ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツ   作:さくらおにぎり

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5話 激闘!フォース・ロイヤルナイツ

 フォース・スピリッツを結成したその日から、ツルギ達はフォース専用のミッションなども受けられるようになり、選択の幅が広がっている。

 

 今しがた、ミッションも一段落したところで、五人はエントランスで相談していた。

 

「わたし達のフォース戦デビューって、どうしよっか?」

 

 開口一番、ハルナが最初にそれを口にした。

 フォース戦。

 それは、GBNの醍醐味と言うべきものだ。

 

「まだどことやるとかは決まってないでしょう?」

 

 ユイもハルナの話に耳を傾ける。

 

「俺達の平均ランクはC。やるなら、中堅辺りのフォースになるな」

 

 サヤはダイバーギアを見て、自分達のフォースの情報と照らし合わせながら、どこのフォースとバトルを組むべきかと考案している。

 

「フォース戦かぁ、何だか楽しみになってしました!」

 

 フォース戦が待ち遠しいのか、ミーシャはそわそわしている。

 

「……」

 

 フォース戦を楽しみにしているだろう四人の中で、ツルギだけは少しだけ表情に陰りを見せていた。

 

「(フォース戦、か……必要な回り道って言うのは、分かってるつもりだが……)」

 

 あのダークマスターなるダイバーも、フォースを組んでいる。

 であれば、ここでフォースを結成するのは間違いではない。

 しかし、ツルギの本来の目的である、次元覇王流拳法の会得は直接関係のないことでもある。

 目標まで最短で進むのは、破滅と同義だ。

 そこに至るまでにどれだけを失おうと構わないほど、ツルギは止まれない人間ではない。

 

「おや、何やら楽しそうですね?」

 

 そこに、ミツキがエントランスにやってきていた。

 五人ともミツキに向き直った。

 

「久しぶりだね、ミツキ」

 

 最初に声を掛けたのはサヤだった。

 

「お久しぶりです、ツバキ・サヤ。ツルギ達とはお知り合いでしたか?」

 

「学校が同じでね、フォースに入ってくれとせがまれたのさ」

 

 苦笑するサヤに、ミツキは「そうでしたか」と笑みを浮かべた。

 

「まずは、フォース結成おめでとうございます。これから、フォースバトルのデビュー戦ですか?」

 

「いや、まだどことやるかは決めていないな。それもあるが……」

 

 ちらり、とサヤは周りにいる四人を見やる。

 

「彼らの戦闘データを見させてもらった。可能な限り主観を取り除いた上で言わせてもらうと、玉石混淆で荒削りだが、磨き上げる、あるいはさらに削れば、相応のモノになると確信しているよ」

 

 サヤは、自分を除いたこのメンバーを客観的に評価していた。

 

 ツルギは操縦技術も製作能力も何もかも素人で荒々しいが、武道の賜物故か、瞬間的なインファイトであれば同ランカーなど歯牙にも掛けないだろう。

 今はまだ武技一辺倒だが、GBNに必要な力を身につけてそれを磨き上げた時、"化ける"可能性がある。

 

 ハルナはこの中で一番安定しており、各能力も過不足無しといったところ。

 焦らずじっくり経験を積み重ねていけば、ランクの上昇も比例していくだろうが、SDガンダム使いであるために相手から対策されやすく、今のままではやがて茨の道を進むことになるかもしれない。

 

 ユイはツルギと同じくらいのビギナーだが、その彼とは対照的で堅実な戦闘スタイルと、高い射撃センスを持っている。

 中近距離での戦闘力に特化しがちなこのメンバーの中では、貴重な後衛役を担ってくれる点も含めて、この先も重要な存在になるだろう。

 

 ミーシャはこの中でも最も経験が浅いが、ガンプラの製作能力は悪くない。

 扱いにくい重装備もそつなく使いこなせるため、装甲の頑強さを活かした前衛、火力の高さを活かした後衛、どちらに回しても活躍を期待できる。

 

 いずれも、ダイヤモンドの原石となり得るかは未知数だが、期待を寄せるには十分に値する。

 

「なるほど。でしたら……」

 

 ミツキはコンソールパネルを呼び出し、スライドとタップを繰り返して、五人にある画面を見せる。

 

「フォース・スピリッツに相応しいデビュー戦……であれば、こちらはいかがですか?」

 

 コンソールパネルに表示されているのは、どこかのフォースの公開許可されているデータ。

 フォースメンバーの平均ランクはB。

 ツルギ達フォース・スピリッツよりも一段階ほど格上の、ちょうどサヤが求めていた中堅レベルのフォースと言ったところか。

 

「……フォース『ロイヤルナイツ』、か」

 

 ツルギがそう呟いたその視線の先には、フォースリーダーだろう、金髪縦ロールの女性ダイバーの顔画像があった。

 

 

 

 

 

 今日のGBNでのプレイを切り上げて、各々で解散。

 ツルギとハルナは、いつもと同じように帰り道を二人で辿っていた。

 

「……ハルナ、ちょっといいか?」

 

「ん、なぁに?」

 

 ツルギは神妙な面持ちでハルナに話し掛けた。

 

「正直、今のマスラオに限界を感じている」

 

 現在、ツルギのランクはDだが、もうじきCランクに昇格する頃合いだ。

 だが、最近のツルギは苦戦することが増えており、ユイやミーシャと比べても活躍が見劣りしつつある。

 

「今までは何とかなってきたが、ここから先、いつ頭打ちになるか分からん。だから、俺もそろそろガンプラの改造ってのが必要になって来ているのかもしれない」

 

「でもツルギくん、いきなり改造とか出来るの?」

 

「出来るかもしれんが、ぶっちゃけ不安だ。だからこうしてハルナに相談してんだよ。……ガンプラの改造、手伝ってくれないか?」

 

 ユイとミーシャはまだビギナーの域を出ないだろうし、サヤはそもそもの時間があまり取れない。

 マイもカゲトラも予定が合わないことが増えている。

 故に、ハルナに頼むしかないのだが、彼女が一番頼みやすいと言うのも理由の一つだ。 

 

「うん、いいよ♪」

 

 予想通りと言うべきか、ハルナは快諾してくれた。

 

「あっ、でも……ツルギくん、マスラオに具体的にどう言う改造を施すとか、考えてる?」

 

「まずはそこなんだよな……どう改造したらいいのかも分からん」

 

 マスラオの改造をするのはいいが、ツルギだけでは全く手を付けられないのが現状だった。

 

「んーと、今のマスラオに限界感じてるんでしょ?ここがもっとこうだったらなー、とか思わなかった?」

 

 元より、マスラオは『最高のスピードと最強の剣』と言う突飛なコンセプトで作られたMSだ。

 攻撃力と機動性だけを追求し、それ以外は全て無視したと言っても過言ではないどころか、全く持ってその通りである。

 とてもではないが、初心者が扱うようなものではない。

 それを今日までこうも使えているのは、ひとえにツルギの戦闘スタイルとマスラオの性能が、辛うじて噛み合っているからだろう。

 

「そうだなぁ……殴ったり蹴ったりすると、どうしても手足が潰れやすくなるのはまずいな」

 

「そっか、ツルギくんはサーベルだけじゃなくて、徒手空拳も使って戦ってるもんね。そこも考えないと……」

 

 むむむ……と、ハルナは目を細めて思案する。

 

「ねぇツルギくん、明日って剣道部も柔道部も休みの日でしょ?」

 

「あぁ、そうだな」

 

