虚構彷徨ネプテューヌ   作:宇宮 祐樹

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13 女神の真実はどこにあるのか

 

 小ベールと中ベール(結局名前はこれで決定みたい)の騒動から、数日後。

 

「……それで、なんであんたは私の国にいるわけ?」

 

 うーん、なんでだろうね?

 じとっとした視線と共に飛んできた質問に、少し考え込んでしまう。

 ネプテューヌは遊んでばっかりだけど、今日はネプギアもオフみたいらしくて、俺が来てから久々の姉妹水入らずの日らしい。その中に入るのもどうかと思って、少し出てくるー、なんてプラネテューヌを後にしたのが数時間前だったかな。

 プルルートとピーシェは、この前の調査の続きでルウィーに行ってるみたい。だからブランも一緒で、今は少し忙しいだろうから、邪魔するのも悪いかなと思って。

 ベールは女神候補生の育成があるし、何より俺が一人で行けないからなあ。

 となると、俺が行けるとこなんて一か所くらいしかなくて。

 

「つまり、暇つぶしに来たってこと?」

 

 あ、ちょっと怒ってる? いや怒るわなそりゃ。俺が悪かった。

 でも邪魔とかしに来たわけじゃないし、何かあったら力になるから!

 

「……そうやって、意欲だけ見せてくれるところはネプテューヌよりマシかもね」

 

 なんて、重たいため息から察するに、ネプテューヌは割とノワールのところに入り浸ってるらしい。ラステイション、割と近いしな。少し行くくらいならアリかも。

 

「そういえば、明日だったかしら。ブランがベールの妹たちと顔を合わせるのは」

 

 ああ、うん。そうそう。これで改めて四女神みんなと顔合わせって感じかな。

 俺の時は一人一人がバラバラだったからいろんな問題が起きちゃったけど、これなら問題ないかもね。いや、問題は別のところにあるんだけどさ。

 ……思ったけど、これって言ったほうがいいのかな。

 

「そういえば、あの二人は変身できるのかしら。まだその姿を見てないから、女神候補生っていう感じがしないのよね。本当に、ベールが増えただけみたいで」

 

 そういえばそうだ。確かに、女神候補生なら変身できてもおかしくない。

 何より、ここに来たばかりの俺だってできたんだし。

 

「……思うんだけど、あなたも結構似たようなものよね」

 

 う。

 それは……否定、できないんだよなあ。

 ベールにおける妹ってのと同じで、俺もネプテューヌと瓜二つの姿をした存在っていう、明らかな異常なんだ。ここに居て、こうして話せるから受け入れられてるんだけど、本当は存在しちゃいけない、ありえない虚構の存在なんだから。

 しばらくの沈黙。見定めるというか、改めて敵意を向けられるような、そんな。

 

 ……ネプテューヌが自由を体現した女神なら、ノワールは絶対を体現した女神なんだろうな。女神として在らなければならない、っていう気持ちが一番強いんだろうし、女神の中で一番、普通の少女として生きたいとも思ってる。

 そして何より、俺みたいな異常の存在を許せないんだと思う。

 初めて会ったとき、俺がネプテューヌじゃないって見抜いたのも、俺のような存在がネプテューヌになれないって理解してたのも、ノワールだからこそなのかな。

 強く、硬い。けれど、一つ崩れれば全てが壊れそうな、そんな脆さを感じる。

 ……もしくは、誰かに崩してほしいのかも?

 

「……なによ、そんなに見つめられても何か出てくるわけじゃないわよ」

 

 え?

 いや、だってノワールが……あ、これ俺が話す番だったの!?

 いけない、コミュ障が発症してしまった。会話のテンポ、とくに女神たちの前に立つと緊張しちゃって掴めないんだよ! みんなめちゃくちゃ顔いいもん!

 ……はあ。

 

「何もしなくても落ち着いてくれるあたり、あなたは疲れなくていいわね」

 

 それでも、その間に何も反応ないのはそれはそれで悲しいの!

