その日から異界の探索は厳しいものとなった。
感情を得てしまい、前ならば動じない筈の視覚情報への汚染や苛烈になった直接的な攻撃に苦戦を強いられる。
「アイ、全弾撃ち込んで!!」
「了解!!」
仮面を被り、もぎ取られたライナの腕に噛みついていた頭部を銃弾が蜂の巣にする。
「状態は?」
「右腕、損傷。肩からやられてるのでパージします」
「分かった。囮に使うから外したら渡して」
妹達のやりとりを聞きながら、サクヤが私に尋ねてきた。
「どうしますか隊長、帰投ポイントはまだ先です」
「…………ここから先に行った所に『街』がある。あそこで表へのショートカットを探そう」
「隊長?それって新しいルートを作るって事ですか!?今から?」
「行くだけで一機犠牲になるルートはもう使えない。回収した龍核は二個だけ、割に合わない」
肩からするっと口腔へと侵入しようとした塊を掴み、地面へ叩きつけ踏み潰す。
「ここにいてもいずれ全滅する。移動開始」
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「ねー、たいちょーって私と同じ侵食レベル5でしょ?その割には冷静だよね」
「……それは自分でも分かってる。私は妹達ほど感情が持ててない」
「どうやってるのかな。凄いなー」
雑談をしながら駆ける。
これも前なら非効率と断じて誰もやらなかった行動である。
不安な時、誰かと会話しその気持ちを共有し負担を軽くする。
心理学の本に書いてあった通りだ。
「もしかしたら……」
一つだけ心当たりはある。
しかし、それは誰にも言えない自分だけの秘密だ。
暫く走り『街』へと到着した。
皮膚に齧りついているヒルのような何かをむしりとり、建物へと入る。
「手分けして探そう。儀式的に向こう側に戻れそうな場所」
「今まで見つけたのはエレベーター、マンションの中庭などで特定の手順での操作をするものと」
「電車や車などを条件下で操作するもの」
「トンネルや井戸なんかの入口」
その瞬間だった。入ってきた扉をドンドンと叩く音と怒号が聞こえてきた。
私は何とも思えないが、何人かの妹達は怯えた表情をしている。
その声がする扉へと近づき、開け放つ。
何も居ない。
「やっぱり。怯えれば怯えるだけ奴等の思う壺だ。もし抑えきれなかったら呼んで」
四人と五人の二手に分けて建物の捜索を開始した。
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「ね、ねぇ隊長、帰ったら相談したい事があるのだけど」
「そういうのはフラグと言うって知ってます?」
「……?」
いやな
予感か、作られた時には分かりもしなかったけど、データの積み重ねから崩壊に繋がる予兆を発しているらしい。