ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツ   作:さくらおにぎり

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6話 さすらいの喧嘩番長

 市街地。

 聳え立つコンクリートジャングルの中で、戦闘は行われていた。

 

「クソッ、何でこうなるんだよ!?」

 

『ジン』がアサルトライフルを撃ちまくりながら悪態をつく。

 

 76mmの銃弾は、相対する"紫色のオーラ"を纏う『ハイザック』の装甲を叩くものの、ハイザックの表面装甲には傷一つ付いていない。

 

『ハッハーッ、ムダムダァ!』

 

 ハイザックはビームライフルを撃ち返し、ジンを撃ち抜いた。

 

「ちくしょうがぁぁぁぁぁ!!」

 

 ジン、撃墜。

 

「クソッタレがっ、マスダイバーめ!」

 

『ブレイズザクウォーリア』がビームトマホークをシールドから抜き放ち、ハイザック目掛けて突撃する。

 しかしブレイズザクウォーリアとハイザックの間に『レギンレイズ』が割り込み、バトルブレードを振るってビームトマホークをいとも簡単に弾き飛ばす。

 

『おらよぉ!』

 

 バトルブレードの切っ先が、ブレイズザクウォーリアのバイタルバートを突き破った。

 

「ウボッ、ガバァッ……」

 

 声にならない断末魔と共にブレイズザクウォーリアは沈黙する。

 

 ブレイズザクウォーリア、撃墜。

 

「ふ……ふっ、ふっざけんなァァァァァ!!」

 

 逆上した『ゲイツ』がビームライフルをレギンレイズへ向けて撃ちまくるものの、ナノラミネートアーマーーー否、"それではない何か"によって弾かれてしまう。

 

「チートなんか使いやがって!使いやがって!使いやがってェッ!!」

 

 やがてビームライフルを撃つためのエネルギーが切れ、ゲイツの動きが止まる。

 

「つっ、通報だ!運営に通報してや……」

 

 瞬間、ゲイツの胸部からズブリとビーム刃が"生えた"。

 その後ろにいるのは、GNビームサーベルを持った『アヘッド』。

 

『死人に口無しってなぁ』

 

 動力部を焼き切られたゲイツは爆発四散した。

 

 ゲイツ、撃墜。

 

『楽勝すぎるから草をバエ散らかすしかねぇwww』

 

『イイもんだなぁ、この『RUVIS SYSTEM』ってのは』

 

『どっちにしろ、通報したってムダだけどな』

 

 悪意ある嘲笑いが、市街地に響いたーーーーー。

 

 

 

 

 

 フォース・ロイヤルナイツとのフォースバトルを終えて、数日が経った平日。

 

 体育の授業を終えて、更衣室で体操服から制服に着替え終えたツルギとカゲトラは、教室に戻っていた。

 その途中の階段を登っている最中、カゲトラはいつもの胡散臭い笑みを浮かべながらツルギに話し掛けてきた。

 

「喜べクサナギ。次の授業はお前の大好きな英語だぞ」

 

「何だそれは、俺の苦手な科目が英語であることへの皮肉か?」

 

 十中八九、と言うより100%皮肉だろうと決めつけながら、ツルギは睨みつけながら返す。

 そんな睨みなど吹く風のごとし、カゲトラは涼しく切り返した。

 

「フッ……解釈は個々人の判断に委ねよう」

 

「あっそ……」

 

 死ぬほどどうでもいいぜ、とツルギは独り言を零す。わざとカゲトラにも聞こえるような音量で。

 他愛もない会話を交わしつつ、教室への曲がり角を曲がろうとして、

 

「ん?おや、ふむ……ほっほぅ、面白そうなことが起きているではないか」 

 

 カゲトラはふと足を止めて明後日の方向を目を向けた。

 

「どうしたカゲトラ」

 

 突然喋りだしたカゲトラを冷ややかな目で見ながら、ツルギは彼の方へ振り向く。

 

「そうだな、単刀直入に言うと「ヒメカワ嬢が見知らぬ男子にナンパされている」」

 

「はぁ?ハルナがナンパされてる?」

 

 こいつ何言ってんだ、と呟きながらもツルギもカゲトラの視線を追ってみる。

 

 そこには、屋上へ続く踊り場にハルナが壁を背にされており、壁との間にハルナを挟むように、不良が壁ドンするような形で立っている。

 

 ツルギとカゲトラからの距離は遠く、具体的な会話は聞こえないが、どう見てもハルナは遠慮したがっているようにしか見えない。

 

「何やってんだよあいつ……あぁ言うのはキッパリ断らなきゃいつまでも付きまとって来るってのに」

 

 苛立つように腕を組むツルギ。

 

「うむ、ヒメカワ嬢は品行方正で、誰も彼もを笑顔にしてしまう、歩く向日葵のような存在だ。その花弁に毒牙を掛け、あまつさえ摘み取ってお持ち帰りした挙げ句、押し花にしようとする野郎どもはごまんといるもの……それより救いの手はどうした、"王子様"」

 

 カゲトラは含み笑いを浮かべながら、ツルギとハルナを見比べる。

 

「よせバカ、俺はそんな柄じゃない」

 

 などと言っている間でもハルナはまだ離してもらえない。

 そればかりか、不良の方はハルナの肩を掴んで強引に迫ろうとしているではないか。

 

「……どうやら、悠長なことを言っている場合では無くなったな」

 

 カゲトラは含み笑いを消した。

 救いの手も王子様も関係ない、「いいからさっさと助けてやれ」とツルギに目で伝える。

 それを察したツルギは溜息をついた。

 

「はぁ、仕方無い……カゲトラ、荷物持っててくれ」

 

「心得た。このカゲトラ、お前の荷物は命を賭して守り抜くと誓……」

 

「いいから持ってろ」

 

 語りを無視しながら、ツルギはカゲトラに手荷物を押し付けると、ハルナの方へ歩み寄ろうとして、

 

 それよりも先に近付く者がいた。

 

「ぁいや、待ちなァ!」

 

 ハルナを押さえ付けようとする不良に制止を投げ掛けたのは、一人の男子……否、

 

 男子の詰め襟を着用し、割れ目の入った学生帽を被った"女子"生徒だった。

 突然の闖入者に、ハルナと不良は揃ってその声の方へ振り向く。

 