 つまり、明日の放課後は完全にフリーと言うわけだ。

 ずずいっ、とハルナはツルギに顔を近付ける。二人の身長差があるために、ハルナが目一杯背伸びする形になるが。

 

「明日、みっちり改造に付き合ってあげるからね」

 

 

 

 

 

 翌日の放課後。

 終礼を終えるなり、ツルギとハルナは一度帰宅してから、真っ直ぐにガンダムベースに向かうことになった。

 

 製作ブースの一席を占拠、ツルギはマスラオを、ハルナは持ってきたのだろうジャンクパーツを入れた箱を置く。その周りには、ヤスリやニッパーと言った工具に、塗料の小瓶が並んだケース。

 

「ハイッと言う訳で、今から『ツルギくんのマスラオをちょっとだけ改造しちゃおう大作戦』を始めまーす!」

 

「ちょっとだけなのに"大"作戦なのか?」

 

 ツルギのツッコミも無視して、ハルナは早速そのまんま過ぎるネーミングセンスの大作戦を始めようとする。

 

「わたしなりに、今のツルギくんに何が必要なのかを考えてきたの。確かにマスラオは接近戦に突き詰めたガンプラだけど、ツルギくんが得意な徒手格闘に向いているとは言いにくいんだよね」

 

「つまり、俺に最適化するように改造するってことか?」

 

「その通り。さすがツルギくん、察しが良くて何より何より」

 

 そこで、とハルナは持ってきたジャンクボックスを開く。

 ツルギから見れば、分けの分らないガラクタにしか見えないが、これを使って形にするのだ。

 ハルナが主導となって、ツルギは初めてのガンプラ改造へと挑む。

 

 

 

 

 

 間近に迫るフォース戦を前に、ガンプラの改造強化を行おうとしているのはツルギやハルナだけではない。

 ちょうど足りなくなりそうな塗料を買いに行くついでに、少しだけガンダムベースで手を付けようと考えていたミハイルは、販売ブースで目的の塗料を購入して、そのまま製作ブースへ入り込んだ。

 

「……アレ?ツルギさんにハルナさん」

 

 ミハイルの声に気付いたか、ハルナはそちらに振り返る。

 

「ミハイルくんも来たの?」

 

「はい、買い物ついでにと思いまして……ツルギさん?」

 

 ツルギからの返事がないと思ったミハイルは、ハルナの向かいの席にいる彼に声をかけようとするが、

 ハルナはパッと人差し指を立てて口元に近付ける。

 静かにしてほしい、と言う意思表示だ。

 

「……………………………………………………」

 

 今のツルギは、右手にガンダムマーカーを、左手にはマスラオのパーツをそれぞれ手にしている。

 ガンダムマーカーでマスラオを塗装しているのだ。

 ミハイルが来たことに気を向けず、一心不乱に作業に集中している。

 その様子を見てミハイルも察したようで、静かにその場を離れて別のテーブルに着く。

 

 

 

 

 

 日も暮れ始めた頃になって、ツルギはガンダムマーカーを置いた。

 

「ふー……」

 

 一息つく彼の手元には、やや拙いながら彩られたマスラオのパーツの数々。

 まだ全てのパーツが塗装されたわけではないが、ここからもう少し日にちをかけて塗り終えていくつもりだ。

 

「お疲れ様、ツルギくん」

 

 コトン、とハルナはツルギの手元に缶コーヒーを置いてやる。

 

「ん、ありがとな」

 

 缶コーヒーを一息で飲み干すツルギ。

 

「意外と時間経つの早いもんだな、もう19時か」

 

 壁時計を見やると、短針が7を指していた。

 作業自体は17時辺りから始めたはずだが、いつの間にか二時間も過ぎていたようだ。

 

「そうそう、ツルギくん気付いてないかもだけど、ツバキ先輩からメール来てたよ」

 

「ツバキ先輩から?」

 

 全然気づかなかったな、と呟きながらツルギはダイバーギアを取り出して、新着メールを開く。

 

 Saya∶一応全員に確認しておきたいんだが、俺達の初のフォース戦の相手は、ロイヤルナイツでいいかな?

 全員の確認を取り次第、ミツキを通じて申し込ませてもらう。

 急がなくてもいいが、なるべく早い返事を待っているよ。

 

 サヤからのメールとは、対戦相手の確認だった。

 ツルギとしてはどことやりたいかの拘りも無いため、すぐに異論がないことを伝えるために返信する。

 

 Tsurugi∶ロイヤルナイツで問題ないですよ。他の皆はどうですか?

 

 サヤへの返信を完了してから、ツルギは後片付けを始める。

 

「そう言えば、ハルナは何を作ってたんだ?」

 

 向かいの席にいたとは言え、塗装に集中していたため、ツルギはハルナが何を作っていたのか気付いていなかった。

 

「もちろん、マスラオの改造パーツだよ。ツルギくんの戦闘データを見直しながら、こうだったらいいんじゃないかなって思いながらね」

 

「なんか悪いな、ハルナだって自分のガンプラに手を付けたいだろうに」

 

「いいのいいの。ツルギくんはまだ初心者だし、これからだよ」

 

 だからさ、とハルナは改造ツールを閉じた。

 

「フォース戦、頑張ろうね♪」

 

 今日一番の笑顔で、答えてくれた。

 

 

 

 

 

 ツルギのサヤへの返信が最後の確認だったようで、フォース・スピリッツは、フォース・ロイヤルナイツとのフォースバトルを申し込んだ。

 双方の合意の元、バトルは三日後の日曜日に控えることとなった。

 それまでの間、ツルギはハルナと共にマスラオの改造と、調整を急いだ。

 無論、ユイやミーシャ、サヤも同様に時間を見つけてはバトルに備えて準備を整えていた。

 

 その二日間もあっという間に過ぎ去り、フォースバトル当日を迎えた。

 

 

 

 

 

 当日。

 ツルギ達スピリッツは、ミツキが操縦するスペースシャトルに乗っていた。

 今回のフォースバトルは、宇宙空間での戦闘になるからだ。

 シャトルで予定ポイントへ向かい、バトルの前に相手フォース、ロイヤルナイツのメンバーと顔合わせをする手筈だ。

 ベース基地からマスドライバーを通じてシャトル発進、瞬く間に大気圏を離脱していく。

 成層圏を突破、1Gの重力を振り切りに成功、ミツキは進路を微調整しつつ加速、双方に定められている予定ポイントへ向かう。

 予定ポイントへ到着、減速すると、ミツキはコンソールを操作してレーザー通信を発信する。

 

「こちら、フォース・スピリッツのエージェント、ミツキです。フォース・ロイヤルナイツ、応答願います」

 

 ミツキの背後には、シートベルトを外して席から立ったスピリッツのメンバーがモニター前に立つ。

 数秒のノイズの後に回線コードの一致を確認、相手側のフォースの面々がモニターに映る。

 

 先頭にいるのは、堂々たる佇まいの金髪縦ロールの女性ダイバー。

 姫騎士のような、華美なドレスと甲冑を混ぜ合わせたコスチュームは、彼女の金髪にマッチしている。

 

『こちら、フォース・ロイヤルナイツ。フォースリーダーのノエルと申します。本日は私共とのフォースバトルを申し込んでいただき、ありがとうございますわ』

 

 対外的な応答なのか、芝居のかかったお辞儀を見せるロイヤルナイツのメンバー達。

 

「……ん?」

 

