ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツ   作:さくらおにぎり

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24話 崩落へのカウントダウン

 トレイルブレイザーとロイヤルナイツから遣わされた、ガルムガンダムとジンクスⅢは、ポイントゼロに進入する際にそれぞれ反対方向から向かった。

 

 ロイヤルナイツのジンクスⅢは進入してすぐに、動けなくなっているサヤのガンダムAGE-2 ヴィントフリューゲルを発見し、サヤもそれが味方であることに気付く。

 

『無事か?動けんのなら、外まで運ぶぞ』

 

「すまない、助かる……が、火急の伝言がある」

 

 サヤは、先程にローランが言い残した「月のサーバーに、何か"非常に良くないこと"が起きるかもしれない」と言うことをジンクスⅢに伝える。

 

『月のサーバーに……?分かった。だが、まずはお前を回収する。詳しい話は後でノエル様にも頼む』

 

 ジンクスⅢはガンダムAGE-2 ヴィントフリューゲルを抱えると、すぐに反転してポイントゼロから脱出する。

 

 

 

 一方のトレイルブレイザーのガルムガンダムもまた、すぐにミーシャのガンダムアスタロトリオートを発見した。

 

『あーぁ、派手にやられちゃってまぁ……』

 

 ガルムガンダムは、フレームのあちこちが壊れて動けないガンダムアスタロトリオートを肩に担いで、来た道を戻ろうとしたところで、別の機体反応をキャッチする。

 

 MS用の大型エレベーターから登ってきたのは、ユイとマイを乗せたガンダムヘビーバスターと、リヒターのブルシュヴァリエだった。

 

「ユイさん、無事だったんですね」

 

 ミーシャがユイとの通信を繋ぐ。

 

「ミーシャも無事みたいね。こっちは大丈夫、お姉ちゃんも無事救出完了」

 

 ユイもミーシャとの通信に応じつつ、自分の一歩後ろにいるマイの姿を見せる。

 

「ツルギとハルナがどうなっているのかが分からないけど……」

 

『ひとまずは君達を脱出させるよ。その二人はその後だ』

 

 ガンダムアスタロトリオートを担いだガルムガンダムと、ガンダムヘビーバスター、ブルシュヴァリエの三機はポイントゼロから脱出する。

 

 

 

 

 

 ポイントゼロ最下層。

 

「ど、どうなってるんだっ、運営権を持つ僕の言うことも聞けないのかっ?」

 

『サラ』は必死にコンソールを叩いて、赤い『ERROR』まみれの表示を消そうとするが、叩けば叩くほどに『ERROR』の数が増えるばかり。

 

「おい、どうしたんだ?」

 

 ただ事ではないことが起きているのか、ツルギは『サラ』の横からコンソールを覗き見る。

 

「ねぇ、大丈夫かな……?」

 

 ハルナも一歩遅れて、ツルギの隣から覗き見るが、『サラ』はそんなことに気を留めている場合ではなかった。

 

「おいばかやめろっ、何でそうなる!?何でルビスシステムが月のサーバーにまで流れてるんだ!?」

 

 思い通りにならないことに怒鳴り声を上げる『サラ』だが、不意に宮殿が震動を始め、大理石の石柱が崩れ落ちていく。

 何が原因かは分からないが、この宮殿が崩れ始めていることだけは確かのようだ。

 

「ハルナッ、逃げるぞ!」

 

「えっ、ちょっ、ひゃんっ!?」

 

 ツルギはハルナを抱え込むと、真っ直ぐにマスラオヘブンズクラウドへと駆け戻る。

 コクピットにハルナを下ろして、ツルギはすぐにマスラオヘブンズクラウドを再起動させ、動けない桜花姫頑駄無も抱える。

 

「何してんだっ、お前も早く逃げろ!」

 

 ツルギはスピーカー越しに、尚も玉座でコンソールを打ち込んでいる『サラ』に逃げるように諭すが、聞こえていないのか、そこから動く様子はない。

 

『……、ッ!』

 

 何かに気付いたような素振りを見せると、『サラ』はディアクティブモードのクラティアプロヴィデンスガンダムに乗り込み直すと、脱出するのではなく、宮殿の最奥部へ向かっていく。

 

「おいっ、そっちは出口じゃないだろ!?」

 

「ツルギくんっ、もうやばいよ!早く逃げないとっ……」

 

 崩落だけでなく、各所で爆発すらも起きている。

 これ以上ここに留まっていては脱出出来なくなる。

 ツルギは歯軋りをしてから、アームレイカーを捻り返し、桜花姫頑駄無を抱えたマスラオヘブンズクラウドは、侵食汚染されたトンネルを駆け戻る。

 

 現在、マスラオヘブンズクラウドはトランザムを限界まで起動させたために疑似太陽炉が焼き切れてしまっている。

 そのため、本体に貯蔵している粒子で可動している。

 この状態でも一応戦闘は可能だが、貯蔵している粒子残量は少なく、まともに戦うことは出来ない。

 当然、トランザムを使おうものなら一瞬で粒子残量は蒸発だ。

 節量しているとはいえ、ポイントゼロの最下層から外の宙域まで脱出出来るだろうか。

 

 最後にカゲトラと別れた地点には、NPDリーオーやGBNガードフレームの残骸が漂うだけで、他の機体反応は見られないところ、カゲトラは自力で切り抜けたようだ。

 道なりに進む内に、崩落してしまったところは桜花姫頑駄無の十雷電刀で壊しながら進みつつ、それを繰り返す内に、ようやく真っ赤に燃える宙域が見えた。

 

 だが、出口を目前にして、マスラオヘブンズクラウドの粒子残量が完全に切れてしまい、その場で停止してしまった。

 

「クソッ、あと一歩だってのに!」

 

 ツルギは悔しげにコンソールを叩いた。

 せめて、崩落した瓦礫を排除する手間さえ省ければ、何とかなったかもしれないが……

 

「ツルギッ、ご無事ですね!?」

 

 ふと、出入り口から黒金のνガンダムーーノエルのエーデルνガンダムの姿が見えた。

 

