紅魔館の黒一点   作:アクト

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もう少しで5000文字!!

んーー難しい。他の方の戦闘描写読んで勉強してきます。



選択の時

俺が紅魔館に帰ってきてから数日たった。

どうやら俺がいなかった間に、お嬢様が起こした紅霧異変というものがあり、ついに妹様が外に出れるようになったらしい。俺は直接関わってはいないが、パチュリーと、妹様が外に出ないように色々対策をしていたから喜ばしいことだとは思うが少し気まずいという状況だ。

ただ妹様は明るく、活発的な方だと感じたのでもう少し時間が経てば自然に打ち解けられそうだ。

ちなみに俺がお嬢様と妹様以外を呼び捨てで呼ぶのはそう頼まれたからだ。どうやら自分達より背が高い相手に敬語を使われることに違和感があるらしい。まだ偶にさんづけで呼んでしまうこともある。小さい頃から育ててくれた相手に呼び捨てというのはなかなか慣れない。

 

帰ってきてからは、俺は執事としての仕事以外に皆と弾幕ごっこの練習をしていた。本当に皆強すぎ。何より俺には美しさというのがよく分からないから、咲夜に見てもらって何度も改善をしていた。実力は、まあこれだけあれば一応大丈夫とだろうという強さらしい。咲夜のナイフが美しいのかは未だに謎だが。あと、皆強いのに、これに対して勝ったという博麗の巫女ともう1人の人間ってのは、凄いと思う。

 

さて、前置きはこのくらいにしとこう。

結局帰ってきてから咲夜とあの話はしていない。怒っていると思っていたが、どうやらそれはそこまでではなくて、今はお互いの選択に影響が出ないように、お互いが避けあってるという感じだ。俺も咲夜も能力があるので互いに避け合えばほとんど会うことがない。これを知った皆から呆れたような顔をされたのを覚えている。

こんな感じで過ごしている内に、今日が咲夜が拾われてから18年目、咲夜の選択の日になった。俺から咲夜に言うことは特にない。咲夜が選んだなら間違いはないと、勝手に信じているからだ。あいつは、やるときは完璧にやる。だから俺が心配しなくても大丈夫なはずだ。俺はいつも通りでいればいい。

 

そうして咲夜はお嬢様のお部屋に呼ばれて、少しすると戻ってきた。どうやらすっきりした顔をしているから咲夜なりに考えて、結論を出せたらしい。咲夜に、どっちを選んだかはまだ俺に言わなくていいと言って俺は自分の部屋に戻った。この3年の内に、咲夜は俺と部屋を分けていた。3年前までの部屋をそのまま真ん中にして、その左右にそれぞれの部屋がある。

昔2人で使っていた部屋は、憩いの場というか休憩室みたいになっている。

 

咲夜は選択をした。なら次は俺の番だ。俺はこの選択を後悔することはない。偶にもう片方の選択肢を選んでいたらと、考えることはあるだろうが俺が選ぶことだ。俺はそれが自分の意思で選んだことなら否定はしない。

君がそれでいいならそれでいいってやつだな。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

「黒夜、あれから丁度3年。貴方は、外でたくさんの人間に会い、話し、学んできたはずだわ。それを踏まえた上でもう一度尋ねましょう。

貴方は人間として、普通に死ぬ道か、

化け物として長い間を生きる道か、

どちらを選ぶのかしら。」

 

咲夜が、選択をした日から数週間後、今度は俺が拾われてから18年目、つまり俺が選択をする日だ。今考えると俺はやっぱり物凄く恵まれた環境で育ってきたことが分かる。昔は当たり前の事だと思っていたが、何十億という人間の中で、妖怪に拾われて育てて貰った人間なんてほとんどいないだろう。俺が観てきた人間は、普通親がいなければ、すぐに死ぬか、スラムで貧しい暮らしをしていた。今生きてることの珍しさというか有難みが分かるというのは、外を実際に観てきたことのおかげだ。

 

