紅魔館の黒一点   作:アクト

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ストックつくってきます。


黒夜の3年間

日本のとある山奥、幻想郷を覆う博麗大結界と呼ばれる常識の結界の外側に1人の男がいた。

身長は175cmぐらい。黒髪で、赤というか緋色の瞳、服装は黒いフード付きのパーカーが特徴的だ。そして山奥であるにも関わらず、荷物を一切持っている様子はない。

 

そんな彼の前の空間に奇妙な裂け目が出現する。切れ目の両端にはリボンで縛られており、中の空間には多数の目がみえた。

その中から現れた長い金髪の美女は、口元を扇子で隠しながら、胡散臭く、それでいて妖艶な笑みを浮かべこういうのだった。

 

 

「幻想郷へようこそ。晦 黒夜。あなたの主、

レミリア・スカーレットから話は聞いてはいたわ。」

 

 

―――――――――――――――――――――

 

『3年前』

 

紅魔館の自室に、咲夜への手紙とプレゼントを置き、お嬢様から路銀を貰って紅魔館を出たのが数時間前、

現在は朝日が昇って店が開く時間だ。

 

俺は普段買い物をする店で、食糧を大量に購入しながら、他の街の情報を貰っていた。

普通は迷惑だが、大量購入のサービスということで大目に見てもらえるだろうという打算である。ちなみに買ったものは、別空間に保存してある。能力万歳!!

で、まず当面の目的としては、しばらく持つぐらい食糧を買えたので次は金策である。

これも能力を使えばいい。

貰えた情報の中にカジノがある街があったのでとりあえずそこまでの移動だ。

 

店主にお礼をいい、街から出てから人がいないところまで転移する。

ただ転移は見た事のある場所かで位置もある程度想像する必要があるので視界内の転移の繰り返しだ。

上空に転移してから進む方角に向かってひたすら前へ前へと転移をし続ける。これの方が普通に飛ぶより速いし、その場にいるのは一瞬だから人にも見られず効率がいい。

 

これを続けると結構疲れるが、

ほら、もう街へ着いた。人気のない修行に使えそうな森とかを、覚えといたので場所にも困らなさそうだ。まあ、これは今考えることじゃない。思考を切り替えなくちゃ。

 

―――――――――――――――――――――

 

ふぅ。この街もそろそろでなくちゃな。

稼ぎすぎて目をつけられたのがダメだったらしい。尾行されることが増えてきた。

こういう嫉妬とかが人間の面倒臭いところだよな。覚えとこう。

さて、この数日間で金は手に入れることが出来たから次は修行かな。トランプを閉まってから別のを取り出せるような便利な能力だし、鍛えるほど使い道が多くなるだろう。あと寝る時気づいたんだけど、持ってきたベッド紅魔館の私物じゃん。帰ったら何か言われるかな。

食糧➡︎金➡︎修行➡︎人間を観るってプランで問題なさそうだな。じゃあ次は武器を色々買ってから修行と行きますか。最終目標としてかかげるのは能力の多重展開。これができるようになるまでは修行かな。

 

―――――――――――――――――――――

 

「あー疲れたーー。」

 

たった今能力の多重展開の修行が終了した。

疲労感がやばい。多重展開は、体力というよりも頭の処理能力を大きく使うため精神的に辛い修行だった。ちなみに自分の身体のみ停止はできるようになった。加速と停滞は自身から3mまで距離が伸びた。3mって、咲夜の足元にも及ばない。

 

っていうかなんか久しぶりに声を出した気がする。やばいな。人と関わって無さすぎる。

能力の修行は、あまり動かないからこの修行で身体を動かしてた。

 

剣は、ひたすら振ったけど師匠が居ないから打ち合いすら出来ないし、鞭はそもそも何をすればいいのかよくわかんなかった。

だけど鎌に関しては割と使い易くて驚いた。

指先の力と手首の力、そして遠心力と能力の加速が、上手く組み合わさった時の鎌の先端の速度がおかしいと思う。音速超えちゃったよ...

 

まあ瞬間移動を繰り返しながら闘えるようになるまでは、使い道があるか分からない武器のことは置いておこう。

普通だと近づけないし、これについては実戦で慣れるしかない。

 

体術に、関しては微妙だった。組手が出来ないからね。ひたすらトレーニングを続けるだけだった。

 

というかあれなんだよな。能力が万能すぎて命が危険に晒されることがあんまりないんだよね。思い出してみて欲しい。能力の制御の時だ。あのときは袋の中の水だけを転移させることが出来ずに袋の1部ごと転移させてしまっていた。あれを相手にやれば終わりじゃん。

 

バラバラにしても再生する相手や、早すぎて空間の揺らぎを感じてからでは間に合わない相手には通じないかもしれないけど。あと相手を傷つけずに闘うときにも使えないか。

まあでも俺は最強になりたい訳じゃない。

 

そんなこんなで全ての修行を終えた。じゃあ次はもう少し金を貯めて、世界を旅するか。転移できる場所を増やしながら、人間を観るのを目的にしよう。

 

ふと空間から時計を出して見ると紅魔館を出てからここまでで約1年。今はまだ冬だから残り2年か。

1年かけてようやく俺は人間を知るために動き出すのだった。飛行機乗れば世界回れるかな。

 

因みにこの時計は咲夜にあげたものと同じで、自分用に創ったお揃いのものだ。外装は黒。

俺の好きな色は紅と黒だけど懐中時計に紅はなんかいやだったからね。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

修行を終えて本格的に目的の為に動き出した日からすでにだいぶ時が流れて俺は今山奥に行くために山中を歩いていた。能力を使わないのはただの気分だ。

 