「あのガンダムは……ノエルか!?」

 

 エーデルνガンダムは、桜花姫頑駄無を抱えたマスラオヘブンズクラウドの後ろに回り込むと、そのまま押し出すようにポイントゼロから脱出させた。

 

「何でここにあんたがいるかは知らんが、とにかく助かった。ありがとう」

 

「礼には及びませんわ、ツルギ」

 

 ですがそれよりも、とノエルはそのまま仲間達のいる地点まで押し上げていく。

 

「そちらのメンバーのサヤが、何か私達に火急の伝言があるようで」

 

「サヤ先輩が?」

 

 ハルナは、ジンクスⅢによって救出されたガンダムAGE-2 ヴィントフリューゲルを見やる。

 ユイのガンダムヘビーバスターとミーシャのガンダムアスタロトリオートもそれぞれ救出されたようだ。

 

「今、ミツキが手配した輸送艦が到着したようです。そこでガンプラの整備をしながら、話を聞きましょう」

 

 裏道を通ってきたのか、何もない空間からパッと現れる輸送艦。

 本体の両側部に大型のコンテナを取り付けたようなそれに着艦していく面々。

 

 

 

 

 

 特に損傷度の深いスピリッツのガンプラから優先的にメンテナンスハンガーに放り込まれ、ロイヤルナイツとトレイルブレイザーの面々も自分のガンプラを後回しにしてスピリッツのガンプラの修復を手伝う。

 

 後はハンガーに放置しておくだけの状態にまでして、一息つく間もなく、マイの安否確認もそこそこに、一度ブリーフィングルームに集まり、サヤからの『火急の伝言』が話される。

 

「俺はポイントゼロの内部で、ローランさんと戦った。その時に、撃墜間際のローランさんから「ポイントゼロの最奥部には月のサーバーへの直通ルートがあり、そこまで新型ブレイクデカールの汚染が進んでいたとしたら、月のサーバーに何か"非常に良くないこと"が起こるかもしれない」と聞いた」

 

 それを聞いた全員に緊張が走る。

 まず最初に、ツルギが挙手した。

 

「サヤ先輩。俺とハルナは最下層の場所で、あの『サラ』と戦い、奴のガンプラを倒すことは出来ました。その後、奴はGBNに蔓延させていたウイルスを全て除去しようとしていましたが、何かまずいことが起きたらしく、俺とハルナは先に離脱しました。その時奴は、「何でルビスシステムが月のサーバーにまで流れてるんだ」とも言っていました」

 

 先程のサヤの言葉と前後関係が合う。

 それはつまり、ローランの警告である『月のサーバーにまでルビスシステムが広がっていた場合、何か非常に良くないことが起きるかもしれない』ということ。

 

「非常に良くないこと、と言うのは?」

 

 ノエルがツルギとサヤの両者に訊ね、サヤが答える。

 

「それは分からない。それをこれから確かめるつもりだったが……」

 

「心配ご無用ッ!……どっこらしょ」

 

 すると、どこからか胡散臭い声が聞こえたと思った時には、天井の通気口フィルターが開けられ、そこからカゲトラが降りてきた。どっから出てくるんですかあんたは。

 

「カゲトラか……ん?ちょっと待て、ハンガーの中にお前のザクは無かったはずだが?」

 

「細かいことは気にするな、ツバキ氏」

 

 疑問符を浮かべたサヤを、カゲトラが遮りつつ、コンソールパネルを開き、それを大型モニターに投影する。

 画面には、地球と月の周辺宙図が映し出される。

 

「たった今届いた非公式の臨時ニュースだ。……現在、月を中心としたエリアがルビスシステムによって侵食汚染され、ラグランジュポイントの均衡が崩れつつある。この状態を放置すれば、『膨大な量のコンピュータウイルスを乗せた月そのものが』地球に落ちる」

 

「月が地球に落ちるですって!?」

 

 ノエルは驚愕のあまり反射的に一歩前に出た。

 

「なるほど、ローランの言う"非常に良くないこと"とは、そういうことでしたか」

 

 努めて冷静に、ミツキはカゲトラの話を咀嚼する。

 

「今はまだ侵食汚染の途中のようだが、その汚染完了も間もなくだろう。そして、その汚染された月が地球に落着すれば……想像するまでもないな」

 

 地球と月との衝突に起こる衝撃による地崩れに加え、それに乗せられるように膨大な量のコンピュータウイルスが地球全体に拡散する。

 それはつまり、GBNの崩壊であると想像つくのは容易だ。

 

「だったら、早く何がなんでも阻止しないとっ!」

 

 ミーシャが焦れるように声を張るが、ユイがそれを落ち着かせる。

 

「落ち着きなさいミーシャ。気持ちは分かるけど、慌てて手を出したら大火傷じゃ済まないわ」

 

 ユイ自身も、マイの安否確認を終えたことで冷静さが戻ってきているようだ。

 そのユイの隣にいるマイがカゲトラに目を向け、彼は瞬時にマイの意図を読み取る。

 

「ここから直接月に行くことは出来ん。一度地上に戻り、大気圏を離脱せねばならんな」

 

 まずはポイントゼロから離脱し、そこからガンプラを積載可能なシャトルか戦艦に乗り換えてから月へ上がる。

 それだけの回り道をしている間に、月が既に目と鼻の先に迫って来ていた、と言うことにはならないだろうが、だとしても一分一秒も無駄に出来ない。

 

 まさに、作戦は一刻を争う、と言うことだ。

 

 それを理解したミツキは内線電話でブリッジに通話を繋ぐ。

 

「私です。本艦は直ちにポイントゼロを離脱、帰還をお願いします」

 

 通話を終えたその直後に、輸送艦は180度回頭、つい先程に通ってきた"裏道"を通る。

 

 帰還するまでの間も暇ではない、月に赴いた際に何が起きても対応出来るように、ここにいるメンツで可能な限り作戦を詰めなくてはならない。

 カゲトラ、ミツキ、ノエル、サヤの四人が中心となって、作戦(と言うよりは対策)が組み立てられていく。

 

