虚構彷徨ネプテューヌ   作:宇宮 祐樹

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大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。今月にあと一話投稿できたらいいな
あとタイトルをちょっと改修したのと、プルルートとピーシェに関連した話を三話から二話にまとめました 急な変更になってしまって申し訳ありません。
次回はなるべく早く……できれば年末に更新したいなって思います。


12 なぜベールに妹が産まれたのか

■

『聞いてくださいな皆さま! ついに私の夢であった、妹ができましたの!』

『ねぷぅ!? それほんと!?』

『何言ってんのよ』

『あなた、胸に栄養を吸われすぎておかしくなった?』

『ちょっと! ネプテューヌはともかく、どうして二人はそこまで辛辣ですの!?』

『だってベール、あなたに妹って……攫ってきたとかじゃないでしょうね』

『そんなことはありませんわ! 朝起きたらそこにいたんですもの!』

『どんな湧きだよ』

『敵対Mobではありません! れっきとした私の妹です! だって、あの子が自分でそう言ったんですもの!』

『まあまあ二人とも……それで、その妹、っていうのはどんな子なの?』

『ちゃんと話してくれるのはネプテューヌだけですわ……ええと、二人おりますの』

『二人? ってことは双子ってこと?』

『……あり得ない、とは言えないわね。私自身がそうなんだし』

『双子、というには少し歳が離れているような気がしますわ』

『ロムとラムとは違うのね。で、どんな子なのよ』

『文章では説明が難しいですわね……』

『おめでとう、べーるさん』

『誰……ってプルルートか』

『やっぱり子供だからレス遅いね。これからは通話にしたほうがいいかな』

『今する話じゃないでしょ。それで、ベール?』

『そうですわね。では皆さま、一度リーンボックスへ来てくださる?』

『今からなの?』

『私は難しいわ。ロムとラムの世話もあるし、別の日に回してもらっていいかしら』

『こっちはいつでもオッケーだよ! ネプギアも連れて今から向かうね!』

『私たちは……ユニはまだ仕事の処理があるみたい。でも妹っていうことは、新しい女神候補生になるってことよね? だったら私だけでも行って、その確認だけさせてもらうわ』

『プルルートたちは?』

『プルルートとピーシェはルウィーに用があるみたいなので、俺がノワールと一緒に向かいます』

『黒い私、報告ありがとう。向こうで待ってるわ』

『変身するとチャットの口調が変わるのはどういうことなの……』

『私が知る訳ないじゃない。とにかく、私も黒いネプテューヌと一緒に行くから』

『分かりました。それでは、お待ちしておりますね』

 

 かくして。

 

■

 

 リーンボックスの境界、その正門前にて。

 

「皆さま、ようこそおいでくださいましたわ!」

 

 辿り着いた俺達を迎えたのは、どこか満足そうな笑みを浮かべる、ベールだった。

 他に人影は居ない。それを訝しんだのか、初めにノワールが口を開く。

 

「……言っておくけど、くだらない冗談だったら私、本気で怒るからね」

「私がそんなつまらないことをすると思いまして?」

 

 どうなんだろうね。ネプテューヌの次に茶目っ気はあると思うけどな。割とマジで。

 でも、わざわざ他人の時間を使うような、そういうふざけ方はしないよね。

 

「そういったさりげないフォローをしてくださるのもかわいいですわ、黒ネプちゃん」

「うーん、私の前でそういうやり取りされるの、すごい複雑な気分だな……」

「大丈夫だよ、お姉ちゃん。私も同じ気持ちだから……」

 

 何なら俺もすげえ違和感あるからね。今は表面に出してないだけで。

 でもベール本人に悪気はないみたいだし、やりたいなら俺は止めないけどさ。

 

「とにかくベール、その例の妹って言うのを紹介してくれない?」

「そうですわね。少しここでお待ちになってくださる? 今、呼んできますわ」

 

 なんて断りを入れて、ベールは再び教会の中へ入っていった。

 それにしたって、ベールに妹ができるなんてどういう事態なんだろう。リーンボックスの元になった会社には携帯ゲームは勿論無いし、これから出すって予定も聞いてない。

 それに、女神候補生になるってことは、新しくシェアエネルギーを必要とするってこと。つまり、シェアクリスタルが最低限必要になるはず。イストワールの話だとシェアクリスタルが自然発生したって話は聞いてないし、そこのところを突き詰めれば、プルルートの女神化について、何か分かるかもしれない。

 あれ。でも女神候補生はまだ女神じゃないから、クリスタルは要らないんだっけ?

