虚構彷徨ネプテューヌ   作:宇宮 祐樹

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08 誘拐、リーンボックス

 

 次に俺が目を醒ましたのは、翌日の昼になってからのことだった。

 ホワイトハートと戦って気絶した俺は、プラネテューヌへと運ばれたらしい。

 結構な重症だったけど命に別状はないみたいで、治療をしてから今に至る、と。

 起きてからしばらくして、俺の様子を見に来たコンパがそう教えてくれた。

 ……女神って本当に丈夫なんだな。あんなに酷い目にあったのに、一日で回復するなんて。

 いや、だからといって無茶していいわけでもないけど。

 

「大事にはなりませんでしたが……それでも、安静にしておくですよ? お外に出るなんてもってのほかです。絶対に教会から出ちゃダメですからね? いいですか?」

 

 腕とか首とかの包帯を巻き替えながら、コンパが釘を刺すようにそう言った。

 いやあ、この前のは不可抗力だし。仕方ないって。

 

「でも、黒ねぷねぷはねぷねぷと同じでお人よしですから。それはすごくいい事だと思うですけど、自分を大切にすることも大事です。まあ、そういうとこもねぷねぷと同じですけど……」

 

 なんてことを呆れながら呟いて、コンパが俺の鼻の頭に絆創膏を張りつける。

 少年漫画の主人公か。実際に怪我してるから仕方ないんだけど。

 

「じゃあ、私はこれで仕事に戻るです。あんまり動いちゃダメですからね?」

 

 それだけ残して、コンパは部屋から出て行った。

 うーん、また一人になっちゃった。寂しくはないんだけど、つまんないんだよなぁ。

 じっとしてろって言われたけど、あんまりそういうのは性に合わないし。

 ……とりあえず、目覚まし代わりに教会の中でも歩いてみるか。

 それくらいはいいよね、別に。

 

 

 ネプテューヌとネプギアは、今日も真面目に仕事らしい。

 俺が来てから仕事が増えた~、みたいなことを言われたけれど、そこはなんとも。

 俺だって何にも分からないままだし……ごめんね、としか言えないんだよね。

 さすがのネプテューヌも、そこは理解していると思うけど。

 ピーシェもプルルートを連れてクエストに行ってるみたい。

 いいよな、プルルートは外に出られて。同じ女神なのにこの扱いの差はなんなんだ。

 差別だぞ、差別。人権団体に訴えてやる。

 まあ、仕方のないことだとは分かってるんだけどさ。

 アイエフも……仕事だろうなあ。諜報員って聞くだけで忙しそうだ。

 何を諜報しているのかは分からないし、多分教えてくれることもないだろうけど。

 

 ……あれ?

 プラネテューヌの人間、めちゃくちゃ仕事してない?

 何もしてないの俺だけじゃないか。途端に悲しくなってきたぞ。

 そりゃ病人なんだから安静にはするけどさ。でも、何もしないって辛いんだぞ。

 うう、なんでゲイムギョウ界に来てニート生活を送らなきゃならんのだ。

 だめだ、なんか涙出てきた。もう考えるのはやめよう。

 

 そうしてふらふら教会の中を歩いていると、いつの間にか講堂へと着いていた。

 今は朝か昼か判別のつかない微妙な時間なのか、訪れる人は見当たらない。

 誰もいないプラネテューヌの教会っていうのは、なんだかとても神聖な場所に思えた。

 ……やっぱり、動かないと落ち着かないし。いつもみたいに掃除でもするか。

 なんてったって、俺にはこれくらいしかできないからな。

 職員さんに用具を借りに行くと「ボロボロですけど大丈夫ですか!?」なんて驚かれた。

 別に動きづらいとか痛むとかないし、掃除するくらいなら問題なし。

 説得してもらった箒とちりとりで、普段通りさっさっさー、なんて掃除して。

 大方綺麗にした後、今度は窓でも拭いちゃおうかな、と。

 声が聞こえてきたのは、その時だった。

 

「ネプテューヌ?」

 

 俺の名前を呼ぶ声の、その先に立っていたのは。

 差し込む日差しに金髪を輝かせながら、俺を見つめるベールだった。

 

「あなたが自分の教会を掃除するなんて、どういう風の吹き回しですの?」

 

