絶剣の軌跡   作:厄介な猫さん

8 / 18
てな訳でどうぞ


帝国解放戦線

―――七耀歴1204年7月26日

 

手頃な値段のホテルに泊まっていたルークは現在、片手半剣(バスタードソード)をしまったトランクケースを片手に帝都を巡回していた。ルークが乗ってきた導力バイクは現在、鉄道憲兵隊(T.M.P)に預かってもらっている。

 

皇族が住むバルフレイム宮を中心に東西南北の各エリアを回っているが、今のところは問題は起きていない。……前触れもなく消えていった人達がいる事が耳に届いていたが。

 

「……そろそろ定時の報告だな」

 

近くの出店でホットドッグを購入したルークはARCUSを操作して個人の連絡先からクレアに連絡を取って、現時点で判明していることを報告していく。

 

「―――以上だ。連中が彷徨いている訳じゃないが、確実に準備を整えている可能性が高い」

『そうですか。引き続き巡回をお願いします。…………』

 

クレアが通信を切らずに沈黙していることにルークは少し疑問に感じていると、クレアが再び話しかけてきた。

 

『……ルークがテロリストならどこを狙いますか?』

 

クレアのその質問に、ルークは少し考えてから答えた。

 

「……皇族がいる場所を本命にして狙うな。テロリストが()()()()と繋がっているなら、()()()()の失墜を狙うだろうからな。お前の読みは?」

『……40%です。確率が高い読みが他にもありますから、現在の体制を変える事は出来ませんが』

「だろうな。だから協力を要請したんだろ?」

『……はい』

 

クレアは申し訳なさそうに答える。自分たちの都合で学生達を危険な目に合わせようとしていることに負い目があるのだろう。相変わらずの抱え込み症のクレアにルークは呆れ気味に言葉をかけていく。

 

「どっちにしろ連中が動いたら、彼らは自分たちの意思で首を突っ込んでいくだろうさ。だからあんまり抱え込むなよ?抱え込み過ぎると、ソフィーヤが気分転換と称して酒場に連れていかれるぞ?」

『……大丈夫ですよ。制裁で幾ばくか吐き出していますから』

「おい!?」

 

そんなこんなで通話を終えたルークは担当されたエリアの巡回を再開していく。その後の巡回はこれといった騒動も起きることもなく、平和に過ぎていった。

 

「このまま何事もなく終わればいいんだけどな……」

 

叶わないであろう願いを呟きながら巡回していると、近くのスプリンクラーの水の放出が次第に多くなっている事に気づいた。

 

「……………………」

 

今も尚スプリンクラーの圧力が高まり、スプリンクラーから水柱が上がったことにルークは目を細めていく。知らない人からすれば夏至祭の余興と捉えたようだが、それはマンホールの蓋からも水柱が噴き出たことで否定された。

 

「……チッ!来やがったか!!」

 

舌打ちしたルークはすぐさまトランクケースを開けて中にしまってあった片手半剣(バスタードソード)を取り出す。そして、今いる場所から近く、テロリストの標的として格好な場所である、アルフィン皇女がいるマーテル公園へと急いで目指していく。

 

突然の異常事態に混乱して逃げ惑う人々を掻き分けて到着したマーテル公園には、鰐型の大型の魔獣―――グレートワッシャーがあちこちで暴れていた。近衛兵と帝都憲兵隊(H.M.P)が応戦しているが、グレートワッシャーの数が多く後手に回ってしまっているようだ。

 

その内の一体が地面に転んだ子供に襲いかかろうとしていた。それを見たルークはすぐさま片手半剣(バスタードソード)を鞘から抜き、猛然と走り寄り途中で片手半剣(バスタードソード)を振りかぶって飛び上がる。

 

「―――爆砕斬!!」

 

ルークは以前グルノージャを両断した一撃を放ち、クレーターを作ると同時にグレートワッシャーを問答無用で両断した。

 

「大丈夫か?」

「う、うん……」

 

子供に怪我がないことにルークが安堵していると、帝都憲兵隊の人間が近寄って来る。

 

「あなたは一体何者なのだ?あの魔獣を一撃で仕留める等……」

「ルーク・バーテル。フリーの記者だ」

 

ルークが名乗ったことで帝都憲兵隊の人間は何かに気づいたような顔となり、改めて口を開く。

 

「あなたはもしや、先ほどの士官学院生と同じく鉄道憲兵隊に協力している者なのか?」

「ああ。悪いがこの子を頼めるか?それと、その士官学院生達は今どこに?」

「彼らはクリスタルガーデンに向かった。あなたも向かわれるならどうか女神の加護を……!」

 

