虚構彷徨ネプテューヌ   作:宇宮 祐樹

5 / 28
ランキング乗ると自分の原作知識ガバってないか心配になる


05 Pの残滓/少女の願い

 

 プラネテューヌに来て、俺がネプテューヌになってから、四日が経った。

 特に何もない平穏な日常が続いている。三日目にコンパとアイエフと会ったけど、それだけ。

 なんてのも適当に挨拶してから五分くらいでどっか行っちゃった。取り付く島もないって感じ。

 相変わらず、監禁……っていうか教会での居候生活は続いている。

 朝になったらネプギアかイストワールに起こされて、昼まで適当に掃除とかして、午後は図書館で文献を読んだり、ネプギアとかイストワールの手伝いなんかしてる。主に書類整理とかだけど。

 それで、夜になったらネプテューヌとゲーム。

 マジで毎日ゲームしてる。狂った機械みたいにゲームしてる。いや、楽しいんだけどさ。

 すごい怠惰な生活を送っている気がする。とはいえ、何ができるってわけでもないが。

 今日も朝に起きて、そのまま掃除へ。

 初めて来た頃に比べたら、だいぶ綺麗にはなった気がする。

 達成感。女神たるもの、自分の教会くらい自分で掃除しないとな。

 でも、プラネテューヌの女神ってのはそういうものを求められてない感じはするけど。

 きっとプラネテューヌの国民は、ネプテューヌみたいな在り方そのものを求めてるんだよな。

 決してネプテューヌは、そうした国民の欲求に応えているわけじゃないと思う。

 ネプテューヌという少女の在り方が、プラネテューヌの女神に相応しいっていうか。

 けど、それって簡単なことじゃない。もっと複雑で、重いものだと思う。

 ……ついこの前、あんな話があったから、つい考えてしまう。

 かといって、俺がプラネテューヌを背負えるわけではないんだけどさ。

 

 なんてことを考えつつ、ふらふら~と掃除をしていると、何やら教会の入口に人影が見えた。

 信者の人かな。こんな朝早くに来るのは珍しかった。

 大抵は午後とかだからなあ。だから午前中に俺が掃除できるわけだし。

 ……あれ? これってもしかして隠れといたほうがいいやつ?

 いやでも、せっかくやってきたのに居留守を使うのは申し訳ない気がする。

 それにイストワールにも教会から出るな、って言われてるだけだし。

 うん、大丈夫だろ。

 どうせ国民のみんなには説明することになるんだし。

 

「こ~んに~ちは~」

 

 なんて自分を納得させていると、聴こえてきたのはそんな声。

 子供だった。薄い紫の髪を背中まで伸ばした、十一か二くらいの少女。

 瞳の色は鬼灯の色というか、柔らかい緋色。髪の色は淡い水色だった。

 着ているのは……パジャマ? 何というか、ものすごくゆったりした衣装。

 そういえばプラネテューヌの国民、未だに見たことないけど全部あんな服なのかな。

 いやでも、アニメとかだとちゃんとした服着てたし。この子だけ?

 

「あ~、めがみさま~」

 

 彼女は俺に気づいたかと思うと、そんなのんびりした声を上げながらとてとてと近寄ってきた。

 ネプテューヌの俺の体でも、腹か胸かそれくらいの高さ。

 ガチキッズだ。プラネテューヌガチキッズ。

 体感的には小学校の低学年くらいな気もする。

 

「めがみさま~、ね~、めがみさま~」

 

 いや……実は女神じゃないんだ、俺。

 ノワールの件で学んだ。みんなの言う女神ってのは俺じゃなくてネプテューヌのこと。

  理由は分からないが、自分のことをそう認識してしまうらしい。

 気を付けないとまた、変な誤解を招くし痛い目も見ることになるから、ちゃんと説明しないと。

 ちがうよー、めがみさまは今……何してるんだろうね。ゲームとかか?

 

「え~、でもめがみさまだよ~? ほらぁ~」

 

 ん、と俺に見せてきたのは手のひらサイズのぬいぐるみ。

 紫の髪をしたそれは、どうやら俺……つまり、ネプテューヌを模しているようだった。

 同じでしょ~、と少女。いやまあ、確かに同じなんだけど……ううん、子供には難しいな。

 

「それでね~、めがみさまにお願いがあるの~」

 

 お願いか。いや、叶えられるか分かんないけど。そもそも聴いていいのかさえも。

 戸惑っている最中にも、彼女はええとね~、なんて続けていて。

 

「わたしね~、クエストいきたいんだ~」

 

 え、クエスト? 

 基準がどんなもんか分からんけど、まだ早いんじゃないかな。

 ってか、クエストに行きたいってことは、つまり仕事がしたいってこと?