「まず、司令塔は俺が引き受けよう。異論があるかもしれんが、今はそれを聞くのも惜しい、スルーしてくれ」

 

 カゲトラが自ら進んで司令塔を引き受ける。異論は聞きつけないようだが、誰もそれに首を突っ込むつもりはない。

 どのみち司令塔になるべきダイバーは皆、前線に出る必要があるのだから。

 

「次に、二チームに分けて部隊を編成する。基本は、スピリッツとロイヤルナイツに分かれ、双方のフォローに、二手に分かれたトレイルブレイザーが回ってくれ」

 

 カゲトラは大型モニターの画面を切り替えて、ブリーフィング用の作戦画面に切り替える。

 地球と月を示す宙図の間に、スピリッツとロイヤルナイツの人数分のマークが表示され、その後ろにトレイルブレイザーのメンバーが追加される。

 

「了解した」

 

「承りましたわ」

 

 サヤとノエルがそれぞれ頷く。

 その後で、ミツキがカゲトラの隣に立って作戦画面を操作、月の周辺を少しだけ拡大する。

 

「一番の問題は、現在の月の状況です。それによって我々はどう動くべきなのか。そのための情報が少しでも欲しいところです。最前線に出る方に、危険を承知でお願いしなくてはなりません」

 

「それに関しては、私が引き受けよう」

 

 ふと、ブリーフィングルームの出入り口から、この中の誰でもない声が応じた。

 

 その方へ振り返れば、『ブリング・スタビティ』『デヴァイン・ノヴァ』の容姿をしたダイバーに左右を固められた、フルメタルシェパードがいた。

 

「フルメタルなんたら?てめぇが最前線に出張るってのか?」

 

 ヤイコが疑わしげに睨んでくるが、フルメタルシェパードはその視線に構わずに進言する。

 

「ようは、鉄砲玉になってくれとミツキ君は言うのだろう。そして、それは必ずしもダイバーが必要なわけでもあるまい?」

 

 フルメタルシェパードの進言を汲み取り、ミツキは思案のために少しだけ間を開けてから頷く。

 

「……そうですね。月周辺がどのような状況にあるかの、具体的な映像があれば十分です。シェパード、あなたのMDに強行偵察をお願い出来るでしょうか?」

 

「無論だ。……と言うより、その役目を引き受けさせてくれ、頼む」

 

 不意に、フルメタルシェパードはミツキとカゲトラに向かって軍帽を取って頭を下げた。

 彼らしからぬ行為に、その場にいたほとんどのダイバーが驚く。

 他人を見下してばかりだったフルメタルシェパードが、その他人に頭を下げているのだから。

 

「元はと言えば、私があの『サラ』の甘言に惑わされて、知らず知らずの内にGBNの乗っ取りを推し進めてしまったのだ。何を今更と思うだろうが、せめてもの罪滅ぼしくらいは、させてくれ」

 

「……信じていいんだな?」

 

 ツルギは、フルメタルシェパードに確認をする。

 今ここで、自分達の行く先を任せて良いのかと。

 

「信じてくれとは言わん。……私とて、失った信用を取り戻すために、どれだけの誠意を見せなくてはならんかは、知っているつもりだ」

 

 頭を下げたまま、フルメタルシェパードは言葉を紡ぐ。

 しかし、ここにいる面々の反応は今ひとつだ。

 

「んー……」

 

 ふと、ハルナが行動に出た。

 頭を下げているフルメタルシェパードの前に立ち、右手を差し出した。

 

「お手」

 

 あろうことか、犬の『お手』を要求した。

 いくら彼がシェパード型の獣人だからといって、それをさせるのはいかがなものか。

 だが、

 

「ワンッ!」

 

 何の躊躇もなくーーと言うより、本能的に近い勢いで、フルメタルシェパードは掌の肉球をハルナの掌に乗せた。

 

「「「「「!?」」」」」

 

 まさか本当に通じるとは誰が思うだろうか。

 

「……って、何をさせるのだ!咄嗟に反応してしまったではないか!」

 

 正気(?)に戻ったフルメタルシェパードはハルナを怒鳴るが、

 

「お座り」

 

 続いて『お座り』を命令するハルナ。

 

「アンッアンッ」

 

 すかさず『お座り』するフルメタルシェパード。

 ……これが、あのMD達を自在に操るフルメタルシェパードだと、誰が信じられるだろうか?

 

「お手」

 

「ワンッ」

 

「おかわり」

 

「ワゥンッ」

 

「三回回って」

 

「ワフッワフッワフッ」

 

「ぴょーん」

 

「ワォーンッ」

 

 見事、飼い主(ハルナ)の命令に従って見せたフルメタルシェパード。

 

「よーしよしよしよし、いい子だねー」

 

「ヘッヘッヘッ……。……だからっ、私に犬の真似などさせるなぁッ!」 

 

 今のこの茶番で、少しだけ張り詰めた空気が緩んだ。

 この中で最も信用していなかったヤイコも、溜息をひとつついてから、フルメタルシェパードを信じることにした。

 

「それでチャラにはならねぇぞ。百倍返しを九十九倍にはまけてやるがな」

 

「慎んでお受けしよう」

 

 そんな緊張感の無いやり取りの末に、急遽フォース・フォートレス、ひいてはフルメタルシェパードが作戦に加わることとなった。

 

 

 

 

 

 ベース基地に帰還するなり、即座にガンプラの積み替えが行われる。

 輸送艦から、大気圏を離脱可能なシャトルに乗り換えるのだ。

 各フォースが協力し合って出撃の準備を整えている間、カゲトラ、ミツキ、ノエル、サヤ、フルメタルシェパードの五人は、作戦の最終確認を終えたところだった。

 

 まずはフォートレスのMD部隊が月周辺へ先行、強行偵察。

 そのデータを読み取りつつ、次発であるスピリッツとロイヤルナイツが出撃。

 データの読み取りが完了次第、トレイルブレイザーのメンバーが割り当てて出撃。

 月に接近し、ルビスシステムの排除。

 最終目標は、月の落下阻止。

 