帝都憲兵隊の人間はそう言って、子供を抱えてその場から離れて行った。

 

ルークはすぐさまクリスタルガーデンに向かおうとするも、さっきの轟音でこちらの存在に気づいたらしいグレートワッシャー達がルークを囲ってジリジリと距離を詰めていた。

 

「…………」

 

その状況でもルークは顔色一つ変えず、片手半剣(バスタードソード)を構え、剣に闘気の焔を宿していく。

 

「煌めく焔の一撃―――」

 

そして、ルークは片手半剣(バスタードソード)を居合のように構え直し―――

 

「―――輝焔斬(きえんざん)!!」

 

周囲を凪ぎ払うように、その場で一回転して振り抜いた。

 

かつての《剣帝(レーヴェ)》の技を自分なりに再現した剣技―――“輝焔斬”。

 

その放たれた焔の斬撃は容赦なくルークを囲っていたグレートワッシャー達を両断し、物言わぬ骸へと変えた。

 

「な……」

 

誰かの息を呑む気配が伝わってくるが、ルークは構うことなくクリスタルガーデンへと向かっていく。

 

辿り着いたクリスタルガーデンには、白い制服を着たトールズの貴族生徒と肩の傷を手当てされている帝都知事のカール・レーグニッツがいた。

 

ルークはすぐにレーグニッツ帝都知事に歩み寄った。

 

「無事ですか?知事閣下」

「君は一体……?」

「ルーク・バーテル。フリーの記者です」

「……そういえば、クレア大尉はVII組以外にも協力を要請していると聞いたが……それが君なんだな?」

 

得心がいったレーグニッツ帝都知事の問いにルークは頷いて肯定する。

 

「それで、状況は今どうなっていますか?」

「……テロリストはアルフィン殿下と殿下の付き人を拘束してそこの大穴を降りて連れ去っていった。今はVII組の諸君が追いかけている状況だ」

「状況は分かりました。俺も彼等を追いますので申し訳ありませんが知事閣下には後から来る鉄道憲兵隊の人達への説明をお願いして宜しいでしょうか?」

「ああ、了解した。彼らを頼む……!」

 

レーグニッツ帝都知事との会話を終えたルークは爆破で出来上がった地下への大穴に迷わずに飛び込んだ。

 

そして、彼等の足跡を辿り、ルークは地下の奥を目指して進んでいく。道中の魔獣を軽くあしらいつつ、奥へと進んでいくと戦闘音が耳に届いてきた。

 

「近いか……!」

 

ルークは気持ち速度を上げて戦闘音が聞こえる方へと目指していく。辿り着いた大広間ではリィン達がテロリスト達を囲っている所であった。近くには何かしらの魔獣の骨が散乱している。

 

テロリストである眼鏡の男―――昨日のブリーフィングで話題に上がったギデオンがマチェットをアルフィン皇女に突きつけようとした瞬間―――

 

「―――がはっ!?」

 

そうはさせまいとルークが突きと共に剛速で駆け抜ける剣技―――“瞬迅(しゅんじん)”で一気に距離を詰め、ギデオンをすぐ後ろの壁へと叩きつけた。

 

「ゲホッ、ゴホッ!き、貴様は……!」

「どうやら、その様子からして俺のことを知っているようだな?」

 

マチェットを取り落とし、咳き込んで睨み付けてくるギデオンに、鞘に納まったままの片手半剣(バスタードソード)をギデオンの胸板に突きつけて壁に押さえつけているルークは肩を竦めて返す。

 

よくよく考えればケルディックの一件にも関わっていた以上、妨害した存在を把握していても何ら不思議ではない。

 

「ルークさん!?」

「タイミング良すぎやしませんか!?」

「まー、それに関しては同意見だな。完全にドンピシャだったし。だが、いいタイミングだっただろ?」

「ええ。おかげで殿下と妹のエリゼを取り返せました」

「ん。ナイスタイミングだった」

 

アルフィン皇女とリィンの妹であるらしいアルフィン皇女の付き人―――エリゼもルークの突然の登場で動揺した、下っぱであろうテロリスト二人がリィンとラウラにのされたことで無事に取り戻している。

 

「くっ……鉄血の狗に協力する愚か者共が……!」

「友人の頼みを聞いて何が悪いんだ?もっとも、お前らのやり方が気にくわないから、頼みがなくても同じことをしただろうが」

 

ギデオンの怨み言をルークは柳と受け流し、逆に冷めた視線を送る。

 

「つうわけで、あんたを自決する前にボコって意識を苅り飛ばしてから正規軍につきだしてやる」

「ぐぅぅ……ッ!!」

 