そして俺はお嬢様の部屋にいて問われている。

視界に映るのは、お嬢様と、新しい真紅の調度品。これは、前の異変で壊れてしまったから買い換えたのだろう。相変わらずの色にいったい何処から仕入れているのかは気になるが、まあいい。1度深呼吸してから、気持ちを切り替える。別に緊張している訳でもないが、気分は高揚している。重要な選択と分かっているからか。

人の道か、能力を使って延命する言わば人外の化け物としての道か、

散々遠回りして、迷った。

外の人を観て気づいたことの中に、夢中で何かを追い求める人の方が幸せだっていうことがある。何かに全力を注いで、同じ志の仲間と語って、競って、笑い合う。そうやって生きてる人は、皆幸せそうにしていた。

では俺の求めるもの、願望は何か?

俺には何も思い浮かばなかった。

パチュリーさんは知識、小悪魔さんは、快楽というようにここにいる人達には多分何か求めているものがある。お嬢様も妹様も咲夜もパチュリーさんも小悪魔さんも美鈴さんも。

だから俺は今に目を向けた。

そこには、紅魔館での日常があった。

ありのままの自分を受け入れてくれた人達がいた。俺は強欲だから、弱いから、今を手放すことはきっとできない。

なら、俺が選ぶ道はこちらだろう。本当に3年間で、多くのことを学んだ。

 

「俺はここでたくさんの事を学んだ。育ててもらって、知識をもらって、生きていく術を得た。

だからこそ、その全てをここで活かしていきたい。俺はやっぱりここでの日々を望みます。

そして、その道を選ぶなら、力が必要です。

理不尽に打ち勝てるだけの能力、それを活かすための知識。この道を突き進むためには、人間の寿命では短すぎる。ならば、普通に生きて死ぬ権利など自ら捨てましょう。」

 

「…わかったわ。貴方も咲夜も自ら考えて選択した。過程は違えどまた2人とも同じ道よ。

それならば私達は育て親として歓迎するわ。

ようこそ。私達の世界へ。」

 

あ~かなり疲れた。そして咲夜もこっちを選んだか。理由は何となくしか分からないが良かった。文字通り同じ時を過ごすことができる存在が何れ居なくなるのは寂しいからな。

 

「では、お嬢様。またこれからもよろしくお願いします。失礼します。」

 

扉をそっと閉めてから、自分の部屋のベッドの上に寝転がるようにして転移する。

 

視界に映るのは、3年前より伸びた銀髪をおろした姿。

 

「...行儀が悪いわよ。」

 

...それっきり沈黙が訪れる。どうやらお互い気を使いすぎて変な感じになっているようだ。

こいつがこの時間にここに居るのは俺の選択が気になるからだろう。まともに会ってなくても、俺は咲夜の態度や様子からどちらの選択をするか予想出来ていたし、さっきお嬢様から聞いた。さて、空気を戻す為には俺から話しかけるべきだろう。

 

「咲夜、俺がどっちを選んだか気になる?」

 

「えぇ。この数週間この話を互いにしなかったし、気になるわ。」

 

「咲夜と同じ選択だ。俺も能力で自分の寿命を延ばせるようになった。咲夜と同じだ。」

 

「そうなのね。」

 

「あっあともう一つ今日の内に言いたいことがあったんだ。」

 

「何?まだ何かあるの?」

 

「俺は咲夜のことが好き。昔からだけど咲夜はこの3年でもっと綺麗に成長したし、更に誰にも渡したくない気持ちが強くなった。だから初めてだけどもう一回言う。俺は咲夜のことが好きだ。」

 

俺が咲夜の後ろに座り直して、ベッドに腰掛けている咲夜に向かって話しているからここからは顔は見えない。

 

「どこがっていうのは一つ一つあげるとキリがないから細かくは言わないけど咲夜の全てが好きだ。3年ぶりにまともに話して何言ってんだって思うかもしれない。確かに3年間で少しは変わった自覚はあるがこの気持ちは変わらないどころか前より強くなった。俺は咲夜の事をもっと知りたい。俺と付き合ってくれ。」

 

