連合軍に?」

 

 ミーシャの問い掛けに、ミスズは頷く。

 

「私達は呼び掛けに応じたのではなく、有志による参加ですが、目的は他の皆様と同じであると思っております」

 

 この会合に集まった者達は、反マスダイバー連合を興したダイバーによって呼び掛けられた者と、その話を聞いて自ら身を投じに馳せ参じた者との二者に分かれているようだが、マスダイバーの存在と、新型ブレイクデカールの蔓延を良しとしない、と言うその意志は同じだと、ミスズは言う。

 

 ツルギはノエルと、ミーシャはミスズと会話している側で、ユイはミツキに話し掛けた。

 

「ミツキ。フォース・フォートレス……フルメタルシェパードは、ここには来ていないの?」

 

 SSランクと言う格と、高度なAIを備えたMD達を操るフルメタルシェパード。

 その彼は呼び掛けられていないのかとユイは問うが、ミツキは首を横に振った。

 

「シェパードへの呼び掛けは行っていません。悪い言い方になりますが、彼の存在はむしろ我々連合軍の足枷にもなりかねません」

 

 ミツキのその言葉で、ユイも察する。

 

 何が目的かは知らないが、フルメタルシェパードは恐らく『他者を信用していない』。

 それは、ダイバーではなくNPDをフォースメンバーに組み込んでいることや、相手フォースに対して無礼千万な態度を取ることからも分かる。

 そんな者が他人と轡を並べて連携を取る、などということをするとは到底考え難い。

 

 それはともかくとして、フルメタルシェパードはここへは招待されていない。

 

「おぅ、お前らも来たのか」

 

 ハルナ、ユイ、サヤの三人とミツキの元に、連邦軍の軍服を着崩している男、カイドウが声を掛けてきた。

 彼にミツキが向き直る。

 

「お待たせしました、カイドウ先生。成り行きではありますが、彼らフォース・スピリッツもお連れしました」

 

「なぁに、こいつらも俺の地獄の修練をクリアした奴等だ。戦力の勘定に入れてやっても心配はねぇさ」

 

 それに、とカイドウの視線が三人に向けられる。

 

「ローランのフォースを倒したそうじゃねぇか。俺のやったことが無駄になってなくて何よりだ。教え子が成長しているってのは、見てて気持ちのいいモンだな」

 

 腕を組んでうんうんと頷くカイドウだが、すぐに表情を引き締める。

 

「……これで、全員揃ったか?」

 

「えぇ、スピリッツとサンダーバードで最後になります」

 

 ミツキとカイドウは互いに頷き、カイドウは式典会場を後にして、ミツキは式典会場のマイクを手に取ってアナウンスを呼び掛ける。

 

『皆様に、お知らせ致します。これより、反マスダイバー連合軍議を行います。ダイバーの皆様は、議会場への移動をお願い致します。繰り返します……』

 

 ミツキのアナウンスを聞いた者から、談笑を止めて式典会場を出て、隣の議会場へと移動していく。

 ツルギ達も、それに連れられるよう議会場へ向かう。 

 

 

 

 

 

 暗い場所だった。

 日の光の差さない、深海のように暗いその場所に、ヒトがいた。

 深淵とも言えるその黒の空間に、いくつものモニター螺旋状になって浮かぶ。

 指先でモニターのひとつを押して、拡大する。

 そのモニターが映し出すのは何人ものダイバーが席に付いていく様子。

 

「反マスダイバー連合、か……これはちょっと面白くないな」

 

 面白くはない。だが、同時に好機のひとつでもあった。

 ここで上位ランカー達を一纏めに"感染"させられれば、計画は一気に進む。

 同時に、負けたところで大した痛手にはならない。

 手駒はここでいくら無くなっても、後からいくらでも替えが効くからだ。

 

「さぁ、ゲームスタートだ」

 

 パチンッ、と指が音を立てて鳴らされた。

 

 

 

 

 

 ダイバー達は、半円状になって席に付いていく。

 その半円の中心に立つのは、ローラン、カイドウの二人。

 最初に、この会合の中心だろうローランが口を開く。

 

「今ここに集う者達は、皆志を同じくとする者達だ。マスダイバーを、新型ブレイクデカールを、許してはおけぬと。正しく憤る者達だと信じて、君達をここへ呼びつけた。まずはそのことに感謝を述べたい。よく集まってくれた、ありがとう」

 

 ローランの言葉は続く。

 

「五年前の有志連合を知る者も、ここにいるだろうとは思うが、私から改めて事態を説明させてほしい。現在GBN内に、かつてのブレイクデカールの再来とも言える、新型が蔓延し始めている。旧ブレイクデカールと同等以上の隠蔽力と秘匿性、そして、恐るべきその拡散速度。これを放置すれば、GBNは再び崩壊の危機を迎えるだろう。私は、それを望まない。それは、ここにいる誰もが私と同じ想いだと信じたい。そうだと感じているのなら、私の声に応えてほしい」

 

 一瞬の間を置いて、ダイバーの一人が拳を突き上げた。

 

「そうだ!新型だか何だか知らねぇが、そんなインチキは許しちゃいけねぇッ!」

 

