「僕の能力は空間を操る程度の能力です。」
「私の能力は時間を操る程度の能力です。」
こんな感じで能力を伝えたのが数時間前、僕と咲夜は部屋に戻ってきてくつろいでいた。
あの後のお嬢様やパチュリーさんからの質問攻めが疲れたからだ。どうやら人間が持っているような能力ではないらしい。よっぽど珍しいようだ。結局は考えても結論が出ないから無駄だということになった。能力については、明日からパチュリーさんと色々やっていくことが決定し、解散した。
「空間を操る程度の能力か…面白いね。できることがめちゃくちゃ増えそうだ。」
「何。また悪戯のこと考えてるの?」
「それもあるけど、今考えてたのは戦闘のことだよ。使いこなせれば面白いのは確実じゃん。あとは移動が便利になるなぁってことぐらいだよ。」
この能力が面白いことは何となく分かる。僕の感は結構当たるのだ。能力が分かってから、この能力をどういう風に使っていくかとか、使い道が頭の中に溢れてニヤニヤが止まらない。そうやって笑っていたら咲夜がこっちをジト目で見てたから、抑えたけどね。
「明日は咲夜と一緒に、午前は美鈴さんと体術の訓練、休憩をしてそこから午後はパチュリーさんと能力について考える時間。一気に忙しくなるけど楽しくなりそうだな。咲夜。」
「そうね。なんで私達がこんな能力を、もってるのかは気になるけどあなたがいるしね。生まれなんて気にしないわ。あと悪戯に関しては程々しなさいよ。」
「わかったわかった。」
「はぁ…私に迷惑かけないでよ。」
「りょーかい。」
確かに生まれは気になったことはあるけど、似たような境遇の咲夜がいるから捨てられたっていうのを気にしたこともないし。咲夜も同じ感じかな。邪魔になるなら潰す。やっぱ単純でわかりやすい。
ため息つかれちゃったけど悪戯に関しては、無理かな。小悪魔さんと美鈴さんの反応が面白いんだよね。咲夜は驚いたときの反応が可愛いし。つい魔が差してやってしまう。
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「はぁー。」
私は長い息を吐いて目を閉じる。どうやら思った以上に疲れていたようね。
「咲夜そんなため息ついてどうした。」
こういうときに同じ部屋というのは便利なんだと思う。悩みがお互いにあればすぐ気づいて解消することができる。その本人が悩みの種じゃなければだけどね。私が今ため息をついたのは黒夜のせい。厳密に言えば黒夜がさっきからまたニヤニヤしながら何かを書いてるのが見えたせい。
率直に言おう。あいつは性格が悪い。
例えば私と黒夜がこの前美鈴さんに
「そういえば御二方は好きな物や趣味はないんですか?」って聞かれた時に、あいつは「咲夜。」って答えたのよ。当然私も美鈴さんも固まった。
私がそのときどんな風に感じたかはおいておこう。次に美鈴さんが、私の静止を無視して
「じゃあどんな所が好きなんですか?」って定番の質問をしたのよ。この答えは多分一生忘れないと思う。
あいつは
「勝負で負けが確定してるのに、それにすら気づかずに必死で悩んで足掻くところが面白い。」
この発言を聞いた瞬間私と美鈴さんの内心は一緒だったと思う。
((うわっ。こいつ性格悪すぎ!!。))
だって、私とこいつは、まだ8歳なんだもの。
絶対碌でもない人間になるって思ったわ。
あの時から私の中で、こいつのイメージは確定した。そんな人間が新しい【能力】というものを使えるようになって、ニヤニヤ笑ってたら誰も近寄らない。ただの予想だが、あの書き込んでる内容は能力を使った何かのアイディアだろう。
だが、私は部屋が同じなのだ。
あいつは、普段はのんびりしているし、やる時はやるやつでもたまにかなり性格が悪いやつにチェンジするのだ。これが今現在私の頭を悩ます問題である。ホントにどうすればいいのかな……
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能力についての練習を開始してからだいぶ時が流れた。能力の制御は段階的に行われた。
第1段階の、空間を繋げることから練習した。
水の入った袋から空の袋へ水を移す練習だ。
袋の中心の水を移すことはできるけど、底の方や袋の周りの水を転移させようとすると、袋をちぎって転移させてしまうのだ。パチュリーさんによれば、これを中の水全て移せるようして空間認識能力を向上させるのが目的らしい。
第1段階の基礎だがめっちゃ難しかった。
ちなみに物体の中に物体を転移させたら質量が小さい方が弾き出された。ぐちゃぐちゃにならないで安心した。これは、安心して自分自身の転移ができるってことだからね。
第2段階は、視覚外の物体の転移だった。
これは割と簡単で、向上した空間認識能力で物体の位置を頭の中で正確に認識すればできるようになった。これでテレポーテーション習得!!