 どういうも何も……いつもやってるけど。

 素で驚いているのか、俺が応えると、ベールは口元を手で覆った。

 

「あなたがそんな事を言うなんて……立派になりましたわね」

 

 どこ目線の言葉なんだ、それ。親か何かなのか。

 でもいきなり来るなんてどうしたんだろう。何か用でもあるのかな。

 

「いえ、前にネプギアちゃんへ話したゲームを届けに来たのですが……」

 

 そうやって俺へ近づくと、ベールは俺の両頬をむぎゅ、と挟み込んで。

 

「あなた……ネプテューヌではありませんね?」

 

 うわ、バレるの早いな。やっぱり女神には看破されるのか。

 今まで俺を見た女神、全部敵対してきたから、ちょっと言うのを躊躇ってたんだけど。

 あーでも、こうしてエンカウントしてる時点で終わってたな。仕方ないわ。

 しかし、どうするかなぁ。

 言葉で説明するのも難しいし、したとしても結局戦う事になりそうだし。

 またネプテューヌが助けに来てくれないかなぁ。それに俺、病み上がりだし。

 ノワールの時みたいに耐えられるかも難しいぞ。考えれば考えるほど詰んでる気がする。

 ……痛いの、もう嫌なんだけどなぁ。

 

「確かにネプテューヌとは違いますが……害があるとも思えませんわね」

 

 ……あれ? なんだか今までとは違う反応だぞ?

 もしかしてベール、割と話が通じるタイプ?

 

「けれど知りませんでしたわ。まさかプラネテューヌがこんなクローン技術に手を出していたなんて。ネプテューヌもああ見えて、抜け目がないですわね」

 

 いや、その話の跳び方はおかしいだろ。なんだクローンって。

 

「でも、クローンだからってこんな雑用を任せるのは酷いことですわ。それに見たところ、かなり怪我をしているようですし……散々な扱いを受けていたのでしょうね。かわいそうに……」

 

 そ、それは……ブランにやられただけだし。

 雑用っていうか、自分にできることをしていただけだし。

 っていうか、いい加減離してくれないかな。これじゃあ誤解を解くこともできない。

 

「もごもっごもご」

「うんうん、辛かったんですわね。あなたの気持ち、痛いほど分かりますわ」

 

 そうじゃなくて! ダメだ、ベールも話聞かないタイプの女神だ!

 ……あれ? もしかして女神ってマトモに話できないやつしかいない?

 

「ネプテューヌもこうして静かにしていれば可愛いものですわね。新鮮な気分ですわ」

 

 俺の頬を引き延ばしたりしながら、ベールがそんなことを言っていた。

 いやでも、俺は元気な方が好きかな。あの方がネプテューヌ! って感じだし。

 なんて言う事も出来ないのが悲しいんだよな。いやほんとに、なんでこんなことに。

 

「……クローンなんだから、一匹くらい貰ってもバレませんわよね?」

 

 バレるだろ。何考えてんだ。

 というか今「匹」っつったな?

 

「決めましたわ! あなた、今日から(わたくし)のところおいでなさいな! こんなところではなく、リーンボックスで大切にお世話してさしあげます!」

 

 ……はい? なんて?

 

「さあ、そうと決まれば早速リーンボックスへ行きますわよ! ほら、こっちに来てくださいな」

 

 ようやく離した手で俺の腕を引きながら、ベールがウキウキになって教会の外へ歩き出す。

 いや、それはちょっとマズいんじゃないかな。戻った方がいいよ。

 どうせ説教されるの俺なんだし。俺のためにも頼むから。

 

「心配いりませんわ。何かあったら、あなたの味方になりますから」

 

 そういう意味じゃないんだが!?

 

「はいはい。お話は後でたっぷり聞いてあげますから。今はとにかく――」

 

 なんて言うと、ベールが体に光を纏い始めて。

 

「――私の治めるリーンボックスへ、連れて行って差し上げます」

 

 そして現れたグリーンハートが、俺の体をひょい、と持ち上げた。

 いやあのだから、一人で運ぶの危険じゃないの? 女神間での共通認識じゃないの?

 それに心の準備――――おああああああああ!!!