 

「ううん、ちがうの~。お姉ちゃんを探してるんだ~」

 

 お姉ちゃんを探しにって……ああ、お姉ちゃんが仕事に出てるのか。

 

「わたしじゃクエストうけられないから~、めがみさまに頼もうかなって~」

 

 なるほど。同じクエストを受けて、お姉ちゃんを探してほしいと。

 にしてもなんで? 何か用事でもあるの?

 

「お姉ちゃん、今日は休みでいっぱい遊んでくれるって言ったのに~」

 

 そういうことか。

 

「だから~、お姉ちゃんのクエストを手伝ってほしいの~」

 

 うんうん、まあ道理に叶ってる。至極当然な欲求だ。

 じゃあ、ネプテューヌに頼んでみるね。何だかんだ仕事中断して手伝ってくれそうだし。

 

「なんで~? めがみさま、手伝ってくれないの~?」

 

 いや、だから女神のネプテューヌに頼みに……。

 

「だ~か~ら~、めがみさまはここにいるでしょ~?」

 

 それはそうだけど、うーん……。

 困ったな。この調子だと俺が行くことになりそうだぞ。まだ外出許可も出てないのに。

 それに勝手に行ったらネプテューヌたちも心配するだろうし。どうするかなー。

 誰か止めてくれる人いないかなー。コンパとアイエフはいつも通り仕事でいないし、ネプギアはラステイションに用があるって今日は夜まで帰ってこないし。ネプテューヌとイストワールは今日は一日中お仕事って言ってたから夕方まで執務室から出てこないだろうし。

 ……あれ? もしかして誰も見てない?

 

「ね~え~、はやく~」

 

 というかよく考えてほしい。

 この幼気な少女の頼みを、どうして女神である俺が断ることができようか?

 いや、出来るわけがない。教会にわざわざ頼みに来てくれたんだぞ。やるしかねえだろ。

 それに、こうして信者の願いを聞いてやれば信頼も得られるかもしれないし。

 シェアも上がるかもわからん。とにかく、やった方がメリットが多いのだ。

 よし、行くか! クエスト! 今すぐに!

 

「うん、わかった~! じゃあいこっか~」

 

 なんて手を引かれて、俺は教会から抜け出した。

 ちょっと罪悪感。でも子供を見放すわけにはいかないし。

 仮にこれで怒られたとしても、この子のそばに居ることに後悔はなかった。

 だってさ、どれだけ小さな願いでも、見捨てることなんてできないしさ。

 ……あ、そういえば。

 

「え~、私のなまえ~?」

 

 そう。名前。聞いておいた方がいいと思って。

 

「ええとね~、私のなまえね~、わたしのなまえ~……」

 

 

「私ね、プルルートっていうんだぁ~」

 

 

 

 プルルート。ぷるるん。ぷるると。ぷるーん。Plutia。

 又の名を、もう一つのプラネテューヌの女神。

 プルルートのいる次元――つまり神次元は、ネプテューヌが女神にならなかった次元。

 代わりにこのプルルートが、女神アイリスハートとしてプラネテューヌを治めている。

 長い紫の髪を後ろで大きな三つ編みにしている、寝間着とパジャマの少女。

 マイペースな性格と、伸びきった言葉遣いが印象深く残っている。

 しかしながら。

 

「なあに~、めがみさま~」

 

 今俺の目の前にいるのは、俺よりも小さな子供なわけで。

 

「……めがみさまって呼ばなくても、いい」

「え~? じゃあ、ネプ……ね、……ねぷ……?」

「言いにくいなら、呼びやすいようでいいよ」

「じゃあ、ねぷちゃにする! ねぷちゃ~! ね~ぷちゃ~!」

 

 けれどこの間延びした言葉遣いとずぼらな容姿は、間違いなくプルルートのものだった。

 つまりあれか。子供のプルルートってとこか。もともと小さいのにさらにロリ化しちまった。

 でもまあ、ピーシェよりは大きいくらいかな? わからん、微妙なところかも。

 ただ、三つ編みにされていない髪型が、すごく印象的だった。

 

「ん~? ねぷちゃ~、どうしたの~?」

 

 いやあ、小さいなあって思って。

 

「こどもだもん~、まだきゅうさいだよ~」 

 

 九歳。神次元のプルルートと比べると……五、六歳くらい開いてるのかな?

 にしても、子供のプルルートかぁ……子供ぷるるん……。

 Vをプレイした身としては、とても新鮮な気持ちだった。

 

 簡潔に俺の考えを述べるなら、彼女はこの次元のプルルート、なんだと思う。

 超次元と神次元はかなり酷似しているらしく、そこに住んでいる住人も瓜二つなんだとか。

 だから神次元にはノワールもブランもベールも、アイエフもコンパもいる。

 もちろん女神にならなかったネプテューヌも。

 つまりその神次元が『ネプテューヌが女神にならなかった次元』とするなら、今俺がいる次元は『プルルートが女神にならなかった次元』ということになるらしい。

 推測ではあるが、それくらいしか俺には考えられなかった。

 ……あっちも最初はアイエフとコンパは子供だったし。つまりそういうことなのかな。

 