「……では、以上だな。よろしいか?」

 

 全員が頷き、カゲトラが締めたところで、リヒターが駆け寄って来て、ノエルの前で直立、一礼する。

 

「ノエル姉様、全機のシャトルの準備が整いました。直ちにご搭乗を」

 

「分かりました。ありがとうリヒター」

 

 ノエルが「下がりなさい」と目で伝えると、リヒターはもう一礼してから、自分の乗り込むシャトルに駆け戻る。

 それを見送ってから、フルメタルシェパードは軍帽を耳に被り直す。

 

「まずは私のシャトルが最初に出るのだったな。では、ここで失礼する」

 

 フルメタルシェパードの役目は、自分のフォースメンバーであるMDを先行、強行偵察させて、後続の部隊に戦況を伝えること。

 MDの制御のために、フルメタルシェパード本人も前線に出る必要があるのだ。

 月周辺がどのような状況か分からない今、非常に危険である可能性があるにも関わらず、彼はこの役目を引き受けさせてくれと頼んだ。

 罪滅ぼし、とは言っていたが、それは恐らく他人への謝罪や懺悔だけでは無いだろう。

 なまじプライドのお高い人物だ、自分の犯した失態を許せず、それを必死に取り戻そうとしているのだ。

 

 フォートレスのシャトルがマスドライバーのレールに乗せられ、瞬く間に宇宙へと翔び立った。

 それに続いて、スピリッツ、ロイヤルナイツ、トレイルブレイザーのシャトルも順次打ち上げられていく。

 

 

 

 

 

 

 一方、ポイントゼロ最下層の最奥部に向かった『サラ』のクラティアプロヴィデンスガンダムは、月のサーバーへの直通ゲートを通っていた。

 

『クソッ、まさかこんなことになるなんて……ッ!』

 

 自分が蒔いた種だ、せめて自分が犯した過ちだけでも後始末をつけようとしたと言うのに。

 その蒔いた種が想像以上に深く根付き、トラブルを萌芽するとは思わなかった。

 ともかく、月のサーバーに流れただろうルビスシステムを、データの欠片も残さず消し去らなくてはならない。

 ーー月が地球に落ちれば、間違いなくGBNは再起不能になる。

 そうなれば、自分も含めた電子生命体達は皆消えてなくなってしまう。

 それだけは、絶対に防がなくてはならない。

 

 サーバーゲートを通過、月面に到達してみれば、もはやここが月面なのかどうかすらも怪しいレベルで、月そのものが現在進行形で浸食汚染されている。

 

『間に合うか……いやっ、間に合わせる!』

 

『サラ』は無数のコンソールパネルを広げ、猛烈な速度でテンキーを叩き始める。

 

『ag6pmg8mtW9gmjd79t:pwdjgjim4m3pmp6'nq673pnq69qwjnjm7e3n61mgm13p66pm1mg6t6pg6g@mw4mpmg7mi1w6'6p..wp6t1m68m'mtmg67w'64mkm@mg6pm7d64mg69'mgmg6g@31m5mptn4m'37mtmtpdgn4dpmg6ytdqmPo3pdgmr34m'mi1mt6d86'm46t68m1664wt3g61tm'6twm8t6mg4mpm7pm8'mpnp4mtnj2e_dpm1d@m134m7npmgm83gm1egdmtm'm'm1dtd'd'dgwgmgd4m60mt1…………………………』

 

 次から次へと表示されては消える、僅かな数値の変動すらも見逃さない、瞬きひとつせずにそれら膨大なデータを読み取る『サラ』

 

『dhtjpmhmpmjERRORmgxjtn'mpd1to:ERRORwpm@MM6ERRORmpwgERRORwgdpERRORmpERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR……なんでERRORにしかならないんだよ!?』

 

 怒りにテンキーを殴り付ける。

 それを合図にしたかのように、浸食汚染がクラティアプロヴィデンスガンダムにも広がり始める。

 

 

 

『はっ!?なっ、ちょっ、待って待って待って!?』

 

 歪な銀色の月は、瞬く間に支配の天帝を呑み込んだ。

 

『ゃっ、嫌だっ、だ、誰かっ、誰か助け……』

 

 

 

 

 

 ーーーーー誰か助けてッ!!

 

「ーーーーーッ」

 

 声が聞こえた。

 聖も邪もない、叫びの声。

 それを"聞いた"少女は、ハッと辺りを見回した。

 

「サラちゃん?どうしたの?」

 

 ガンダムベースの従業員が着用するエプロンを身に着けた女性は、カウンターの上で座っている小さな少女に声を掛ける。

 跳ね返るように女性に振り返った少女は、パッと立ち上がった。

 

「ナミ、リクをすぐに呼んで」

 

「リクくんを?」

 

「"あの子"が、助けてって」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 フォートレスのシャトルが大気圏を離脱成功、さらにブースターを加速させて進路を月のある方向へ向ける。

 

「なっ、なんと……!?」

 

 フルメタルシェパードは驚愕する。

 

 月があるはずのそこには、歪な銀色の塊が脈打っている。

 

 あれこそが、ルビスシステムによって浸食汚染した"月"なのだろう。

 

「……MD部隊、全機発進!」

 

 すぐに我を取り戻したフルメタルシェパードは、シャトルからMDのNPDリーオーを次々に出撃させる。

 GBN上において、最大サイズのシャトルで標準サイズのガンプラを10機まで搭載可能だ。

 トールギスコンダクターを除けば、NPDリーオーは全部で9機。それぞれ、A〜Iまでのアルファベットを割り当てて識別される。

 ビームカノンを油断なく構え、三個小隊でフォーメーションを組みながら、月へ接近するNPDリーオーの群れ。

 MDの接近を感知したのか、月のハッチが開かれ、その内部から、浸食汚染されて原型も残っていないガンプラが現れる。

 

「数は多いが……」

 