 

 

 ベール。べるべる。べるーん。Vert。

 雄大なる緑の大地、リーンボックスの女神。箱360とか箱〇とかがモデル。

 プリンセスドレスを着ているということは、やっぱりいつものベールらしい。

 また、重度のオンゲ中毒だったり、BL好きだったり。

 あとは……

 

「では、次はこっちを着てくださる? きっとあなたに似合いますわ」

 

 重度の妹好き。いや、正確には年下好き、って言えばいいのかな。

 箱シリーズっていうか、当時あの会社には携帯ゲーム機がなかった。

 だから、リーンボックスにはネプギアやユニみたいな女神候補生がいない。

 ベールはそれが寂しくて、妹をずっと欲しがっていたんだよね。

 基本的にはネプギアがその対象っていうか、餌食になってたりしてる。

 教会でも言ってた通り、この次元でもそうなっているみたい……なんだけど。

 

「うん、やっぱり似合ってますわ。どうですか?」

 

 姿見をこちらへ向けながら、ベールはそうやって喜んでいた。

 どう……って言われてもなあ。こんなフリフリな服、あっちでもこっちも着たことないし。

 メイド服とお姫様が着るドレスを、足して二で割ったような感じ。

 どの階級の人間が着る服なんだろう。よくわかんないな。

 

「四女神オンラインのコスプレですわ。一ファンとして購入したはいいものの、着る機会があまりなくて。それならネプギアちゃんに着せようと思っていたのですが……」

 

 なるほどね。それで、ちょうどサイズが近い俺が居たから着せたと。

 意味がわからんが?

 

「でもいいですわね。元々、ネプテューヌにはこういう服が似合うと思ってましたの」

 

 今の反応を見るに、どうやら俺はそういう対象になってしまったらしい。

 気分が悪い、ってわけじゃないけど、なんだかなぁ。

 俺で着せ替えするんなら、ネプテューヌに頼めばよかったんじゃないの?

 

「それでは意味がありませんもの。静かなネプテューヌだからこそ、良いものがあるんですわ」

 

 よくわからん。

 それに変な肯定をされると、なんか、つっかかるものがある。

 

「それにしても、静かなネプテューヌがこんなにも可愛らしいなんて……そうですわね、あなたの事は黒ネプちゃん、と呼ぶことにしますわ」

 

 どんな呼び方だ。逆にこっちが恥ずかしくなってきたぞ。

 なんて、俺の視線にベールが気づいてくれるはずもなく。

 どんどん色んな服を持ってきて、俺に着るよう差し出してくる。

 着せ替え人形ってこういうことを言うんだな。

 恥ずかしいっていうか、退屈による疲労の方が大きいぞ、これ。

 

「いいですわ、いいですわね! かなり似合ってますわよ!」

 

 でもまあ、本人が嬉しそうにしてるならいいのかな……?

 着る服がどんどん薄くなっていくのはちょっと恥ずかしいけど。

 ……いや、かなり恥ずかしいな、これ。ほとんど布一枚じゃないか。

 最近ようやくスカートに慣れてきたってのに。段階を刻んでくれ、段階を。

 こんな歩いたらパンツ見えそうな恰好してんの、ノワールくらいだろマジで。

 あの人ほんとに自覚あるんかな。今度スカートめくってみよ。

 

「じゃあ次はこの、水着スキンをきてくださいますか?」

 

 …………みずぎ?

 いや、それはちょっと……水着じゃなくて、紐じゃん。それ。

 そりゃゲーム内ならいいかもしれないけど、現実だと全部丸見えなデザインじゃん、それ。

 

「心配ありませんわ。たとえ見えたとしても、この部屋には私しかいませんから」

 

 だからそういう意味じゃねえ! 絶対着ねえからな!

 

「ああっ、待ってくださいな! そんな恰好をチカに見られたら、何と言われるか……!」

 

 知らないよ! チカさんも大変だな!

 とにかく、何とかしてこの部屋から――って、おお!?

 

「……ふふ、リーンボックスの女神である私から、逃げられるとお思いでしたの?」

 

 へ、変身するの!? そこで!?

 シェアエネルギーを何だと思ってやがる!