ギデオンは憤怒の表情で睨んでくるが、切り札と人質、その両方を失ったギデオンには最早勝ち目はなく勝敗は決した―――筈だった。

 

「フフ。この辺りが潮時でしょうね」

 

女性の声が聞こえると同時にルークの背後に眼帯をした隻眼の女性が降り立ち、その手にある剣―――法剣(テンプルソード)を垂直に振るう。

 

直後、刀身が幾つかの節に分離し、鞭のようにルークに迫っていく。

 

ルークはその鞭のように迫る剣閃を、ギデオンに鞘を突きつけたまま引き抜いた片手半剣(バスタードソード)で難なく捌いた。

 

さらにその直後、フルフェイスの黒い仮面を被った黒ずくめの性別不明の人間が左手に持つ暗黒時代の遺物―――双刃剣(ダブルセイバー)をルークに振るってきていた。同時に法剣も再び迫って来ている。

 

「……ちっ」

 

流石にギデオンを拘束したまま新たに現れた二人の攻撃を捌くのは困難な為、ルークは軽く舌打ちしてその場から飛び下がってその二条の斬撃をかわす。

 

さらにその直後、上空から弾丸が降り注ぎ、ルーク及び、近くにいたリィン、ラウラ、フィーの三人もその場から飛び下がり、更に距離を取らざるを得なくなった。

 

弾丸の掃射が止むと、片手でガトリングガンを持った迷彩柄の服を着た筋骨隆々の男がその場に降り立った。

 

「同志《S》……同志《V》……それに同志《C》……今回は任せてもらうと言っていた筈だが……正直、助かったぞ」

 

解放されたギデオンは蹲って胸を押さえながら新たに現れた三人に視線を送り、礼を述べる。そして、ギデオンは仮面の人物に顔を向けた。

 

「同志《C》。私が今回立てた作戦、それほど頼りなく見えたか?」

『いや、ほぼ完璧に見えた。しかし、作戦には常にあちらの諸君のような不確定な要素が入り込むものだからな』

 

完全にテロリストの仲間である仮面の男―――《C》はそう言ってルーク達に向き直る。

 

『本作戦の主目的は既に達した以上、これ以上は無益というもの。皇族を手にかけんとした愚行は詫びよう。ここで互いに手を引く事に依存は無いかな?』

 

《C》は得物を構えたままそんな提案をしてくる。その提案に対しリィン達は……

 

「……あるに決まってるだろう」

「恐れ多くも殿下たちを攫い、薬などで眠らせたこと……」

「とても帝国人として許せるものじゃないな……」

「6対4……ギリギリかな」

「……み、みんな……」

 

静かに怒りを湛えてテロリスト達を睨んで却下していた。ルークも勿論、このままテロリスト達を逃がすつもりはなかった。

 

「下っぱは戦闘不能。眼鏡の男の実力は平凡……ガトリングガンを使う巨漢と法剣使いの女、双刃剣(ダブルセイバー)を扱う達人クラスのお前が相手でもクレア達が来るまで足止めは十分可能だろう」

『ふふ、我が実力を見抜くか。流石は噂に名高い《絶剣》と言うべきか』

「いつの間にか勝手に付いた異名で呼ばれても嬉しくも何ともねぇよ。―――それとも全員で挑むか?」

 

ルークはそう言って銀色の闘気を漲らせ、片手半剣(バスタードソード)の切っ先をテロリスト達に向ける。まさに一触即発の状態だ。

 

「くくっ、中々いい闘気じゃねぇか」

「学生さん達はともかく、そこの《絶剣》さんが一緒だと少しこちらの分が悪いかしら?」

『正直、手合わせを願いたいところではあるが……早々に立ち去らせてもらうとしよう』

 

《C》はそう言って双刃剣(ダブルセイバー)をしまい、懐から何かの端末を取り出す。それを何の躊躇いもなく押し込んだ。

 

ドオォオンッ!!