 ふとツルギは、ノエルの左隣に立っている、ブロンドの髪をした少年ダイバーの姿を見る。

 表示されているダイバーネームは『リヒター』。

 

「お前っ、あの時の初心者狩り野郎か!?」

 

 ツルギはそのリヒターの顔を見て、思い出した。

 初めてGBNにダイブしたあの日、一方的な勘違いで攻撃を仕掛けてきた、アレックスのダイバーだ。

 それがまさか、今回のフォース戦の相手になろうとは。

 

『なっ、誰が初心者狩り野郎だ!?と言うか、君はこの間の分けの分からないマスラオ使いじゃないか!?』

 

 リヒターの方もツルギを見て気付いたらしい。

 

「……まさか、こんなところで会うとはな」

 

『チッ、君の顔を見るだけで腹ただしい……!』

 

 ただの顔合わせのはずが、どこか険悪な雰囲気になりかける。

 

「ツルギ、リヒター。双方の不満はバトルを以て解決してください。よろしいですね?」

 

 咄嗟にミツキが双方を仲裁する。

 

「別に俺は不満を覚えているわけじゃないが……」

 

『……フンッ』

 

 ツルギはともかく、リヒターは露骨に不機嫌になってモニターの前から去る。

 仕切り直しと言うことで、ミツキが咳払いをしてから話を持ち直す。

 

「それでは、今回のフォースバトルのルールを確認します。ルールは、五対五の殲滅戦。母艦への攻撃は原則禁止。審判は私、ミツキが務めさせていただきます。よろしいですね?」

 

 スピリッツ、ロイヤルナイツから疑問の声は上がらないことを確認。

 

「ではこれより、三分間のインターバルを開始します。戦闘に参加するダイバーは、ガンプラへの搭乗をどうぞ」

 

 モニターに180秒のカウントがスタートした。

 

 

 スピリッツの面々は、各々のガンプラに乗り込んでいく。

 

「ねぇ、ツルギくん」

 

 ハルナがツルギに通信を繋いだ。

 

「ん?なんだハルナ」

 

「その、さっきのリヒターって人のことは……」

 

 ダイバー同士で喧嘩になるのではないかと、ハルナは不安に思ったのだ。

 せっかくのフォースバトルのデビュー戦で、後味の悪い思いはしたくないとハルナは言うが、ツルギは気を害した様子もなかった。

 

「別に不満とかはないって言ったろ?あいつに対して恨み辛みがある分けじゃない」

 

「……そっか。なら良かった。うんっ」

 

 それを聞いて安心したらしく、ハルナは気を取り戻すように力強く頷いた。

 

『カウント、ゼロ。全機、発進どうぞ』

 

 ミツキからの発信指示。

 出撃開始だ。

 

「ハルナ、姫武者頑駄無!」

 

「ユイ、ガンダムヘビーバスター!」

 

「ミーシャ、ガンダムアスタロトリオート!」

 

「サヤ、ガンダムAGE-2 エアレイド!」

 

 ハルナの姫武者頑駄無、ユイのガンダムヘビーバスター、ミーシャのガンダムアスタロトリオート、サヤのガンダムAGE-2 エアレイドが、順々にシャトルから発進する。

 

「ツルギ、『レイジングマスラオ』!フォース・スピリッツ、参るッ!!」

 

 そして最後にツルギの新たなマスラオ、レイジングマスラオが宇宙の海へ飛び立つ。

 元のマスラオと大きく異なるのは、背部のユニオンの徽章を模したコンデンサーの代わりに、展開式の大出力コンデンサーと大型スラスターウイングを備えたバックパック『レイジングユニット』

 カラーリングも、元のマスラオよりも赤い部分が増えており、より攻撃的な印象を抱かせる外観となった。

 

 スピリッツのガンプラが全機出撃完了、司令塔であるサヤが各々との通信を繋ぐ。

 

「全機、まずはフォーメーション通りに動くぞ。ツルギとミーシャが前へ、俺とハルナが中央、ユイが後ろへ」

 

「「「「了解」」」」

 

 昨日に打ち合わせていた通り、前衛をレイジングマスラオとガンダムアスタロトリオートが受け持つ。

 中衛、もしくは遊撃を担当するのは姫武者頑駄無とガンダムAGE-2 エアレイド。

 そして後方からの支援砲撃は、ガンダムヘビーバスターが一任する。

 

 フォーメーションを組み上げてから数秒、前方から敵対反応が接近してくる。

 リヒターのアレックス、騎士ガンダム、ジンクスⅢ、グレイズリッターの四機。

 そしてそれらの先頭に立つのは、ゴールドとメタリックブラックのツートーンをベースに塗装された、νガンダムの改造機。

 カラーリング以外で原典機と異なるとすれば、右手には細身の剣のようなビームサーベル『ビームレイピア』を持ち、背部にあるはずのフィンファンネルは、左肩にマントのように提げられており、さながら『ガンダムローズ』を踏襲したかのようなシルエットだ。

 機体銘は『エーデルνガンダム』と言うらしい。

 

「牽制をかけるわ!」

 

 ユイは四人に呼びかけると、ガンダムヘビーバスターは94mm高エネルギー集束火線ライフルを前に、350mmガンランチャーを後ろに連結した、超高インパルス長射程狙撃ライフルを組み上げ、ロイヤルナイツのガンプラ達へ向けて薙ぎ払うように放つ。

 あくまでも牽制射撃であるため、ロイヤルナイツの面々は散開してビームを回避する。

 

「よぉしっ、行くぞミーシャ!」

 

「はいッ!」

 

 ツルギの呼びかけにミーシャが応じて、レイジングマスラオとガンダムアスタロトリオートは突進する。

 今回、ガンダムアスタロトリオートは宇宙戦に対応するために、背部にはウェポンラックの代わりに、キマリスブースターをベースに改造した『アヴァランチブースター』を装備している。これは、三日前にガンダムベースに訪れた際に完成させたものだ。

 これによって、宇宙戦における機動性が大きく上昇している。

 真っ先に訥咸するガンダムアスタロトリオートはロングレンジライフルを撃ちながら、グレイズリッターへ肉迫する。

 グレイズリッターはジンクスⅢと連携して、それぞれ120mmライフルとGNビームライフルを連射して迎え撃つものの、射撃攻撃の大半を無効化する『ナノラミネートアーマー』に守られたガンダムアスタロトリオートは被弾などモノともせずに迫り、左手にパイルハンマーを抜き放って、グレイズリッターに接近戦を挑む。

 パイルハンマーとグレイズリッターのナイトブレードが鎬を削り合う側面を、ジンクスⅢはGNランスを突き立てようとするが、そこへDODS効果を帯びた螺旋状に回転するビームが横切る。

 

「邪魔はさせん!」

 

 ストライダーフォームで前衛二人に追従してきた、サヤのガンダムAGE-2 エアレイドによるハイパードッズライフルだ。

 ジンクスⅢはそちらへと注意を向け、GNビームライフルを撃ち返し、中距離での射撃戦へもつれ込む。

 

 

 

「サヤ先輩はミーシャの方に行ったか。なら俺は……」

 

 ミーシャとサヤの動向を確認してから、ツルギは前方へ意識を向ける。

 視界の先にいるのは、エーデルνガンダムと、随伴している騎士ガンダムの二機。

 武装フォルダを選択、細かい部分塗装を施してより日本刀然とした『ハワード』『ダリル』を左右に抜き放つ。

 

「ハルナ、行けるか?」

 

 一人で立ち向かう前に、もう一人の中衛であるハルナに呼び掛ける。

 