 それに呼応するかのように、他のダイバー達も声を張り上げていく。

 

「あたしの仲間も、マスダイバーのせいで酷い目に遭ったのよ!」

 

「やってやろうじゃねぇか!」

 

 次々に抗戦の意思を見せるダイバー達。

 騒がしくなり始めたところで、ローランが「静粛に」と声を張り、その一声に場内が静まる。

 

「諸君らのその意思こそが、私の望みだ。……私も、かつてはマスダイバーであった。しかし、諸君らのような強い意思に負け、マスダイバーであることは恥であると痛感した。そして私は尽力すると決めた。不正を、マスダイバーをこのGBNから可能な限り根絶したいと」

 

 ローランはデータを入力し、背後にある大型モニターに画像を映し出す。

 

「その根絶への一歩として、新型ブレイクデカールの拡散を推進させている非公式マスダイバーフォース及び協力組織の討伐作戦を、ここに宣言する!」

 

 さらに切り替わる画面には、GBNの全体のマップと、その一点を示す表示。

 その表示が拡大される。

 

 そこから先はカイドウが代わる。

 

「既に俺達の先遣隊が、連中の根城を突き止めている。場所は、アメリカン・サーバー『ニューヤーク』のメトロライン。当然、マスダイバーによる反撃があるだろう。敵戦力は未知数、数値を遥かに上回る機体性能、侵食による自己再生、あぁーそりゃもう厄介だ、相手すんのもめんどくせぇ奴らだ」

 

 不意にカイドウの声のトーンが下がる。

 

「この作戦に乗りたくないと思うなら、ここで降りてくれて構わねぇ。誰もそれを臆病だとは言わねぇ。それが普通だからな……」

 

 そして、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「それを分かっていて!こんなクソゲーをクリアしようなんて思ってるバカ野郎がいるなら!ここで高々と宣え!アホみてぇに吼えろ!俺はバカ野郎だ!だから命(タマ)ぁ張らせろ!代わりに世界を救わせろと!」

 

 大きく振りかぶってカイドウは腹の底から叫んでみせる。

 

「それを奴等にーーマスダイバー共に分からせてやろうじゃねぇかぁぁぁぁぁァァァァァ!!!!!」

 

「「「「「おぉぉぉぉぉォォォォォ!!!!!」」」」」

 

 カイドウの演説、と言うより鼓舞は、場内のダイバー達を沸騰させる。

 ハルナとミーシャはその鼓舞に当てられて同じく声を上げ、ツルギ、ユイ、サヤは声を出さないまでも心の昂りは確かに感じている。

 

「(誰も彼もが本気だ……本気で、新型ブレイクデカールを駆逐しようとしている)」

 

 ツルギは机の下で拳を握った。

 ここで次元覇王流拳法のことを聞くような真似など出来ない。

 それ以上に、彼は『今の自分の力が、この中でどれだけの位置に在り、そしてどれほどが通じるのか』と言う挑戦心が燻っていた。

 

 それと同時のことだった。

 

 誰かが議会場のドアを蹴り開けて飛び込んでは、真っ直ぐにカイドウに駆け寄る。

 大半のダイバーはそのことに気付かずに咆哮を上げている。

 

「カイドウ先生ッ、緊急事態です!!」

 

「どうした?」

 

 カイドウは"緊急事態"と言う四文字を聞いてそちらへ向く。

 

「先程、先遣隊がニューヤークのメトロラインに突入したところ、「既にもぬけの殻だった」そうです!」

 

「ぁんだと!?」

 

 次第にカイドウとそのダイバーのやり取りに気付き始め、潮を引くように静まり返っていく。

 ローランも話に加わる。

 

「もぬけの殻とはどういうことだ?マスダイバーの保有する設備なども何も無かったと言うのか?」

 

「はいっ、まるで最初から何も無かったかのようだと……」

 

 不意に報告に来たダイバーのコンソールパネルにメールが届き、それを開いて、

 

 戦慄した。

 

「おいどうしたっ、何があった?」

 

 カイドウはその隣からメールの内容を目に通して、驚愕に目を見開く。

 

「カイドウ先生、メールには何と?」

 

「……こいつはやべぇぞ」

 

 そう前置きを置いてから、カイドウはローランに向き直った。

 

 

 

 

 

「マスダイバー連中が、真っ直ぐこのアデレートに向かって来てやがるッ!!」

 

 

 

 

 

 静まり返った議会場は、混乱にざわめいた。

 

 

 

 

 

 ローランとカイドウの先遣隊は、既にニューヤークのメトロラインを完全に制圧していた。

 とは言え、マスダイバーによる反撃も奇襲もなく、ただ中に入っただけで制圧は完了した。

 投入された戦力は、精鋭で固めた二個小隊。

 

「どうすんです隊長。俺ら、思いっきり無駄骨折ってんじゃねぇすか?」

 

 先遣隊のジム・クゥエルは退屈そうにしていた。

 

「このタイミングでもぬけの殻……不自然にも程があるが……」

 