 少なくとも、MDがすぐに全滅するほどではない。

 フルメタルシェパードはフォーメーションを打ち込み、後続してくるだろう他のフォースのシャトルに、現在の戦況をリアルタイムで中継する。

 

「少しでも敵戦力を減らしておかねばな……トールギスコンダクター、オープンゲーム!」

 

 シャトルをオートで操艦させて、フルメタルシェパードはトールギスコンダクターに乗り込んで出撃する。

 

 

 

 

 

 スピリッツとロイヤルナイツのシャトルが大気圏を離脱した頃、フォートレスのフルメタルシェパードから中継される戦況が送られてきた。

 

 歪な銀色の月を背景に、既にフォートレスのMD部隊が交戦を開始している。

 プラネイトディフェンサーを展開しながらビームカノンで砲撃を行い、的確に浸食ガンプラ達の数を減らしているが、長くは保たないだろう。

 戦闘エリアに突入、それぞれのシャトルからガンプラが発進されていく。

 

「サヤ先輩。まずは作戦通り、俺達とノエル達の二手に分かれて攻撃ですね?」

 

 先陣を切るツルギは、一歩後ろから後続するサヤに作戦を確認する。

 

「あぁ。ミツキ達も後から続いてくれるはずだ。まずは目の前の敵を排除して、月を汚染しているその根源を破壊する。それが俺達の役目だ」

 

「了解です。……行くぞ!」

 

「「「「「おぉ!!」」」」」

 

 ツルギの掛け声と共に、マスラオヘブンズクラウド、桜花姫頑駄無、ガンダムヘビーバスター、レギンレイズギルティ、ガンダムアスタロトリオート、ガンダムAGE-2 ヴィントフリューゲル、蛇威雄音の七機が戦闘を開始する。

 

「ねぇ、ユイちゃん」

 

 ふとマイが、ユイに個人通信を繋ぐ。

 

「お姉ちゃん?」

 

「今までごめんね。ずっと騙し続けて」

 

「……確かに、妹の私にまで黙っていたって言うのは怒る」

 

 でも、とユイの声色が優しいものになる。

 

「そんなことはもういいの。お姉ちゃんが無事だったんだから」

 

「……そんなことって、あたしはユイちゃんのミラーミッションだって邪魔したって言うのに、許しちゃうんだ」

 

「許さないって言ったら?」

 

「ごめんなさい許してください何でもしますから」

 

「お姉ちゃん……もうっ」

 

 変わり身の早い姉の、いつも通りの様子を見て、ユイはおかしさに小さく笑う。

 

「じゃぁ、この戦いを終えて、GBNが元に戻ったら許しちゃおうかな」

 

「オッケーイ!ユイちゃんに許してもらうためにお姉ちゃん頑張っちゃおーっと!」

 

 ィヤッフォーイッ、と奇声を上げながら突撃していくマイのレギンレイズギルティ。

 

 

 

 

 

 スピリッツの反対側では、ロイヤルナイツのガンプラもまた部隊を展開しつつ、戦闘を開始していた。

 

「我等はフォース・ロイヤルナイツ!騎士の誇りにかけて、GBNの未来を我等の手で!!」

 

「「「「「勇猛果敢!八面六臂!!」」」」」

 

 ノエルのエーデルνガンダムを中心に、リヒターのブルシュヴァリエ、ジンクスⅢ、グレイズリッター、騎士ガンダムなど、ロイヤルナイツのフルメンバーが一斉にシャトルから出撃する。

 

 

 

 

 

 プラネイトディフェンサーによる鉄壁の防御力も、全くの無敵ではない。

 MDが損傷してきたのを見て、一度フォーメーションを組み直させるべきかとフルメタルシェパードが思案したところで、スピリッツとロイヤルナイツのガンプラが戦闘エリアに到着してきた。

 

「来たか」

 

 それを確認して、フルメタルシェパードはMDへのプログラムを切り換える。

 三個小隊のそれを一小隊ずつに振り分け、それぞれ三機ずつスピリッツの援護、ロイヤルナイツの援護、残りを自機であるトールギスコンダクターの護衛に割り当てていく。

 じきにトレイルブレイザーの面々も到着するだろう。

 フルメタルシェパード自身も、トールギスコンダクターのドーバーガンと、リーオー用の105mmマシンガンを両手に浸食ガンプラを撃ち抜いていく。

 

「プライドもメンツも何もない……私は私の意志で、この戦いを終わらせる!」

 

 黒銀の指揮者(コンダクター)は、その姿を知る者からすれば信じ難いほどに、激しく、そして力強く銃火器と言うタクトを振るう。

 その指揮に応じるが如く、MD達もまた与えられた役目を全うせんとする。

 そこにいるのは殺戮の人形などではなく、主君を守らんがために戦う兵士そのものであった。

 

 

 

 

 

 フォートレスのMDから中継される映像を見て、トレイルブレイザーのメンバー達もすぐに行動に出る。

 メガデッサ、リボーンズガンダム、ガラッゾ、ガッデス、ガルムガンダム、エンプラスなど、ロイヤルナイツと同様のフルメンバーで出撃する。

 その中から、ミツキのメガデッサを中心とした、大火力の機体が本隊から離れ、浸食された月の上部へ回り込む。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか、それとも悪魔が出てくるか……」

 

 ミツキはそう小さく呟きながら、メガデッサのGNハイメガランチャーを展開、粒子を砲身に集束させていく。

 そのメガデッサの左右に、重砲撃仕様のガルムガンダムと、通常のガデッサが各々の重火器を構える。

 

 照準は、月のど真ん中ーーハイパーマイクロウェーブの送電施設の中央だ。

 そこも浸食されて見る影も形もない。

 

「こちらミツキ。これより月へ攻撃を開始します」

 

 リーダーであるリボーンズガンダムにそれを伝えると、ミツキは躊躇なくトリガーを引いた。

 

「GNハイメガランチャー、発射ッ!!」

 

 メガデッサ、ガルムガンダム、ガデッサの三機による砲撃が、月へと降り注いだ。

 濁った金色やピンク色の破壊光線が束となって、浸食された銀色へ直撃する。

 