 いやでも、変身するときはシェアエネルギーを使うはずだし、それだったら……。

 駄目だ、頭がこんがらがってきた。知恵熱が出そうな気がする。

 

 でも、確かなのは、やっぱりここが俺の知ってるゲイムギョウ界じゃないってこと。

 だからベールの妹みたいな、新しいものが産まれることは何もおかしくない。

 それと同時に、俺の知っている何かがこの世界から消えることだって。

 

「お待たせいたしました、皆様」

 

 思考の渦から俺を救ってくれたのは、そんなベールの声で。

 視線を向けた、その先に見えたのは。

 

「み、みなさまはじめまして。私は、ベールと申します。ええと、その……」

「落ち着いてくださいな、ベール。私の真似をしてくだされば大丈夫ですわ。皆さま、はじめまして。ベールと申します。以後お見知りおきを……」

「い、いご、おみしりおきを、ですっ」

 

 …………は。

 

「なんだこいつら」

「おお、黒い私が真っ先にツッコんだ! 相当びっくりしてるね!?」

 

 いや、相当もなにもおかしいだろこれは! なんでベールがそのまま増えてんだよ!

 これこそクローンとかそういう話じゃねえか! リーンボックス怖すぎだろ!

 ああ駄目だ、何か変な熱が出てきた。すげえ違和感。それと妙な既視感。

 とにかく理解が追い付かない。頭の中を、あらゆる情報がぐるぐる回っている。

 

「とりあえず、この子たちがベールの妹……リーンボックスの女神候補生ってことでいいのよね?」

「はい、その認識で問題ありませんわ」

 

 問題しかないけどな。

 

「でも、よかったですねベールさん。前から欲しかった妹ができて」

「ええ、本当ですわ。でも、だからと言ってネプギアちゃんを蔑ろにすることなんてしませんから、安心してくださいな」

「あ……そうなんですか……」

 

 いやまあ、捨てられるよりはいいんじゃない? 大変そうなのは分かるけども。

 まあ実妹フラグは折れたし大丈夫でしょ。これでネプギアを盗られる心配も無くなったな……。

 

「いや、私の妹だからね? 黒い私も私だけどさ……」

「複雑ですのねえ。大変そうですわ」

「あなたのところよりは、まだマシだと思うけど」

 

 そうだぞ、自分のクローンを妹と呼称するよりはマシだぞ。

 というか本当にクローンなの? 今はまだ冗談で言ってるだけだけど、これがマジだったらガチで引くんだけど。完全にイカれてる奴になっちゃう。

 

「クローンではありませんわ。チャットで申し上げた通り、朝起きたらそこにいたんですの。本当は私も驚いてはいるのですよ? それより妹が出来た喜びの方が強いだけで」

「……そこだけは、私たちと同じなのね」

「でも、ベールそのものが産まれるのは不思議だなあ。何か変なものでも食べた?」

「この前、賞味期限が少し切れているブランまんじゅうなら」

「なんでそんなもの食べたんですか……」

 

 たぶん原因それだろ。そうであってくれ。

 

「とにかく、今日からこの子たちがリーンボックスの女神候補生ですの」

「ええ、そうです。ベールお姉さまを継げるよう、精いっぱい努力いたしますわ」

「わ、わたくしもがんばりますっ! お姉さま、よろしくお願いします!」

「ああ……二人とも、イイ! イイですわ! 私がしっかり、姉として二人のお世話をいたします! そして、立派な女神候補生にしてさしあげますわ!」

 

 ひし、と小さいベールと中くらいのベールを強く抱きしめて、一番デカいベールがそう言い放つ。傍から見ればかなり奇妙な光景だったが、当人はかなり真剣なようだった。

 ……まあ、ベールがいいならそれでいいのかな。俺だって最初は色々言われたし、疑われたりしたけど、こうしてこの世界にいられるわけだしなあ。

 目の前にいるのなら、否定しちゃいけないんだと思う。

 少なくとも、俺が否定しては、いけないものなんだと思う。

 

「……それで、話は終わり? 用がなければ私は帰るけど」

「ああ、お待ちになって。これから顔合わせのために、お茶にでもしませんこと?」

「悪いけど、そこまで暇じゃないの。それにユニもいないしね」

「じゃあ私とネプギアは頂いちゃおっかな。ネプギアもそれでいいよね?」

「うん、大丈夫だよ。今日の仕事はほとんど終わらせてるから」

「……みたいだけど、あなたはどうするの?」

 

 え、俺? 俺かあ……。

 正直ベールたちの話は聞きたいけど、プルルートとピーシェの様子が気になるし。

 なんだかちょっと忙しそうだったから、できることなら力になってあげたい。

 

「なら私がルウィーまで送ってあげるわよ。その代わり、このことをブランに伝えておいて頂戴。ブランが顔合わせに行くようなら、私もユニを連れてもう一度来るから」

「なら、ノワールと黒ネプちゃんとのお茶会はまた今度、ということになりますわね」

 

