絶剣の軌跡   作:厄介な猫さん

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久しぶりの投稿。
黎の主人公とオリキャラの名前が被ったけど、変更せずに突き進みます。(原作より風当たりが強くなる事には無視しつつ)
てな訳でどうぞ。


灰の騎神

例の咆哮を聞いたルークとトヴァルはリィンにエリゼ、アルフィン殿下、シュバルツァー男爵夫妻と共に男爵邸の門前に集まっていた。

 

「チッ、崖から落とした程度じゃ駄目だったか……」

「こうなるなら、彼処で確実に仕留めるべきだったな」

「いえ……あの場合は仕方ないかと」

 

魔煌兵が機能を停止せず、ユミルへと向かって来ていることを聞いて苦い顔をするトヴァルとルークに対し、リィンはそう告げる。

 

魔煌兵の気配を感知したセリーヌが言うには、裏手にある峡谷道の方向から確実に近づいてきているそうだ。当然、何故魔煌兵がユミルへと近づいて来ているかという疑問が浮かぶのだが、その答えもセリーヌがもたらした。

 

「きっと“灰の起動者(ライザー)”であるリィンを狙っているんでしょうね。魔煌兵は元々、そういう存在みたいだから」

「……だったら、やっぱり俺が何とかするしかなさそうだ」

 

セリーヌの言葉を聞き、リィンは決然とした態度でそう告げる。魔煌兵の目的がリィンである以上、彼の性格からしても放置は出来ないからだ。

 

……左頬に咲いた紅葉で少々情けない姿だったが。

 

「兄様……」

「大丈夫だ、エリゼ。この郷は必ず護ってみせる。そのくらい出来なくちゃ、みんなと再会するなんて夢のまた夢だからな」

 

心配そうに呟くエリゼにリィンは微笑みながらそう口にする。どうやら、ルーク達と別れた後で肚が括れたようである。

 

シュバルツァー夫妻もそんなリィンを見て背中を押し、自分達はいざという時の避難を呼びかけておくと伝える。

 

「そういうことなら俺も助太刀させてもらうぜ。後方支援(バックアップ)くらいなら務まるからよ」

「もちろん俺も力を貸すぜ。デカブツとの戦いには多少慣れているからな」

「トヴァルさん、ルークさん……ありがとうございます」

 

当然、この状況を黙って見るつもりのないトヴァルとルークも同行を申し出て、二人が力を貸してくれることに感謝してリィンはお礼を告げる。

 

「それじゃあ俺とセリーヌ、トヴァルさんとルークさんで峡谷に―――」

「……待ってください、兄様。どうか私も同行させてください」

 

魔煌兵を迎え撃つメンバーが決まったと思ったところで、エリゼが自ら同行を志願してきた。

 

「な……!?」

「エリゼ……!?」

 

その申し出にリィンとアルフィン殿下が驚く中、セリーヌは確認するように話しかける。

 

「……分かってると思うけど、これは遊びじゃないわよ?」

 

セリーヌのその言葉にエリゼはもちろん分かっていると答え、武の心得もありリィンが道を定めた以上は背中を護るのが妹の務めだと告げる。

 

そんなエリゼの決意をシュバルツァー夫妻は快く受け止め、リィンのストッパーの意味合いも兼ねて連れて行くようにと苦言を呈そうとしたリィンに告げた。

 

「と、父さんっ!?幾ら何でも―――」

「心配するなリィン。エリゼお嬢さんなら大丈夫だ。剣も中々だしARCUSも使いこなせているからな」

「それにリィンさんと一緒なら、エリゼも普段以上の力を発揮できるでしょうし♪」

 

リィンは反対しようとするも、トヴァルとアルフィン殿下の援護をくらい、言葉を詰まらせてしまう。

 

「そもそもエリゼがなぜARCUSを……?」

「実はオリビ―――オリヴァルト殿下からあの日、予備のARCUSを預かってな。それでトヴァルが指南していたんだよ」

「俺のせいだけにするなよ。お前さんだってエリゼお嬢さんの剣の手解きをしていただろ」

「ちょっと指摘しただけだ。人に教えられる程のもんじゃないし」

「……………………」

 

明かされた事実にリィン絶句。完全に言葉を失ってしまっている。

ちなみにルークはオリヴァルト殿下のことを『オリビエ殿下』と呼ぶ癖が根付いてしまっている。理由は……お察しということで。

 