 月そのものを貫き砕かんほどのビームに、浸食汚染された部位は焼き払われていく。

 

 ビームの照射を終えて、ミツキは注意深くその巻き上げられた塵芥の奥を見据える。

 

 その塵芥を切り裂いて、巨大な何かが月の中から這い出てきた。

 

「……いやはや、"悪魔どころではないモノ"が出てきてしまいましたか」

 

 "ソレ"が何かを認識するや否や、三機は即座に離脱した。

 

 

 

 

 

 トレイルブレイザーによる月への砲撃は、前線で戦っているツルギ達にも見えている。

 

「月面への攻撃が始まったか」

 

 マスラオヘブンズクラウドの『イザナギ』『イザナミ』の二刀を振るいながら、月面へ注がれる高出力の粒子ビームを見やるツルギ。

 

「サヤ先輩、ボク達も月に突入するべきですか?」

 

 ミーシャはガンダムアスタロトリオートのロングライフルで浸食ガンプラを撃ち抜きながら、サヤに指示を仰ぐ。

 

「いや、そっちはミツキ達に任せよう。俺達はこっちで敵の数を減らすことに専念する」

 

 ガンダムAGE-2 ヴィントフリューゲルのハイパードッズライフルとフリューゲルカノンを使い分けつつ、サヤは指示を与え直す。

 

 しかし、月面への攻撃をしているはずのミツキ達は、むしろ月から離れている。

 

 どういうことかと、ダブルガトリングガンで浸食ガンプラを破壊して、ユイのガンダムヘビーバスターはメガデッサへ接近する。

 

「ミツキ、どうしたの?」

 

「……ユイ、気を付けてください」

 

 ミツキは神妙な声で警戒を促しつつ、月面から現れた深紅の巨躯を指した。

 

 両腕から伸びるのはマニュピレーターではなく、五基の砲門。

 大きくせり出した両肩。

 スカートバーニアから生えている一対の巨大なプロペラントブースター。

 それに埋まるような形で納められている、『シナンジュ』。

 

 それは、『UC』の最後に現れる、規格外の超大型MA。

 

「あれは……『ネオ・ジオング』!?」

 

 原典作品を知るハルナがそれを見て驚愕する。

 

 しかし、現れたのはそれだけではなかった。

 

「いやいや皆さん、ネオ・ジオングだけに驚いてる場合じゃ無さげよ」

 

 レギンレイズギルティはバスターソードで浸食ガンプラを叩き斬りながら、マイは気軽そうにさらに注意を深めるよう告げる。

 

 

 

 ネオ・ジオングが現れた地点の、その月の裏側からも何かが這い出てくるではないか。

 

 

 

 姿を真っ先に視認したのは、スピリッツとは逆サイドから展開していたロイヤルナイツのリヒター。

 

 形そのものはほぼネオ・ジオングと同じだが、カラーリングは対照的な白灰色で、両肩に赤いフレームパーツが追加されている。

 前者のネオ・ジオングの予備パーツを組み上げて、コアユニットとして『シナンジュ・スタイン』を取り入れたそれは……

 

「『NT』の、『Ⅱネオ・ジオング』……ッ!?」

 

 月を守るかのように、ネオ・ジオングとⅡネオ・ジオングの両者が立ち塞がった。

 

 

 

 

 

 トレイルブレイザーのシャトルから、その悪夢のような光景を目の当たりにし、カゲトラはシャトルのコンソールのテンキーを打ちながらも眉をひそめる。

 

「……こんなところで裏ボスが待っていたとはな」

 

 簡単にはいかないと想定していたが、これはあまりにも予想外過ぎる。

 だが、新たな反応が接近中であることを見て、ニヤリと口角を上げる。

 

「だからこそ、守りがいがあると言うものだな」

 

 カゲトラが確認した方向からは、『タービンズ』の強襲装甲艦である『ハンマーヘッド』が見える。

 

 

 

 

 

 ネオ・ジオングとⅡネオ・ジオングと言う二頭の怪物は、両肩の大型メガ粒子砲のエネルギーを集束させ、拡散させて照射してきた。

 拡散しているために一撃の威力は抑えられているだろうが、それでも直撃すれば、ナノラミネートアーマーでも無ければほぼ即死だろう。

 ツルギ達はそれらメガ粒子の雨を掻い潜って回避していく。

 

「月の番人ってわけか?」

 

 サイドバインダーを翻し、マスラオヘブンズクラウドは接近を試み、同じく接近戦を望むべく蛇威雄音と、ロイヤルナイツの騎士ガンダムも続くが、激しさの劣らないメガ粒子砲の雨と、指先からも放たれるメガ粒子砲が、接近をしようとする者達を阻む。

 その上、火線上にいる浸食ガンプラもお構いなしに巻き込んでいく。

 

「チキショッ、こんなバ火力を遠慮なくぶっ放してこられたんじゃ、近づけねぇ!」

 

 ヤイコの蛇威雄音なら直撃を受けても撃墜はされないかもしれないが、それでも吹き飛ばされるだろうし、決して弱くはないダメージも受ける。

 

 ユイのガンダムヘビーバスターが、350mmガンランチャーと94mm高エネルギー集束火線ライフルを連結させて、超高インパルス長射程狙撃ライフルを照射する。それに合わせるようにトレイルブレイザーのガルムガンダムとガデッサが、GNバズーカとGNメガランチャーを照射するが、ネオ・ジオングとⅡネオ・ジオングのフロントスカートにある二基のIフィールドジェネレーターから発されるバリアによって、"逸らされて"しまう。

 

「やっぱりIフィールド持ちね。しかも、かなり強力な……」

 

 重砲撃機複数による一点突破攻撃すらも通らないのだ。

 実体弾による射撃も、あんな巨体に対してどれほどの効果があるものか。そもそも、このメガ粒子の雨にかき消される可能性も高い。

 

「となると、接近戦を仕掛けるしか無いようだ、がっ!」

 