 先遣隊長のジェガンは、ビームライフルを構えつつも注意深く待つだけ。

 

「何も無ければそれでいい。今は、ローランの指示を待つ他にない」

 

 警戒しなくてもいいが気は緩めるなよ、と再三四度部下達に言い付けておく隊長。

 

 が、同時にアラートが鳴り響き、複数の敵対反応が地上から地下へ侵入してくる様子がレーダーに表示される。

 

「なっ、敵!?」

 

「どこに隠れてやがった!?」

 

「まずいっ、囲まれてるぞ!?」

 

 突然の敵襲に先遣隊は慌てふためくが、隊長が部下達に一喝する。

 

「狼狽えるなッ!演習通りフォーメーションを保って迎撃しろ!」

 

「「「り、了解!」」」

 

 先遣隊はすぐさまフォーメーションを組み直し、多方向から接近してくる敵対反応への迎撃体制を整える。

 その数十秒後には、新型ブレイクデカールを使用しただろう、紫色のオーラを纏うガンプラ達が現れる。

 

「敵機を目視で捕捉!」

 

「撃ち方始めッ!」

 

 先遣隊長の号令と共に、手持ちの火器による一斉射撃を開始する。

 多数のビームや銃弾を受け、マスダイバーのガンプラ達は四肢をもがれ、頭部を貫かれてもすぐに内部から侵食させて原型を取り戻してしまう。

 

「コクピットを集中的に狙え!そうすれば侵食も止まる!」

 

 断続的に射撃を行い、動力部を破壊された者から爆散していくものの、マスダイバー機は次々に現れては先遣隊を包囲してくる。

 

「くっ……もぬけの殻と見せ掛けて嵌められたか?仕方ないっ、全機に告ぐ!状況を放棄、メトロラインより脱出す……」

 

 脱出するぞ、と先遣隊長が言い掛けたところで

 

「敵対反応、さらに増大!脱出経路、封鎖されました!」

 

 部下の報告に遮られ、それに気を取られた一瞬で敵機の接近を許してしまう。

 

「どうすんだよ隊長!?このままじゃ俺達ジリひ……」

 

 部下のジム・クゥエルはコクピットを撃ち抜かれた。

 

「コークスッ!クソッ、正面突破せざるを得ないか!」

 

 先遣隊長のジェガンはビームライフルを捨てると、ビームサーベルを抜き放って自らが先頭となって血路を開こうとするが、

 ガシリ、と何かに掴まれた。

 ジェガンを背後から捕まえているのは、先程撃墜されたジム・クゥエルだった。

 その胴体から金属物体を侵食させながら。

 

「コークス!?おいっ、返事をしろ!」

 

 すると、ジム・クゥエルを通じてジェガンにも金属物体を伝わせ、もろとも侵食させていく。

 

「やめろコークスッ、やめ……」

 

 やがて、ジェガンの内部すらも完全に侵食させてしまった。

 

 

 

 

 

 先遣隊との連絡が途切れた。

 その報告が、カイドウの冷静さを欠かせる。

 

「クソがっ、連中がこっちに向かってると言い、先遣隊との連絡が途切れると言い、まるでこっちの考えが読まれてるみてぇだ……ッ!」

 

 カイドウは壁を殴った。

 

「管制官ッ、連中はどこまで来てやがる!?」

 

 通信機器を操作し、怒鳴りつけるように受信器の向こう側へ状況を確認させる。

 ニューヤークのメトロラインからアデレートへの移動時間は、サーバーゲートを経由すれば15分も掛からない。

 それを見越した上で、現況はどうなっているかとカイドウはオペレーターに問いただす。

 

『南方から一個中隊が水路で向かって来ております。速度から見て、水陸両用機によるものかと。上陸までおよそ10分。北東方面からの陸路に反応はありません』

 

「水路から最短で議会場を狙うつもりか。しかし対空戦力が見えんと言うのは気に掛かるな。連中の正確な数が分からん以上、水路は陽動で、本命が北東方面から来るかもしれんが……」

 

 しかしじっくり考えている暇はない。

 カイドウは管制官との通信を切り、今度はローランと繋ぐ。

 

「ローランッ、聞こえてるな?」

 

『感度良好です、カイドウ先生』

 

「俺は一足先に南方へ出撃する」

 

『なっ、つまり単騎で先駆けられると!?』

 

「連中の鼻っ面を挫く。後ろの守りはお前に任せるぞ」

 

『待ってください先生っ、敵戦力は未知す……』

 

 それだけ告げて、カイドウは通信を切り、議会場を後にして自身のフォースのガンプラを待機させている場所まで急ぐ。

 

 

 

 

 

 現在、会場に集まったダイバー達は、大急ぎでマスダイバー達への迎撃準備に掛かっていた。

 

 ツルギ達フォース・スピリッツも輸送艦に駆け戻り、各々のガンプラに乗り込んでいく。

 彼らへのローランからの指示は「単騎で向かったカイドウの援護に向かえ」とのこと。

 

「旗の下でふんぞり返ってくれるほど大人しくは無い、か。カイドウ先生らしいと言えばらしいんだろうけど……」

 

