少しずつ文字数も、増えてきてるから努力あるのみ。
感想で意見貰えると嬉しいです。
「黒夜。貴方はもう15歳よ。あと数年経てば肉体の老化が始まるわ。
ただ貴方たち2人には肉体の老化を止める能力がある。
選択しなさい。
人間として死ぬか、私達と同じ人外の時を生きるか。
貴方達には選択する権利がある。
能力をもつものとして選択しなければならない義務がある。
咲夜にも同じことを拾ってから15年目の日に伝えたわ。貴方達は、いつまでも、2人一緒だったけれど今回は自分で決めなさい。一応相談は自由よ。酷なことかもしれないけれど、これが貴方達の能力を持つものとして生まれた運命なのよ。どちらを選んでも私達からは、何もいわないわ。期限は今日から3年間。たっぷり悩みなさい。後悔がしないように。」
お嬢様からの話が終わって数分後。
自室に戻ってきてからどうするかを考えようと思い、ベットの上で目を瞑っていた。
人として死ぬか、
能力を使用して永い時を生きるか。
正直今日まで1度も考えなかった訳ではない。
お嬢様に言われなくてもいずれ選択しなければならない事だと偶に考えてはいたことだ。それをまた今度考えればいいと先延ばしにし続けてきて、それで今日お嬢様がきっかけをくれた。そういうことなのだろう。
自分がどうしたいか、か。
正直なところ俺は今能力を使って寿命を延ばして生きたいと思っている。これは間違いない。
紅魔館の皆でワイワイと騒いでいつまでも暮らしていける。
ただそうすると何時までも俺はこの選択が正しかったのかという疑問を抱き続けるだろう。そうならないためにもやはり人間というものを1度詳しく知る必要がある。
この案を実行に移せばいいのだと、自分の中では答えが出てる。だけどそれを決める最後の自信が持てないってのが俺の問題か。
「黒夜、あなたも今日お嬢様から寿命の話を聞いたのよね。あなたはどうするの?」
咲夜から質問がくる。今まで一緒に育ってきた人生で初めて俺と違う道を行くことになるかもしれない選択だ。何せこの選択は人生に大きな影響を及ぼすだろう選択だ。
こいつも相当悩んでるのだろう。
「今はまだ考え中。まだ判断できる材料が揃ってない。ここで過ごしてきた日常が永い間続けられる可能性ってのは、魅力的だ。
ただ、旅に出て、人間をもっと知ってみるのもいいなとは思ってる。お誂え向きな能力も持ってるんだし。」
「そう。寂しくなるわね。」
寂しくなる...か。どうやら咲夜は俺が旅に出るだろうと思ってるらしい。実際に、今の会話中で、自分の中で整理ができた。だから俺は旅に出るだろう。咲夜には見透かされてたわけか。
女の勘っていうのは怖いな。
そして更に俺が旅に出て寂しくなるってことは咲夜はここに残るつもり...か。寂しいと思ってくれるのは嬉しいけど。
「咲夜は強いな。後悔しないのか?」
「私はここで あなたの帰りを待ってるわ。後悔はするかもしれないけど、そもそも正解がないじゃない。なら自分の選択を間違ってるなんて思わないわ。
あなたが選ぶ道と私が選ぶ道、どっちも本人が信じきれれば正解よ。」
ありがたい言葉だ。
一緒に成長してきたのに、背中を押されちゃったな。なら、俺は行動に移すべきだ。
咲夜も知ってるだろうが俺の決意はどうせすぐに揺らぐ。気分屋なのが俺の性分だ。
今までもそうだった。
ここで日常を過ごしていたらここから離れたくなくなっちまう。
ならすぐにでも行動に移すべきだろう。
お嬢様は、俺の運命を見たのかは分からないが3年間時間があるというのはそういうことなのかもしれない。咲夜はすぐに決めれたから、俺のための時間なのかもな。
「サンキューな。ちょっとお嬢様と話してくるわ。おやすみ。」
そう言ってドアを閉める。咲夜には悪いが多分これから3年間ぐらい会わないだろう。
俺らは、お互い以外の人間を知らなさすぎる。
会わない間に咲夜にも友達が出来ればいいな。
まあどこかで天然がバレれば友人はすぐにできるだろ。
3年間成長中の咲夜を見れないのは少し勿体ないが、小悪魔にでも頼んで写真を撮っといてもらおうか、
などと思いながらお嬢様の部屋の前まで転移するのだった。
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「3年間暇が欲しい、ねぇ。随分急いだ決断ね。まあいいわ。路銀はあげる。自分の目で人間をじっくり見てきなさい。あともう行くつもりなら咲夜に手紙でも書いときなさいよ。」
「わかりました。ありがとうございます。お嬢様。」
「楽しみなさいよ。そして、成長した姿を見せなさい。また会いましょう。」
「失礼しました。」
黒夜はそう言って部屋を出て言った。執事になった時と比べて成長を感じるわ。人間という種族はホントに成長速度が早い。私達妖怪からすると、その人生すらあっという間だ。だからこそ黒夜は、実際に人間の生き様を見てみたかったのだと思う。咲夜以外の人間を知らない分余計にね。
「はぁ…3年間か。」
昔からチラチラ運命に見えていた紅魔館に黒夜がいない時期はこの期間のことかしらね。そしてここには咲夜がいたから咲夜はここに残る、と。
容姿も選択も反対なのにお互いに必要としている。たまたま別の日に拾った赤子が互いに影響を及ぼす能力を持っているなんて、やっぱり面白い運命ね。