 

「大丈夫です。私も着替えるのを手伝ってあげますから……じっとしていてくださいませ」

 

 ああ、おわったこれ。満足するまで終わらないやつだ。

 俺の両腕を片手で強く抑えたまま、彼女は俺の服へと手を伸ばす。

 しゅるしゅる、なんて簡単に脱がされると、とたんに顔が熱くなってきて。

 いや……待って、お願いだから。本当に。冗談とかじゃなくて、まじ。

 だって……だって、なんか……

 

「うぅ…………」

 

 お、お願いだから、やめて――

 

「……あら? プラネテューヌから通信ですわ」

 

 はッ! あぶねえ! タイミング神すぎるだろ!

 

「心配いりませんわ。私がネプテューヌにガツンと言って差し上げますから」

 

 なにを?

 ガツンと言いたいのはどっちかってっとこっちの方なのに。

 剥ぎ取られた服を急いで集めながら、その中へ体を隠す。

 あ、あれ? これどうやって着るんだ? 半裸のままとか嫌なんだけど。

 

「もしもし? ネプテューヌ? あなた、いくら自分のクローンを作ったからって、それに雑用をさせるのは酷くありませんこと? あなたがそこまでズボラというか、面倒くさがりだったなんて、さすがに軽蔑してしまいますわ」

 

 クローンに対するこの認識の軽さ、なに?

 ゲイムギョウ界、あらゆる概念に対する認識が軽いところがあるね。

 

「はい? クローンなんて知らない? まったく、とぼけないでくださいまし。現に今、私の部屋に、あなたのクローンが…………え? それはクローンじゃない? いや、だってこんなに似て……ええ……べ、別人?」

 

 ちらり、とこちらへ少し視線を投げて。

 

「今から来る? こちらにですか? いや、あの、ちょっと待って。私の方から責任をもって、プラネテューヌに送り届けますわ。ええ、心配いりません。何も問題はありませんから。ほんとですわよ? ですから、後でちゃんと……は?」

 

 うん?

 

「着せ替え人形……? いやまさか、そんなことするはずが……」

 

 してます! めちゃくちゃされてます! 助けてネプテューヌ!

 

「……きっ、切られた……そんな……」

 

 かちゃり、と静かに受話器を置くと、ベールはゆらりとこちらへ顔を向けて。

 

「急いで全部脱いでくださいまし」

 

 …………はい?

 

「今すぐ脱いで元の服に着替えてくださいな! ネプテューヌがこちらへ来るって……! あなたで遊んでいたことがバレたら、何を言われるか分かりませんわ! さあさあ、あなたの服はこちらですから! すぐにそのコスプレを脱いで……」

「ベール? いるかしら」

「は、え、早ッ……!? 女神化したとしても恐ろしい速さですわ!? いやあの、ネプテューヌ? ちょっと待ってくださいまし! お願いですから、ドアを無理やり開けるのは……ああ、あああああ!!」

 

 

「まったくもう! いくら何でも私を着せ替えて遊ぶのはどうかと思うよ、ベール!」

「だ、だって嫌がりませんでしたもの……だからこっちも乗ってしまって……」

「だからじゃないよだからじゃ! ペットじゃないんだからね!?」

「うう……申し訳ありませんでしたわ……」

「私もそうだけど、謝るならもう一人の私にだよ! 見てよ、あの状況!」

 

「大丈夫だった? 黒いお姉ちゃん」

「ねぷぎゃ……ぷぎゃ……ぷぎゃすき……」

「よしよし、もう心配しなくていいからね。もう誰も遊んだりしないから」

「ぷぎゃ……ありがとう……ぷぎゃ……」

 

「ネプギアに膝枕されながらよしよしされてるんだよ!? どう思う!?」

「ネプギアちゃんの膝で寝れて羨ましいとしか……」

「全然反省してないね!? というかこの状況、私がどう反応していいか困るんだよね!」

「それは私もですわ! 一体何者なんですの、あの黒ネプちゃんは!」

「うわわ、今めっちゃ背中ゾワってした! ベール黒い私のことどんな名前で呼んでんの!?」

 

 いや、それはイストワールとかアイエフとかも大概なんだけどさ。

 

「うわ!? 急に正気に戻らないでよ、黒いお姉ちゃん!」

「その変わり身の早さはネプテューヌそっくりですわね……」

「私あんなんなの? ねえ、本当にあんなんなの?」

 

 どうだろうね。でも変わり身っていうか、ノリツッコミは得意な方じゃない?