「もちろん!」

 

 姫武者頑駄無は雷振火音を構え直して、レイジングマスラオの一歩後ろにつく。

 

「よし!」

 

 これでハルナからの援護も期待できる。

 ツルギは勢いよくアームレイカーを押し出して、前方へ突進する。

 

 対するノエルのエーデルνガンダムは、右手のビームレイピアを構えず、直立姿勢のままだ。

 

『さぁ……私の前に平伏しなさい、フィンファンネル!!』

 

 エーデルνガンダムはバッと左腕を伸ばすと、マントのように提げられていたそれらが翻るように一斉に切り離され、『コ』の字のように変形すると、一人でに動き出してはレイジングマスラオの進路を塞ぐようにビームを放ってくる。

 

「なっ、何だこいつら!?」

 

 ビットやファンネルのようなオールレンジ攻撃を見慣れないツルギは、思わず警戒して突進の速度を緩めてしまう。

 

「気を付けてツルギくんっ、それはファンネルって言うの!囲まれるとまずいよ!」

 

「おっ、おぅっ!」

 

 ハルナからの助言を受けて、ツルギは気を引き締め直してフィンファンネルからのビームを躱していく。

 この宇宙空間を自由自在に飛び回るビーム砲と言っても良い。上下左右から囲まれれば最後、一瞬で撃ち落とされるだろう。

 回避を続けるレイジングマスラオへ騎士ガンダムが接近戦を仕掛けようと迫るが、姫武者頑駄無が雷振火音の引き金を引いて、近付けさせない。

 

 あらゆる方向から襲い来るビーム。

 それら一筋一筋の隙間を、レイジングマスラオは掻い潜り、ついにフィンファンネルの包囲から抜け出した。

 

「抜、け、ら、れ、たァッ!」

 

 ようやく本領の接近戦を仕掛けられる、とツルギはエーデルνガンダム目掛けてレイジングマスラオを突撃させる。

 

『なかなかやりますわね』

 

 ノエルはフィンファンネルを呼び戻してはエーデルνガンダムの左肩へ装着させ直すと、ビームレイピアを構え、半身で迎え撃つ体勢を整える。

 

 後数秒で互いの得物の間合いに飛び込むーーその瞬間、両者の間に、何者かが割り込んだ。

 

 グレイズリッターとジンクスⅢはミーシャとサヤが相手をしている。

 騎士ガンダムはハルナの足止めを受けている。

 残る一機がいるとすれば、

 

『君の相手は、この僕だろうが!』

 

 青と白のガンダムタイプ、リヒターのアレックスだ。

 割り込み様にビームサーベルをぶつけようとしたのだろうが、ツルギの反応も早く、『ダリル』で弾く。

 

『リヒター!何を勝手な真似を……!?』

 

『ノエル姉様は手を出さないでほしい』

 

 ノエルの咎めを払い除け、リヒターは目の前のマスラオの改造機を睨みつける。

 

『こいつは僕が、僕の手で討つ!』

 

 ビームサーベルとシールドで身を固め、アレックスはレイジングマスラオへ突進する。

 再度、レイジングマスラオとアレックスのビームサーベルが衝突する。

 

『この前のようにやれると思うなよ!』

 

 アレックスは鍔迫り合わずにすぐに引き、素早く再度ビームサーベルを逆袈裟に斬り上げる。

 

「それは……」

 

 レイジングマスラオは捻るように身を翻してビームサーベルの斬撃を躱すと、その流れのままアレックスの頭部を蹴り飛ばす。

 

「こっちの台詞だな!」

 

『グッ……なめるなぁ!』

 

 蹴り飛ばされたアレックスは姿勢を正そうとするものの、遠距離から無数の銃弾が降り掛かってきては装甲やシールドを小刻みに叩く。

 騎士ガンダムの相手をしつつも、ハルナの姫武者頑駄無が雷振火音で牽制し、さらにユイのガンダムヘビーバスターがダブルガトリングガンで援護射撃を加えてきている。

 

「早速乱戦になってきたけど……」

 

 ユイはダブルガトリングガンを撃ちまくりながらも、各機状況を見通していく。

 隙あらば、狙撃を行うためだ。

 

 

 

 アレックスを足止めしてもらっている内に、ツルギはレイジングマスラオを加速させて、ノエルのエーデルνガンダムの元へ向かう。

 

 一閃。

 

 レイジングマスラオの『ハワード』と、エーデルνガンダムのビームレイピアが、眩いスパークを弾け彩る。

 互いに弾き合い、すかさずレイジングマスラオは『ダリル』を振るうが、エーデルνガンダムは瞬時に左肩のフィンファンネルの束を差し向けて、『ダリル』を弾き返した。

 

「堅いかっ!?」

 

 ビームに対する耐性が高いのか、全く歯が立たない。

 

『その程度の攻撃で、私のフィンファンネルは破れなくてよ!』

 

 弾かれて体勢を崩しかけたレイジングマスラオに、エーデルνガンダムのビームレイピアの無数の刺突が襲い来る。

 それに対するレイジングマスラオも、『ハワード』『ダリル』の両方を以て迎え撃つものの、フェンシングのように素早く鋭い"突き"は、全てを捌き切ることは出来ず、レイジングマスラオの装甲に幾つもの痕を走らせていく。

 

「クッ、さすがに強いか……ッ!」

 

 しかし防戦一方にはなるまいと、ツルギも反撃にかかる。

 

 

 

 

 

 ミツキはシャトルのコクピットから、いくつものモニターを映し出してバトルを観戦している。

 

「……おや、シャトルに侵入者が入ってきたと思えば、あなたでしたか」

 

 視線はモニターに向けたまま、ミツキは何者かに声を掛けた。

 ミツキの背後から来るのは、胡散臭さがジオンの軍服を着て歩いているような男、カゲトラだ。

 

「ご機嫌よう、ミツキ氏。戦況はいかがかな?」

 

「均衡は五分五分。1ランク上の相手とは言え、よく戦っているかと」

 

「ふむ、そうか」

 

 カゲトラは堂々と補助席に腰を下ろした。

 

「ところで、どうやってシャトルに侵入したのか訊くのは野暮でしょうか?」

 

「フッ……」

 

 ミツキの質問に対し、カゲトラは薄く笑っただけだった。

 

 一方のガンダムAGE-2 エアレイドとジンクスⅢの戦い。

 ビームサーベル同士が衝突を繰り返す中、不意にジンクスⅢは大きく回り込み、ガンダムAGE-2 エアレイドのビームサーベルを空振りさせた。

 

『もらったぁぁぁっ!』

 

 ジンクスⅢは急速反転、背後からGNランスで突き立てようと突進する。

 ガンダムAGE-2 エアレイドは振り向こうとする挙動すら見せない。

 反応出来ていないのではない。

 

 反応する必要がないからだ。

 

『なっ!?』

 

 全く別の方向から放たれてきたビームが、ジンクスⅢを貫いていた。

 

 それは、ほんの数秒だけアレックスから目を切っていた、ガンダムヘビーバスターの、超高インパルス長射程狙撃ライフルによる攻撃だ。

 

『ノッ、ノエル姉様、ご武運を……』

 

 ジンクスⅢ、撃墜。

 

「良い援護だったよ」

 

「ありがとうございます、サヤ先輩」

 

 戦闘中故、短く言葉を交わしてから、ユイは注意をアレックスへと戻す。 

 