 街のギルドには、教会から歩いて五分のところにあった。コンビニか。

 でもクエストの感覚がアルバイトみたいなものだから、割とそれが正解なのかもしれない。

 自動ドアをくぐると、大きなクエストカウンターに出る。形的には銀行に似てるのかな。

 陳列されたATMみたいなのでクエストを受けて、そのまま郊外へー、みたいな感じ。

 というのも、全部プルルートが教えてくれたんだけど。

 

「ねぷちゃ~、こっちこっち~」

 

 プルルートに言われるがまま、ギルドの中へと入っていく。

 時間帯が時間帯なのかギルド内は空いていて、すぐにカウンターに入ることが出来た。

 受付のお姉さんも別に不思議がってなかったし。多分大丈夫だな、この調子だと。

 カウンターの前に立って、電子画面を操作する。

 ええと……何選べばいいんだ、これ。

 

「う~んとね~……お姉ちゃんは、エンシェントドラゴン? って言ってた~」

 

 ああ、エンシェントドラゴン。あれね。おーけーおーけー。理解した。

 ……エンシェントドラゴン、ゲーム内では強敵扱いされてるんだけど。

 それを一人で狩るお姉ちゃん、一体何者なんだ。

 そもそも、今の俺で勝てるのか? レベルとかどうなってるんだろう。

 というより武器は? アイテムとか、防具とか足りないものが多すぎる。

 いや、一応ブランまんじゅうは懐に忍ばせてあるけど、TEC上昇しても意味な……。

 

「ねぷちゃ~? いかないの~?」

 

 …………うん、まあ。

 何とかなるだろ。たぶん。

 

 

 どうやら、現時点でエンシェントドラゴンを対象としたクエストは一つしかないらしい。

 俺とプルルートはそのクエストに途中から合流する、という形になった。報酬は減るけど。

 しかしまあ、お金なんてどうでもいい。大切なのは、プルルートが言う姉と会うことだ。

 一つ不安なのは、その姉に心当たりがないこと。

 神次元におけるプルルートには、姉なんていなかったはずだけど。

 でもまあ、ここは神次元じゃなくて超次元だし。姉がいてもおかしくないんだろうな。

 そこら辺は割と適当なゲームだった。

 

 そんなこんなでプラネテューヌを抜け出して、バーチャフォレストに。

 森だった。割とガチめの森。どこがバーチャルなんだろう。ただのリアルな森だ。

 一応道は整備されていて、草木の開いたところをプルルートと一緒に歩く。

 

「おねちゃん~、どこ~?」

 

 なんて姉を呼びながら進んでいくけれど、そんな簡単に帰ってくるはずもなく。

 あてもなくうろうろと森の中をさまよう事、十分と少し。

 

「ぬら」

 

 なんて男の声が聞こえてきたかと思うと、俺たちの目の前に出てきたのは、スライヌだった。

 うん、スライヌ。青色の雫みたいな形に犬の耳と尻尾が生えた生命体。スライムではない。

 出てきたのは一匹だけで、どうやらそれは群れとはぐれたような様子だった。

 でも自分で気づいているわけではないらしい。哀れな。

 とりあえずこちらへ飛び掛かってきたスライヌを、両手でひしと捕まえる。

 

「ぬらー」

 

 あ、すっごい柔らかい。なんだこれ。こういう感触の和菓子とかありそう。

 みょーんと引っ張ったり、逆に軽く潰してみると、ぬら~、なんて声を上げて目をつむる。

 なんだ、結構かわいいじゃんか。声はアレだけど。

 でもネプテューヌたち、これを倒すんだよな。ゲームの性質上仕方ないことではあるが。

 そろそろ可哀そうになってきたので、地面において観察。

 実際にこうして見てみると、なんかこう、愛着が湧くというか……

 

「え~い! ふんじゃえ~~!」

 

 ぐちゃ。

 

「あああああああああああああ!!!!!」

 

 うわあああああああああああ!!!!! スライヌうううう!!!

 

「な……何を……」

「え~? だって~、止めてくれてたから~」

 

 足の裏についたスライヌのかけらを地面で擦り落としながら、プルルートがそう答えた。

 そっ……そういう意味じゃないのに……! ただ俺は、この小さな命を守ろうと……!

 ダメだ。この世界、殺伐としすぎている。

 俺はこれに慣れないといけないのか。現実はいつだって残酷なんだな、本当に。

 

「はやくいこ~、ねぷちゃ~」

 

 ああ……そうだ。行こう、プルルート。

 俺たちはこれから、このゲイムギョウ界で生きなければならないんだ。

 進むことしか、できないんだから。

 

「えい~~! えい~~~~!!」

 

 ああああ! そろそろやめてやれって! マジで!