言いきった。めっちゃ恥ずかしかったけど達成感が半端ない。この気持ちは全部事実だし、本心だ。今日を選んだ理由は俺にとって大切な日だからっていう理由だ。

下を向いている咲夜の反応がないから、咲夜の顔をゆっくり覗き込む。顔が見えないから怖い。3年ぶりに何言ってんだと怒られるか、断られるか、もしかしたら成功してくれているのか。そして顔が真っ赤なのは確認した。これは怒ってるのか、恥ずかしがっているのか。優しい声色を意識してもう一度いう。

 

「咲夜?俺と付き合ってくれるか?」

 

「はい…。」

 

何この可愛い生物。

答えは咲夜でした。

咲夜が彼女とか幸せすぎて死にそう。

 

「咲夜、本当にいいの?」

 

「2回も言わせないでちょうだい。」

 

「おっと復活した。じゃあ3年間でお互い変わったところもあるだろうけどこれからもよろしくね。お互い時間はたくさんあるんだから。」

 

―――――――――――――――――――――

 

私は久しぶりに紅魔館を訪れていた。今日なら前回聞いた黒夜っていうやつがもう帰ってきていてるだろうと思ったからだ。

 

「美鈴。遊びに来たんだぜ!!」

 

珍しく起きていた美鈴に普通に門を通してもらい中に入る。そしてその瞬間にいつも通り目の前に気づいたらいる咲夜に話しかける。

 

「今日は黒夜っていうやつに会いに来たんだけどいるのか?」

 

「黒夜は今買い物よ。ついでに幻想郷の地理をだいたい見てくるっていってたけど、そろそろ帰ってくるはずよ。」

 

買い物に行ってるのか。ならそろそろ帰ってくるらしいし待つとするか。咲夜にそれを伝えると中に通され紅茶を飲んで話す。流石咲夜のだな。やっぱり美味しい。それにしても、

 

「咲夜嬉しそうだな。」

 

「そう見える?」

 

「あぁ。」

 

黒夜っていうやつが帰ってきて、咲夜に影響を与えたらしい。なんか咲夜の雰囲気が柔らかくなったというか、表情が豊かになった気がする。

 

「いきなりぶっ込むけどどうなんだ?付き合ったのか?」

 

「ええ、そうよ。」

 

「好きなのか?」

 

「多分。他の人に渡したくないってくらいには。」

 

前は好きかどうか分からないって言っていたのにな。なんか今は幸せそうで、こっちが恥ずかしくなってくる。これは揶揄う気が失せる。

「流石に、自分のいない所で自分の話をされるのは恥ずかしいかな。君は咲夜の友達かい?知ってるかもしれないけど初めまして。俺は晦 黒夜だ。」

 

「私は霧雨 魔理沙。普通の魔法使いだぜ。よろしくな。黒夜。」

 

へぇ。これが咲夜の彼氏の黒夜か。咲夜はなかなかの顔って言ってたが普通にイケメンだ。

じゃあ早速幻想郷なりの挨拶としますか。

 

「黒夜、弾幕ごっこしようぜ!!」

 

―――――――――――――――――――――

 

咲夜と、付き合うことになってから1週間ぐらいたった。職場内恋愛ってことで一応お嬢様に報告したが全然OKらしい。残りの人にも報告したんだけど、妹様以外やっと付き合ったのかっていう風に言われて恥ずかしかった。妹様は、素直におめでとうって言ってくれたので、仲良く慣れた。

そして今日買い物に行って、転移できるように位置を覚えようと大雑把に幻想郷の地理を覚えてから帰宅する。空間把握能力をだいぶ使ったから精神的に少し疲れた。

 

紅魔館に、転移したらどうやら俺に会いに咲夜の友達が来ていると、美鈴が教えてくれた。

挨拶をして、名前を聞くと霧雨 魔理沙というそうだ。あれっじゃあ紅霧異変の解決に関わった内の1人か。そして何故か始まる弾幕ごっこ。どうやら挨拶のような感じらしい。一応死者が出ることもあるって聞いてるんだけどなぁ。

挨拶って、死人が出る可能性があるけど挨拶って。活発で、元気な人みたいだし死の危険はなさそうだ。

なら身内以外での初めての弾幕ごっこ、

胸を借りるつもりで頑張ろう。


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