 すぐに他の援護に向かわなければ、とサヤはガンダムAGE-2エアレイドをストライダーフォームへ変形させて、幾つもの光が交錯する場所へ急ぐ。

 

 

 

 

 

 グレイズリッターのナイトブレードが、ガンダムアスタロトリオートのロングレンジライフルを斬り裂いた。

 

「ッ!」

 

 ミーシャは素早くロングレンジライフルを腕から切り離し、爆発から逃れる。

 パイルハンマーを両手で構え直し、ナイトブレードを弾き返す。

 

「向こうの方が素早い……ッ!」

 

 直線の加速力なら、ブースターを装備したガンダムアスタロトリオートの方が上だが、元々の機動性が十分に高いグレイズリッターの方が小回りがきく。

 加えて、大振りなパイルハンマーとナイトブレードとでは手数が違う。

 まともに戦っても、時間はかかるし苦戦も必死だろう。

 ミーシャに打開策を考える余裕はない、すぐにでもグレイズリッターはナイトブレードを片手に迫ってくるのだから。

 ガンダムアスタロトリオートもパイルハンマーで迎え撃ち、金槌と剣が激しく打ち合う。

 しかし相手の方が手練れている故か、振り抜かれるパイルハンマーの一撃を躱し、その僅かな隙を文字通りナイトブレードで突いてくる。

 ナイトブレードの一撃が、ガンダムアスタロトリオートのアヴァランチブースターを貫き、内蔵されている推進剤がスラスターに引火、暴発する。

 

「わあぁぁぁっ!?」

 

 ナノラミネートアーマーに守られているとは言え、MSに装備させるサイズのブースターの爆発質量は、ガンダムアスタロトリオートを吹き飛ばすには十分過ぎる威力を持っていた。

 

 追撃してきたグレイズリッターのナイトブレードの切っ先が、ガンダムアスタロトリオートの胴体に突き刺さった。

 

『やったか!』

 

 胴体、つまりは心臓部であるコクピットを捉えたと、グレイズリッターのダイバーは仕留めたと確信する。

 しかしーー

 

 ガンダムアスタロトリオートは左のマニュピレーターで、胴体に突き刺さったナイトブレードを握るグレイズリッターの腕を捕まえる。

 

『なっ……まだ動けるのか!?』

 

「捕まえ、たッ!!」

 

 自身にも少なくないダメージを負いながらも、ミーシャはアームレイカーを一気に押し込む。

 ミーシャが撃墜されていない理由とは、単に前面装甲の分厚さにあった。

 確かにナイトブレードは胴体装甲を捉えたが、ギリギリ撃墜判定を得るには至らなかった、というわけだ。

 ガンダムアスタロトリオートはそのままグレイズリッターを引き込み、パイルハンマーの尖端を押し付ける。

 

『はっ、放せっ!放……』

 

 次の瞬間、パイルハンマー内臓のパイルバンカーが射出され、グレイズリッターの胴体をバックパックまで貫通した。

 

 グレイズリッター、撃墜。

 

「ふぅ……」

 

 ひとまず、目の前の敵を倒すことに成功して安堵するミーシャ。

 敵機は残り三つ。

 グレイズリッターに突き刺さったパイルバンカーを引き抜き、自身に突き刺さったナイトブレードも抜き捨てる。

 アヴァランチブースターを失っても、ガンダムアスタロトリオート本来の機動性は失われていないものの、ロングレンジライフルを失ったため、まともな援護も出来ない。

 

 ふと、ストライダーフォームのガンダムAGE-2 エアレイドが近付いてきた。

 

「ミーシャ、大丈夫か?」

 

「すみませんサヤ先輩、みんなの援護に行くのは難しそうです」

 

「無理するな、後は任せてくれ」

 

 短い通話の後に、サヤはガンダムAGE-2 エアレイドを再度加速させて、他の三人の元へ急ぐ。

 

 

 

 

 

 ノエルのエーデルνガンダムはフィンファンネルを放ち、ツルギのレイジングマスラオを近付けさせないようにビームの弾幕を張る。

 それと同時に、彼女のコンソールはジンクスⅢとグレイズリッターのシグナルロストを告げた。

 

『ライアンとアリシアが墜された!?えぇぃっ、新参フォースと言えど慢心するなと……ッ」

 

 立て続けに味方機を撃墜され、ノエルは歯噛みするが、すぐに残る二人の僚機、リヒターのアレックスと騎士ガンダムへ呼び掛ける。

 

『リヒター、ジューダス、すぐに後退して立て直しますわよ!』

 

 リーダーの指示を聞いて、騎士ガンダムはすぐに反転してエーデルνガンダムに追従する。

 

「仕切り直しか?」

 

 ツルギは離れていくエーデルνガンダムと騎士ガンダムを見やる。

 

「……あっ、ユイちゃん狙われてる!」

 

 レーダー反応の位置を見てハルナは、ユイに接近しつつある敵対反応ーーリヒターのアレックスを見て急いで反転、レイジングマスラオもその後を追う。

 

 

 

 

 

 アレックスはすぐに動けなかった。

 否、後退しようと思えばすぐにでも下がることは出来るだろう。

 そうでないのは、リヒター機は執拗にレイジングマスラオを追おうとしては、ガンダムヘビーバスターに阻害されているからだ。

 

『ちぃっ、邪魔をするな!』

 

 リヒターはレイジングマスラオからガンダムヘビーバスターへ矛先を変えた。

 

「こっちに来る?」

 

 ユイは先程まで見向きもしてこなかったアレックスがこちらに向いたのを察し、ダブルガトリングガンを撃ちながら距離を取っていく。

 ノエルの後退指示を無視して、リヒターのアレックスはガンダムヘビーバスターへ突っ込んでいく。

 ダブルガトリングガンの銃弾の嵐を、シールドで防ぎながらも掻い潜り、アレックスは確実にガンダムヘビーバスターへ迫りくる。

 

「スゥ……フゥ」

 

 ユイは冷静さを保つために意識的に呼吸を整え、ガンダムヘビーバスターは右手にアーマーシュナイダーを抜き放つ。

 振り抜かれるアレックスのビームサーベルに対し、アーマーシュナイダーで弾き返す。

 これは、耐ビームコーティングと超振動効果の併用により、短時間であればビームサーベルとも打ち合うことが出来るものだ。

 弾き返して間髪なく、その距離でダブルガトリングガンの引き金を引こうとするものの、アレックスはシールドで殴るようにダブルガトリングガンを押し退ける。

 

『これでっ……』

 

 再度、ビームサーベルを突き出そうと迫るアレックス。

 

「甘いッ!」

 

 しかしそれよりも早くガンダムヘビーバスターは機体を翻してアレックスを蹴り飛ばす。

 アレックスとの距離が開くなり、ガンダムヘビーバスターは左脚のホーミングミサイルポッドを開いた。

 

『しまっ……!?』

 

 直後、18発のミサイルが、蹴り飛ばされて姿勢制御も取れていないアレックスへ降り注ぐーー

 

 が、その寸前にアレックスとホーミングミサイルとの間に三角形状の赤光が割り込み、赤光に触れたホーミングミサイルは次々に爆発していく。

 

「防がれた!?」

 

 ユイは目の前に広がる膜のような赤光を凝視する。

 

『全く……手間のかかることですわね』

 

 

 姿勢を崩したアレックスを守ったのは、ノエルのエーデルνガンダムだった。

 フィンファンネルを三角形状に展開、ビームバリアとも言うべきフィールドを張り、ホーミングミサイルからアレックスを守ったわけだ。

 