 サヤのガンダムAGE-2 ヴィントフリューゲルは、フライヤーフォームに変形しつつ、時折ネオ・ジオングの本体であるシナンジュから放たれるロケットランチャーの弾頭を躱す。

 

「しかし、これでは近づくことも出来んっ……」

 

 その反対側ではトレイルブレイザーのガラッゾがGNビームサーベルで弾頭を切断して防いでいる。

 

「せめてもうちょっと人手が欲しいよ、これじゃ防戦一方っ」

 

 ハルナがそうぼやいたのが前触れだったのか、突如彼方から多数の砲弾が降り注ぎ、ネオ・ジオングとⅡネオ・ジオングに着弾する。

 やはり強固な装甲の前には大したダメージは無いようだが、両者の注意がそちらにも向けられる。

 

 彼方からは、パワード・ジム、ガンダムバルバトスルプス、ガンダムグシオンリベイクフルシティが、各々の大口径の火器を持って砲撃を行っている。

 

 その地点から回り込んでくるように、グレネードランチャーとミサイルランチャーを装備した百錬、Vダッシュガンダムに、ガンダムデスサイズヘル、キュベレイの改造機ーーヒュドレインシァに加えて、オレンジ色のケンプファーのファストゥスまでもが、ハンマーヘッドから出撃してきた。

 

「あのフォースは、フラワーズ……だけじゃない、ファイアワークスの皆さんもいる!?」

 

 グシオンアックスで浸食ガンプラを叩き斬りながら、ミーシャはその見慣れた姿達を見上げる。

 百錬とVダッシュガンダムが牽制の砲撃を行う横を、ナンブ夫妻ーーミスズとレンジが駆け抜け、包囲されかけていたミーシャを援護する。

 ファストゥスがスピニングブラスターを遠慮なくぶっ放し、その取りこぼしをヒュドレインシァがファンネルで確実に潰す。

 

「ご無事ですね、ミーシャくん」

 

「よぉロシアの坊主、何だか派手なことになってんな」

 

 落ち着いた挨拶を交わしつつ、ミーシャ、ミスズ、レンジはなおも大暴れに暴れまわっているネオ・ジオングとⅡネオ・ジオングを見やる。

 メガ粒子砲の流れ弾が飛んでくるが、三機の間にライトグリーンの旋風が巻き起こされ、放たれたメガ粒子は拡散された。

 その旋風の正体は、ツインビームサイズを高速で振り回して擬似的なビームシールドを張ってみせた、ファイアワークスのガンダムデスサイズヘルだ。

 振り回し終えたツインビームサイズを肩に担ぎ直し、そのダイバーである白衣を着込んだ男は、ファストゥスと通信を行う。

 

「レンジの旦那、まずは奴等のメガ粒子砲を黙らせなくちゃ話にならん。……突っ込めるよな?"お祭り男"」

 

「ハッ、誰にモノ言ってんだ。ガキに遅れ取ったからって、見くびんなよ?」

 

 そう言うや否や、ファストゥスは突如フルスロットルで加速、それに追従するようにガンダムデスサイズヘルも続く。

 

「全く、どうしてうちの旦那様はあぁも派手好きなのやら……」

 

 呆れたように、しかしどこか嬉しそうにミスズは苦笑しーー背後からの浸食ガンプラを振り向きもせずにヒュドレインシァのインコムクローで貫き、ゼロ距離のメガ粒子砲で焼き払った。

 

 メガ粒子の暴風雨の中、オレンジの弾丸と鎌を携えた蝙蝠が悠々と泳ぐように掻い潜っていく。

 

「ははっ、こりゃぁ派手で良いねェ!」

 

 当たれば即死の弾幕を前にしても、レンジは愉快そうに笑う。

 すると、ネオ・ジオングの方が先に反応し、指先の一本一本がインコムのように分離、ファンネルビットとして飛来してくる。

 このファンネルビットはメガ粒子砲を放つだけでなく、機体に組み付くと、格納しているワイヤードリルで内部から装甲を食い破り、そのまま物理的にコントロールを乗っ取ってしまうと言う恐るべき性能を持つ。

 無論、そのことを知っている二人だが、彼らの交わす言葉は気軽なものだ。

 

「ほい来た、頼むぜドクター」

 

「はいはい、任されたっと」

 

 すると、ガンダムデスサイズヘルがファストゥスを追い越すと、大きく三日月を描くようにツインビームサイズを薙ぎ払う。

 その一閃により、複数のファンネルビットが纏めて破壊される。

 

「ほれ、どうぞ」

 

「サァンキュー!」

 

 ファンネルビットの破壊と同時にファストゥスが再び加速、大胆にもネオ・ジオングの目の前に躍り出ると、

 

「そぉらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらァッ!!」

 

 両手に構えたスピニングブラスターのバズーカを交互に連射、何発もの弾丸は肩部のメガ粒子砲の拡散によって撃ち落とされるが、全て迎撃するには至らず、四門のメガ粒子砲全てにバズーカ弾が炸裂、沈黙していく。

 

「いっちょ上がりっと!」

 

 ネオ・ジオングはすぐさま別の巨腕を前面に回してくると、中央部の超大型ハイメガ粒子砲と共に照射してきたが、ファストゥスは機体を翻してガンダムデスサイズヘルと共に急速離脱、ハイメガ粒子砲の火線から逃れつつ後退。

 

 ネオ・ジオング本体へのダメージはごく微弱だが、攻撃力をある程度削ぎ落とすことには成功した。

 

 しかし、だからといってネオ・ジオングが怯むかどうかはーー否だった。

 

 それどころか、ファンネルビットをさらに多数射出してより激しさの増した弾幕を展開してきた。

 ネオ・ジオングの攻撃と連携するように、Ⅱネオ・ジオングも多数のファンネルビットによる一斉射撃を行ってくる。

 

「圧倒的過ぎる……ッ!」

 

 メガ粒子砲を掻い潜りつつ、時折フィンファンネルによるバリアで守るノエルは、弾幕に全く衰えの見えないネオ・ジオング二機を前に歯噛みする。

 

『総員聞こえるか!後少しで援軍が到着する!それまで堪えるのだ!』

 