この3年間という時間は黒夜の人生において大事な時間にはずだ。
私達が育てパチュリーの教育を受けた聡い子だ。心配しなくても3年後黒夜なりの選択を聞かせてくれるだろう。それまでの辛抱だ。
·····目先の問題としては咲夜のケアをしなくちゃならないわね。
手紙を書くとは思うけど、ここまで急いだってことは決めてからすぐに来たのかもしれない。決意が鈍らないうちに。
性格と今までのパターンからすると咲夜には知らせてなさそうだ。咲夜も聡い子だから納得はするだろうし今まで一緒に育ってきた分気持ちもわかるはず。
でもそれとこれは別なのよね。
流石にたった一日の内にどこかへ行ってしまうとは思わないもしないだろう。
黒夜のやつ割と面倒臭い問題を残していったな、などと考えながら窓の外の月を眺めるのだった。
「今夜も、月が、みえないわね。あの日と同じだわ。」
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重い瞼を開く。冬の冷えた空気が顔にあたる。ベッドの毛布の中が心地よく、だいぶ昔の黒夜と一緒に寝ていた時を思い出してしまい頭から追い出す。あの時は起きたら互いに抱き合っていて恥ずかしかったのだ。
ちなみに私はメイドになってからは毎日決まった時間に起きるようにしている。
まだ寝惚けた頭で、久しぶりに黒夜の寝顔でも見てから起こそうと思っていたのだけれども、
黒夜が居ない。というかベッドすらない。
もう行ってしまったのかという疑惑が脳裏をよぎる。
急いで意識を覚醒させ、慌てて周りを見ると私の机の上に、手紙と1つの箱が置いてある。
黒夜の筆跡だ。丸っこい女子みたいな字が相変わらず特徴的だ。
この箱は、包装から黒夜からのプレゼントだろうと思い手紙に視線を落とす。
そこには、
〖 咲夜へ
簡単に書くと暫くの間旅に出る。
俺は咲夜以外の人間をあまり知らないから3年間人間を見てくる。お嬢様からの許可は貰った。
咲夜と紅魔館で楽しく過ごしていると、どんどん決意が鈍りそうだから夜の間に出る。俺のいない間家事を頼むな。
次にその箱の中身については俺からのプレゼントだ。パチュリーに協力してもらって創った懐中時計だ。いらなかったら捨ててくれも構わないけど使ってくれると嬉しい。
3年間時間があるんだ。大丈夫だと思うがしっかりやれよ。結構天然なんだから。俺は、この3年間を上手く使うつもりだ。修行もするし飯も食う。だからあまり心配するな。
3年後にもっと綺麗になった姿を見せてくれ。じゃあまたな。
黒夜より〗
と綴られていた。流石に寝ている間に、出発するとは思いもしなかった。
この黒夜らしい自分勝手な文章に言いたい事が、沢山あるんだけどもう居ないらしい。
寂しくなるな、とか私より綺麗な人と会わないでほしいなとか思いながら、黒夜が空間に収納したんだと思うスペースを見渡す。
枕が替わると寝れないタイプなのは知っていたけど、流石にベッドごと持っていくとは思わなかった。それ紅魔館の私物よ。帰ってきたら説教ね。
―――――――――――――――――――――
『現在』
私がゆっくり紅茶を入れてから戻るとだいたい美鈴が黒夜のことを話終わったところだったようだ。 2人の会話が聞こえてくる。
「じゃあその黒夜っていうやつは今旅に出てるのか?ここに居ないってことは、まだ3年経ってないってことだろ?他には、帰って来れない状態ってのもあるけどそいつはそこそこ強いんだろ?」
「そうですね。あれは2年前の事でしたからそろそろ帰ってくると思うんですけど、幻想郷に来れるんでしょうか?
彼は否定してますけど咲夜さんと同じくらい天然ですし...」
「2人とも、紅茶入れてきたわよ。」
「あっ、咲夜お前から見て黒夜っていうやつをどう思ってるんだ?」
魔理沙が私に答えにくい質問をしてくる。
黒夜がそろそろ帰ってくるということは、私も選択の日が近いということに気づいて、それに気を使った質問なのかしら。それにしてもね...
私にとって黒夜はあの日まで隣にいてくれるのが当たり前の存在だったのだ。覚悟はしてたけど私に直接何も言わずに出ていっちゃって...
「美鈴の言う通り天然なやつよ。帰ってきたら無断で持ち出した紅魔館のベッドを返してもらわなくちゃ。」
「恋愛感情はあるのか?」
「随分突っ込んだ質をしてくるわね。
...正直分からないわ。少なくとも私が好きだったのは、昔の黒夜で、この3年で黒夜も変わってるはずだから。」
「好きだったのは認めるのか。」
「ええ」
私は黒夜のことが好きだった。これは事実だから認めよう。しかし今はまだ分からないのだ。3年間どう変わったのかを見定めなければ分からない。私の黒夜に対する感情は3年前のものなのだから。
「多分、私から見てもそういうだったと思います。しかも2人とも。」
「えっ!?」
たった今美鈴から割と驚きの情報が出てきた。
あの時は私だけだったと思ってたのに黒夜も!?
「あれ、咲夜さん気づいてなかったんですか。多分黒夜くんは咲夜さんの気持ちに薄ら気づいてましたよ。」
えぇー。あのときは実は両想いでしかも、私だけ気づいてなかったって...。
ん?そうなるとあいつ私の気持ちに気づいていながら旅に出て連絡すら寄越さないのか。
今は幻想郷だから仕方ないかもしれないけど、
こっちにくるまでは能力を使えば出来たはずよね。
ふーん、そう...。