「あ?誰だてめぇ、こっちは今取り込み中……」

 

「このアタシ、『カラスノ・ヤイコ』の目の黒い内は、学園で不埒な真似はさせねぇぞ」

 

 取り込み中だと言いかけた不良の言葉など聞いておらず、ズビシッと人差し指を突き付ける、ヤイコと言うらしい女子生徒。

 

「そいつはどう見ても嫌がってんじゃねぇか。それを無理矢理押さえつけて言うこと聞かせるってのは、クソ以下のハナクソ野郎のやることだぜ」

 

「あぁ!?誰がハナクソ野郎だこの女ァ!」

 

 不良の極めて低い沸点は「ハナクソ野郎」の一言であっという間に頂点に達し、ヤイコに殴り掛かる。

 が、ヤイコは左の掌で不良の拳を受け止める。

 

「ほーぉ、この学園でアタシと分かって手ぇ出すのはカイドウ先生くらいだと思ってたが……さてはてめぇ、一年坊だな?」 

 

 瞬間、不良の拳を掴み引き込むと、目にも止まらぬ反撃のボディブローをぶち込む。

 

「ゴゲュっ!?」

 

 急所に拳がめり込み、不良は首を絞められたニワトリのような生声を洩らしながら蹲る。

 

「ツラぁ外しただけマシと思いやがれ……とっとと失せろ」

 

 声にドスを効かせて、ヤイコは不良を見下す。

 

「ごっ、おぼっ、ンンプッ……!」

 

 ヤイコの剣幕の前に怯えるどころではない、不良は口元を押さえながら一目散に男子トイレのある方向へ駆け込む。

 先程のボディブローで腹の中が逆流したらしく、キラキラかモザイクか、まぁミンチよりひでぇものを流すのだろう。

 

「ハンッ、大したことねぇや。一昨日来やがれってんだ」

 

「あ、あのえっとぉ……」

 

 ハルナは目の前の男子のような女子生徒を前に、目を丸くしている。

 ヤイコはハルナの方へ向き直る。

 

「おぅ大丈夫か?」

 

「えと、だいじょぶ、です。助けてくれて、ありがとうございます」

 

 多少風変わりだろうが、危ない所を助けてもらった恩人だ、ハルナはぺこりと頭を下げて感謝する。

 

「気にすんな、アタシはあぁ言う野郎が嫌いなだけさ」

 

 んじゃな、とポケットから飴玉を取り出して口に放り込みながら、ヤイコはさっさと立ち去っていく。

 その後ろ姿を呆然と見送っているハルナに、タイミングを見計りつつツルギは声を掛ける。

 

「ハルナ」

 

「……あっ、ツルギくんっ」

 

 ツルギの声を聞いてハルナはパッと彼の方に向き直る。

 

「どうやら俺は、余計な世話を焼こうとしてたみたいだな」

 

「もしかして、助けようとしてくれた?」

 

「まぁな。……それも、あいつに先を越されたが」

 

 ツルギもヤイコが消えた方向に目をやる。

 

「にしても妙な奴だったな、女子なのに男子の制服着てたりして……」

 

「ふむ……あの御仁は『悪喰あくらいのカラスノ』だな」

 

 いつの間にかカゲトラも二人の方に近付いていた。

 ツルギとハルナは声を重ねて「「あくらい?」」と訊き返す。

 

「所属は三年三組。ご覧の通り一風変わっているが、この街のならず者は彼奴の名を聞くだけで恐れ慄き、頭を垂れて道を譲るほどだ」

 

「そ、そんな怖い人なの……?」

 

 思わずハルナはツルギの袖を掴む。

 

「何だそりゃ、噂が先行し過ぎて尾ヒレが付きまくってるだけじゃないのか」

 

 目はカゲトラに向けたまま、ツルギはハルナの頭をポンポンと触る。

 

「そんなやべぇ奴が、誰かを助けたりしないだろうよ」

 

「的を得ているな、クサナギよ。そう、カラスノは"カタギ"の人間には手を出しはせん。彼奴が「悪行である」と判断した場合のみ、先程のように現れては、暴力を以て悪を滅するのだ」

 

「……古臭い言い方だが、"義賊"って奴か」

 

 ツルギ自身も含めて、数多くの変わり者を抱えるこの学園だが、ヤイコのような存在は極めて稀有なものだろう。

 

「まぁ、この学園にはそれよりも恐ろしい、地獄の……いや、やめておこう。俺も命が惜しいからな……」

 

 意味深な言葉を零すカゲトラ。

 

 不意に、チャイムが校内に鳴り響いた。

 

「あっ、授業始まっちゃうっ、急ご急ご!」

 

「お、おいハルナっ、そんな引っ張るな!」

 

「フッ……」

 

 三人は慌てて自分達のクラスに戻った。

 

「おっとすまんクサナギ、お前の体操服を落としてしまったようだ」

 

「はぁ!?ふざけんなバッカお前……ッ!」

 

 

 

 

 

 放課後(ツルギの荷物はちゃんとカゲトラが探してくれた)。

 ツルギの部活終了をハルナが待ち、その後で帰りにガンダムベースに向かい、GBNへダイブする、と言ういつもの一連の流れだ。

 今日はサヤは都合が悪いため席を外し、マイは別の友達との先約を優先し、カゲトラはいつの間にかいなくなっていた。カゲトラに関しては別段珍しいことでもないのだが。

 

「今日はどのミッション受けよっか?」

 

 エントランスのミッションカウンターの前で、ツルギとハルナ、後から合流したユイとミーシャの四人はCランクのミッションを選んでいた。

 とはいえ、ミーシャは後輩であるために遠慮がちで、ツルギはハルナの好きにさせるスタンスを取るので、必然的に女子二人がミッションを選んでいる。

 

「……あっ、これ良いんじゃないかしら」

 

 ユイが指を伸ばして『重力の井戸の底へ【連邦軍シナリオ】』と言うミッションを指す。

 ミッション内容は、トリントン基地に侵攻してくるジオン残党軍の群れを相手にし、ボスガンプラとして登場する大型水陸両用MA『シャンブロ』を撃破すればクリアと言うものだ。

 なお、一定確率で隠しボスに『バンシィ』が出現するらしいが、その辺りはガセの情報が流れているようだ。

 