『ノ、ノエル姉様……その、』

 

『リヒター、あなたは下がって援護に徹しなさい』

 

 ノエルはそう言い付けると、リヒターは一度躊躇いかけて、エーデルνガンダムの斜め後ろにつく。

 同時に、レイジングマスラオと姫武者頑駄無の二機がガンダムヘビーバスターを守るようにつく。

 

「ハルナ、まだやれるな?」

 

 ツルギは身構えつつ、隣のハルナに呼び掛ける。

 

「やれるかって?やるしかないでしょ!」

 

 姫武者頑駄無はその場で火糸薙刀を遊ばせることで戦意を見せる。

 

「私もまだ行けるから、大丈夫よ」

 

 ユイの方も、残弾の少ないダブルガトリングガンを捨てて、94mm高エネルギー集束火線ライフルと、アーマーシュナイダーを構え直した。

 

 一拍を置いて、エーデルνガンダムと騎士ガンダムが一気に加速して接近、アレックスはその後ろから追従する形を取った。

 その途中で、エーデルνガンダムはフィンファンネルを射出、レイジングマスラオと姫武者頑駄無との間に割り込み、分断するようにビームを放ってくる。

 姫武者頑駄無には騎士ガンダムが打ち掛かり、アレックスがレイジングマスラオへ遠距離から射撃を浴びせつける。

 残るエーデルνガンダムは、フィンファンネルの矛先をガンダムヘビーバスターへ変えて迫る。

 

「っ……」

 

 ユイはアーマーシュナイダーを捨てると、350mmガンランチャーと94mm高エネルギー集束火線ライフルを撃ちまくってフィンファンネルを撃ち落とそうとするものの、エーデルνガンダムのフィンファンネルはビーム耐性を除いてもかなり耐久力が高いのか、散弾を受けても動作不良すら起こさない。

 対装甲散弾砲なら破壊できるかもしれないが、連結させてくれる余裕はない、フィンファンネルの群れは四方八方からガンダムヘビーバスターを取り囲むと、一斉にビームを放ってくる。

 

「くっ!」

 

 ユイもその場から離脱しようとするものの、重装機であるガンダムヘビーバスターの機動性ではフィンファンネルの包囲から逃れられない。

 どうにか致命傷は避けていくものの、ガンダムヘビーバスターの四肢や武装は次々にフィンファンネルのビームによって撃ち抜かれていき、この場からの離脱も迎撃も出来なくなってしまう。

 

『まずはひとつッ!』

 

 ノエルのエーデルνガンダムはビームレイピアを構えてガンダムヘビーバスターへ迫る。

 ビーム刃の切っ先が、ガンダムヘビーバスターを貫く、

 

 その寸前で、エーデルνガンダムは側面から何者かに蹴り飛ばされた。

 

「すまない、待たせたな」

 

 エーデルνガンダムを蹴り飛ばしたのは、サヤのガンダムAGE-2 エアレイドだった。

 

「助かりました、サヤ先輩」

 

「気にしないでいい、下がれるなら下がってくれ」

 

 サヤはそれだけ言い残すなり、エーデルνガンダムへハイパードッズライフルを放って追い払う。

 

『えぇぃっ、仕留められたと言うのに!』

 

 ノエルは歯噛みしながらも、ハイパードッズライフルからのビーム射撃を躱しつつ、僚機の元へ向かう。

 

「逃がさんっ」

 

 サヤはガンダムAGE-2 エアレイドを再びストライダーフォームへ変形させると、その後を追う。

 

 

 

 

 

 姫武者頑駄無の火糸薙刀と騎士ガンダムのナイトソードが、激しい衝突を繰り返し、刃同士が散らす火花が双方の間に舞い躍る。

 武者と騎士、似て非なる二機の戦士は鎬を削り合う。

 ハルナはナイトソードを弾き返し、雷振火音を撃ちながら後退、周囲の状況を確認する。

 

 ミーシャのガンダムアスタロトリオートは損傷が大きく、戦闘続行困難なのか待機している。

 

 ユイのガンダムヘビーバスターは武装や四肢のほとんどを失っており、その場で漂っている。

 

 サヤのガンダムAGE-2 エアレイドは、ツルギのレイジングマスラオを狙うエーデルνガンダムをストライダーフォームで追っている。

 

 そのツルギのレイジングマスラオは、アレックスの射撃を前に近付きにくいのか、苦戦している。

 

 しかしゆっくりと考えている暇はない、雷振火音の銃弾を掻い潜って、騎士ガンダムは再び迫ってくる。

 

 連射していた雷振火音だが、不意に沈黙した。

 

「あ、弾切れ」

 

 弾切れだと分かれば即座に雷振火音を捨てる。

 騎士ガンダムのナイトソードを火糸薙刀で弾きかえし、素早く斜め後ろへ回り込む。

 

『後ろからっ!』

 

 火糸薙刀による追撃が来る、と騎士ガンダムは苦し紛れに姫武者頑駄無が回り込んできた方向へナイトソードを振るう。

 しかしそれは空振りに終わり、代わりに二つの小型実体剣が姫武者頑駄無のマニュピレーターから放たれていた。

 その小型実体剣ーー『凍度駆内(こおるどくない)』はアイカメラと胴体に突き刺さり、騎士ガンダムは怯む。

 

『クナイ!?どこにそんなものを……ッ』

 

 ハルナがここまで火糸薙刀と雷振火音の二つだけで対応していたのは、懐に仕込んだ凍度駆無の存在を悟られないためだった。

 そして、ここぞと言う今に仕込みを解放し、騎士ガンダムにダメージを与えた。

 

「てえぇぃッ!!」

 

 姫武者頑駄無は火糸薙刀を振り翳し、怯む騎士ガンダ厶を真っ二つに斬り裂いた。

 

『ノッ、ノエル姉様ァァァァァ!』 

 

 騎士ガンダム、撃墜。

 

「後は?」

 

 騎士ガンダムの撃破を確認してから、ハルナは残る敵の数を確かめる。

 残るは、ノエルのエーデルνガンダムと、リヒターのアレックスだ。

 

 

 

 

 

 

 躱しても躱しても、一向にアレックスへ近接攻撃を仕掛けられない。

 ビームが掠め、ガトリングの銃弾が装甲を叩く。

 

『どうした、もっと近付いたらどうだい?』

 

「……」

 

 しかし焦るな、とツルギは自分に言い聞かせる。

 ここで迂闊に踏めこめば、思わぬ反撃を喰らうだろう。

 今はこの場を凌ぎ、機を待つのみ。

 

 不意にアラートが反応し、エーデルνガンダムとそれを追い駆けるガンダムAGE-2 エアレイドが近付いてくる。

 

「サヤ先輩かっ」

 

「ツルギ、"任せるぞ"」

 

「!」

 

 サヤからの通信で、ツルギはその意図を読み取った。

 すると、エーデルνガンダムを追い駆ける形であったガンダムAGE-2 エアレイドは急速旋回、レイジングマスラオの方向へ向かう。

 

『進路を変えた?』

 

 リヒターのアレックスを二機で仕留めるつもりかと、ノエルはそこで反転し、今度はガンダムAGE-2 エアレイドを追う形を取る。

 

『何のつもりか知らないが!』

 

 リヒターは構わずにアレックスの両腕のガトリング砲を連射しようとする。

 

 ガンダムAGE-2 エアレイドとレイジングマスラオが接触しよとする寸前、レイジングマスラオは突如反転し、二機は互いに背を向け合うように標的を"入れ換えた"。

 