「どうでもいいけど、あんまり時間はないわよ?反対するだけ無駄なんだし、とっとと諦めなさいよね」

「~~~~っ~~……」

 

セリーヌの最後のだめ押しにリィンは唸った後、諦めたのかどこかやけくそのように口を開く。

 

「―――分かった!!エリゼ、力を貸してもらう!ただし絶対に無茶はしないこと!!約束できるか!?」

「はい……っ!」

 

ある意味鏡を見ろと言いたくなるような同行条件だが、エリゼはツッコムことなく頷く。

 

「話は決まったな」

「薬やら、一通りの準備を整えたら裏手の峡谷道に向かうぞ」

 

こうして四人で向かうこととなり、手早く準備を終えた四人は裏手にある峡谷道へと足を踏み入れる。

 

「それじゃあ、探索を始めよう。《魔煌兵》がいるのはこの先でいいんだな?」

「ええ、間違いないわ。今もゆっくりだけど少しずつ近づいてきてるから」

 

リィンの確認に《魔煌兵》の存在を感知できるセリーヌはそう答える。

 

「つまり、このまま奥へ進めば鉢合わせするんだな?」

「ええ。どこで鉢合わせするかは分からないけどね」

「なら、できるだけ郷から離れた場所で鉢合わせしないとな。リィンとお嬢さんは何度も登ったことがあるんだよな?」

 

腕を組んでリィンとエリゼに顔を向けたトヴァルの確認に、リィンが頷きながら答える。

 

「ええ、二ヶ月ほど前にもVII組の仲間と登ったばかりです。あの時は《怪盗B》―――結社の手先が関わっていましたが」

「《怪盗紳士》ブルブランか」

「あの変態に目を付けられるとか、本当に運がないな。さすがに今回の件には関係なさそうだが」

 

悪趣味な“美”の嗜好を持っている男に興味を持たれたリィンに、ルークは本当に心底同情する。

 

それはさておき。

 

ルーク達四人は道中の魔獣を倒しながら奥を目指して進んでいく。

 

ルークとリィンが前衛を務め、トヴァルはお得意のアーツによる援護。エリゼは状況に応じて剣とアーツを使い分けてだ。

 

そんな前衛寄りではありつつも比較的バランスが取れていたこともあって、道中の魔物に然程苦戦することはなかった。

 

「それにしてもルークさん、本当にお強いですね。以前我流と言っていましたが、所々に《百式軍刀術》の動きが見られます」

 

太刀を鞘に納めたリィンの指摘に、ルークは苦笑いを浮かべる。

 

「確かに《百式軍刀術》は士官学院時代に修めたが……我流の剣に混ぜ込んだものだから、完全に別物さ」

 

ルークの剣術は正式に誰かに師事したわけではない。最初は毎日剣の練習をしていた兄貴分との“遊び”のような感覚で、あの“事件”の後は哀しみと虚無感、罪悪感からがむしゃらに剣を振るった結果だ。

 

トールズへの入学もその延長であった。だが、友人達の尾行に気付かずに“墓参り”したため、誤魔化せなかったこともあり始めて自身の過去を……ずっと抱え、明かせなかった大切な人達を喪った哀しみとその大切な人達を省みることなく真っ先に逃げ出したことへの後悔、そして一人()()生き延びたことへの罪悪感を口にしたのだ。

 

……その際に当時目の敵にされていた彼女に優しく慰められ、それに甘えてしまい、今まで溜めていた分を吐き出すように大泣きしてしまったが。

 

それがきっかけで過去にある程度の折り合いが付けられるようになり、自身のケジメの為に“真実”を追求するようになった。

 

「《百式軍刀術》……確か、帝国の二大流派《ヴァンダール流》と《アルゼイド流》、それぞれの型を百くらい取り入れられた剣術だったか」

「ええ。合理的で実戦的な剣術であり、応用の余地はあまりありませんが軍の人の多くが修めています」

 

そんな過去に馳せるルークに気付くことなく、トヴァルの思い出すように呟いたその言葉に武の世界に精通しているリィンは頷きながら答える。

 

「……兄様と同じ学院の出とはいえ、本当に記者なのか疑わしくなりますね」

 

エリゼの懐疑的な言葉が微妙に突き刺さる。そこで現実に戻ってきたルークは苦笑い気味に口を開いた。

 

