エレベーターに乗り、指定の階数を打ち込み上下すると最後には異世界へと辿り着く。
俗に言う『異世界エレベーター』とい都市伝説の一つだ。
最初は我々も同じ手順を使用していたが、もっと効率のいい手段を見つけてから、その方法で異界へと降りるのが通例になっていった。
異界はこちらの常識を越えた存在が多く闊歩している。
「隊長、目標発見しました」
「ただし周囲に人型」
人型のはやりにくい。下手に手を出すと面倒な事になる。
「まずは観察です。私達は龍核を持ち帰るのも任務ですが、こちらの情報も貴重です」
「了解です」
彼女達に比べて、稼働年数と素体の差で私の方が多少強い。
もしもの時の囮になれるように油断なく見守る。
「鎧兜にお供多数」
「怨念の類いでしょうか」
「あるルールに従っているのか」
「それとも条件を満たせば襲うのか」
「それとも無差別なのか」
私達は確実な相手への対処法を学習し異界の探索可能範囲を広げていき、次第に仲間で役割が生まれ、使う武器や格好で個性が分かれていった。
「目標、無差別、女性狙い、小型、敏捷」
「こっちは全員女性型なので問題無いですね」
凄まじい形相で斬り掛かってくる日本人形、的確に下半身を刺し貫こうとする相手の刀をクラナが殴り払い、飛んできたそれをリトの金属バットが打ち、ボロボロになった人形をヒナタの火炎放射機が焼却する。
また別の呪いも無限に涌き出る実体の無い敵はチェーンソーのラムが呪いの発生源の社を解体して潰したり、等々。
原生生物への対処法は着実に進んでいった。
原生生物について指摘されたのは、こちらの世界で怪異や都市伝説で語られる存在の同一性。
この世界は何なのかという根本的な謎。
そしてある時悲劇が起きた。
博士が死んでから何年かした後。
ツーマンセルで行動していたヒナタとアヤの二機が予定時間に帰還しなかったのだ。
二機の記録を回収すべく緊急で調査隊が送られた。
そこで私達は見た。
全身の生体組織をズタズタに引き裂かれ、内部機構を破壊し尽くされたヒナタの残骸と、その傍らで
二機の龍核とアヤの記憶装置だけ回収した。
帰還しその残された映像を見た職員の半数は失神したという
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ヒナタが人型の敵に捕らえられ、痛覚を弄られ、全身を切り刻まれる苦痛を味合わされている姿。
本来機体の損傷を回避するために搭載されていた機体の五感。
その感覚に上限を設けていなかったのが今回の悲劇を生んでいた。
許容量を越えた痛覚に機械的に繰り返していた「イタイ、イタイ……」の言葉が徐々に感情が聞くこちらの心が張り裂けるような悲痛な叫び声となり、最後はただひたすらの絶叫となっていく。
その、機械と呼ぶには生々し過ぎる反応が頭部を押し潰されるまで続いた。
そしてアヤの記録はそのヒナタに対する仕打ちを余すことなく見せられた事で、ヒナタと同じく怯える様子はまるで人間よようになっており、衣服を剥ぎ取られ、機械の体に対する無理矢理な性的行為を受けたアヤは恐怖の叫びを上げながら何時間もの拷問の末、機能を停止した。
「これは……」
「彼女らに見せるべきなのか……?」
「いや、それより何故こんなにも反応が人間らしいんだ?」
ざわめく会議室。
そこに軽快な電子音が響き、一件のメールが表示された。
「誰からだ?」
「それが……博士からです……死んだはずの」
「何!?……開きたまえ」
得体の知れないメールだが、この状況を何とか出来るならと藁をもすがる気持ちで開くように指示する。
すると、勝手にデータが立ち上がり、画面に博士の姿が映し出された。
『やぁ!久しぶりだね諸君!私の葬式は盛大だったかな?
まぁ今頃は骨になっているからブラックジョークならぬホワイトジョークさ!
さて、早速本題だがこのメールが送られているという事は彼女達に感情が芽生えたようだね。しかも良くない方向で。
私の論文にちょこっと書いたが、誰も読んでいないと思うのでざっくり説明すると、まず彼女達は自我に目覚めた。これを侵食度レベル1とする。
2.3と上がって行くに連れて徐々に個性が出てくる。
多分全員武器とか格好で差別化されているハズだ。
そしてレベル5、ここで感情が目覚める。
人間らしい振る舞いになる。
人間へ近づく。そして帰ってこれなくなる。
このメールが送られたならケースとして、感情に目覚めた&機体が損傷した。
異界の何者かに傷付けつけられ芽生えたばかりの恐怖心を刺激され続け、ループに陥り発狂したのだろうね。
向こうの生き物は恐怖を好む。
あの子達は壊せば壊すほど美味しさを増す食材って訳だ。
私は別の報告書でそうならないように最低限四人で行動する事って書いたが……コストを減らそうと考えたお馬鹿さんが人数減らして調査に向かわせたって所かな?
おめでとう、君の無能のお陰で彼女達は立派な餌だと認識された。
これまでの探索の楽さは無くなると考えた方がいい。
武器の充実、整備士とメンタルケアの増員、この辺りは早急にやった方がいいよ!
よし……以上!それじゃあ頑張って!』
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博士からの動画が再生を終えても誰一人動くことが出来なかった。