 ガンダムAGE-2 エアレイドがアレックスへ、レイジングマスラオがエーデルνガンダムへ。

 

『ッ!?』

 

 レイジングマスラオが背を向けたことに気を取られたリヒターは、次の瞬間には目前まで迫って来ていたガンダムAGE-2 エアレイドへの対処が遅れた。

 

 その遅れが、命取りとなった。

 

「ハアァァァァァッ!」

 

 ガンダムAGE-2 エアレイドはストライダーフォームの最高速度を維持したままMS形態へ変形、同時にビームサーベルを二丁同時に抜き放った。

 

「『螺旋する先駆電導(スパイラル・ステップリーダー)』!!」

 

 切り揉むような機動でビームサーベルを振るい、その一拍の後にビームサーベルの軌跡をなぞるように雷電が迸り、アレックスを引き裂いた。

 

 これは、Cランク以上のダイバーが使用できる、『必殺技』だ。

 ダイバーのバトルスタイルや経験、ガンプラの完成度や性能なども含め、あらゆる要素から生み出される強力な攻撃手段で、同じ必殺技はシステム上存在しない。

 

『また何もっ、何も出来ないまま……ッ!』

 

 アレックス、撃墜。

 

 ビームサーベルを握った手をそのままに、ガンダムAGE-2 エアレイドは背後へ振り向く。

 そのデュアルアイが見通すのは、二つの閃光。

 

「後は頼むぞ」

 

 サヤは静かにそう呟き、戦いの行く末を見守ることにした。

 

 

 

 

 

 

 エーデルνガンダムのフィンファンネルの群れがビームを放ち、レイジングマスラオの行く手を阻もうとするが、ツルギはアームレイカーを押しては引き、確実にビームをやり過ごしていく。

 

『クッ……この私が、ノエル・ザビーネがっ、敗北する分けにはいきませんのよッ!』

 

「俺にだって負けたくない理由はある!」

 

 フィンファンネルの攻撃を凌いだレイジングマスラオが、『ハワード』を振り抜き、エーデルνガンダムはビームレイピアで迎え撃つ。

 

 一撃、二撃、三撃……ビームの刀と細剣の衝突が、激しいビーツを乱れ奏でていく。

 不意にエーデルνガンダムは飛び下がり、フィンファンネルを左肩に呼び戻していく。

 追い縋るレイジングマスラオは『ダリル』を振り下ろすものの、その斬撃は束ねられたフィンファンネルによって弾き返される。

 

『そこッ!』

 

 瞬時に突き出されたビームレイピアが、弾き返された『ダリル』を突き飛ばし、レイジングマスラオの左手から柄が離れてしまった。

 

「チッ!」

 

 やはり、あのフィンファンネルにビーム攻撃は通りそうにない。

 舌打ちしつつも、ツルギはアームレイカーを引き下げてエーデルνガンダムとの距離を取ると、『ハワード』を納めた。

 

 そしてーー

 

「ここで決める……トランザムッ!!」

 

 レイジングマスラオのパワーケーブルがレイジングユニットに接続、スラスターウイングを広げ、バーニアから疑似GN粒子を激しく放出しながら、レイジングマスラオが紅く輝き始める。

 レイジングユニットは、マスラオ本体の機動性の向上だけではない。

 

 これは、トランザムの"セーフティー"でもあるのだ。

 

 トランザムをまともに起動すると、機体への負荷が掛かり過ぎる。

 かと言って、今のツルギのビルダー能力では100%トランザムを使いこなせるだけのガンプラを作り上げられない。

 であれば、発想の逆転。

 

 トランザムの出力に耐え切れるガンプラが作れないのなら、『トランザムの出力そのものを弱めてしまえば良い』

 

 レイジングユニットを製作したハルナの言葉であり、マスラオのトランザム起動時の爆発力を弱める代わりに、稼働を安定させると言うものだ。

 このセーフティーを持ってしても、長時間の起動は危険ではあるが、『後もう一押しを押し込む』ぐらいなら十分な起動時間を保つ。

 無論、セーフティーを外せばフルパワーで起動することも可能だが、それはオススメ出来ないとのハルナの言。

 

 ツルギはアームレイカーを押し込み、レイジングマスラオを一気に加速させた。

 フルパワー時の2/3程度の出力だが、それでもそれまでのスピードと比べても段違いに速い。

 

『はっ、速い……ッ!?』

 

 一瞬の動揺を見せたノエルだが、すぐにフィンファンネルの束でガードの体勢を取り、さらに頭部のバルカンを速射して牽制する。

 対するレイジングマスラオも、バルカンの銃弾を受けながらも加速を止めず、エーデルνガンダムへ肉迫していく。

 

 両拳をねじりながら肘を開き、

 

「ふんッ!」

 

 弧を描くように両拳を放ち、斜めから挟み込むようにフィンファンネルを捉えた。

 

 空手の突き技のひとつ『鉤突き』だ。

 

 それもただ放つだけではない、フィンファンネル同士を繋ぐ、その隙間を狙った攻撃。

 

 物理的な圧力を脆い部分に叩き込まれ、連結していたフィンファンネルの接続部は連鎖的に砕け折れた。

 

『なぁッ!?』

 

 絶対的な防御力を誇っていたはずのフィンファンネルが破られた。

 レイジングマスラオはそのままもう一歩迫りーー

 

「ぅらぁァッ!!」

 

 右脚を振りかぶっての回し蹴りをエーデルνガンダムのボディに蹴り込んだ。

 トランザムの出力も上乗せされた強烈な一撃を直撃したエーデルνガンダムは派手に吹き飛ばされーー自分達が出撃してきたクルーザーに激突した。

 

『ーーーーーか、はッ……』

 

 前と後から激しい圧力が掛かり、ノエルは声も上げられずにその場で膝を着いた。

 

「……浅いな、やっぱ宇宙じゃ踏ん張りが効いていないのか」

 

 ツルギは回し蹴りの手応えに不満を覚えていた。

 宇宙空間の無重力状態では軸足と言う支点が無いため、レイジングマスラオの重心が乗っていなかったのだ。

 仮にここが地上だったなら、バイタルバートもろともコクピットを潰していたはずだろう。

 それはともかくとして、ツルギはレイジングマスラオのトランザムを停止させ、エーデルνガンダムが激突したクルーザーの方へ向かわせる。

 

 クルーザーの船体にめり込むような形で張り付けられていたエーデルνガンダムは、レイジングマスラオが接近しても挙動ひとつ見せない。

 バーニアやアポジモーターからはスパークが漏れており、まともに身動きも出来ないのだろう。

 

「動けないのか?」

 

 ツルギは一思案してから行動に出る。

 レイジングマスラオは『ハワード』を抜き、エーデルνガンダムとクルーザーの船体との間にビーム刃を滑り込ませる。

 めり込んでいた部分だけを焼き斬り、エーデルνガンダムをクルーザーから引っ張り出す。

 

「よっ、と。生きてるか?」

 

『な、何故……止めを刺せばいいものを……』

 

「もう勝負は着いただろ?だったら、止めは必要ない」

 

 接触通信を通じて戸惑うノエルに、ツルギは事も無げに言う。

 レイジングマスラオは『ハワード』を納め、右手を差し出した。

 

「いいバトルだった。ありがとうな」

 

『……』

 

 ノエルはレイジングマスラオの右手を呆然と見詰めていた。

 

「ん、どうした?」

 

『い、いえ……』

 