「アハハ……色々と俺にも事情があるんだよ。……力がなけりゃ守りたいもんも守れないからな」

「「?」」

「…………」

 

ルークのその呟きにリィンとエリゼは首を傾げ、事情を把握しているトヴァルは無言を貫く。

 

“真実”を追求するようになっても剣の腕を磨き続けたのは、恐怖から一切省みずに逃げ出したことへの後悔と罪悪感も確かにある。だが、今の一番の理由は逝ってしまった兄貴分との約束からだ。

 

―――『守るために死ぬのではなく、守るために生きろ』という約束を貫くために。

 

「ま、人は何かを成したり貫き通すために“力”を求めるということだよ。俺の場合はそれが武力だったという話だ」

 

どれだけ立派な志があっても、それを貫けるだけの“力”がなければ意味がない。理不尽と暴力に対抗するにはどうしても“力”が必要となってくる。

 

「何かを成し、貫き通すために“力”を求める……ですか」

「ああ。幾ら意思や志が立派でも、貫けなければ意味がないからな。……っと、今は流暢に話している場合じゃなかったな。今は近づいて来ているデカブツを何とかしないとな」

「……ええ」

 

状況が状況なのでそこで会話を切り上げ、四人と一匹は峡谷の奥へと向かって進んでいく。

 

しばらくして、四人と一匹は峡谷の終点へと辿り着いた。

 

「あれが二ヶ月前の騒動の原因だったっていう石碑か?」

「……わずかに精霊の力を感じるわね。今は収まっているみたいだけど」

「ああ、そうみたいだ。八年前の事件の原因でもある場所……俺にとっては、どうしても因縁を感じる場所だな」

「兄様……」

 

リィンの呟きにエリゼは心配げに顔を向ける。

 

そんなリィン達の感傷など関係無いと言わんばかりに、ユミルで聞こえた咆哮が彼らの耳に届く。

 

「お出ましか……!」

 

ルークを始め、その場にいた全員が咆哮がした方へと顔を向けると、谷に落とした魔煌兵が地面を鳴らしながら此方へと近づいてきていた。

 

「チッ……ルークが傷つけた右肩が元通りになってやがる!こりゃ、谷に落ちたダメージも期待できなさそうだな!」

「自己修復能力……伝承にあった通りだわ!」

「どっちにしろやることは変わらないだろ」

「ええ。エリゼ、くれぐれも無理しないでくれ!」

「はい……!」

 

そうして四人はそれぞれの得物を構え、魔煌兵と向き合う。

 

対する魔煌兵は対象を見つけたと言わんばかりに再び咆哮を上げ、右手に持つ片刃の剣を振りかぶる。

 

それが戦闘開始の合図であった。

 

「全員、散開!!」

 

リィンの指示で全員がその場から飛び退き、その直後に魔煌兵の巨大な剣が地面を叩く。

 

「二ノ型、疾風!!」

「瞬迅!!」

 

その隙を付くように、リィンとルークは素早い動きで交差するように魔煌兵の脚へと攻撃を叩き込んだ。

 

「そこです!!」

 

ARCUSの戦術リンクでリィンと繋がっていたエリゼも追い討ちをかけるように翼状の斬撃を放ち、二人が攻撃した魔煌兵の脚へとぶつける。

 

そんな脚に集中的に攻撃を受けた魔煌兵は、さすがに耐えきれなかったのかバランスを崩し、その場で片膝を着いてしまう。

 

「喰らいな!!」

 

その間にARCUSを駆動していたトヴァルは空属性攻撃アーツ“ゴルゴスフィア”を放ち、数個の光の球を魔煌兵へと叩き込む。

 

アーツをまともに喰らいながらも魔煌兵はすぐに立ち上がり、持っていた剣を逆手に構えて地面に突き刺す。

 

途端、地面から衝撃波が飛び、全員がその場から吹き飛ばされた。

 

「……よっ、と!」

「リィン!エリゼお嬢さん!無事か!?」

「はい、こちらは大丈夫です!!エリゼは!?」

「私も大丈夫です!!」

 

ルークとトヴァルは咄嗟に後ろに飛んだことで攻撃を受け流せており、リィンとエリゼも上手く凌げたようだ。

 

「ちょっと!?アタシの心配もしなさいよ!?」

 

セリーヌは心配されなかったことに文句を言っているが、自分だけ障壁を張って防いでいたので心配する必要が一切ない。

 