「うん、いいと思うよ」

 

 ハルナが頷き、ツルギとミーシャからも他の意見が挙がらないため、四人はこのミッションを受けることにした。

 

 

 

 

 

「ツルギ、レイジングマスラオ、参るッ!」

 

「ハルナ、姫武者頑駄無、行きまーす!」

 

「ユイ、ガンダムヘビーバスター、出るわ!」

 

「ミーシャ、ガンダムアスタロトリオート、行きます!」

 

 四機が順々に出撃していき、以前にツルギとサヤとの一騎討ちが行なわれたトリントン基地へ向かうため、オーストラリア・サーバーを経由する。

 

 

 

 サーバーからサーバーを経由中の間、ユイは三人に話し掛けた。

 

「みんなって、『マスダイバー』に遭ったことってある?」

 

「リヒターが言ってた、不正行為を行うダイバーのことか?それらしい奴を見かけたことは無いが……ミーシャはどうだ?」

 

 最初に反応したツルギは、ミーシャにも訊いてみる。

 

「ボクも無いです。まぁ、遭わないに越したことは無いと思いますけど……」

 

 ミーシャも見かけたことが無いという。

 

「わたしもないよ」

 

 ハルナもそのように返す。

 三人とも、マスダイバーと遭遇したことはない。無論、話を持ち掛けたユイ本人もだ。

 

「私ね、お姉ちゃんに五年前のことを訊いてみたの。その頃は、お姉ちゃんもまだGBNの初心者だったたんだけど……」

 

 そこから先のユイの言葉は、トーンが下がったものになる。

 

「……昔は、もっと酷かったらしいの。『ブレイクデカール』ってインチキツールが当たり前のように広がってて、そのせいでGBNが崩壊の危機にあったこともあるって」

 

 当時のGBNチャンピオン『クジョウ・キョウヤ』が中心となって腕利きのダイバー数百名が集った『有志連合』の尽力によって、一連の事件は一応の収束を見た、と言うのが一般的に伝えられる事柄である。

 

「五年前って言えば、サヤ先輩もその当時のダイバーじゃないか」

 

 ツルギは思い当たったように、サヤの名前を挙げる。

 

「今度、サヤ先輩にも当時のことを訊いてみるか」

 

 何かマスダイバーへの対策に繋がるかもしれない、と言いかけたところで、オーストラリア・サーバーを通過し、シドニーの上空に出る。

 

 

 

 

 

 トリントン基地に到着してから、全員がこの場にいることを確認し合う。

 各機は四方に分散し、ジオン残党軍攻撃を警戒。

 

 すると、まずは南西の岩陰から多数のミサイルが降り注いでくる。

 こちらはハルナのテリトリーだ。

 

「っと、始まったよ!」

 

 ハルナはミサイルを避けつつ、他三人に戦闘開始を呼び掛ける。

 いち早く反応したユイはハルナの姫武者頑駄無の方へ向かおうとする。

 

「今そっちに行……」

 

「こっちはわたし一人で大丈夫だから、ユイちゃんは上を警戒して!多分、空からスナイパーが狙撃してくるよ!」

 

「上っ!?」

 

 ハルナの言葉を聞いて、ユイはすぐさまガンダムヘビーバスターのダブルガトリングガンを納め、超高インパルス長射程狙撃ライフルを組み上げて、上空へ目を凝らす。

 ギリギリ目視可能な距離に飛行している『ファット・アンクル』を視界に捉える。

 モニターを拡大すると、その中から、ザクⅠのカスタム機『ザクⅠスナイパータイプ』がビームスナイパーライフルを構えているのが見える。

 

「まずはアレからっ……!」

 

 ガンダムヘビーバスターは超高インパルス長射程狙撃ライフルを照射、ファット・アンクルの揚翼と機関部を撃ち抜き、機関部の爆発が、格納庫内にいたザクⅠスナイパータイプを巻き込んだ。

 

 ザクⅠスナイパータイプ、撃墜。

 

「こちらミーシャっ、北からも敵が降下して来ます!」

 

「こっちも敵が来てるっ、こいつら速いぞ!」

 

 ミーシャの担当する北からは他のファット・アンクルからパラシュート部隊が降下、ツルギの東からはホバー機動可能な機体が高速で迫り来る。

 各々の機体の適材適所に合わせ、一気に多数の敵が攻め込んでくるのが、このミッションの難しいところだが、最初にユイがスナイパーを撃ち落としてくれたため、難易度は一気に下がるだろう。

 ガンダムアスタロトリオートはロングレンジライフルとアサルトライフルでパラシュート部隊を迎撃し、レイジングマスラオはビームチャクラムを発射して、ドム・トローペンを中心としたホバー機動部隊を牽制する。

 

 ファット・アンクルを撃ち落としたユイも、南前方から迫る敵部隊の迎撃を開始、四方で激戦の火蓋が切り落とされる。

 

「手数で押し返す!」

 

 ガンダムヘビーバスターは超高インパルス長射程狙撃ライフルを切り離し、94mm高エネルギー集束火線ライフルをバックパックに収めると、代わりにダブルガトリングガンへ持ち直し、350mmガンランチャーと合わせて弾幕を展開していく。

 散弾と連装重機銃、同じ実弾ながら異なる性質を持つ弾幕は、不規則に敵部隊へと降り注ぎ、的確に足を止めた者から撃墜していく。

 

 ロングレンジライフルとアサルトライフルでパラシュートを撃ち抜いていくガンダムアスタロトリオートだが、着地前に撃墜するのは難しく、多数のパラシュート部隊が着陸、同時にガンダムアスタロトリオートへ攻撃を仕掛ける。

 しかしミーシャも怯まない。

 バズーカのような高威力の射撃はアサルトライフルで撃ち落とし、マシンガンのような威力の低い攻撃は装甲で受けながら、ロングレンジライフルで反撃していく。

 ザクキャノンやガルスKなどが次々に撃ち抜かれていく中、フェダーインライフルを装備したモスグリーンのマラサイが接近、左手に握った電磁ワイヤー『海ヘビ』を放ち、ガンダムアスタロトリオートの左腕に巻き付いた。

 マラサイはそのまま高圧電流を流し込もうとするが、

 

「ふんッ!」

 