 エーデルνガンダムも、レイジングマスラオの手を握り返した。

 

『ただ、変わった殿方だと……』

 

 ふと、スピリッツのシャトルから停戦信号が上げられ、ミツキからの広域通信が各機に届く。

 

『フォース・ロイヤルナイツの全機戦闘不能を確認、よってこのバトル、フォース・ロイヤルナイツの勝利とします』

 

 フォース・スピリッツ、勝利。

 

 

 

 

 

 スピリッツのシャトルと、ロイヤルナイツのクルーザーの二隻は宇宙ステーションのドックに入港し、そこでガンプラのメンテナンスを行っていた。

 ガンプラのメンテナンスを待つ間、両フォースのダイバー達は顔を合せていた。

 最初に、ツルギがノエルに対して右手を差し出した。

 

「さっきはガンプラ越しだったからな。改めて、いいバトルだった」

 

 ノエルもまた、ツルギの手を握り返す。

 

「こちらこそ。……それにしても、お強いのですね」

 

「あんたもな。あのファンネルとか言うのをどうにか出来なきゃ、負けてたのは俺だったかもしれん」

 

 実際、レイジングマスラオが破壊したのはフィンファンネルの接続部であり、フィンファンネルそのものは結局無事だったのだ。

 ノエルが防御よりもフィンファンネルによる攻撃を仕掛けていた場合、結果はまた変わっていたかもしれない。

 

「そう謙遜なさらずとも。それより……」

 

 ノエルの方から手を離すと、コンソールパネルを呼び出す。

 

「フレンド登録をしませんこと?せっかく知り合ったのですし」

 

「おぅ、そうだな」

 

 ツルギも倣うように、コンソールパネルからフレンド登録画面を開き、プロフィールデータをノエルへ送り、彼女からのデータも受信する。

 

「あ、そうだ……ノエルさん、だったか」

 

「ノエルでよろしいのですよ、ツルギ」

 

「んじゃ、ノエル。あんた、次元覇王流拳法って知らないか?」

 

 ツルギはノエルにも次元覇王流拳法の存在を訊いてみるが、ノエルの間を置くような反応を見ても知らなさそうだ。

 

「次元覇王流拳法?……いえ、知りませんわね」

 

「そうか……」

 

 他所のフォースなら知っているかもしれない、と言う僅かな希望も呆気なく砕け散ってしまい、ツルギは少し落胆する。

 そんなツルギを見て、ノエルは声を掛ける。

 

「もし良ければ、私の方でも調べて差し上げましょうか?」

 

「いいのか?」

 

「一人よりも二人ですわ。もし邪魔でなければですけど……」

 

「邪魔なもんかよ、少しでも助かるってんなら万々歳だ」

 

 ノエルも微力ながら手助けをしてくれると進んでくれて、ツルギも喜んでその厚意を受ける。

 

 そんなツルギとノエルが親しくなりつつある様子を見て、面白く無さげに見ている者がいた。

 

「……」

 

 ハルナである。

 

「ハルナ?何そんな難しそうな顔してるのよ」

 

 しかめっ面をしているハルナを、ユイが見かねた。

 

「……そんな顔してないもん」

 

「思いっきりしてるじゃない。何で、って……」

 

 ユイもハルナの視線の先を見て、その先にツルギとノエルがいることに気付く。

 あぁそういうことね、とユイは察したようだ。

 

 とはいえ、その察しも杞憂に済んだようで、ツルギの視線がノエルの後ろに向けられる。

 

 アレックスのダイバーである、リヒターだ。

 

「!」

 

 ツルギと目が合ってか、リヒターは目線を逸らした。

 その様子を見ても構うことなく、ツルギはリヒターの方に歩み寄って、謝罪の言葉を口にした。

 

「さっきは悪かった、すまん」

 

「……どうして君が謝る?」

 

 何故ツルギが謝るのか分からず、リヒターは訊き返す。

 

「あんたを「初心者狩り野郎」って言ったことだ。この間のアレは、ただの勘違いだったんだろう?……確かに、一方的過ぎだったけどな」

 

「……」

 

 リヒターは豆鉄砲を喰らったような顔をする。

 数秒の戸惑いの後に、リヒターは一歩前に出て、頭を下げた。

 

「僕の方こそ、マスダイバーだと決め付けたりして、すまなかった」

 

「……それだ。その、マスダイバーってのは何なんだ?」

 

 ツルギは、以前にリヒターから言われたことのある、『マスダイバー』と言う単語の意味を問い質す。

 

「GBN内で不正を働くダイバーのことだ。それも少し前まではほとんど見られなかったんだが……」

 

 リヒターは下げていた頭を上げてツルギに向き直り、神妙な表情で告げる。

 

「ここ最近になって、またマスダイバーが爆発的に増え続けているんだ。君達も、気を付けた方がいい」

 

「不正、か……あぁ、忠告は受け取った。気を付ける」

 

「……せいぜい、ノエル姉様を失望させるなよ」

 

 それだけ言ってから、リヒターはメンテナンス中の自分のアレックスの様子を見に踵を返す。

 

 

 

 

 

 損傷度の高くないガンプラから随時メンテナンスが完了し、ダイバーの手によってシャトルやクルーザーに積み込まれていく。

 

「オーライ、オーライ」

 

「そこ、アンテナ引っ掛けるなよー」

 

「おーっす」

 

「すいませーん、武装は2番コンテナでいいですかー?」

 

「そっちは後回しー、先にこっちから入れてー」

 

「シャトルの推進剤の補給、それとバリュートのチェック、忘れるなよー」

 

 スピリッツとロイヤルナイツのメンバーが協力し合い、ものの十数分で積み込みは完了、先にロイヤルナイツのクルーザーからステーションの宇宙港を発進、その後に続くようにスピリッツのシャトルが発進していく。

 

『それでは、フォース・スピリッツの方々、ありがとうございました』

 

「おう、また機会があれば、バトルでもなんでもしようぜ」

 

 最後にノエルとツルギが代表して通信越しに挨拶を交わし、それぞれ別の進路を取りながら大気圏へ突入していく。

 

「これより、大気圏に突入します。シートベルトの確認を」

 

 ミツキがシートベルトの着用の確認を促し、スピリッツのシャトルの船底に、宇宙世紀における大気圏突入用の装備『バリュート』を展開、空力加熱から船体を守りながら降下していく。

 

「(それにしても、マスダイバーか)」

 

 ツルギの脳裏には、ミーシャとカゲトラとの三人で行った連戦ミッションの、キリマンジャロ基地で遭遇した、銀色のサイコガンダムが浮かぶ。

 

「(あれが何か関係しているのか……?)」

 

 今にそれを考えても答えが出るはずもない、ツルギはマスダイバーに関する思考を一度止めることにした。

 

 

 

 

 

 その脅威が、自分達の喉元にまで迫っていることなど、知る由もなくーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

【次回予告】

 

 ツルギ「GBNを始めて早一ヶ月。未だに次元覇王流拳法の「じ」の字も聞かねぇ……」

 

 ハルナ「大丈夫だよ、ちゃんと頑張って続けてればきっと見つかる見つかる!」

 

 ツルギ「それもあるが、マスダイバーってのも気になるんだよなぁ」

 

 ハルナ「最近になって増え続けてるって言ってたもんね……」

 

 ツルギ「次回、ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツ、

 

『さすらいの喧嘩番長』

 

 ……待て待て。俺は武道は得意でも、喧嘩は好きじゃねぇからな?」

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