 うーん、なんか申し訳ないなあ。でも今はブランたちルウィー勢も、ユニも居ないし。

 でも仕方ないよなあ。うん、また今度。次に会えるのなら、それでいっか。

 

「では、ネプテューヌとネプギアちゃんは先に教会の中に入ってくださいな。ベールたちは二人の案内をしてくださる?」

「分かりましたわ、ベールお姉さま」

「はい、がんばります!」

「……そういえば、ベールの妹の二人は何て呼べばいいの?」

「こ、小ベールと中ベールとか?」

 

 いくらなんでもそのまますぎじゃないかな、ネプギア。

 まあそれくらいしか思いつかないのもわかるけど。

 

「ほら、何してるの。さっさとしないと置いてくわよ」

 

 ……プルルートじゃない安心感、すごい。

 

■

 

 あれからノワールに運ばれた、ルウィーの教会にて。

 

「というわけで、ベールの妹である小ベールと中ベールが産まれました」

「は?」

 

 ピーシェたちと合流したのち、事の顛末をブランへと話し終えて、初めて返ってきた言葉がそれだった。

 いや、俺も意味わかんないんだって。だからそんな怒んないで……。

 

「……ねぷてぬ、疲れてるとかじゃない?」

「かえったらいっしょに寝ようねえ~」

 

 違う! 見たもん! 小さいベールと中くらいのベールいたんだもん!

 

「……最近、あなたはそういう冗談を言うようになったから、全て鵜呑みにするわけにはいかないけど」

 

 え、マジで? ブランもそんなこと言っちゃうの? ガチで泣きそう。

 でも冗談は冗談として受け取ってくれてるわけだよね。それなら仲良くなれた証拠かもしれない。

 というかそうやって考えないと普通にツラいからね。泣いてやるからな。

 

「ベールにベールを模った妹が出来たのなら、それは妹ではないでしょう」

 

 その言葉に俺もピーシェも、プルルートも首を傾げた。

 

「例えばネプテューヌの妹はネプギアだし、ノワールの妹はユニでしょ。それに私の妹はロムとラムしかいないし、ピーシェとプルルートだってお互いを姉妹だと認識してる。血の繋がりは関係なく、ね」

 

 ……なるほど、そういうことか。

 

「でも、ベールの妹がベールそのものなのは、明らかにおかしい。そうなると、黒いネプテューヌ。あなたはネプテューヌの妹、もしくは姉ということになってしまう」

「そっか。ねぷてぬは自分のこと、女神の妹って言ってないもんね」

「ねぷちゃは~ねぷちゃだよ~」

 

 うん、そうだ。俺も俺。ネプテューヌじゃなくて、俺(ネプテューヌ)。

 それが正しい在り方なのかは分からないけど、今はそれを受け入れるしかない。

 

「そして更に妙なのは、その二人のベールが自分のことを妹と称していることよ」

「……ああ、そうだね。ねぷてぬと違うところはそこか」

 

 確かに、俺と全く同じ存在ではないと思うけど、それもおかしいもんなあ。

 そう考えるとますます謎だ。ベールの妹がベールになる。一見すれば冗談というか、なんじゃそりゃ、ってなる内容だけど、改めて考えると結構おかしいことかも。

 それにしても、なんでベールに妹が産まれたんだろう。予兆とかそんなものもなかったし。

 ……あ。

 

「夢」

 

 ぼそりと呟いた言葉に、三人が一斉にこちらを向いた。

 いや、あの、別にそこまで重要じゃないっていうか、割とこじつけっぽいんだけど。

 

「いいから話してみなさい。この状況では誰も何も言わないから」

 

 うーん、ほんとはそんなに自信ないんだけどなあ……。

 

「ベールは妹ができたことを、私の夢であった、って言ってた」

 

 そして、マジェコンヌは女神の夢を叶えよう、みたいなことを言っていた。

 それが関係している証拠は何もない。けれど全くの無関係、って飲み込むこともできないし。

 とにかく、気づいた瞬間になんだか嫌な感じがした。ただそれだけ。

 だからそんなに沈黙しないでほしいな。悪かったから。やっぱり言わなきゃよかったっ!

 

「……まあ、理に適っているとは思うわ」

 

 え?