 ミーシャは左のアームレイカーを引き戻し、ガンダムアスタロトリオートは海ヘビが巻き付いたままの左腕をマラサイごと引き込む。

 強引に引き込まれ、地面を引き摺られたマラサイは、次の瞬間にはロングレンジライフルのゼロ距離射撃で仕留められた。

 

 ジャイアントバズやMMP-80マシンガンを撃ちながら、ドム・トローペンやドワッジのホバー機動隊が、ツルギのレイジングマスラオへ、着かず離れずの間合いから射撃攻撃を行ってくる。

 銃弾を避けつつ、砲弾は『ハワード』で斬り捨てながら、ビームチャクラムで牽制を繰り返す。

 やがて弾を切らしたか、ドム・トローペンが背中からヒートサーベルを抜き放って接近してくる。

 近付いてくればこちらのもの、レイジングマスラオはヒートサーベルを受け流しながら『ダリル』を振るって反撃、ドム・トローペンを斬り裂く。

 同様に接近してきたドワッジも同じ末路を辿る。

 ふと、爆煙を切り裂きながら、マルーンカラーの機体ーーイフリート・シュナイドが、ヒートダートを抜き放って接近してくる。

 

「エース機か?」

 

 身を低く構えるイフリート・シュナイドを見て、強敵だと判断したツルギは、アームレイカーを押し出して自ら距離を詰める。

 激突する『ハワード』とヒートダート。

 鍔迫り合わず、イフリート・シュナイドは即座にレイジングマスラオの死角に回り込み、ヒートダートをレイジングマスラオのバイタルバートへ突き立てようとするが、ツルギはこれに反応し、振り向きざまに『ハワード』で薙ぎ払い、イフリート・シュナイドの右腕を切り飛ばした。

 不利を悟ったか、イフリート・シュナイドは残ったヒートダートを全て投げ付けながら、全速力で後退していく。

 ツルギもそれを追撃しようとはせず、次の動きに備える。 

 

 多数とは言え、物の数だけを言えばこのミッションよりも低ランクでももっと多数の敵機が出撃するミッションもある。

 そのため、四人も大した苦戦をすることもなく、ジオン残党軍のほとんどを撃墜する。

 

 ほんの数秒の間を置いてから、海を渡ってくる巨大な赤い機影がトリントン基地に接近してくる。

 

 型式番号 AMA-X7『シャンブロ』のそれそのものだ。

 

 とは言えその動きは鈍く、一呼吸入れ替えて作戦を伝え直すと言う時間ぐらいはあった。

 ガンダム作品への知識が豊富なハルナが、シャンブロへの対策と作戦を告げる。

 

「ミーシャくんはシャンブロの注意を引き付けて、隙が見えたら近接攻撃をお願い」

 

「了解ですっ」

 

 シャンブロの主な攻撃は大型メガ粒子砲の照射と、拡散メガ粒子砲をリフレクター・ビットで反射させての範囲攻撃。

 いずれにせよビーム攻撃には変わりないので、ナノラミネートアーマーに守られたガンダムアスタロトリオートならば、あまり連続でビームを受け続けない限りは撃墜される心配はない。

 

「ユイちゃんはミサイルとガトリングで、リフレクター・ビットを撃ち落として。ビーム攻撃には十分注意してね」

 

「分かった!」

 

 弾幕攻撃が可能なガンダムヘビーバスターが、シャンブロを取り巻くリフレクター・ビットの破壊を担当する。

 リフレクター・ビットは小回りの効かないシャンブロの死角を守るための武装でもあるので、それさえ破壊してしまえばそこからの攻略も楽になるはずだ。

 

「ツルギくんは……何とか接近して攻撃、かな?」

 

「なんか俺だけ手抜きな指示だな………」

 

 まぁ別に構わねぇけど、と付け足してから、ツルギは気を引き締め直す。

 いよいよシャンブロも自らの射程に踏み込んだらしく、頭部を展開、大都市を地獄絵図に塗り潰す大型メガ粒子砲を集束しーー

 

 

 

 

 

 ーーそれが放たれるよりも先に横槍が入った。

 

 

 

 

 

 メガ粒子を集束させていたシャンブロの咽頭に何かが撃ち込まれた。

 結果、放出を阻害されたエネルギーが逆流、ジェネレーターが暴発し、シャンブロの首がボディから吹き飛び、アスファルトの上に落ちた。

 

 シャンブロ、撃墜。

 

「何だ、何が起こった!?」

 

 ツルギは目を見開いて、シャンブロの首とその周りを見回す。

 

「……あっ、アレですっ。あっちの方!」

 

 ミーシャがロングレンジライフルの銃口をその方向へ向けて知らせてくる。

 モニターを拡大してみると、ハイザック、アヘッド、レギンレイズと言う三機のガンプラがいつの間にかそこにいた。

 レギンレイズが長距離レールガンを構えているところ、アレで狙撃したのだろう。

 

 だが、この三機は機体から怪しい"紫色のオーラ"を纏っており、明らかに普通のガンプラではない。

 

 すると、ハイザックのダイバーから広域通信が届く。

 

『よう、ザコの相手ご苦労さん。おかげでボス戦まで楽チンだったぜ』

 

 感謝には全く聞こえない、まるで徒労を掛けたことをバカにするような口調。

 それを聞いて真っ先に噛み付いたのはユイだった。

 

「何よそれっ、私達がここまで進めるのを待ってたって言うの!?」

 

 それに応えたのはアヘッドのダイバー。

 

『ザコをチマチマ相手にしたって、大したポイントはねぇだろ?どうせなら、楽して稼ぐのが上手いやり方ってもんさ』

 

「そんな、そんなことをして……何が楽しいんですか!?」

 

 ユイに続いて声を荒げるのはミーシャ。

 

『ポイント稼ぎを楽しむのがいけないってのか?』

 

 ミーシャの糾弾など吹く風のように、レギンレイズのダイバーが言い返す。

 

『おい、よく見たらこいつら結構ポイント高そうだぜ?』

 

 ハイザックのモノアイが、ぐるりとツルギ達四機のガンプラを見回す。

 

『そりゃいい……大物ついでに、ポイントを根こそぎ毟り取ってやるかぁ!』

 