 サヤは呆れたような感心したような溜息を付きながら、ガンダムAGE-2 ヴィントフリューゲルを起動させると、フォースメンバー達に通信を繋ぐ。

 

「俺はヴィントフリューゲルで先行する。恐らく水際での戦闘になるはずだ、他の皆も準備が整い次第出撃してくれ」

 

 メンバーから「了解」や「分かりました」との返事を聞いてから、サヤは輸送艦のハッチからガンダムAGE-2 ヴィントフリューゲルを発進させた。

 発進と同時にフライヤーフォームへ変形、フリューゲルカノンを楊力翼として広げたガンダムAGE-2 ヴィントフリューゲルは、風を切り裂きながら、カイドウが向かっただろうポイントーーポートアデレイトとグレネルグの間に位置する地点へと急行する。

 サヤの発進を見送ってから、ツルギはハルナを呼んだ。

 

「ハルナ、ちょっといいか?」

 

「ん、どしたの?」

 

 駆け寄ってくるハルナは、ツルギのコンソールパネルを覗き見る。

 

「"これ"、一応イフリート・エスパーダにも使えるんだよな?」

 

「え?う、うん。使えると言えば使えるけど……」

 

 

 

 

 

 ほんの数分で、漆黒のダブルオーガンダム、カイドウのガンダムダブルオーカイザーを発見するサヤ。

 しかし、ガンダムダブルオーカイザーは海の水平線の先を見つめたまま動かない。

 

「カイドウ先せ……ッ?」

 

 サヤは通信越しにカイドウに声を掛けようとして、すぐに目の前、カイドウの視線の先に向き直る。

 

「なんだこりゃぁ……一個中隊なんてレベルじゃねぇぞ!?」

 

 カイドウは驚愕に声を裏返す。

 最大望遠で前方を確認すると、確かに観測班の報告通り、一個中隊の水陸両用機が海を渡って来ている。

 それに変わりはなかった。

 

 問題なのは、水陸両用機が筏のような物を牽引し、その筏に多数の侵食されたガンプラが乗り込んでいると言うことだ。

 

「……『夜明けの地平線団』と同じ手口と言うわけかっ。ちっ、こんな子供騙しに引っ掛かるとは……!」

 

 サヤは舌を打って自分の見通しの甘さに苛立った。

 つまり、牽引役以外の機体を全てスリープモードにさせておき、レーダー反応を誤魔化したと言うわけだ。

 スリープモードにさせていただろう機体は、筏一隻につき6機、それが一個中隊十二隻と言うことは、実際の敵の数は一個中隊と二個大隊ーー84機だ。

 

「カイドウ先生っ、一度下がりましょう!いくら何でもこの数が相手では、呑み込まれてしまう……ッ!」

 

 サヤは"後退"を進言するものの、カイドウはそれを良しとしなかった。

 

「後続を待ってたら連中の自由を許す!それよりも前に先手を打つ!」

 

 ガンダムダブルオーカイザーはその場で脚を落ち着けると、バスタービームソードを突き刺して置き、代わりにサイドスカートに備えたGNソードⅡをライフルモードにして、前方へ構える。

 バックパックのウイングを展開、さらにツインドライヴに直結されたビームガンを前方へ向ける。

 

「下がってろサヤ、巻き込まれても知らんぞ」

 

 カイドウはサヤに離れるように言いつけると、ソードライフルとビームガン二対の銃口に、揺らめく炎のような真紅のエネルギーが集束していく。

 

 そして、

 

 

 

 

 

「イィィィィィンッフェルヌゥオォォォォォッ、ブウゥゥゥルゥアストゥアァァァァァァァァァァーーーーーッッッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 極限まで集束された真紅のエネルギーが、より深みを帯びたマグマのように煮え滾ったそれは、必殺技『インフェルノブラスター』となり、カイドウの咆哮と共に海へ吐き出された。

 海面に触れた"深紅"のエネルギー体は瞬時に海水を蒸発させながら切り裂き、海底に穴を空けるかのように注ぎ込まれーーーーー

 

 

 

 

 

 核弾頭が炸裂したかのような、想像を絶する大爆発がセントビンセント湾を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 ガンダムダブルオーカイザーのインフェルノブラスターが巻き起こした爆発震動は、オーストラリア大陸全体を揺るがすほどのものだ。

 これが現実に起きたものだとすれば、地球の海水は全体の3%を消失したことだろう。

 バスタービームソードに爆雷を集束させて叩き付ける『トールハンマーブレイカー』に勝らずも劣らない、そんなトチ狂ったレベルの必殺技を放ち終えたカイドウのガンダムダブルオーカイザーは、ソードライフルとビームガンの銃口から黒煙を吹き出しながらそれを納めると、バスタービームソードを肩に担ぎ直す。

 

「……さすがに、そう簡単にゃいかねぇか」

 

 カイドウは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらレーダー反応を確認する。

 インフェルノブラスターの爆発をまともに直撃した何機かは跡形なく消し飛んでいるが、そうでない機体はすぐさま損傷箇所を侵食させて修復したようで、足場を失ったもののそのまま海中を移動して向かって来るようだ。