 

「まあいいわ。そんだけ元気で暇なら、仕事の一つでも頼もうかしら」

 

 仕事? ああ、全然いいよ。むしろそれくらいないと怠けちゃうからね。

 それにこうやって借りを作れば、ノワールがいつか助けてくれるかもしれないし。

 

「そんなに甘くはないわよ。今の段階だと……そうね、元のネプテューヌと一緒に川でおぼれてたら、こっちの方がマシって理由で助けてあげるかも」

 

 あ、それ解釈違いです……俺は一人で死ぬので、どうかネプテューヌを助けてあげてください……そうしてくれないと生きる意味がなくなるので……。

 

「なんで急に素に戻ってんのよ!」

 

 だっ……だって仕方ないじゃん!

 

「ああもう! とにかく仕事あげるから行ってきてちょうだい! 内容はプラネテューヌとの間の洞窟にあるモンスターの駆除! それが終わって連絡してくれれば、その足でプラネテューヌに帰っていいから!」

 

 え、そんなざっくりでいいの? もっとこう、細かい指示とか……。

 

「いいからとにかく行ってきなさい! いいわね!?」

 

 かくして。

 

 

「そぉ――れっ!」

 

 掛け声と同時に、左手の盾を振り下ろす。鈍い手応えと同時にぐらりと地面が揺れて、ようやくエンシェントドラゴンが倒れてくれた。

 うん、やっぱ頭ブン殴るのが正解だな。特に俺は遠距離できないし、飛べるわけでもないから、近づいて急所を殴るのが一番効率いい。というかそれしかできない。

 やっぱり暴力……暴力は全てを解決してくれる……!

 筋肉最強! 力こそパワー!

 ………………。

 

「はあ」

 

 暗がりに響く俺自身の声に、何だか虚しくなって、息が漏れる。

 やっぱり一人は寂しいよ。皆を知ったから、ってのもあるけどさ。

 そう考えると、一人でも笑顔で居られるネプテューヌって、本当にすごいと思う。

 ……やっぱり、一番近くにいるようで、一番遠くにいるようにも、思える。

 それこそ本当に、天から微笑みを浮かべるだけの、女神のような。

 

「……それにしても」

 

 なんてひとりごちながら、ふと周囲へと視線を向ける。

 洞窟の中に散らばってるのはモンスターの死骸っていうか……ドロップ品って言えばいいのかな。それ自体は別に、何も変なことじゃないんだけど。

 

「こんなにいるのはおかしいよなぁ」

 

 とんでもない量だった。ドロップ量増加で遊んでたらオブジェクト過多でゲームがクソ重くなるくらいの、そういう感じ。インベントリに収まり切らないくらいの。

 つまり、それだけ敵の数が異常だったってこと。一体一体はそこまで強くなかったから疲労とかは全然ないけど、かなりの量が居たことは覚えてる。

 それに極めつけは、この最深部に居たエンシェントドラゴンで。

 

「うーん」

 

 そもそも、こんな大きなドラゴンがこんな洞窟に入ることなんてあるのかな。

 いや、巣なら巣でいいんだけど、だったら他のモンスターを攻撃しててもおかしくないよなあ。モンスター同士で仲がいいなんて聞いたことないし。

 こんなに縄張りを荒らされてたら、普通はもっとキレてると思う。でも俺が来たときは別に他のモンスターと喧嘩なんかしてなかったし、むしろ仲良く、って言うか一緒にいたからなあ。

 こっちを見て真っ先に攻撃してきたあたり、そんな温厚な個体でもなかったし。

 どういうことなんだろう。考えるたびに違和感が。

 

「あれ?」

 

 なんて考え事をしていると、ふと洞窟の奥から何かを感じた。

 見えてるわけじゃない。音もなければ香りもないし、風とかが吹いたわけでも。

 この先に何かある。得体の知れない、けれど俺が感じることのできる何かが。

 気が付けば歩いていた。引き寄せられるというか、そんな感じ。

 ……もしかして、洞窟にいたモンスターも、こうやって釣られてたのかな?