練習中にこれ見よがしに紅茶を飲んでた小悪魔さんのカップに見えない所にあった砂糖を大量に混ぜてあげたりした。液体の中に固体を転移させても弾き出されないらしい。地味に新しい発見だった。
最後の第3段階は、新しい空間の創造だった。
パチュリーさんから魔法的な分野からもアドバイスをもらってようやくできるようになった。
これで物の収納に困らないと思うと達成感が凄かった。
これでやっと制御できるようになっただろうから、自分で発展させていきなさいという言葉をもらった。
ずっと隣で練習していた咲夜は能力の制御が俺より数週間早く終わっていた。ドヤ顔でこっちを見てきたから少しイラッとした。
この時すでに3年経過し俺と咲夜は11歳だった
始まった応用は基礎より簡単で咲夜が時を止めてる間の空間に侵入できるようになった。時と空間は密接な関係にあるっていうのはホントだったんだね。
咲夜は、世界中の時を止めてる訳じゃなくて、空間を指定して止めているみたいだから、その空間の違和感が凄かった。初めて侵入出来た時にドヤ顔で咲夜の方を見てやった。
その日の料理当番だった咲夜に飯を抜かれました。解せぬ…
ちなみに咲夜も空間を少しだけならいじれるようになって、俺も、自分の身体のみ加速と停滞ができるようになった。いずれ停止も頑張ります。
能力と並行して行われていた美鈴さんからの、
体術の訓練は厳しかった。最初の方はね、すぐに搦手にはしってしまうせいでよく注意された。基礎がしっかりしてないうちはダメらしい。能力を使いながらの組手もやってみたけど難しい。相手の動きが水の中で別の人が動いたときみたいに、空間の揺らぎで分かるようになった。
分かったとしも速すぎて対応出来なきゃ意味が無いんだけどね。
あとね、この訓練始めてからずっと思ってたんだけど、咲夜お前力おかしくね。俺男なんだけど。この発言を本人に言ったらまた飯を抜かれた。
執事とメイドの家事についてはこれもまた美鈴さんから教わった。頭が上がらないね。
幸いこれに関しては、2人とも便利な能力があったので1番楽だった。
調理時間?加速させればいいじゃん。
洗濯物?転移させて干したよ。
買い物?転移で行ってくるわ。
とか、このための能力だったのか!!って感じで咲夜と2人でテンションがおかしくなるほど喜んだ。執事とメイドは俺と咲夜にとって天職だったんだよ。
そんなこんなで能力の制御が終わって応用に入ってからも、楽しい日々が続きあっという間に時が流れた。相変わらず俺の方が少し身長が高い。
そして俺が紅魔館に拾ってもらってからちょうど15年目になる日、またお嬢様の部屋で話があるらしい。
わざわざこの日ということは、よっぽど重要な話なんだろう、と思いながら話を聞く。
そこで俺はお嬢様から告げられたのだった。
「黒夜。貴方はもう15歳よ。あと数年経てば肉体の老化が始まるわ。
ただ貴方たち2人には肉体の老化を止める能力がある。
選択しなさい。
人間として死ぬか、私達と同じ人外の時を生きるか。
貴方達には選択する権利がある。
能力をもつものとして選択しなければならない義務がある。
咲夜にも同じことを拾ってから15年目の日に伝えたわ。貴方達は、いつまでも、2人一緒だったけれど今回は自分で決めなさい。一応相談は自由よ。酷なことかもしれないけれど、これが貴方達の能力を持つものとして生まれた運命なのよ。どちらを選んでも私達からは、何もいわないわ。期限は今日から3年間。たっぷり悩みなさい。後悔がしないように。」