 不意討ちのつもりか、レギンレイズは長距離レールガンをガンダムヘビーバスターに向けようとして、

 引き金を引くよりも先に、投げ付けられた何かが突き刺さり、砲身が爆発、使い物にならなくなる。

 

 壊れた砲身に突き刺さっているのは、姫武者頑駄無の凍度駆内だった。

 

「みんな気を付けてっ、多分この人達、マスダイバーだよ!」

 

 ハルナは三人に注意を呼び掛けた。

 つい先程にマスダイバーの話をしていたところにコレだ。

 

「マスダイバー……こう言う奴らってことか」

 

 ツルギのレイジングマスラオも、『ハワード』『ダリル』の一対を抜刀して構えを取る。

 ガンダムヘビーバスターとガンダムアスタロトリオートも、各々の武器を向ける。

 レギンレイズもレールガンを捨ててバトルブレードを抜き放ち、ハイザックとアヘッドもビームライフルを構え直す。

 そしてーー

 

 

 

 

 

『待ちな!この喧嘩、アタシが買ったァッ!!』

 

 

 

 

 

 ーーいざ戦闘が始まると言う時、唐突に両者の間に何者かのガンプラが降ってきた。

 

 アスファルトを踏み潰しながら現れたのは、暗いグレーとパープルで塗装された、『ジャイオーン』の改造機だった。

 しかし、ジャイオーンの象徴である背部の『ビッグアームユニット』は存在せず、代わりに『クロスボーンガンダム』に似たX字のスラスターバインダーを背負っている。

 手首も異常に大きい、恐らく1/100スケールのモノに改造されているのだろう。

 

「この声、もしかして……」

 

 ハルナはそのジャイオーンーーモニターには『蛇威雄音(じゃいおおん)』と表示されているそのガンプラのダイバーの声に聞き覚えがあった。

 

 ついさっき、学園で自分を助けてくれた女子生徒ーーカラスノ・ヤイコの声。

 

『てめぇら、マスダイバーって奴だな?そのおかしなオーラ、昔流行ってたブレイクデカールに似てっからなぁ』

 

 蛇威雄音の大型のマニュピレーターの人差し指が、マスダイバー達のガンプラにズビシッと向けられる。

 

『マスダイバー……だったらどうするってんだ?』

 

 レギンレイズはバトルブレードの切っ先を蛇威雄音に向ける。

 その行為は、自らがマスダイバーであると明かしたと言う証明に他ならない。

 であれば、彼女ーーヤイコの答えはたったひとつ。

 

『ぶっ潰す!!』

 

 言うや否や、蛇威雄音はスラスターバインダーを点火させてレギンレイズへ突っ込む。

 

「あ、あの人のガンプラっ、丸腰で突っ込んで行きますよ!?」

 

 ミーシャは、見たところ武装の類のない蛇威雄音が突っ込んでいくのを見て思わず口を開く。

 

『バカか!?丸腰で勝てると思ってんのかよぉ!』

 

 レギンレイズは、馬鹿正直に真っ直ぐ突っ込んで来る蛇威雄音へバトルブレードを振り抜いた。

 

 が、蛇威雄音は素手でバトルブレードの刃を受け止めてみせた。

 

 通常、マニュピレーターのような多関節でかつ脆い部位に質量打撃など打ち込まれれば簡単に壊れる。

 だと言うのに、蛇威雄音のマニュピレーターは壊れるどころか、動作不良ひとつ見せていない。

 

『あぁ?何だそりゃ、アイスの棒キレか?』

 

 あろうことか、蛇威雄音はバトルブレードの刀身を掴み、そのまま握りへし折ってしまった。

 

『んなっ!?』

 

 バトルブレードをへし折られたレギンレイズは、思わず柄から手を離して、狼狽えるように一歩下がる。

 

『オラどうした腰抜けェ!腰抜けってのは、腰が抜けてっから腰抜けって言うんだぜぇ!?』

 

 瞬時に蛇威雄音は間合いを詰めると、今度はレギンレイズの前面装甲を掴み、そのまま力任せに引き千切った。

 

『ヒッ、ヒイィッ!?』

 

 コクピット周りのフレームが露わになったレギンレイズは泡を食って逃げ出そうとするが、

 

『逃げてんじゃねぇよ、なぁ?』

 

 蛇威雄音の左マニュピレーターが、背を向けようとしたレギンレイズの頭部を捕まえて強引に振り向かせ、フレームのコクピットハッチに拳をぶち込んだ。

 ゴッグチャ、と言う何かが潰された音を立てて、レギンレイズは沈黙した。

 

『こっ……このバケモンがぁ!』

 

『ざっけんじゃねぇゴラァ!』

 

 ハイザックとアヘッドが同時にビームライフルを撃ちまくる。

 しかし、放たれるビームは次々に蛇威雄音を直撃するものの、怯みもしない。

 

『ハンっ、んーな玩具(チャカ)が効くわきゃねぇだろ!』

 

 ビームを受けながらも蛇威雄音は振り返り、今度はアヘッドへ向かって突撃していく。

 

『しっ、死ね!死ねっ!死ねぇッ!』

 

 アヘッドはなおもGNビームライフルの引き金を引くものの、蛇威雄音は全く意に介さずにアヘッドに迫っては頭部を殴り飛ばし、仰向けに倒れたアヘッドのボディを踏み潰した。

 

 

 

 そんな惨劇とも言える光景を前に、ツルギ達四人は呆然と見ているだけ。

 

「なぁ、あいつが勝手にやってるだけなんだが、いいのかこれ」

 

 ツルギのレイジングマスラオのマニュピレーターが、今度はハイザックを仕留めようと迫る蛇威雄音を指す。

 

「えーっとぉ、どうなのかな……?」

 

 ハルナは困ったように苦笑している。

 

「自分達が介入した結果、逆に介入された……自業自得だわ」

 

 ユイは呆れたように鼻を鳴らした。

 

「でも、これは一方的過ぎる気が……」

 

 ミーシャは戸惑いながら、自分達と蛇威雄音を見比べる。

 

 

 

『テッメェ……チート使ってんのかぁ!?』

 

 ハイザックはビームライフルを捨ててヒートホークを抜き放ち、蛇威雄音を迎え撃つ。

 蛇威雄音がパンチを繰り出せば、ハイザックは左腕のシールドで防ぐ。

 