 

「これか」

 

 やがてたどり着いた先にあったのは、小さい結晶だった。

 大きさは親指より少し小さいくらいかな。シェアクリスタルみたいに菱形をしてるけど、表面が曇ってて先が透き通ってるわけでもない。

 そんな奇妙な物体が、地面に突き刺さっていた。そしてその周囲には、その結晶から吐き出されているであろう、黒い靄みたいなものが充満している。

 ……爆発するとかじゃないよね? さすがの女神でもそれは死ぬかも。

 というか本当に何なんだろうこれ。ゲームの中でも見たことないけど。

 なんて、自分でも迂闊だと思うけど、それを拾い上げようとした瞬間。

 

「うぉ!?」

 

 視界が一瞬で暗くなる。それが周囲の黒い霧によるものだと気づいた時には、既に体全体が覆われていた。ああ、ヤバい奴かもこれ。ワンチャン死ぬかも。いや、それはさすがにまずいな。

 でも、痛みとかそういうのはない。むしろ、なんだか心地いいような……?

 

「……あら?」

 

 なんてどうしようかと考えていると、急に視界が晴れた。

 え、なんだこれ。どういうこと? 単純にドッキリみたいなやつ? 個人的な感想になるけど分かりにくいドッキリってマジでダルいからやめてほしいんだけど。

 というより、黒い霧は? さっきまであんなだったのに、今はどこにもない。

 困惑したまま足元へと視線を落とすと、透き通った結晶が一つ。

 …………。

 

「吸い取った?」

 

 その表現が正しいのかは分からないけど、そういうことなんだと思う。

 どういうわけかあの黒い靄が、俺の体の中に入っちまった。やばい、どうしよう。コンパに言ったら治してくれるかな。でもその前に死んじゃうかも。

 あ、そう考えるとめちゃくちゃ怖くなってきた。こういう時に一人なの、寂しくなるな。

 

 ……けど、今のところは大丈夫みたい。むしろちょっと調子がいいくらいだ。

 いや、それもおかしくないか? なんだアレ吸ったら調子がよくなるって。

 あーでも、なんだかいい感じするかも。気持ちいいとかじゃなくて、なんか。

 この状態が永遠に続ければ、俺は本当の俺でいられるような。

 

「……もしかすると、これって」

 

 俺の力そのもの、なのか?

 ブランの言っていた、シェアエネルギーとは異なる力。今、ルウィーの全域において確認されている、未確認のエネルギー。おそらくこれが、そうなんだと思う。

 ここは別にルウィーに近いってわけじゃない。プラネテューヌとラステイションの間にある山の洞窟だから、ルウィーとは全く無関係の場所だ。

 でも、ここに俺の力があるってことは、つまり。

 

「ゲイムギョウ界、全体の問題ってこと?」

 

 

 俺の小さな呟きだけが、洞窟の中に響いていた。

 誰も、答えてくれることは、なかった。

 

 

 翌日。

 

「……ほんとにベールなのね…………」

 

 例の光景を目の当たりにしたブランは、改めて呆れたような表情で、そう告げた。

 まあ最初は誰でもそうなるよな。妹とか言ってるけど外見めっちゃベールだもん。突っ込まずにいられない方がおかしいよな。俺もそう思う。

 でも悲しいかな、現実は非情なり。

 

「すごいすごーい! ほんとにベールさんそっくりだわ!」

「眼の色も、髪の色もほとんどいっしょ……」

「あ、あの、お二人ともっ……その、そんなに見つめられると、わたくし……!」

 

 ロムとラムに挟まれて、小ベールがそんな感じでちぢこまる。

 こっちはまだ子供っていうか、人見知りが激しいんだな。昔のベールがこういう風だったのか、はたまたこの個体だけが持つ個性なのかは分からないけど。

 

「こっちは私達と同じくらい? 大人、ってわけでもないわね」

「そうですわね。でも、体の度合いで言えば私が一番かもしれませんわ」

「あ、あはは……確かにベールさんだ……」

 

 ネプギアとユニに対して、中ベールがむん、と胸を張ってそう言った。

 ……確かにあるな。あの年でアレって相当だ。いやべつに、うらやましいとかそういうわけじゃなく。

 中ベールは割と成熟してるっていうか、自分に自信がつき始めたころなのかな。生意気って言ったらアレだけど、冗談が先走ってるっていうか。こっからもう少し成長して、今の落ち着いたベールになるんだろうなあ。