 しかし、少なくとも侵攻の足を緩めさせたのは間違いない。

 

「サヤ先輩、カイドウ先生!」

 

 マスダイバー機の上陸よりも先に、ツルギ達も水際に到着し、それに続くように、ミスズ達フラワーズと他のフォースも到着、迎撃準備を整える。

 

「敵は海から来るのですね?」

 

 ミスズはカイドウと通信を繋いで状況を確認する。

 

「おぅ、上陸して来た奴を片っ端から鴨撃ちにしてやれ」

 

 ガンダムダブルオーカイザーの射撃武器は今はまだ使えない。

 ここにいたら邪魔になると判断し、カイドウは一度下がる。

 

 連合軍のガンプラは水際で列に並び、各々の射撃兵装を構えていく。

 イフリート・エスパーダはザクマシンガンを、姫武者頑駄無は雷振火音を、ガンダムヘビーバスターはダブルガトリングガンと350mmガンランチャーを、ガンダムアスタロトリオートはサブマシンガンと滑腔砲を、ガンダムAGE-2 ヴィントフリューゲルはハイパードッズライフルとフリューゲルカノンを海面に向ける。

 

 沈黙の数秒間の後に、侵食されたガンプラ達が海中からその歪な姿を見せ始めた。

 

「撃ちまくれェッ!!」

 

 カイドウの号令と共に、列に並んだ連合軍のガンプラ達は一斉射撃を開始する。

 

 ビーム、銃弾、砲弾、ミサイルなど、十機十色の火線がマスダイバー機へと放たれる。

 港を削り取っていくかのような弾幕は、侵食されたガンプラ達を次々に撃ち抜いていくが、被弾しようが手足をもがれようが撃墜されようが、機体を侵食させながら損害などお構いなしに迫ってくる。

 まるでダイバーの手によって操縦されているわけではないーーそれこそ特攻を命じられたNPD機のごとく、機械的に突っ込んで来るのだ。

 

「クソッ、こいつら正気か!?全く止まらねぇぞ!」

 

 ツルギのイフリート・エスパーダはザクマシンガンを撃ちまくるものの、侵食されたマスダイバー機は仰け反り、破損されながらも侵攻する足は一切止めない。

 

「文句言うなっ、いいから撃ちまくるんだよ!」

 

 フラワーズのガンダムグシオンリベイクフルシティは、両腕とサブアームに保持させたロングライフル四丁を断続的に発射して前線を支えているものの、徐々に押し込まれつつあった。

 

 何せ、マスダイバー機の侵食による自己再生がこれまでよりも格段に早い。

 被弾したその一秒後には侵食を始め、三秒もしない内に原型を整えてしまうのだ。

 それでも集中砲火を受ければ動力部を破壊され、爆散消滅させれば敵機は減るが、最初にカイドウが数を減らしたとは言え、まだ70機近くは残っているだろう。

 対する今ここにいる連合軍は25機ほどで、マスダイバー機達の1/3ほどしかない。

 連合軍全体で言えば1/4だが、ここだけに戦力を割くわけにはいかないと言うローランの采配だ。

 マスダイバー達が南からしか来ないとは限らない。少なくともこの南方の二個大隊は本命ではない、陽動だと見ている。

 だとしても、違法強化された機体性能に加えて三倍の戦力差が相手では、連合軍が圧倒的不利であることは明白。

 マスダイバー機達も各々の火器を持って反撃を開始し、連合軍のガンプラも何機か撃墜されてしまう。

 そうこうしている内に、防衛線を張る連合軍とマスダイバー機達との距離が狭まってくる。

 距離を見計らって、カイドウは再び号令を掛ける。

 

「よーし、格闘機体は突っ込め!ここからは乱戦だ!」

 

「「「「「おぉぉぉぉぉッ!!」」」」」

 

 カイドウの号令により、白兵戦に特化したガンプラが次々にマスダイバー機に躍りかかって行く。

 その中に、ツルギのイフリート・エスパーダとミーシャのガンダムアスタロトリオートも入り混じって接近戦を仕掛けに行く。

 ザクマシンガンを捨てたイフリート・エスパーダは、両手にヒートサーベルを抜刀、ガンダムアスタロトリオートもサブマシンガンを捨てて、グシオンアックスを抜き放つ。

 

「でぇりゃぁぁぁぁぁッ!!」

 

 最初にツルギが狙いを付けたのは、『Zガンダム』に登場した『ディジェ』だ。侵食されているとは言え、ダークグレーの塗装が施されている辺り『NT』に登場した機体を再現したものだろう。

 対するディジェも、イフリート・エスパーダの接近に気付いたか、左手にビームナギナタを抜刀、振り回しながら迎撃してくる。

 イフリート・エスパーダは右のヒートサーベルを振り下ろし、ディジェのビームナギナタと衝突する。

 そこで鍔迫り合いにはせず、ツルギはビームナギナタを受け流し、流れるようにディジェの無防備な左側面に逆のヒートサーベルを叩き込んだ。

 ディジェの胴体を真っ二つに斬り抜き、念入りにもう一太刀加えておき、動力部を焼き切られたディジェは爆散した。当然、再生もしない。

 