『クソがっ、ガチ勢がエンジョイ勢相手に本気出しやがって!』

 

 しかし蛇威雄音のパワーは凄まじいらしく、たった一撃でシールドもろとも左腕を粉砕した。

 

『弱い者いじめかよ!初心者狩りかよ!ゴミクズ以下かよぉ!』

 

 もはやハイザックのマスダイバーの言葉は、物事の前後も何もないただの見苦しい言い訳、否、言い逃れでしかない。

 今まで圧倒的な暴力で相手を貶めてきた自分達が、逆に追い詰められていることが信じられなくて、そうやってただただ喚き散らすのは、そんな現実を直視できない、したくないから。

 苦し紛れにヒートホークを振り下ろすが、それよりも先に蛇威雄音がハイザックの右腕を押さえ込み、そのまま握り潰した。

 

『はーぁ……てめぇ、ホントつまんねぇ奴だな』

 

 そう言ったのは、ヤイコだと思われる蛇威雄音のダイバー。

 蛇威雄音は両腕を失ったハイザックを蹴り飛ばした。

 その蹴りでバイタルバートは潰れ、ハイザックはアスファルトに横たわった。

 

 三機とも沈黙したのを見て、ツルギのレイジングマスラオが蛇威雄音に歩み寄り、広域通信で話しかける。

 

「なぁあんた、カラスノ・ヤイコだな?」

 

『ん?あぁ、その通りだぜ』

 

 名前を呼ばれたことを肯定したところ、やはりヤイコのようだ。

 蛇威雄音は腕組みをしながらレイジングマスラオに向き直る。

 

「その、なんだ。ありがとうって言うべきか?」

 

 別にツルギ達があのマスダイバー三人を返り討ちにすることも出来ただろう。

 この状況に、ヤイコが勝手に首を突っ込んで来ただけだ。

 

『礼を言われる筋はねぇさ。アタシが勝手にやっただけだしな』

 

 当の本人も「自分が勝手にやったことだ」と言うので、ツルギが礼を言うこともない。

 

『むしろ、アタシがあんたらの邪魔をしたってんなら、それはそれでケジメつける覚悟あるけどよ』

 

「邪魔だとは思っちゃいない。いきなり出てきて混乱しただけだ」

 

『そっか。んじゃ、アタシはこれで失礼するぜ』

 

 ともかく問題は何もないようだと判断したか、それだけ告げてヤイコの蛇威雄音は立ち去ろうとする。

 が、

 

 

「……ん?」

 

 ユイはレーダー反応を見て違和感を覚えた。

 その三つの反応とは、ヤイコが撃墜したはずのハイザック、アヘッド、レギンレイズの三機からだ。

 コクピットを完全につぶされて撃墜判定を受けているはずなのに、まだ撃墜扱いになっていないのだ。

 

 何気なく倒れている三機の内、近くにいたハイザックを目視で確認すると、

 

 

 ーーハイザックの肩口から、銀色の金属的な物体が装甲を突き破って生えてきた。

 

「ーーーーーいっ!?」

 

 それを見たユイは、不気味さのあまり鳥肌を立てた。

 

「どうしたのユイちゃ……え?」

 

 ハルナも同じようにハイザックの異変を見て目を見開く。

 ハイザックだけではない、アヘッドもレギンレイズも、同じように金属物体を生やしだしたのだ。

 そればかりか、なんと起き上がって各々のカメラアイを不気味に光らせているではないか。

 

「ツルギさんっ、これってあの時の……!」

 

 ミーシャはロングレンジライフルを構え直しながら、ツルギに呼び掛けた。

 ツルギのレイジングマスラオも、一度収めた『ハワード』『ダリル』を抜き放った。

 

「こいつは……あのデカブツと同じか!?」

 

 あのデカブツーーキリマンジャロ基地に現れた、異変を起こしたサイコガンダムを思い起こすツルギ。

 

『なんだなんだっ、アタシは何もしてねぇぞ!コクピット潰しただけだからな!』

 

 ヤイコも慌てて「自分は何も悪くない」と主張しつつ戦闘態勢を整えて身構える。

 

 やがてハイザック達の金属物体は徐々に増殖し、失ったパーツを補うようにそれぞれ形を作った。

 レギンレイズは胸部装甲を、アヘッドは頭部と腹部、ハイザックは失った両腕。

 歪ながらも本来の形をある程度取り戻したハイザック達は、まだ使用可能な武器を引き抜いてツルギ達に襲い掛かってきた。

 

「おいっ、これ以上何のつもりだ!聞こえてるならやめろ!」

 

 ツルギはマスダイバー達に広域通信で攻撃を止めさせようと呼び掛けるが、マスダイバー達からの応答はない。

 そうこうしている内にも、アヘッドがGNビームサーベルをレイジングマスラオに振り下ろそうとする。

 

「クソッ、やめろって言っただろうが!」

 

 ツルギは吐き捨てるとアームレイカーを握り直し、レイジングマスラオは『ダリル』でアヘッドのGNビームサーベルを持った右腕を斬り裂いた。

 アヘッドは左腕を伸ばしてレイジングマスラオを掴み掛かろうとするが、それはハルナの姫武者頑駄無の雷振火音に阻止され、火糸薙刀で左腕を斬り飛ばす。

 アヘッドはその場から飛び下がると、一度その動きを止めてーーなんと失った腕が金属物体となって再生した。

 

「再生能力!?何なのこれっ……!」

 

「ふざけんな……もういい加減にしろッ!」

 

 ツルギは怒りのままに『ハワード』『ダリル』を振り下ろし、アヘッドの胴体を細切れにバラバラにした。

 さすがにここまで破壊されては再生出来ないようで、アヘッドは今度こそ沈黙、レーダーにもシグナルロストを確認する。

 

 アヘッド、撃墜。

 

 一方のユイとミーシャにも、レギンレイズはバトルアックスを手に攻撃しようとする。

 ガンダムヘビーバスターは側面へ回り込み、ガンダムアスタロトリオートがロングレンジライフルを捨ててレギンレイズに肉迫する。

 バトルアックスとパイルハンマーが衝突し、鈍い金属音が響く。

 

「どうして……どうしてこんなことをしてまでっ」

 