 

「微笑ましいですわね。ネプギアちゃんたちも、妹と仲良くしてくださってるみたいですし。これからもああやって、手を取り合ってくれることを願いますわ」

 

 ……まあ、今のところは、って感じだなあ。どうなるか分からないけど。

 なんて心の中だけで呟いて、机の上に置かれたカップを傾ける。

 うん、すごい美味しい。やっぱりベールの淹れる紅茶が一番かもなあ。

 

「そう言ってくださって嬉しいですわ。ささ、お菓子も食べてあげてくださいな」

 

 ずい、と押し出されてきた大皿には、クッキーが山ほど。

 

「うわ、すっごい量! こんなに焼いたの?」

「ええ。本日はお客様が大勢いますから」

「……確かにそうね。女神全員と、その候補生も勢ぞろいだもの」

「マジェコンヌの問題も解決してないっていうのに」

「その件ですが」

 

 なんて、大皿を囲んで、ベールたちの四人が真剣な表情になって話し始めた。

 うーん、会話に乗り遅れた感じあるなあ。

 

「お姉ちゃん~、それとって~」

「ん。ほらプルルート、あーん」

「あ~ん」

 

 ぱくり。

 

「ん~、おいし~」

「そうだね、本当に美味しい。私ももうちょっと頂いちゃおっかな」

「わたしも~」

 

 プルルート、プルルート。

 

「ん~? ねぷちゃ~?」

 

 ほら、あーん。

 

「あ~ん」

 

 ぱくり。

 

「おいしい?」

「うん~おいしい~」

 

 守護(まも)らねば…………。

 

「……ねぷてぬ、すごい顔してるよ?」

「抑えきれないもん」

「いや、だとしても相当だったけど……」

 

 そんなにか。いや、だからといって俺は止まらんけどね。

 何があっても守護ってやるからな……俺が傍にいてやるから。

 

「ちょっと、黒い方! 今の話聞いてたの?」

 

 え? ノワール? 今の話? いや全然聞いてなかったけど。

 てか俺関係あったのか。難しいし無知だったから入らないようにしてた。

 

「今ね、ルウィーで発生しているエネルギーの発生源について話してたんだ」

「少なくとも、あなたが関係ないという訳ではないから、大人しく聞いてなさい」

 

 あ、それなんだけどさ。

 昨日ノワールにモンスター退治しろって言われたじゃんか。

 

「ええ、そうだけど……」

 

 あそこに一つあったよ。そのエネルギーの発生源。

 

「はあ!?」

 

 そんで俺が触れたら、なんか無くなっちゃった。

 

「……アレに触ったの? 迂闊にも程があると思うけど」

 

 いや俺も触れるとは思ってなくてさ、まさかこんなことになるなんて。

 あ、そうだ。多分あそこだけじゃなくて、ラステイション付近にも一杯あると思うから。もう少し調査進めといたほうがいいと思うよ。

 

「それで、そのままウチに帰ってきたの?」

「うん」

「なんで私にそれを報告しなかったのよ!」

 

 だ、だって帰っていいって言ったじゃん……!

 それに、今日言えばいいかなって思ってたし、実際伝えられたし。

 

「遅いわよ! その間に何かあったらどうするつもりなの!?」

「……やっぱり、毒されてる」

「普通に何食わぬ顔で帰ってきたから、私も分からなかったよ……」

 

 え、え? そんなに変なのか? いや、確かに面倒だと思ったのは悪かったけど。

 これからはちゃんと報告するようにするから。反省します。

 

「ならクッキーを食べる手を止めたらどうなのよっ! あんた喰いすぎ!」

 

 だ、だってハチャメチャに美味しいもん……ほらプルルート、あーん……。

 

「駄目だよ、プルルート。虫歯になっちゃうし、餌付けされちゃう」

「えづけ~?」

「……子供相手に、恥ずかしくないの」

 

 だって……だって……!