 

「ベールの妹が欲しいっていう願望は前々からみんな知っていたことだし。あなたの証言が正しいのなら、マジェコンヌがそこを狙う可能性も否定できない」

 

 ……つまり、そういうことなのかな。

 

「推測の域を出ないけど、そう考えていいのかもしれないわね」

 

 ベールには内緒にしておいた方がいいのかな。でも、明かすのも酷だと思う。

 だって、あの笑顔は本当に夢がかなったときの笑顔だったから。

 せっかく叶えられた夢を、もう一度手放させることなんて。

 

「とにかく、次は私達もリーンボックスに行くとするわ。会わない限り、どうにも話は進まなさそうだし」

「なら、あたしとプルルートも一緒に行くよ。何かあった時は力になれると思うし」

 

 それなら心強いかな。ピーシェがいてくれると安心するし、プルルートがいてくれたら割とどうにかなるし。被害がこっちにも及ぶこと以外は、割と万能だからな……。

 

「都合のいい日程は追って連絡するわ。それからネプテューヌ、少し話が……」

「ただいまー!」

 

 なんて、ブランの話を遮るように、謁見の前の扉が勢いよく開かれる。驚いて視線を向けたその先には、明らかに扉を蹴り飛ばしたラムと、その後ろでこちらの様子をうかがっているロムの姿があった。

 

「……扉は丁寧に開けなさい、っていつも言ってるでしょ」

「でも、急いでたんだもん! ほらこれ、お姉ちゃんの言ってたお仕事の紙、持ってきてあげたわ!」

「ラムちゃんといっしょに集めたの。これで大丈夫だよね……?」

「……ええ、問題ないわ。ありがとう、二人とも」

 

 二人の頭へそれぞれ優しく手を置きながら、ブランがラムの持ってる書類を受け取った。

 

「あ、プルちゃんとピーちゃんいるじゃない! いっしょに遊びましょうよ!」

「この前、あたらしい本を買ってもらったから……みんなでよも?」

「うん、わかった~! おねえちゃんも、ほら~!」

「えっと、ごめんプルルート、ラムちゃん、ロムちゃん。今日は三人だけで遊んできて?」

 

 なんてピーシェの言葉に、三人が少し残念そうな顔をしたけど、すぐに笑顔でどこかへ遊びに行った。

 ……子供の扱い方、上手いな。俺には見向きもしてくれなかったのに。

 いや、なつかれにくい性格っていうか、立ち位置なのはわかるけどね。やっぱりこう、ちょっと悲しい。

 

「あの子たちもあなたの事は嫌いではないから、あなたから歩み寄れば仲良くなってくれるわよ」

 

 そうなのかなあ。でも……いや、次からはちゃんと仲良くできるように頑張ってみる。

 

「それよりも、あなたに確認したいことがあったの」

 

 え、俺に? 別にブランには何も隠し事とか……いや、ない。ブランにはないはず。てか隠し事してもふつうにバレそうだし。

 

「とりあえずあれこれ考えずに、まずはこれを見て頂戴」

 

 なんてうんうん悩んでいると、ブランはさっきラムからもらった書類を俺に見せてきた。

 なんだろう、これ。ルウィー全体の地図みたいだけど。

 ……まさか、このどこかに宝が眠ってるとか? 

 うわ、どうしよう。俺:八、ブラン:一、ピーシェ:一くらいで手打っとく?

 

「……本当にあなた、毒されてきてるわね」

 

 すいませんでした……でもやっぱりそういうことって思うじゃん……。

 

「あたしがこの二年間ルウィーを調査したとき、変な力の溜まり場みたいな場所をいくつか見つけたんだ。この地図は、その力の溜まり場に印を打ったものなんだけど」

 

 ピーシェに言われるように、俺もその地図を覗き込む。

 ふむふむ、なるほど。プラネテューヌの近くにもあって、ラステイションの近くにもあって、対面の海の方にもいくつかあって、ルウィーの都市の内部にもちょくちょくあって……。

 

「どう思う?」

「……囲われてる?」

 

 見るからに、というか。明らかに包囲されてる感じだった。

 

「これもマジェコンヌの画策なのかしら」

「あたしが気づいたときにはもうこの状況だったから。気を付けないと」

「それくらいは私も解ってるわ。でも、何が来るかの予想すらつかない状況だから」

 

 そうだよなあ。あの人、何してくるか分かったもんじゃないし。

 この世界がゲーム通りではないことも解っている以上、本当に未知の敵になるかも。

 ……でも、なんでこれを俺に? もっと他の女神に相談したほうがいいんじゃ?

 

「確かにそうね。でもこれを私が確認したとき、あなたと話をすると決めていたの」

 

 そう言うと、ブランは改めて俺の眼を見つめながら。

 

「この力はあなたの持つ、シェアエネルギーとは異なる力に似ている」

 

 ……それって。

 

「別に今からあなたの事を敵視するわけではないわ。だからと言って、完全に信用するわけでもない。それにこれは、今すぐ答えを求めるものでもない。けれど、私があなたを信じるため。そして何より、未だにこの世界を彷徨い続けている、あなた自身のために聞いておくわ」

 

 

 

「あなたは、いったい何なの?」

 

 

■

 

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