「念のため、すぐ回復させる!」

 

トヴァルはそう言って水属性回復アーツ“ティア”を()()()()に発動させ、二人の受けたダメージを緩和、治癒していく。

 

「例の並列駆動か!」

「ああ。ホント、改造してくれたあの嬢ちゃんには感謝だな!」

 

ルークの言葉にトヴァルは頷きつつ、下級アーツを駆動時間を無視せんばかりに次から次へと飛ばしていく。

 

これは改造によって組み込まれた《ストック機能》。下級アーツ限定ではあるが事前に構築したアーツを溜め込み、好きなタイミングで発動できる機能だ。当然色々と制限はあるが、元々戦術オーブメントの改造に精通していたトヴァルだからこそ活かせる機能である。

 

そんな下級アーツを何度も喰らった魔煌兵は鬱陶しかったのか、その張本人であるトヴァルに向かって剣を振りかぶる。

 

「余所見してていいのかよ?」

 

いつの間にか魔煌兵の足下の近くに立っていたルークはそう告げると、片手半剣(バスタードソード)の刀身に輝く焔を纏わせていく。

 

「輝焔斬!!」

 

一回転と共に放たれる焔の斬撃。その斬撃は魔煌兵の脚を真っ二つに斬り裂き、その場で崩れ落ちさせた。

 

「よし!一気に畳み掛けるぞ!!」

 

トヴァルはそう言ってARCUSを再び駆動。今から放たれるのは通常のアーツではなく、改造によって生まれた独自アーツだ。

 

「はぁぁぁぁ……」

 

トヴァルは集中力を高め、包囲を敷くかのように五つの風の球を作り出す。それらをそのまま魔煌兵に放とうとはせず、真上で一つの球体へと纏め上げていく。

 

「喰らいな―――」

 

トヴァルはその大球となった風の塊に向かって跳躍。両手で組んだ拳を頭上へと振りかぶり―――

 

「リベリオン、ストームッ!!」

 

その拳を風の塊に叩きつけるように振り下ろした。

 

風の塊はそのまま魔煌兵に向かって落下。着弾するとその巨体を包み込む程の竜巻となってダメージを与えていく。

 

「―――叢愾剣ッ!!」

 

トヴァルの大技で下がっていたルークも、更に超高圧な斬撃を叩き込んで魔煌兵に容赦なく追い討ちを掛ける。

 

そして竜巻が止むと―――一目で判るほどボロボロとなった魔煌兵が蹲っていた。

 

「す、すごい……」

「へへ……さすがにこれだけやりゃ……」

 

魔煌兵のその姿にエリゼは感嘆の声を洩らし、トヴァルはもう動けないと判断しかける。

 

「―――いや、まだです!」

「どうやらそのようだな」

 

リィンの警告に、地面に沈んでいない魔煌兵の姿に警戒心を解いていなかったルークが同意した、その瞬間。

 

魔煌兵は不気味なオーラを全身から放つと腕を四本に変え、再び立ち上がった。

 

四本の腕すべてに両刃の剣が握られており、両断された左脚も元通りになっている。しかし、四本の腕と左脚以外は依然ボロボロであったが。

 

「う、腕が……!?それに脚まで……!?」

「おいおい……!!そんなのアリかよ……!?」

 

エリゼとトヴァルはパワーアップして立ち上がった魔煌兵に驚くが、ルークはそれを前にしても冷静だった。

 

(あれはもう風前の灯だな。俺が()()でいけば倒せるだろうが……)

「……どう、行けそう?」

 

そんなルークの思考を遮るように、セリーヌはリィンに問いかけていた。

 

「……ああ、少しの間だけなら動いてもらえそうだ」

 

リィンのその言葉にエリゼとトヴァルは疑問を露にリィンに顔を向け、ルークも最初は意味が分からずにリィンに顔を向けたが、すぐにその意味を理解した。

 

「まさか……」

「ええ、呼ぶなら今しかない……!!」

「え……?」

「……そういうことか!」

 

エリゼは未だ分からなかったが、トヴァルはリィンとルークのやり取りで何をするのか気付いたようだ。

そして、リィンは手を掲げて叫ぶ。

 

「来い―――《灰の騎神》ヴァリマール!!」

 

リィンがそう叫んだ瞬間、薄く輝く、円形状に構成された術式のようなものに包まれる。

 

少しして、何かの噴出音が聞こえ始めてくる。

 