 ディジェ、撃墜。

 

 足を止めての白兵戦を敢行していたイフリート・エスパーダの側面を、アリオスガンダムがGNツインビームライフルで狙い撃とうとしたが、不意に横殴りの砲撃を喰らって邪魔された。

 ガンダムアスタロトリオートの滑腔砲が硝煙を上げており、その瞬間にはグシオンアックスが振り下ろされ、アリオスガンダムの頭部から股関節までを、竹を割るかのように叩き割った。

 

 アリオスガンダム、撃墜。

 

「ツルギさん、大丈夫ですか?」

 

「あぁすまん、助かった」

 

 ミーシャに助けてもらったことに感謝しつつ、ツルギはすぐに周囲を警戒しつつ立ち回る。

 

 ハルナ、ユイ、サヤの三人は、乱戦で動き回るツルギとミーシャの援護に回るように立ち回っている。

 

 姫武者頑駄無は雷振火音と火糸薙刀を使い分けて前衛と後衛の両方を守り、ガンダムヘビーバスターは味方を巻き込んでしまうだろう350mmガンランチャーを使わず、ダブルガトリングガンをメインにして後方から援護射撃。

 

 ガンダムAGE-2 ヴィントフリューゲルはフリューゲルカノンによる砲撃をもって、マスダイバー機の動力部を正確に貫通させていく。

 

 数こそ劣る連合軍だが、どちらかと言えば善戦している方だ。

 個々の実力が優れていると言う理由もある。

 現に、

 

「だぁっしゃオゥルァァァァァッ!!」

 

 カイドウのガンダムダブルオーカイザーが、バスタービームソードを片手に、大暴れに暴れ回っている。

 一振りでマスダイバー機を撃破し、再生すらも許さない、圧倒的な戦いぶりを見て、他の連合軍のダイバーも奮起する。

 

「足止めも立派な役目ですのよ、インコム!」

 

 ミスズのヒュドレインシァは、両腕のインコムクローを射出、乱戦の合間と合間を縫うように有線制御し、照射されるビームがマスダイバー機の脚部を焼く。

 すぐに侵食再生させられてしまうものの、脚部にダメージを受ければ敵の足は止まるし、直撃を許せば転倒させられる。

 ファンネルやインコムと言った、大火力を持たない武装を主に搭載しているヒュドレインシァが撃墜を狙うには攻撃を集中させなくてはならないが、足止めだけなら大した攻撃力は必要ない。

 そして、足止めひとつでもさせれば、その間に他のダイバーがトドメを刺してくれる。

 

 南方に展開する部隊は、確実にマスダイバー機達の侵攻を抑えていた。

 

 しかし、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 一方、アデレートの管制塔内で、ローランは戦況を見通しつつ、的確に戦力を割り振っていた。

 南方はどうにか押し返している。

 

 問題は、北東方面からだ。

 水路から送り込める戦力は限られている。

 大部隊を攻め込ませるには、広くて目立つ場所から攻めなくてはならない。

 それがいつ、どうやって仕掛けてくるのか。

 

 ローランは一度通信回線を開いた。

 

「ミツキ、そちらの状況はどうか?」

 

『こちら、フォース・トレイルブレイザーです。北東方面に敵影は見当たりま……いえ、今レーダー反応がありました。陸、空路の双方から敵機多数接近中。目視確認距離に到達まで、あと40』

 

 ミツキの通信越しの様子から、どうやら敵の第二波が来たらしい。

 

「こちらからは戦力の50%を向かわせ、残りの25%は議会場の防衛に当たらせる。頼むぞ、ミツキ」

 

『了解、これより応戦します』

 

 ミツキとの通信を終えて、ローランは再び各方面への状況を見通していく。

 

「(奴らの首領はまだ姿が見えないか……頭を押さえればそれで済むのだが)」

 

 

 

 

 

 北東方面部隊。

 こちらは、ミツキの所属するフォース『トレイルブレイザー』と、ノエルの率いるフォース・ロイヤルナイツが中心となって防衛線を構築している。

 

「ノエル姉様、全機配置完了しました」

 

 リヒターのアレックスはビームライフルを油断なく構えながら、リーダーのノエルに配置完了を伝える。

 それを確認してから、ノエルは声を張り上げ、エーデルνガンダムはビームレイピアを抜き放った。

 

「我らはフォース・ロイヤルナイツ!気高き騎士の誇りにかけて、マスダイバーの無法者に、裁きの鉄槌を下す!」

 

「「「「「勝利の栄光を、我らに!!」」」」」

 

 エーデルνガンダムを中心に、アレックス、騎士ガンダム、ジンクスⅢ、グレイズリッターの他、ロイヤルナイツに所属するメンバー全機が、各々の得物を構えながら寸分のズレもなく唱和、堂々たるその姿勢を見せつける。

 それを見た他のダイバー達も、自然と気を引き締めていく。

 

「では、牽制をかけましょうか」

 