 

 

 バーチャフォレストの中に入ってから、おおよそ一時間を過ぎたころ。

 

「つかれた~ねぷちゃ~、おんぶ~」

 

 ぐだぐだと歩いているプルルートは、ぬいぐるみを引きずりながらそんなことを言ってきた。

 うーん、おんぶしたままだと万が一のときすぐに戦えないしなぁ。

 今までエンカウントした敵が、全部スライヌだけだったからいいものの。

 これから先はさすがに、スライヌしかいないってわけでもないでしょ。

 ちなみに出会ったスライヌは全部プルルートが潰していった。

 ……もしかしてこの頃からアイリスハートの兆候はあったのかな。

 

「ねぷちゃ~、ね~え~」

 

 うーん。なら、おんぶするんじゃなくていったん休憩にしようか。

 適当にいい感じの木陰を見つけて、そこに二人で座り込む。

 つかれた~、なんて言いながら、プルルートは俺にもたれかかってきた。

 一時間は歩きっぱなしだったからな。それにそんな歩きにくい恰好じゃ疲れるのも当然だ。

 よしよーし、なんて頭を撫でると、プルルートが頬を緩ませる。

 あ、そうだ。

 

「ほえ? お姉ちゃんのこと~?」

 

 そうそう。特徴だけでもどんなのか教えてくれると助かる。

 

「えっとね~、お姉ちゃんはね~、黄色くて~」

 

 ふむふむ。

 

「あと~、髪の毛がながくて~、赤いぽんぽんつけてて~」

 

 はあはあ。

 

「いっつもツンツンしてるけど~、本当はとても優しくて~」

 

 ほうほう。

 

「あとね~、お胸がとーっても大きいの~」

 

 なるほどね。完全に理解した。

 とにかく金髪巨乳のツンデレ娘を探せばいいんだな。

 そんなキャラ原作でもアニメでも見たことないけど、そんだけ特徴あるなら何とか分かるだろ。

 それで大事なことなんだけど、名前は何て?

 

「えっとね~、お姉ちゃんのなまえは――」

 

 そう、プルルートが姉の名を口にしようとした瞬間。

 腹の底に響くような、森全体を揺らすほどの地鳴りが、彼女の言葉を遮った。

 地面がぐらぐらと振動を起こして、森の木々が葉を擦る。

 揺らめく木漏れ日のなかで、プルルートは飛び起きながら、俺の方へと縋るようによってきた。

 なんだこれ、どういうことだ? 何が起こってる?

 

「ね、ねぷちゃ……?」

 

 震えるプルルートの肩を、強く抱きしめる。

 大丈夫。何があったとしても、プルルートだけは守る。

 聴こえてくるのはどたどたとした、何か多くのものが押し寄せてくるような音。

 俺たちを挟み込むようにして姿を現したのは、スライヌの大群だった。

 

「ちょっ」

 

 けれどそれらは俺たちに目もくれず、すぐに向こうへと過ぎ去ってしまう。

 今のは……?

 

「ねぷちゃ!」

 

 俺がプルルートを抱えて駆けだしたのは、彼女が叫んだと同時だった。

 寄りかかっていた樹が横方向へと吹き飛ばされて、その風圧で体が吹き飛ばされる。

 すぐさまプルルートを強く抱きしめると、背中に強い衝撃が走る。

 肺が押しつぶされるような感覚。痛みが全身へ伝わってきた。

 げほげほ、と突っかかった息を吐き出しながら、目の前のそれへと視線を向ける。

 焦げた赤銅色の外皮に、地面を踏みしめる強靭な脚。

 背中には身を包むほどに大きな翼と、頭の上には巨大な二本の角。

 こちらへと顎を向けるその姿は、間違いなくエンシェントドラゴンのもの。

 

 そしてもう一つ、その龍と対面するのはひとりの少女。

 吹き飛んだその衝撃を地面につけた足で無理やり抑え込む。

 そのままの発条で大地を蹴り上げ、向き合う龍の上空へと高く舞い上がり――

 

「ぱーんちっ!」

 

 振りかざした拳が、エンシェントドラゴンの頭を、地面へとめり込ませた。

 柔道の投げ技かなんかみたいに、その巨体がぐるん、と回転。

 そして彼女は着地と同時、起き上がろうとするエンシェントドラゴンに向けて、

 

「きーっく!」

 

 勢いよく振りぬいた足が、竜の巨躯を吹き飛ばした。

 ……いや。

 なんだアレ。

 

「はい、おーわりっ! あーもう、疲れたー……」

 

 額の汗を拭いながら、ふぅ、と一息。

 太陽のような、金色の髪を持つ少女だった。

 着ているのは黄色と黒でデザインされた、パーカーとワンピースを組み合わせたような衣装。

 腰あたりから伸びる尻尾が、蜂のようにも見える。

 年は十五とか六くらいだろうか。手足がすらりと長くて、けれどちょっと細い感じ。

 なんだかどこかで見たことあるような、そうでもないような。

 

「……あれ?」

 

 そうして彼女がこちらへと振り向いて、その青色の瞳と目が合っ――

 

「おっぱいでっか!」

「え、え!?」

 

 着痩せしてるんだろうけどそれでも十分でけえぞ! なんだあれは!