「この音は……」

 

エリゼがそう呟く間にも音はどんどん大きくなり、白に近い灰色の巨大な騎士人形がその場に降り立った。

 

降り立った灰色の騎士人形が魔煌兵に向き合うと、リィンとセリーヌは直ぐ様駆け寄っていく。そして、リィンとセリーヌは光に包まれ、その騎士人形へと吸い込まれた。

 

「これが《灰の騎神》……」

「トリスタの防衛戦で活躍したっていう代物か!」

「ほ、本当に兄様が動かしているんですか……?」

 

エリゼは未だ信じられないのか半信半疑で呟くが、騎士人形改め《灰の騎神》はリィンが動かしているのを裏付けるように三人の前へと躍り出る。

 

『三人とも、ここは俺が引き受けます!いったん下がっていてください!!』

「ま、それが妥当かな」

「はは、わかった……!」

「……分かりました。兄様、どうかお気をつけて……!」

 

リィンの言葉にルーク達は素直に頷き、魔煌兵と《灰の騎神》から距離を取っていく。それを確認したリィンは徒手空拳のような構えを取る。

 

『八葉一刀流、《無手の型》―――』

 

その瞬間、魔煌兵が攻撃を仕掛けてきた。

 

リィンが操る《灰の騎神》はリィンと同じ動きで攻撃を避けるも、魔煌兵はまるで《灰の騎神》を近づかせないように、攻撃の隙を与えないように四本の剣をがむしゃらに振るっていく。

 

『くっ、これじゃ容易に近づけないし攻撃できない!!』

『まずいわね。このまま長引くと“彼”の霊力(マナ)が尽きるわ。何とか隙を見つけないと―――』

 

魔煌兵の予想を越える抵抗にリィンとセリーヌは苦々しく言葉を洩らしている。騎神のダメージが乗り手のリィンにフィードバックされる以上、安易に攻撃を受けるわけにはいかない。

 

その様子を見たルーク達は顔を見合せて無言で頷く。どうやら考えていたことは同じのようだ。

 

「兄様!アーツで援護します!!注意が私たちに向いた隙に決めて下さい!!」

『!?分かった―――!』

「「「ARCUS駆動―――」」」

 

リィンが了承したことで三人は揃ってARCUSを駆動し下級アーツを発動。発動したアーツをがむしゃらに剣を振るっている魔煌兵へとぶつける。

 

アーツによる攻撃を受けた魔煌兵は狙い通りに剣を止め、ルークたちへと顔を向ける。

 

『ここだ!』

 

剣を振るう動きが止まった魔煌兵に《灰の騎神》は腰を落とし、右腕を引き絞る構えを取る。

 

『八葉一刀流《無手の型》―――破甲拳!!』

 

ルーク達に意識が向いたことで無防備となった胸部への掌底。それをマトモに喰らった魔煌兵は後ろへとよろめき、そのまま地面へと倒れる。

 

その一撃に耐えられなかったのか、魔煌兵は全身から光を放ち、そのまま消え去っていった。

 

「おお、やったな……!」

「何とかなったな……」

「兄様……!」

 

リィンの勝利にその場にいた全員が安堵し、《灰の騎神》もその場でしゃがんでいく。

 

少しして《灰の騎神》から光が飛び出て、そこからリィンとセリーヌが姿を現した。

 

「兄様!お身体は大丈夫ですか!?」

「エリゼ……ああ、攻撃は受けなかったから大丈夫だ。それよりもエリゼの方こそ怪我はないか?」

「そうやって兄様はいつも他人(ひと)のことばかりを……!」

 

互いを心配する兄妹のやり取りに、ルークとトヴァルは微笑ましく見守りながらも二人へと近づいていく。

 

「トヴァルさん、ルークさん……アーツによる援護、ありがとうございました」

「ははっ、気にすんな」

「俺達へのお礼よりも、まずは妹さんへの礼の方が先だろ?」

「ええ。エリゼも援護してくれてありがとな」

「いえ、兄の背中を守るのが妹として当然の役目です」

 

こうして魔煌兵も無事に撃破し、一件落着―――

 

『クスクス―――気を抜くにはまだ早いんじゃないかしら?』

 

そんな雰囲気を壊すように、女性の声が響くのであった。

 

 

 




オリ主の過去、最早隠す気ゼロですがまだはっきりとは告げませんよ。内容が内容だからね。
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