 そう応えたのはミツキ。

 疑似GN粒子を放出しながら最前線に現れたのは、『00』セカンドシーズンに登場するイノベイド専用機『ガデッサ』の改造機。

 

 カラーリング自体は、原典機と同じライトグリーンを基調としたものだが、各部にティターンズ系可変機やヴェイガン系など生物的なフォルムを持つ機体のパーツを多数組み込んでいる。

 

 機体銘『メガデッサ』

 

 腰溜めに構えた重火器『GNハイメガランチャー』を起動させ、それらは三つ又に展開される。

 砲口に耳障りな音を立てながら粒子エネルギーが集束され、それが三つ又の砲身に伝達していく。

 

「圧縮粒子、解放……GNハイメガランチャー、発射ッ!!」

 

 ミツキの握るトリガーが引き絞られ、一拍を置いて破壊の閃光が放たれた。

 原典機のこの砲撃は、小惑星帯を薙ぎ払うほどの大火力を発揮したものだが、ミツキのメガデッサはそれをさらに上回る。

 GNハイメガランチャーの火線が地平線の先も見えないほどの長距離へむけて照射、そのまま地平を薙ぎ払うように振るわれる。

 十数秒に渡る粒子ビームの照射の後、その地平線の向こうから砂煙が迫る。

 それらほとんどはNPDリーオーだが、新型ブレイクデカールのデータを流用されているのか、マスダイバー機と同じように紫色のオーラを纏い、機体を侵食させながら殺到してくる。

 

「さて、二割くらいは掃除出来たでしょう。私は粒子のチャージを待たせてもらいますよ」

 

 そう言い残してから、ミツキのメガデッサは後退していく。

 GNハイメガランチャーは確かに強力な攻撃手段ではあるが、ジェネレーターに直結させた最大出力による一撃は大きく粒子を消耗する。

 戦闘機動もままならないので、一度コンデンサーに粒子を蓄え直す必要があるのだ。

 

「前線は私達にお任せを。各機、攻撃開始!」

 

 ノエルの号令の元、フォース・ロイヤルナイツのガンプラ達は各々の火器を手に射撃攻撃を仕掛けていく。

 エーデルνガンダムは、左肩にフィンファンネルを纏わせたまま、ビーム砲を正面に向けて発射する。

 

「しかし……数が多すぎるっ」

 

 アレックスのビームライフルを撃ちまくるリヒターは、眼前の敵の数がまるで減らないことに悪態をつく。

 撃ち抜けど撃ち抜けど、NPDリーオーの群れは侵攻の足を止めず、そればかりか撃墜しきれなかったものは再生侵食して立ち上がってくる。

 しかし、連合軍のガンプラもただ防戦になるばかりではない。

 

『全機に告ぐ、メガバズーカランチャーの射線から離れてくれ!』

 

 後方から、プロペラントタンクを増設したリゼルをエネルギー源として繋いだ、メガバズーカランチャーに乗り込むエコーズジェガンの姿が見える。

 その通信を聞いた者からメガバズーカランチャーの前から離脱していき、それを確認次第、エコーズジェガンの手によってトリガーが引き絞られる。

 

 雲霞のごとく迫りくるNPDリーオーを薙ぎ払う一撃。

 

 フォースメンバーのガンプラ一機の自由を引き換えに、メガデッサのGNハイメガランチャーに劣らない出力を叩き出している。

 何十ものNPDリーオーがメガバズーカランチャーのメガ粒子に呑み込まれては消滅していく。

 

 だが、GNハイメガランチャーとメガバズーカランチャーと言う二本の矢を持ってしても、NPDリーオーは何も知らないとばかり向かって来る。

 

『アデレートからの援軍はまだ来ないのか!?』

 

 ヴェルデバスターは全身の火器を撃ちまくりながら、誰と言わずに通信を掛ける。

 

『後180秒で到着するそうだ』

 

 フォース・トレイルブレイザーのガラッゾが、強引に接近してきたNPDリーオーを指先のGNビームサーベルで斬り裂きながら応える。

 

『ふざけんなっ、それまで俺らが生きてられるか!』

 

 先程にローランからの指示のもと援軍が送られているが、敵の動きが予想外に早く、北東方面部隊は防衛ラインを崩されかけている。

 

『南の連中はどうなってるんだ!一個中隊にそこまで手こずるってのか!?』

 

 ベルガ・ギロスはヘビーマシンガンを撃ちながら、近くにいたフォース・ロイヤルナイツのジンクスⅢと通信を繋ぐ。

 

『正確には、二個大隊と一個中隊だ。こちらよりはマシだろうが……』

 

 ジンクスⅢもGNビームライフルとGNランスのGNバルカンを撃ちながら応える。

 

『だが、こちらも長くは保たん……ッ』

 

 バーザムもビームライフルを撃ちながらも、接近してきたNPDリーオーにビームサーベルで応戦する。

 しかし敵の数は一向に減る兆しも見えない。

 近接戦闘を行っていたバーザムの背後に、ビームサーベルを抜いたNPDリーオーが迫る。

 が、それは明後日の方向から放たれた三筋のビームによって遮られる。

 

「お待たせしましたね。さて、少々身持ちを固くしていきましょうか」

 