 でも本当に旨いんだよね、このクッキー。紅茶にも合うし。

 ベールって割と何でもできるよね。何だかんだ女子力高いしさ。

 

「いえ、それはあの子たちが焼いてくれたものですの」

 

 そう言って、ベールが小さいベールと中くらいのベールの方へと視線を向ける。

 すると彼女たちはこちらの視線に気が付いたのか、とことこと歩いて寄ってきた。

 

「え、ええと、皆様のお口に合いましたでしょうか?」

「まあ、この私にかかれば当然ですわ。皆さま、ごゆっくりどうぞ」

 

 うん、本当に美味しいんだよな。さすがはベールの妹。

 

「そうでしょう、そうでしょう? もっと褒めてあげてくださいな」

「随分と可愛がってるね。でもまあ、ベールに妹が出来た、って考えれば当然か」

「……年下だったら、誰でも良かったんだ。私じゃなくても……」

 

 ほらネプギア。こっちおいで。

 ……最近は俺の胸で泣くの、躊躇わなくなったよな。いやまあ、そうやって俺に預けてくれるってことは、ある程度信頼されてるってことだから、嬉しいんだけど。

 オイオイエンエン泣き始めたネプギアの頭を撫でてると、ベールは紅茶を喉に下しながら、改めて口を開いて。

 

「本当に、妹が出来て心強いですわ。私の教えたこともすぐに身に着けますし、女神としての振る舞いもちゃんとできていますし。国民の皆もこの子たちを受け入れてくれたようで、本当に……本当に」

 

 かちゃり、とカップの擦れる音がした。

 

「もう、私一人ではありませんのね、この国は」

 

 ……それは、つまり。

 

「そうですわ、お姉さま。もう一人で頑張らなくても大丈夫です」

 

 誰よりも先に、中くらいのベールがそうやって、ベールへと声をかけた。

 

「べ、ベールお姉さまは今まで頑張ってきたんです。ですから、これからは私たちのことも、いっぱい頼ってくださいね? この国のためにも……」

「ええ、そうさせていただきますわ。ありがとうございます」

 

 小ベールの頭を撫でながら、ベールが柔らかく笑う。

 ……なんだか、それが儚いような、弱々しいものに見えたのは、気のせいかな。

 いや。きっと気のせいじゃない。ようやく、ああやって笑えたんだ。

 ずっと一人だった。跡継ぎもいないまま、たった一人で国を背負ってた。

 だから、妹が欲しいっていうことは、そういうことだったんだと思う。

 ……心の許せる場所が、欲しかったんだ。ベールは。女神として在らなくてもいいような、ずっと安らげるような、そんな。一人ではない安寧が、必要だったんだ。

 もしかすると、それがベールの女神としての夢だったのかも。妹が欲しいっていう夢の裏に隠れた、本当の夢。一人でいるからこそ明かせなかった、心に秘めた夢。

 そして今、その夢が叶えられて――いや。

 

 夢が、叶う?

 

「もう大丈夫ですわ、ベールお姉さま。これからは私たちがいますもの」

「そうです、ベールお姉さまの妹として、ちゃんと役目を全う致しますから」

 

 ぞわり、とした。

 なんだろう。言葉は正しいのに、ちゃんとベールを思いやってるはずなのに、どうしてかそれ以外が違和感だらけだった。分からない。これの違和感が何を意味してるのかは分からないけど、このままでいることは、絶対に駄目だと思った。

 

 少なくともただ一つ、これだけは確実に言える。

 あれは、ベールの妹なんかじゃない。

 

「ですから、お姉さまはもう大丈夫ですの。ゆっくり、ゆっくりお休みになって」

「その分は私たちが精一杯頑張ります。ベールお姉さまがしていたように、女神としてこの国を導いてさしあげますから」

 

 ――まずい、のかも。

 右手にプロセッサユニットを接続、そのまま盾を展開。残ったエネルギーは足首に回して、すぐに動けるように。間に合うかは分からないけど、やるしかない。

 だって、そうじゃないと、ベールの夢が――叶ってしまう、から。

 

「私たちは女神候補生。女神を継ぎ、新たな女神となるもの」

 

 ベールへと向き直っている中ベールは、右手を上に掲げながら。

 

「ですから、お姉さま?」

 

 

 

「もう、この国にあなたは要りませんわ」

 

 

 

 

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