 思わず叫んだ俺とは違って、プルルートは慣れた様子で彼女の方へと近づいていく。

 

「おねえちゃん~」

「ぷ、プルルート!? なんでここにいるの!?」

「えっとね~、めがみさまが連れてきてくれたの~」

「めがみさまって……あれが? 本当に?」

 

 何か失礼な疑われ方をされている気がする。いやまあ、本当は違うんだけどさ。

 

「だからって、ここに来ちゃダメって何度も言ったでしょ? 約束したよね?」

「……お姉ちゃんも、約束やぶった~。今日、一緒に遊ぶっていったのに~」

「あっ、いや、それは……」

 

 プリプリ怒るプルルートに、少女もばつが悪そうに眼をそらす。

 やがて観念したのか、少女はため息をひとつ吐いて、プルルートの頭を撫でた。

 

「ごめんね、プルルート。これが終わったら、一緒にぬいぐるみ買いにいこっか」

「いいの~? やったぁ~!」

「うん、好きなの一個買っていいから。それまであの女神さんと一緒にいてくれる?」

「うん~わかった~!」

 

 ほら、と手をつないで、プルルートと彼女がこちらへと歩いてくる。

 親子……ってわけでもないな。本当に姉妹って感じの年齢差。

 ねぷちゃ~、なんて寄ってくるプルルートの頭をわしゃわしゃ撫でる。

 かわいいなこの。小動物感出しやがって

 すると彼女から、ちょっと、なんて声をかけられた。

 

「女神が、こんなところで何してるの?」

 

 うーん。

 良くも悪くも、頼まれたから来てるだけって感じだけど。

 

「プルルートが? あなたに?」

 

 そうだよ、と首肯すると、彼女は口をつぐんで深く考え込んでしまった。

 なんだろうな、本当にどこかで見た気がするんだけど……あれー? どこだったっけ? 

 しかもこの既視感も微妙にズレてるっていうか……謎だろう。

 ドラゴンを屠る謎の少女。そんなの、ネプテューヌの世界に居なかった気がするけど。

 お姉ちゃん強かったねー、なんてプルルートに話すと、いつもあんなかんじ~、と返された。

 いつもあんなんなの? プラネテューヌの国民って戦闘民族なの?

 

「……まあ、いいや。クエスト終わるまで、プルルートのこと頼んだ」

 

 うん、おっけー。あー……と、えー、と。

 そういえば結局、名前聞き忘れてたな。

 

「え? あたしの名前? プルルートから聞いてないの?」

 

 

「あたし、ピーシェって言うんだ」

 

 

 ピーシェ。ピー子。ぴぃちゃん。Peashy。

 神次元の住人であり、またある複雑な事情によって女神にもなった存在である。

 本来は五歳くらいの幼女で、プルルートとネプテューヌに育てられている。

 キャラクターとしては、いつも元気いっぱいで、どこにでもいるようなわんぱく少女。

 ただフィジカルというか、格闘センスが素で高い。なんでなんだろうね、ほんとに。

 と、俺の知っているピーシェのイメージをできるだけ挙げてみたわけだが。

 

「……なに? あたしの顔になんかついてる?」

 

 きょとんとした様子で、ピーシェは首を傾げるだけだった。

 何と言うか……感慨深いというか、非常に心が落ち着くというか。

 大きくなったなあ、なんて。

 

「あたし、女神に育ててもらった覚えないよ?」

 

 う。いや、まあそうだよな。

 つまるところ、彼女はプルルートと同じみたいで。

 女神にならなかった次元のピーシェ、ということらしい。

 

「それよりも、ちゃんとプルルートのこと見ててよ。今、この森って危険なんだから」

 

 ピーシェの言葉にうなずく。

 

「理由は分からないけど、昨日か一昨日くらいかな、モンスターがいつもよりも多く出現するようになったの。それも、ラステイションとか他の大陸にいるはずのモンスターも。それで緊急事態っていう理由で、あたしもギルドに呼び出されたんだ」

 

 そうなんだ。それで約束が守れなくなっちゃったと。

 まあ仕方ないよな。ピーシェの口ぶりからするに、割と緊急の案件っぽいし。

 

「……女神なら、なんか原因とか思いつかないの?」

 

 申し訳ないけれど、それが全然。

 なんてったって俺、みんなの言う女神じゃないしな。

 

「え? どういうこと?」

 

 いろいろ事情があって。あとで本物のネプテューヌから説明とかあると思うけど。

 今は適当に、記憶喪失の女神って感じで認識してくれれば。

 

「……別にいいけど」

 

 何やら不満はあったらしいけど、ピーシェはそれ以上を聴かないでくれた。

 