 粒子のチャージを終えたミツキのメガデッサだ。

 GNハイメガランチャーを畳んだ三連GNビームライフルを連射して、NPDリーオーの群れを次々に撃ち抜いていく。

 

「私達も遅れを取ってはならなくてよ、フィンファンネルッ!」

 

 ノエルのエーデルνガンダムはビームレイピアを振るい、一太刀の元にNPDリーオーを沈黙させてはフィンファンネルを多方向へ展開、味方への援護射撃と、バリアによる支援防御と、攻防に渡って防衛ラインを守る。

 

 今にも崩されそうになっていた防衛ラインは、どうにか踏み留まり、アデレートから到着した援軍によって回復させていく。

 

 

 

 

 

 管制塔では、新たな敵部隊の反応をキャッチしていた。

 

「新たな反応をキャッチ、北西方面より敵機接近!」

 

 オペレーターからその報せを聞いたローランは歯噛みした。

 

「クッ、まだ来るのか……今でさえギリギリだと言うのにっ!」

 

 これ以上敵の数が増えては守りきれなくなる。

 アデレートを制圧させられれば、そこがまたマスダイバー達の新たな根城と化してしまう。

 そうさせないためには、何としても守り抜かなくてはならない。

 ローランは瞬時に指示を飛ばした。

 

「戦力の15%を北西に回せ。残り10%は議会場の防衛に徹させろ。私のフォースも出る、ここは任せるぞ!」

 

 それだけいい付けてから、ローランは管制塔を後にしていく。

 

 南方面部隊は敵の侵攻を抑え込んでいるが、徐々に押し返されつつあった。

 今や戦力の半数を失い、敵もまだ半分近い数を残している。

 このままでは良くて相打ち、あるいは少数を残して敵の突破を許してしまう。

 

 ザクマシンガンもとっくの昔に弾切れ、侵食されたグーンをどうにか撃墜したツルギは、北西方面にも敵部隊が現れたことを聞き取る。

 だが、北西からの敵は、北東よりも少ないようだ。

 

「……北西の敵が本命か?」

 

 二度に渡る襲撃で、戦力が分散している。

 だが、その二つは恐らく陽動。

 戦力が減ってきたところで、議会場を狙うつもりだろう。

 自分もそこに向かうべきなのではないかとツルギは思いかけたが、今目の前の戦況に背を向けてもいられない。

 少しでも早く目の前を片付けて、北二方向の援護に向かわなくてはならない。

 そうツルギが判断しかけたところで、また敵が現れる。

 再生侵食を繰り返して、もう原型も残っていないザクウォーリアが迫りくる。

 

「ちっ、またか……ッ!」

 

 

 

 

 

 が、それは唐突に上から振ってきた何かに押し潰された。

 

 ザクウォーリア、撃墜。

 

「クサナギ!お前今、手ェ空いてるか!?」

 

 怒鳴るような音量の声に、ツルギも慌てて応答して、その声の主に気付く。

 

「お前っ、ヤイコか!?何でここに……」

 

 そして見てみれば、ザクウォーリアを押し潰したのは蛇威雄音だった。

 

 何故彼女がここにいるのかを問い質そうとしたツルギだが、そのヤイコは捲し立てるように声を張る。

 

「ついさっき北西にも奴さんが現れたって聞いたな?手が空いてんなら、お前はそっちに行け!」

 

 そう言いながらも、イフリート・エスパーダと蛇威雄音は背中合わせに立つ。

 

「だが、こっちを放っておくわけには……」

 

 放っておくわけにはいかない、と言いかけたツルギにハルナの通信も割り込んでくる。

 

「行って、ツルギくん」

 

 便乗するようにユイも続く。

 

「ツルギ一人いなくても、何とかするわ」

 

 ミーシャも頷き返す。

 

「こっちは任せてください」

 

 サヤも同様にだ。

 

「ヤイコも来てくれたんだ。ここは俺達に任せて、ローランさんの援護に向かってくれ」

 

 そしてカイドウからもGOサインが告げられる。

 

「お前ならやられるこたぁねぇさ、思う存分暴れてきな」

 

 もうひと押しするように、ヤイコも頷く。

 

「ここにいたら邪魔ンなる、とっとと行けや」

 

 それだけ言い残してから、ヤイコはまだ多くを残したマスダイバー機の群れへ突撃する。

 

 蛇威雄音が消えた砂煙を見送ってから、ツルギは奥歯を噛み締めた。

 

「………………頼むッ」

 

 アームレイカーを捻り返してイフリート・エスパーダを反転させたーーーーー。

 

 

 

 

 

 

【次回予告】

 

 ミツキ「まずいですね、こうにも戦力が分散している上に戦力差も埋まらない……」

 

 ローラン「敵も本気と言うわけか……」

 

 カイドウ「だが諦めちゃぁなんねぇ!」

 

 ハルナ「そうだよ!わたし達は負けちゃいけないんだからっ!」

 

 ツルギ「次回、ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツ

 

『絶望を討ち破る者』

 

 ツルギ、イフリート・エスパーダ……参るッ!!」

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