 ミーシャには理解出来なかった。

 みんなで楽しく、そして真剣に戦う(あそぶ)ことが出来るGBNで、何故こんなことが起きてしまうのか。

 パイルハンマーを両手に握るガンダムアスタロトリオートは、バトルアックスを強引に弾き返し、補強された金属物体の胸部をパイルハンマーで殴り潰す。

 打ち込まれた衝撃で、レギンレイズの胸部装甲が吹き飛ぶものの、アヘッドと同じようにすぐさま再生してしまう。

 

「これじゃ……これじゃまるで、お姉ちゃんが言ってた五年前と同じじゃないのッ!」

 

 ユイは歯噛みしながらもダブルガトリングガンを撃ちまくり、レギンレイズのスラスター群を破壊して回る。

 まともな推進力を失ったレギンレイズだが、ダブルガトリングガンの着弾を無視しながらもガンダムアスタロトリオートへ迫り、バトルアックスを振り翳す。

 ガンダムアスタロトリオートは瞬時にパイルハンマーを振るい、バトルアックスに打ち付ければ、質量に耐え切れずにバトルアックスの斧刃が砕け折れた。

 だが、レギンレイズは折れたバトルアックスの柄を捨てると、素手になってパイルハンマーを押し退けると、そのままガンダムアスタロトリオートに組み付く。

 

『たっ、助けてっ、助けてくれぇっ!』

 

「!?」

 

 接触通信によるもので、レギンレイズのマスダイバーから助けを求める声がミーシャに届く。

 だが、助けてと言っている内にも、レギンレイズはガンダムアスタロトリオートの四肢を引きちぎろうとしてくる。

 

「だったら、どうして攻撃を止めないんですか!?」

 

『ち、違うっ、違うんだ!俺は何もしてねぇのに、ガンプラが勝手に動くし、止まらねぇんだよ!』

 

 マスダイバーの声色は、嘘を言っているようには聞こえない。

 だとすればレギンレイズだけでない、アヘッドやハイザックも同様に、ダイバーの操縦に関係なく一人でに動いているのだろう。

 それは、目の前のレギンレイズもそうであるように、銀色の金属物体が何かの因果となっているのかもしれない。

 しかし、コクピットを完全に破壊して沈黙させない限り、何度でも再生して襲って来る以上、手段は選んでいられない。

 ガンダムアスタロトリオートは、自前の膂力をフル駆動させて強引にレギンレイズを引き剥がし、体当たりでレギンレイズを弾き飛ばす。

 

「……ごめんなさい」

 

 そして、尻餅を着いたレギンレイズに向けて、ガンダムアスタロトリオートはパイルハンマーを振り下ろし、レギンレイズは頭部からへしゃげ潰された。

 

 レギンレイズ、撃墜。

 

 

 

 

 ハイザックもまた、ヤイコの蛇威雄音に攻め掛かろうとする。

 自分で左腕を引きちぎり、棍棒のようにして右手に握るハイザック。

 だが左腕を失っても、またすぐに金属物体となって再生する。

 蛇威雄音は真っ直ぐにハイザックへ突撃する。

 ハイザックは右手に持った左腕で蛇威雄音を殴ろうとするが、蛇威雄音は左手を裏拳のようにして振るい、ハイザックの右腕を殴り飛ばす。

 

『……面白くねぇ』

 

 ハイザックは蛇威雄音を蹴ろうと右脚を振り上げようとして、その寸前で蛇威雄音が逆に左脚でハイザックの右の膝関節を踏み潰した。

 

『面白くねぇッ』

 

 右脚の支えを失ったハイザックは仰向けに倒れてしまう。

 蛇威雄音は一瞬だけ屈むと、ハイザックの頭部の動力パイプを掴み上げて引き寄せる。

 

『面白くねぇッ!』

 

『助け、ヒッ……!?』

 

 接触通信でハイザックのマスダイバーの怯えた声が届くが、ヤイコの耳には入らない。

 

『アタシはなぁ、てめぇらみてーな性根の腐った奴らが嫌いだ』

 

 ゴンッ、と蛇威雄音はハイザックの頭部に頭突きを喰らわせた。

 

『けどなぁ……』

 

 頭突きを繰り返す内に、ハイザックの頭部がへしゃげ潰れる。

 

『面白くもねぇ喧嘩しか出来ねぇ奴はもっと嫌いなんだよッ!!』

 

 蛇威雄音は右手を拳にして、ハイザックの腹部にボディブローをぶち込んだ。

 ぶち込まれた拳は、ハイザックのコクピットはおろか、バックパックまで貫通していた。

 

 ハイザック、撃墜。

 

『インチキなんざに頼らねぇで、てめぇの実力で掛かってこいや』

 

 ヤイコはそう吐き捨てると、蛇威雄音はハイザックを蹴り飛ばした。

 

 ボスガンプラであるシャンブロは撃墜したことになっているので、ミッションクリア扱いにはなっている。

 だが、この場にいる五人はとてもそれに喜べそうになかった。

 残るものは、ある種の虚しさだけだった。

 

 

 

 

 

 マスダイバー達の介入こそあったものの、一応ミッションクリア条件は達しているので、ツルギ達四人と、ヤイコの蛇威雄音がそれに便乗するような形でベース基地へ帰還した。

 

 ツルギ達四人はミッションカウンターで今回の報酬である相当額のビルドコインと、戦利品であるパーツデータのいくつかを受け取っていた。

 

 報酬の受け取りを終えた四人だが、ふとツルギはその場から立ち去ろうとしていたヤイコを呼び止めた。

 

「待てよ、カラスノ」

 

 彼の声に、ヤイコは振り返ってくれた。

 リアルとほとんど大差のない、男子の詰め襟と割れ目の入った学生帽と言う、前時代的な番長と言えそうなアバターを使用していた。

 

「あん?まだアタシになんか用でもあんのか?」

 

 少々不機嫌そうな様子であったが、ツルギは構わずにコンソールパネルを操作し、選択したそれをヤイコに送信する。

 

 それは、今回のミッション報酬である、多少のビルドコインとパーツデータだった。

 

「曲がりなりにも俺達を助けてくれたんだ。その礼はさせてくれ」

 