 エンシェントドラゴンを倒してからしばらくして。

 俺たちは再び、バーチャフォレストの中をふらふらと歩いていた。

 なんでも、あと一体エンシェントドラゴンを狩らないとノルマに到達しないんだとか。

 

「たぶん、この洞窟の中だと思うんだけど……」

 

 なんて指差しながら示したのは、森の中にある横穴。

 割と明るさのあるその中へ入っていくと、プルルートが俺の服の裾をぎゅ、と掴んだ。

 小さな手を握り返す。

 

「……いた」

 

 ほどなくしてピーシェが身を隠し、俺も同じようにして体をちぢこめる。

 曲がり角の向こうにあるのは巨大な空間で、その中心にはエンシェントドラゴンが一匹。

 彷徨っているような様子だった。何か見えないものに釣られるような、そんな不安定な印象。

 それは同時に、油断しているようでもあった。

 

「今のうちにやっつけちゃおう。女神、プルルートのことみててね」

 

 任せとけ。命に代えても。いやそこまでは……。とにかく行った行った!

 締まらない会話ののちに、ピーシェが音もなく地面を蹴って、上空へと舞い上がる。

 

「でやーっ! ぱーんち!」

 

 腹にずどんと響くような打撃音。

 空間に反響するようなそれは、エンシェントドラゴンの態勢を大きく崩す。

 そのままピーシェが懐へ潜り込み、すぐさま尻尾の方から駆けあがる

 そして角を両手で掴んだあと、くるりと身を翻し、角を掴んだままで勢いよくドラゴンの前へ。

 

「うーっ……よいしょおー!」

 

 ()()()、と。

 まるで柔道の技か何かのように、エンシェントドラゴンの体が宙を舞った。

 

「わあ~! おねえちゃん、すご~い」

 

 激しい地鳴りと空気の振動に臆することもなく、プルルートが両手をぱちぱち叩く。

 いや、すごいって言うか、明らかに人間じゃないような……。

 けど原作でも謎にフィジカルは高かったし、真っ当に成長してたらこうなってたってことか。

 どうなってんだこの国。

 ……って、あ!

 

「ふぃー、おわったおわったー!」

 

 まだ終わってない! ピー子、うしろ! うしろ!

 

「え? なんて――」

 

 ごぶぁー、なんてマヌケな声を上げて。

 まだ倒れていないエンシェントドラゴンの横凪に、ピーシェが蝿みたいに吹っ飛んだ。

 人がそうやって、何度も地面に叩きつけられながらに吹き飛ぶのを、初めて見た。

 

「ピー子っ!」

 

 思わずそう叫ぶけれど、返ってくるのはうめき声だけ。

 生きてはいる。ただすぐに立ち上がらないのを見ると、ダメージも深刻らしい。

 ほっと安堵の息を吐いたのもつかの間、俺の叫び声を聞いたのか、初めから気づいていたのかは知らないけれど、エンシェントドラゴンはその双眸をこちらへと向けた。

 ずしん、ずしんと一歩づつ、その巨体が近づいてくる。

 

「女神! プルルートを連れて、早く!」

 

 でもそれだとピー子が!

 

「私のことなんていいから! プルルートだけは連れてってよ!」

 

 そんなこと――

 

「そんなこと、できるはずないだろ!」

 

 目の前の人間を見捨てるなんて、プラネテューヌの国民を見捨てるなんて。

 俺はプラネテューヌの女神なんだ。偽りだとしても、真似てるだけだとしても。

 偶然であっても必然であっても。それが望まれるものだとしても。

 女神として、ネプテューヌとして、みんなを守らなくちゃいけないんだ。

 だから。

 

「ね、ねぷちゃ!?」

 

 確かな力を感じたのは、その時だった。

 右腕にプロセッサユニットが接続されて、そこからさらに形が変わっていく。

 かちゃかちゃと組み立てられていくそれは――盾、だった。

 身の丈ほどに届く、巨大な盾。色は、光すらも呑み込みそうなほどに暗い、黒。

 手に伝う感覚は重く、けれどそれは心を寄せられるもので。

 これなら――!

 

 鉄と鉄が擦れる音のように、ぎりぎりとした金属音が鳴り響く。

 足の裏へと力を入れると、自分の足元が少しだけ沈んでいるのが分かった。

 けれど、戦えないわけじゃない。

 押さえつけてくるドラゴンの爪を受け流し 足へプロセッサユニットを移して跳躍。

 背中を向けるドラゴンの背中にのって、再び右手に盾を。

 渾身の力を込めて、その盾を首元へと叩きつける。

 手応え。悲鳴と共に、エンシェントドラゴンが姿勢を崩す。

 その瞬間、瞳がこちらを睨んだのが見えた。

 今の攻撃で完全にヘイトが俺に向いたみたいだ。これなら安心して戦える。

 

「ね、ねぷちゃ……? 私……」

 