 カゲトラからの通信だ。

 フラワーズとファイアワークスだけが援軍ではないようだが、だとしてもどこのフォースが来るのか。

 

「だがっ、これ以上圧倒されてたまるかッ!」

 

 ツルギは意を決してアームレイカーを押し上げて、マスラオヘブンズクラウドを加速させ、レンジが攻撃を仕掛けていたネオ・ジオングへと迫る。

 

「ツルギを援護しろ!あいつなら突破出来る!」

 

 サヤがメンバー達に援護射撃を行うように指示を飛ばし、ハルナ、ユイ、ミーシャに続いてフラワーズの面々も砲撃を行ってくれる。

 

「アタシも続くぜ!」

 

 ツルギの後を追うように、ヤイコの蛇威雄音も続く。

 飛来してくるファンネルビットを『イザナギ』『イザナミ』で斬り捨て、四苦八苦しながらもネオ・ジオングの正面に飛び掛かるマスラオヘブンズクラウド。

 Ⅱネオ・ジオングの方は、ロイヤルナイツとトレイルブレイザーの面々がどうにか引きつけてくれている。

 

「コアユニットを破壊すれば!」

 

 コアユニットであるシナンジュに視線一点を向けるツルギ。

 だが、接近戦の間合いに踏み込むというのに、シナンジュはマスラオヘブンズクラウドにモノアイを向けるだけで何のリアクションも見せない。

 何のつもりだとシナンジュを凝視しながらも、後0.5秒でこちらの間合いに踏み込

 

「ぐっ!?」

 

 めなかった。

 

 それは、ネオ・ジオングのフロントスカートから伸びてきたランディングギアで、マスラオヘブンズクラウドはそれに掴まれて拘束されていた。

 本来は着地用のランディングギアではあるが、あまりにも巨大なネオ・ジオングを支えるためのそれは、MS一機を押さえ込むには十分過ぎる代物だ。

 

「まず、い……ッ!」

 

 拘束したマスラオヘブンズクラウドにロケットランチャーの砲口を向けようとするシナンジュ。

 

「さぁせるかゴルァァァァァァ!!」

 

 すかさず蛇威雄音がランディングギアを殴りつけ、それを粉々に砕いた。

 

「すまんっ、助かった!」

 

 間一髪、拘束から解かれたマスラオヘブンズクラウドはロケットランチャーの弾頭を躱し、そのままシナンジュへと斬り掛かるが、今度はファンネルビットの納められた巨腕に直接殴り飛ばされた。

 

「クソッ、やっと近づけてもこれか!」

 

 サイドバインダーを翻して姿勢を制御させるツルギ。

 同じように殴り飛ばされたヤイコもすぐに体勢を立て直すが、再びファンネルビットによるメガ粒子の雨が降り注がれる。

 さすがにこの近距離では飛び込めず、ツルギとヤイコは一旦距離を置く。

 

 今現在のところ誰も撃墜されてはいないが、何機かはまともに戦えなくなっており、ツルギ達はジリジリと消耗しつつある。

 ネオ・ジオングとⅡネオ・ジオングの二機はなおも健在であり、「ここから先は通さんとでも言っておこう」とばかり立ち塞がったまま。

 

 果たして、一体を相手にするだけでも勝てるかどうか分からない敵を二体も同時に対峙して勝てるものなのか。

 

「どうすればこいつらを倒せる……どうすれば……?」

 

 ツルギは自問自答するが、倒せるイメージが全く見えない。

 

 ほんの一瞬、この場にいるダイバー達に諦めが過り掛けて

 

 

 

 

「諦めちゃダメだよッ!!」

 

 

 

 

 そうオープン回線で叫んだのは、ハルナだった。

 

「わたし達は、GBNを守るためにここにいる!なのに、わたし達が諦めたら、誰がこの世界を守るの!?」

 

 十雷電刀を力強く構えて、中心に立つ桜花姫頑駄無。

 

 ーーそれは、自らが前線に立ち、その勇姿と求心力を以て兵士達を鼓舞する姫武者そのもの。

 

『よぉく言ったヒメカワ嬢!!』

 

 そのハルナの叫びに応じるように、カゲトラが嬉々と頷いた。

 

『そして皆の衆!よくここまで堪えてくれた!俺達の援軍が、たった今到着してくれたぞ!!』

 

 カゲトラがそう言うのと同時に、地球方面から無数の機影がやってくる。

 

 それらは、カゲトラがこの戦況を世界に向けて中継しているのを見て、立ち上がった者達。

 その数も、何万、何十万、何百万と増え続け、ついには一千万人以上のダイバーのガンプラが軌道上に集結しつつある。

 

『GBNは私達の居場所!』

 

『その居場所を俺達が自分で守らねぇでどうすんだ!』

 

『理屈なんざどうでもいい!俺は戦うだけだァ!』

 

『最後まで生き残った奴とはケッコンしてやるよー!』

 

『ガンダァァァァァァァァァァァムッ!!』

 

 GBNを守りたいもの、派手な戦いを求めるもの、ただノリに乗っているだけのもの。

 多種多様ながらそれは、全てひとつに繋がっている。

 

 その"繋がり"を自覚して、戦意を失いかけた者も再び意志を取り戻す。

 

 ツルギは右の拳を握り締めた。

 

「よぉし!勇気と希望はこの掌にある!もう十分だ……この戦いを、終わらせるぞッ!!」

 

 マスラオヘブンズクラウドは、最後の戦場へと舞い戻るーーーーー

 

 

 

 

 

 

【次回予告】

 

 ユイ「世界中のダイバーがひとつになって」

 

 マイ「GBNを守ろうとしている」

 

 ミーシャ「それじゃぁボクらも」

 

 サヤ「やることはひとつだ」

 

 ヤイコ「やってやろうじゃねぇか!」

 

 ツルギ・ハルナ「次回、ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツ

 

『このソラの果てまで』」

 

 ツルギ「あのすまん、誰でもいいから俺に次元覇王流拳法を教えてく……」

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