 とにかく、今はベールへの説明が先みたい。ネプテューヌとネプギアも来てくれたし。

 ブランみたいに、急に戦闘になるっていうのはやめて欲しいけど……ベールなら大丈夫かな。

 なんだかんだ優しいし。ちゃんと線引きすれば。

 

「なるほど……本当にもう一人のネプテューヌ、というわけですわね」

 

 三人でトントン説明すると、ベールはすんなり納得してくれた。

 まあ、現に俺は目の前にいるわけだし。

 ベールも、それを否定するような強情な人柄じゃないだろうし。

 

「そうそう。そういうわけで、黒い私のこともこれからよろしくしてあげてね」

「分かりましたわ。ネプギアちゃん共々、黒ネプちゃんも可愛がってさしあげます」

「ぜ、全然分かってない気がするけど……」

 

 ワンチャン四女神の中でいちばん話通じない気がするね、これ。

 

「冗談ですわ。さすがにあんな状況を見せられたら、こちらも少しは遠慮しますもの」

「本当かなぁ……黒い私、リーンボックスに行くときは、必ずネプギアとかあいちゃんやコンパを連れて行くんだよ? いいね?」

 

 それはまあ、自分のためにもそうするけど。

 でも……行く機会、あるのかな。

 別にベールが嫌い、ってわけではないけど、その、自分の今の状況的に。

 

「あー、そっか。それなら、ベールと出会ったのは丁度いいタイミングだったのかもね」

 

 というと。

 

「黒いお姉ちゃんのことを、ようやく皆に伝えられそうなの。まだ正確なことは分かってないけど、ブランさんやノワールさんも協力してくれたし。一応は大丈夫かな、って」

「その二人には声をかけたのに、私のことは呼んでくれなかったのですね……?」

「元々ベールのとこに挨拶してからにしようと思ったんだよ? でもこんな事になるなんて」

「う……それだったら、申し訳ありませんでしたわ」

 

 本当だよ。マジでこんな事になるなんて思ってなかったからな。

 でも、そうか。これで本当に、俺はプラネテューヌの皆に知られることになるのか。

 ようやく女神を正式に名乗れる、とかそういうわけではないけど。

 表を歩けるようになるのは、正直に嬉しい。色々観光できるってわけだしな。

 あ、でも今の部屋とかはどうなるんだろう。ちゃんと家賃支払わないといけない?

 

「そこら辺はさすがに大丈夫だと思うけど……」

「とにかく、早くプラネテューヌに戻って皆に知らせちゃおうよ。話はそれから!」

 

 なんて言って、ネプテューヌとネプギアが光を纏い、女神へと変身する。

 

「だからベール、ここでお別れね。もしもまた、黒い方の私で勝手に遊んだら……」

「ええ、心に誓いましたわ。でも、友人として会いに行くのは構いませんわよね?」

「勿論、その時は歓迎するわ」

 

 そう答えながら、ネプギアとネプテューヌが俺のことを持ち上げた。

 

「じゃあベールさん、さようなら」

「ええ、さようなら。黒ネプちゃんも、よかったらまた遊びに来てくださいね」

 

 あー……着せ替えとかなかったらね。うん。

 テラスから飛び立つと、すぐにリーンボックスが小さくなっていく。

 そうか、あそこ島国だから、行くなら飛べるようになるか船とか乗らないといけないんだ。

 うーん、次に遊びに行くのはかなり先になりそうかも。

 それにこれからは、結構忙しくなるかもだし。主に俺自身のことで。

 ……そういえば、皆に知らせるって言っても、どうやってやるの?

 

「ええと、それを今決めようと思ってたんだけど……」

「私たちに任せてくれればいいわ。あなたは原稿を読み上げてくれればいいから」

 

 原稿? それに読み上げって……え、なに? マジでどういうことなん?

 頭の上に疑問符を浮かべていると、ネプテューヌが思い出したようにして、

 

「ところであなた、テレビに出るのは大丈夫よね?」

 

 …………なんて?

 

 


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