 大丈夫。

 声は出せなかったけれど、プルルートと瞳を合わせると、彼女は静かに頷いてくれた。

 ……さて。こんなことを言ったからには勝たないとな。

 

「女神って、そんなのだったっけ?」

 

 分からない。けれど、みんなを守れるのなら、これでも。

 それ以外は何も望まない。ただ、今だけでもプラネテューヌの女神として在れるのなら。

 隣に立つピーシェと対になるように、俺も盾を正面に。

 

「たぁーっ!」

 

 勢いよく地面を走るピーシェの後ろについて、俺も地面を蹴る。

 先行するピーシェは弾丸みたいな速さになって、そのままエンシェントドラゴンの懐へ一撃。

 その反動で翻りながら攻撃を躱し、地面に反射するようにして、顎を蹴り上げた。

 エンシェントドラゴンが大きくよろめくが、そのまま体を横に回転させる。

 ピーシェの横に迫るのは、その体の三倍はある太い尻尾で。

 それが届く前に彼女の隣へ滑り込み、盾を構えて地面に足を強く。

 肺から空気が全部出ていくような、体の芯にひびが走っていくような、そんな感覚。

 けれど、倒れるわけにはいかなかった。

 受け流すのは……上!

 

「女神っ!」

 

 尻尾が通り過ぎ、掲げた盾にそのままピーシェが飛び乗った。

 なるほど。それなら、もっと力を込めて、足をぐぐっと強く曲げて――

 

「――行ってこい、ピー子!」

 

 爆発音。周囲の地面が完全に砕けると同時、ピーシェがエンシェントドラゴン目掛けて飛んでいく。

 くるくる回転を加えたかと思うと、右脚をまっすぐ正面へと突き出して。

 

「うおお! 女神キーック!」

 

 だせえ! もっと他になかったのか!

 

 ずどん、と龍の巨大な体が地面へと倒れ込む。

 しばらく様子を伺ってみたけど、動く気配はないみたい。

 ふぅ、と詰まっていた息を吐くと、ピーシェがとてとて駆け寄ってきた。

 うわ、ぼろぼろじゃないか。足とか擦っちゃってるし、顔もどろどろに汚れてるし。

 ハンカチとかあったっけ。一応、ネプギアが渡してくれたのはあるけど……。

 

「ありがと」

 

 なんて服をごそごそ漁ってると、ピーシェがそう笑いかける。

 い、いきなりどうしたの? まだハンカチ出してないけど? 置き感謝ってやつ?

 

「私のこと、見捨てずにいてくれたんでしょ」

 

 そりゃそうだよ。

 だって俺は、プラネテューヌの女神なんだから。

 不思議なことを言うもんだな、なんて思いながら、ハンカチを手渡す。

 

「……そっか」

 

 少しだけ曖昧な笑みを浮かべながら、ピーシェがそれだけ呟いた。

 

「そういえばプルルートは?」

 

 俺たちが居たところから、あんまり動いていないはず。きっと大丈夫。

 でも一人で怖がってるかもしれないから、早く行ってあげよう。

 なんて二人してとことこ戻って、プルルート~、なんて声をかけると。

 

「あ~、お姉ちゃん~、ねぷちゃ~!」

 

 少しだけ離れたところにいたプルルートが、俺たちに気づいて駆け寄ってきた。

 その手の中に持っているのは、前から持っていた(ネプテューヌ)のぬいぐるみと。

 

「……プルルート? なにそれ」

 

 ピーシェも俺と同じ疑問を持ったのか、それに指をさして問いかけた。

 

「え~? わかんない~。ぴかぴかしてたから~、ひろったの~」

「もー、わかんないもの勝手に拾っちゃダメだよ」

「でもぉ~、これきれいだし~、きっとお宝なんだよ~? ほらぁ~」

 

 なんて掲げたそれは、手のひらほどの大きさの宝石のようで。

 その中心には、まるで電源マークを模したような、小さな物体が輝いている。

 …………それ。もしかして。

 

 なんて吐き出そうとした言葉が、地面の振動によって遮られる。

 後ろを振り向けば、そこには三度起き上がろうとしているエンシェントドラゴンが。

 

「な、ま、まだ戦えるの!? なんで!?」

「おねえちゃん~、なんかこの石ひかってる~! とってもきれい~」

「プルルート、いまそんなこと気にしてる場合じゃないよ!」

「ええ~? でもぉ~」

 

 いや、たぶんそれのせいだと思う。

 その結晶から出てる力がエンシェントドラゴンに伝わってるんじゃないかな。

 推測でしかないけど、何となくそんな気がした。

 

「そ、それじゃあどうするの!? もっかい戦わないとダメ!?」

 

 力の伝わるものをあのドラゴンじゃなくて、別の何かに移すことができたら、あるいは。

 

「どうやってやるの、そんなの! ああもう、あたしそろそろ限界だよ!?」

「ね~え~、お姉ちゃん~。これ売れば、わたしたちのおうち買える~?」

「あー、もう! プルルートうるさい! 今それどころじゃないのっ!」

「……え?」

 

