沙条愛歌は転生者   作:フクロノリ

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転生しました

 突然ですがわたし......転生したら沙条愛歌になっていました。

 神様っぽい存在にいきなり「転生させてあげるよ」とか言われて、よく分からないまま転生させられました。

 

 転生の特典云々はともかく、どんな世界に転生させられるぐらい説明して欲しかったです。

 

 しかし、転生の特典はすぐに分かりました。なぜなら根源から教えられましたから。

 正確にはわたしが無意識に根源から知識を引き出していたと表現する方が正しいです。わたしはすぐに根源へのアクセスを止めました。

 

 根源とは―――0を1に、1を0にするモノの事で、分かりやすくザックリ言うと、何でも生み出せるし、何でも消すことができるモノの事です。

 この何でも生み出せるというものは、物体に限らず、知識やエネルギーなども含まれていて、それこそ何もないさえ生み出せる事ができるモノです。

 

 どう考えても、私が持つには大きすぎた力であり、自分自身が恐ろしかったからです。

 

 しかし、人は慣れる存在です。

 

 数年も経てば恐怖感も薄れ―――或いは麻痺し―――、今では検索サイトのように扱っています。

 本当に何でも答えてくれるので、かなり便利で助かっている。

 

 まあ、そうして今のわたしは、色々あって国立魔法大学付属第一高校に入学する一年生として、校門を跨いでいました。

 

 えっ!?ここはFateシリーズの世界じゃないのか!?

 

 ......なんて声が聞こえてきそうだ。

 

 それに関しては、わたしも驚いた。

 最初、型月の世界観だと勘違いしていたわたしは、親に魔法の勉強をすると言われたとき、魔法使えるとかヤベェーと思っていた。

 父親からサイオンという単語が飛び出したことで、漸くわたしは魔法科の世界だと気付いた。

 

「納得できません」

 

「まだ言っているのか......?」

 

 わたしが感慨に浸っていると、一組の男女が言い争っている声が聞こえてきました。

 目を向けると、この世界の主人公―――司波達也と、その妹―――司波深雪がいました。

 

 正直、この二人―――特に司波達也―――には余り関わりたくないという気持ちもありますが、原作に関わりたい気持ちも少なからず私にあります。

 しかし、それでもあの二人の会話に入っていくのは無謀です。

 

 触らぬ神に祟りなし、小さくそう呟いて、わたしはそこから離れました。

 

 

 

 あの二人からソッと離れた後、わたしは時間潰しとして読書をしていました。

 そろそろ講堂に行こうかどうか、読書しながら考えていたとき、唐突に声をかけられました。

 

「開場の時間になりましたよ?貴方もそろそろ講堂に向かってくれませんか?」

 

 タブレット端末から目を離すと、小柄な女性―――わたしが言えることでもないけど―――七草真由美がいました。右斜め少し奥には司波達也が立っており、目が合うと小さく会釈してきました。

 わたしも小さく会釈し返すと、七草さんが少し不満そうにしていました。

 

「もう~、わたしが声を掛けたのに~」

 

 わたしが「すみません」と返すと七草さんはクスクスと面白そうに笑いました。どうやら、からかわれたようです。

 関わりたくなさそうに七草さんの少し奥に陣取っている達也さんに視線で助けを求めますが、同情する目をされただけでした。

 やはり、関わりたくないようです。

 

「フフッ、ごめんなさいね。からかって。わたしは七草真由美、貴方は?」

 

「沙条愛歌です」

 

「ああ...貴方が沙条さんね!筆記は全て満点で一位、実技も一位!」

 

 

 

 

 

 司波達也は七草真由美の言ったセリフで、目の前の少女を意地悪な先輩に捕まったと同情する被害者から、警戒の対象に変えた。

 深雪に実技で勝つには、生半可な才能や能力では不可能と言っていい。深雪から入試で総合一位の子が新入生総代を辞退し、深雪にお鉢が回ってきたことを聞いたときは、達也は深雪が実技で負けたことに少なからずショックを受けたことは記憶に新しい。

 

「あれ?でも、そういえば沙条って?うーん、その名前家で見たような......」

 

「七草先輩、そろそろ時間では?」

 

 真由美は"沙条"という言葉に家で見覚えがあり、考え込んでいたが、愛歌の一言で真由美は「それもそうね」と考え、さっきまでの思考を打ち切り、愛歌や達也より一足先に講堂へと向かった。

 

 

 

 司波達也と沙条愛歌の間には、少し気まずい雰囲気が流れていた。真由美が一足先に講堂に向かった後、真由美に目を付けられた者どうし、そして向かう先が同じという成り行きで一緒に講堂に向かっていた。

 しかし、お互いがお互いを警戒しているせいか、会話は行われておらず、どこか少し気まずかった。

 達也としては今の空気でも問題ないが、沙条愛歌を探る場面としては良いシチュエーションだと考え、会話を振ることにした。

 

「そういえば入試成績が一位なんだっけ...凄いな」

 

「あら、ありがとう」

 

 沙条愛歌は二科生の差別意識を持ち合わせてはいないようで、こちらに嫌みを言うことなく、上品に笑って達也の褒め言葉を受け取った。

 

「家族に優秀な魔法師がいたのか?」

 

「ええ、沙条家は数字落ち(エクストラ・ナンバーズ)でね、元々は三条家(さじょうけ)って名前だったのよ。七草先輩がわたしの名字に見覚えがあったのも、そのせいだと思うわ。七草は元々第三研究所出身の家だったらしいし」

 

 達也はこの少女が深雪に勝った理由に、ひとまずの納得を見せた。確かに元々三の研究に属していた魔法師の血を引いているのなら、唐突に強い力を持った魔法師が生まれてくるかもしれない。

 だが、それでも達也は完全に納得することができなかった。

 

 その程度で深雪―――()()()()()()()()()―――に勝てるのか?

 

 そう思わずにはいられなかった。




一般人が沙条愛歌になったら絶対ダメ人間になるよね

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