 確かに、マスダイバーの乱入に乱入を重ねたような形ではあったが、結果的には自分達を助けたことに繋がったからだ、とツルギは言う。

 ヤイコはその送られてきたアイテムデータを見て、すぐにツルギに送り返した。

 

「悪ぃけどもらえねぇよ。アタシはあんたらのミッションに勝手に乱入した身だ。それで貰いモンを受け取るってのは道理が通ってねぇだろ」

 

 押し出すように右の掌を突き出して、"拒否"を示すヤイコ。

 

「結果がどうであれ、俺達は助けてもらった側の人間だ。礼のひとつもしないってのは失礼ってもんだろ」

 

「いらねぇっつってんだろ」

 

「でも礼は言わせてくれって」

 

「だからいらねぇって……」

 

 礼はいらないと言い張るヤイコと、礼をさせてくれと言い張るツルギ。

 完全に話が平行線を辿っていた。

 

「……かーっ、これじゃ無限ループじゃねぇか」

 

 ヤイコはボサついた髪を掻く。

 どうするべきかと視線を彷徨わせて、もう一度ツルギと、その後ろにいる仲間達に目を向ける。

 

「あんたら、アレか?フォース組んでんのか?」

 

「あぁ、そうだが……」

 

 それならよし、とヤイコはポンと手を鳴らした。

 

「アタシがあんたらのフォースに入ってやろうじゃねぇか」

 

「……待て待て、ちょっと待て。なんでそうなる?」

 

 突然「フォースに入ってやる」と言い出したヤイコに、ツルギは困惑する。

 

「どうせこのままじゃ無限ループだろ?だから、アタシの方から手打ちにしたってことさ」

 

 それに、とヤイコのレッドブラウンの瞳がギラリと光る。

 

「フォースに入ってりゃ、もっと面白い喧嘩が出来そうだからなぁ」

 

 ゴキボキベキッ、とヤイコの拳骨が派手に音を立てる。

 

「…………」

 

 ツルギは眉間に皺を寄せて、後ろにいる三人を見やる。

 

 ユイとミーシャはツルギと同じように眉間に皺を寄せている。

 

 しかし、ハルナはフォースに入ってくれると聞いてか、目を輝かせている。

 

「決まりだな。うっし、んじゃとっとと登録してくるぜ」

 

 そう言うなり、ヤイコはミッションカウンターに話し掛け、勝手にフォース・スピリッツに加入してしまった。

 登録完了を確認してから、ヤイコはツルギ達に向き直った。

 

「改めましてだな。アタシはカラスノ・ヤイコ。これからよろしく頼むぜ、野郎ども!」

 

「わーいっ♪」

 

 ハルナは手放しでヤイコの参入を大喜びしている。

 

「ちょっと……あんなの入れて大丈夫なの?」

 

 微妙に認められないユイは、ツルギに耳打ちしている。

 

「悪い奴じゃなさそうってのは分かるが、なぁ……」

 

 ツルギも、内心では少しだけユイに同意していたが、少なくとも不義理を働くような輩ではないと分かっているので、渋々ながら認めることにした。

 ……早まった真似をしたかもしれない、と若干だけ後悔しつつも。

 ミーシャはミーシャで「何だか怖そうな人が入ってきちゃった……」と不安がっていた。

 

 何はともあれ、フォース・スピリッツのメンバーに、破天荒な喧嘩屋が押し入りして来たのだったーーーーー。

 

 

 

 

 

 同時刻、トリントン基地にガンプラの一個小隊が訪れていた。

 この機体は、『GBNガードフレーム』。

 ディメンション内に配備されている、警備ガンプラであり、運営の指示によって出撃する。

 

 普段は姿すら見せないこの機体だが、今回は一個小隊に出撃命令が下された。

 

 彼らの任務は『トリントン基地の異常反応の調査』だ。

 

 つい先程に、通常であれば見られない異常反応が発見されたのを見て詳細を調べるべく、彼らはここに訪れていた。

 

「どんな些細なことでもいい、何かおかしいと感じたらすぐ伝えろ」

 

 小隊長は部下二人にそう告げて、トリントン基地周辺を注意深く見回す。

 しかし、見ても回っても異常など何も見当たらない。

 だが、異常反応は確かにここから発されているのだ。

 

「何も無いのに異常反応があるはずはないが……」

 

「何かあるから異常反応があるんだろ、くまなく探すぞ」

 

 それから数分近くの間、管制塔や格納庫内も探索してみたが、異常らしい異常は見つからない。

 

「異常なし、と……こちら03、各ポイントに異常なし。そちらの状況を……ん?こちら03、応答せよ。01、02、応答願う。……おかしいな、通信状態は問題ないはずなのに」

 

 ともかく、自分が受け持ったエリアの調査は修了。

 合流地点で落ち合うべく、移動しようとしたところで、

 

『CATION!!』

 

 アラートが反応した。

 

「何だっ、敵か……」

 

 気付いた時にはもう遅く、背後から組み付かれていた。

 

 自機と同じGBNガードフレー厶に。

 

「!?お、おいっ、俺は味か……」

 

 

 

 

 

 ーーーーーNOITCEFNIーーーーー

 

 

 

 

 

 トリントン基地に出撃した一個小隊は、無事に帰還した。

 異常反応と言うのは、管制塔の通信施設の誤作動のことであり、その場でデータの修正を行った、と報告された。

 

 

 

 

 

 

【次回予告】

 

 ハルナ「認めたくないものだな、自らの若さゆえの過ちとやらを」

 

 ユイ「見せてもらおうか、連邦軍のMSの性能とやらを」

 

 ミーシャ「当たらなければどうと言うことはない」

 

 マイ「MSの性能の違いが、戦力の決定的差では無いと言うことを、教えてやる!」

 

 サヤ「さらにやるようになったな、ガンダム!」

 

 ヤイコ「見えるぞ、私にも敵が見える!」

 

 ツルギ「……教えてくれララァ、俺はこの状況にどう反応すればいいのだ!?」

 

 ミツキ「フォースフェスと言うものがあってですね、まぁとにかくシャアに関するお祭りと言うことです」

 

 ツルギ「次回、ガンダムビルドダイバーズ・スピリッツ

 

『紫陽花の咲く頃に』

 

 これが若さか……じゃねぇよ!俺はまだ16だぞ!?」 

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