 ぴしゃり、と水を打ったような静寂。

 それと同時に、彼女の抱く結晶が微かに光った、ような気がした。

 

「……わたしぃ~、お姉ちゃんが助かるとおもったのにぃ~」

「あっそう! なら今のこの状況を助けてほしかった!」

「……いま、助けたらお姉ちゃん、いっぱい褒めてくれる~?」

「褒めるよ! ぬいぐるみもいっぱい買う! どうせ無理だろうけど!」

「ふぅ~ん…………!」

 

 そしてプルルートは光を放つ結晶――シェアクリスタルを、その手に掲げて。

 

「ならぁ、わたしがおねえちゃんを、たすけてあげる――!」

 

 閃光。眩く輝くそれは、ネプテューヌが変身したときと同じもの。

 月光のようなそれにプルルートの体が包まれて、その影が大きく変わってゆく。

 長い髪は濃い藍色へと色を変えて、全身は体のラインが見えるようなプロセッサユニット。

 その背中へと背負うのは、まるで花を模したかのような、四対に分かれる翼。

 紅の瞳の奥には、結晶の中で輝いていた電源マーク。

 手に持った蛇腹剣をぴしゃりと地面へ叩きつけると、纏う光が霧散する。

 

「さあ……じっくりと楽しみましょうか!」

 

 そして、俺の目の前へ姿を現したのは。

 もう一つのプラネテューヌの女神、アイリスハートだった。

 

「ぷ、プルルート……?」

「待っててねぇ。すぐ帰ってくるから、お姉ちゃん……いえ、この姿だとピーシェちゃん、って言ったほうがそれっぽいかしらぁ?」

「ぴっ、ぴぴぴピーシェちゃん!? なによそれ!」

「あはは、照れちゃってかわいいわねぇ。ピーシェちゃんのそういうウブな反応、もっと見てみたい気もするけど……でも、今はまず――」

 

 そう後ろから襲い来るエンシェントドラゴンの腕へ、アイリスハートが剣を振るう。

 

「あいつをブッ倒さないとねぇ!」

 

 いくつにも分かれた刃は龍の腕へと絡まって、その肉をバラバラに引き裂いた。

 エンシェントドラゴンの絶叫が響き渡ると同時、アイリスハートはその真上へと舞い上がる。

 そして、剣の形に戻ったそれを眼下の龍へと突き付けた。

 対峙。もがき苦しむその龍に、アイリスハートはひどく冷め切った目を向けていて。

 

「……やっぱり、言葉が話せるヤツじゃないと楽しめないわね」

 

 つまらなさそうに呟いた。

 そしてばちばちと体に雷を纏いながら、エンシェントドラゴンへと突っ込んでいく。

 足掻くように振られた尻尾も翼もひらりと避けて。その巨体の中心へと剣を突き立てた。

 かと思うと、アイリスハートが剣はそのままに上空へと再び舞い上がる。

 出来上がったのは、鮮血を噴き上げる、歪なドラゴンのオブジェクトだった。

 

「あははは、面白いわねぇ! あーんな恰好になっちゃって、絶頂したみたいになって!」

 

 な、なんつー……。

 

「ねえ、ピーシェちゃんもそう思わない?」

「あ、あたし? いや、ええと……その……」

「んもう、つれないわねぇ。あら、もしかしてピーシェちゃんはあれよりもっと凄い事になっちゃうのかしら? それだったら私、とっても見てみたいかもぉ……」

「そんなことない! ぜったいやだ!」

 

 顔を真っ赤にしながら、ピーシェがアイリスハートに叫んだ。

 

 ……まあ。

 いろんなことがありすぎて、どこから収拾をつけていいか分からなくなってきたが。

 一応、事実としてピーシェのクエストは終わったということになる。

 とりあえずこの森から抜けよう。話はそれからだよ。

 そう言いつつ、洞窟に入ってきた方向へと足を勧めていると。

 

「ね、ねえ女神……プルルート、元に戻るよね……」

 

 もちろんちゃんと戻る。まあ、今度からもこうなるけど。

 そんなー、なんて涙目になるピーシェの後ろから、どうしたの、とアイリスハート。

 ひぇぅとビビるピーシェに、アイリスハートは訳も分からず首を傾げていた。

 ……謎は色々ある。

 なぜ、シェアクリスタルがあんなところにあったのか。

 なぜ、プルルートが変身できるようになったのか。

 なぜ、子供プルルートが変身しても、大人のアイリスハートになれたのか。

 ごちゃごちゃした頭を整理していると、ふと前方から足音が。

 気が付いて顔をあげた、俺の視界に映っていたのは。

 

「……あれ? 黒ネプ子?」

 

 きょとんとした顔で俺の名前をよんだ、アイエフの姿だった。

 

 ……あッ、やべえ! バレた!!

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。