あの日以来人間のことをよく知りたいと思い、様々な場所を巡り、能力までフル活用して行動してきたつもりだ。。

 

都会で生活するどこか常に忙しない人。

すでに家庭を持ち幸せに暮らしている人。

田舎ながらに地元の皆で助け合って生きる人。

日々真理を求めて研究を続ける人。

国の行方をその身に背負い頭を下げる人。

そんな幸せの傍らで、

生活の為に盗みを繰り返す人。

復讐心から、人を殺してしまった人。

自身の快楽の為に犯罪を自ら起こす人。

ただただ日常を繰り返してるだけな人。

生きるのが辛く自らの命を絶ってしまった人。戦争で人を殺す人。

 

本当に多くの人を見た。

良い人もいたし悪い人もいた。

そんな彼らから直接話を聞く機会もあった。

だが、一般の倫理観を得る前に多くの知識を得てしまった俺からすると、社会全体の一般常識が酷く歪んでいて、気持ちの悪いものに思えてしまった。

良くも悪くも、紅魔館には人は俺と咲夜しかいなかったから気づいてなかったが、俺は人を殺すのに躊躇いはない。なんの理由もなく殺したりはしないが、逆に言えば理由があれば躊躇せず殺せるのだ。これがどれだけ異常なのか。

 

そんなことに気づいたのが残り1年ぐらいになろうかという時期だった。華々しいとは思っていなかったが人間というものに酷く幻滅してた時期でもあった。そんな時だった。

 

突然紅魔館の反応が一斉になくなったのだ。

紅魔館には、咲夜に渡した懐中時計や俺の私物がある。それらの位置の反応が消えたのだ。

物凄く焦った俺は紅魔館に転移しようとしたが何かに阻まれてできず、紅魔館のすぐ側に転移した。そこで目に映ったのは、紅魔館があった土地である。そこには綺麗さっぱり何もかもなくなっていた。

暫く立ち尽くし、この有様が俺の転移と似ていると気づいたのが数十分後、俺の旅はどこかに消えてしまった紅魔館を探す目的に変化したのだった。

 

紅魔館を探す旅は難航を極めた。この現代社会で、あの規模の館が突然出現したら話題になるはず。それがないということはどこかの人気のない山奥か、森の中。海の中や、砂漠なんてところも考えたがお嬢様は吸血鬼だ。流水や日光のある所にはしないはず。

ということで山奥や森の中を中心に探し回っていた。そんなある日、森の中に住んでいた妖怪から忘れ去られた者達の楽園の存在を聞くことが出来た。幻想郷というらしく、日本の山奥にあるらしい。

 

「幻想郷か....」

 

なんとなくだがそこにいるのではないかという予感があった。これだけ探したのだから、そこが違っていたらもう見つけらないような気もしてきた。残り2ヶ月。幻想郷を最後の望みとして、とりあえず辺りに ()()()()()()()()()の場から動き出した。

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「幻想郷へようこそ。晦 黒夜。あなたの主、

レミリア・スカーレットから話は聞いてはいたわ。」

 

どうやら俺の勘は当たっていたらしい。残すところ数週間というときに幻想郷を発見できた。

結界に囲まれているらしいと聞いていたので空間に違和感か生じるまで、ひたすら各地を移動し続けたのが良かったらしい。

そしてお嬢様の名前が出て、分かることがあった。

 

「初めまして、だな。あとここ数年間、偶に俺のことを見ていなかったか?」

 

「ふふふ、やっぱ気づいていたのね。」

 

嘘つけ。あんたが気づかせようとしてたんだろと言いたくなるのを堪える。こいつが、本気で隠れていたら俺は気づけなかっただろう。

 

「それで、俺は合格か?」

 

「えぇ、合格よ。観てたことは怒らないでくださると嬉しいわ。幻想郷は全てを受け入れるのよ。ただ、ここは幻想郷の外。それだけよ。」

 

なるほど。つまり幻想郷の外のことも監視していて、幻想郷に害を成すと判断された場合は外で始末されるってことか。

 

「では私、八雲紫から幻想郷について説明してあげましょう。」

 

そこから俺は幻想郷のルールについて聞かされた。

幻想郷内での揉め事や紛争を解決するための手段として、スペルカードルールというものが使われているらしい。弾幕ごっことも呼ばれていて、弾幕を相手に当てる。単純にするとこれだけだが美しさを競い相手に魅せる弾幕を張ることが重要。弾幕ごっこといっているが弾でなくてもいいらしくナイフや泥などでもいいらしい。美しいのか?それ。ただ相手を殺そうとしてはいけないらしくそれが厄介だ。死者がでることは結構あるようだが。偶然ならいいのか?

そんなこんなで説明が終わった。

 

「さて、ではそろそろ行きましょう。」

 

八雲がそう言った瞬間すでに、場所が移動していた。これ、常に警戒していない限り避けれないな。少なくとも頭の片隅においておかないと能力の発動速度で負ける。八雲が能力を発動している時点で向こうには行先のイメージがあり、警戒していない限り俺にはイメージがないからだ。こいつには多分俺では、敵わないだろうな。

 

八雲紫の転移による思考から抜け出し辺りを見渡す。

窓のほとんどない紅い壁、紅い床、

そして、メイド服を着ている目の前の女性。

俺は全てを察した。

うわっ超気まずい。

内心焦りながら一先ず声をかけることにした。

 

「...久しぶりだな。咲夜。」

 

そして、俺の放った挨拶はスルーされるのだった。ヤバっ勝手に出てったこと怒ってんのか!?

 

 

 

 

 


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