 

その直後、頭上から轟音が響き渡った。

 

「ば、爆弾!?」

「既に仕込んでいたのか!」

 

新たに現れたテロリスト達が妙に余裕だった事には些か疑問に感じていたのだが、とっくに逃げる手段を用意していたことにルークは舌打ちしてしまう。

 

「流石に洒落になってないぞ!?」

「急いでここから離脱するぞ!!」

 

大急ぎで大広間から脱出しようとする中、《C》が悠然と言い放った。

 

『では、最後に名乗らせてもらおう―――我らは《帝国解放戦線》。静かなる怒りの焔をたたえ、度し難き独裁者に裁きの鉄槌を下さんとする集団だ。それでは諸君、また会おう』

 

《C》はそう言って、他のテロリスト達と一緒に奥へと消えていく。ルーク達は急いで入口に向かうも、その入口が天井から降り注いだ瓦礫によって塞がれてしまった。

 

「な……ッ!?」

「入り口が瓦礫に……!」

 

エリゼを抱えたラウラとアルフィン皇女を抱えたリィンはその光景に焦燥感を露にする。このままでは全員、瓦礫の下敷きとなってしまう。

 

「まずいぞ!このままだと―――」

「そこから離れてろ」

 

そんな中、ルークはリィン達に入口から離れるように言い、片手半剣(バスタードソード)を大きく振りかぶる。その片手半剣(バスタードソード)の刀身には膨大なエネルギーが既に宿り始めている。それを見たリィン達は急いで瓦礫で塞がった入口から離れていく。

 

「こぉおおお……」

 

ARCSUに溜まっていた技を強化する導力エネルギーも刀身に乗せたルークは、入口を塞いだ瓦礫を見据え―――

 

「―――叢愾剣(そうかいけん)!!」

 

片手半剣(バスタードソード)を全力で振り下ろした。振り下ろされた刀身に宿っていた膨大なエネルギーは圧倒的な剣圧となって瓦礫によって塞がれた入口へと迫っていく。

 

その剣圧は瓦礫に直撃し―――

 

ズガァアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

轟音。爆発。

 

瓦礫は粉々に砕けて飛び散り、入口が見事に顔を現した。

 

「な……」

「す、凄い……」

「……完全にサラ以上」

「ボケッとするな!早くここから離脱するぞ!!」

 

ルークの叱責で我に返ったリィン達は急いで入口に向かって走っていく。崩れゆく大広間から離脱してすぐ、出入口は再び瓦礫によって塞がれてしまった。

 

「はぁあああ~……」

「さ、流石に死ぬかと思いましたよ……」

 

崩れ落ちる音も止み、エリオットとマキアスが無事を実感したことで安堵していると―――

 

「無事ですか!?」

「あんた達、無事!?」

 

クレアとサラ、数名の鉄道憲兵隊の隊員がこちらに駆け寄ってきていた。

 

「ええ、おかげさまで―――」

 

ドォオオオンッ!!

 

不発弾があったのか、リィンの言葉を遮るように向こうから再び爆発音が響き渡る。リィンが咄嗟に身を低くしてアルフィン皇女を庇うように抱きしめ、ラウラも同様にエリゼを庇うように抱きしめる。

 

しばらく様子を見るも、それ以上の変化は起きない。今度こそ大丈夫のようだ。

 

「……良かった。何事もなくて……」

「……ん……」

 

リィンが安堵していると、アルフィン皇女が小さな声を洩らし、ゆっくりと瞳を開けた。

 

「大丈夫ですか皇女殿下?どこか異常はないでしょうか?」

「リィンさん……?……!リ、リィンさん!あ、あの……」

 

アルフィン皇女は何故か恥ずかしそうに顔を紅く染めていた。その理由もアルフィン皇女が告げた言葉ですぐに分かった。

 

「……リィンさん、の手が……わたくしの……お尻に……」

 

その瞬間、空気が凍った。

 

確かにアルフィン皇女の言う通り、リィンの左手が皇女殿下のお尻に見事に当たっている。それはもうがっしりと。

 

「「「…………」」」

「す、すいません殿下!!決してわざとでは!!」

 

リィンが慌ててアルフィン皇女から離れるも時既に遅し。同じく目覚めていたエリゼが顔を俯かせてリィンに歩み寄り―――

 

「兄様の……兄様の、バカァ―――ッ!!!」

 

スパァアンッ!!

 

妹のビンタが炸裂!リィンは心身共に深いダメージを負う!!

 

更にその直後、二つのアーツがリィンに襲いかかった!!

 

「うわぁ……」

「やはり、昨日のダンスの誘いは無かったことになって正解だったな」

「いやぁ~、若いわねぇ」

「……下半身……うっ!頭が……」

「……捜索はある程度で切り上げ、市内の治安回復に専念してください。後、あれは無視してかまいません」

「イエス、マム」

「状況終了、各方面に通達せよ」

 

その状況で、誰一人としてリィンを心配していないのであった。

 

 

 




今回の導力エネルギーはクラフトポイントの独自解釈です。
戦術オーブメントで身体強化もされるといった説明等からクラフトポイントは技を強化する為に使われるのではないかと思いました。

感想お待ちしてます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。