ちなみに弾幕ごっこは難易度Lunatic
「黒夜弾幕ごっこしようぜ!!」
「制限は?」
「スペルカードは3枚、被弾は3回までだ。」
「了解。」
挨拶のようにスムーズに始まる弾幕ごっこ。
相手は咲夜の友達の霧雨魔理沙で彼女は異変解決に関わった人間だ。胸を借りるつもりで頑張ろう。
「じゃあいくんだぜ。」
そう言って霧雨は箒に乗って飛び上がる。空中戦ってことか、苦手だな。空中戦は、自分の下にも空間があるわけだから注意しなければならない場所が増える。だから嫌なんだけどなあ。
しかし相手がこちらよりも高い場所にいるならこちらも行かなくてはならない。頭上の有利を取られたくないからだ。
俺は飛んでから空中で足元の空間を固定して普通に立った。これなら真下からの攻撃は防げるし、地上みたいな感覚で動ける。
「へえ。空間を固定したのか?便利な能力だな。」
どうやら霧雨は、俺の能力を知っていたらしい。咲夜とかから聞いていたのか。まあ自分が知っているということを教えてくれたのはありがたい。
「待たせて悪い。始めようか。」
「まずは小手調べだぜ。
恋符『 スターライトタイフーン』!!」
星型大、星型小、レーザーが動いてる何かから放たれる。
霧雨から放たれた弾幕を観察して規則性や抜け道を探す。後ろからの弾幕は無し、斜め下からの弾幕注意、星型大に紛れて見えずらい小さいのに注意、そしてレーザーは見てから動いてからは間に合わない。
空間把握能力をフルで使いながら、思考を回す。まずレーザーの、回転速度と途切れるタイミングの感覚を掴む。あとは小さいのに当たらないように注意する。そしたら後はなんとなくの感覚に身体を任せる。続くこと数十秒。弾幕が途切れる。
回避に専念してこちらから弾幕を放っていなかったが、相手の小手調べをパーフェクトとで避けれた。これで小手調べかよ。パチュリーの弾幕と似ている部分があったから、少し楽だったけど、それでもこれか。頭が痛いな。もっと思考ではなくて勘で避けなければもたないかもしれない。
「まじか。小手調べとはいえ全部避けられるとは思わなかったんだぜ。」
俺は今のでだいぶ疲れたのに霧雨は本当に小手調べだったらしい。今までは能力で適当に空間ごとちぎって殺してたから頭を使うのに慣れてないのが俺の弱みか。ただまだ終わっていないから気づかれるわけにはいかない。
「じゃあ俺からも。界符『 鏡の裏の世界』」
俺はこの弾幕ごっこ初の弾幕を宣言して放つ。俺の弾幕は大抵初見殺しだぜ。
このスペルカードは俺が左右に区切った弾幕を放ち、真ん中の空間の境目にきたら逆になるという弾幕だ。斜めの弾幕\が真ん中にきたらくの形に、変化する。わざわざ弾速を少し遅めに設定して軌道を頭の中で思い描いたところで変化する弾。1度頭で考えて予測してしまった分だけ修正が難しくなるというわけだ。中途半端に賢いと余計にきついぞ。パチュリーには全部避けられたが。引きこもりの魔女には通用しなかったというだけの話だ。
この弾幕は俺がかなり気に入っている弾幕で、
能力も楽な使用方法のため頭への負担が少ない。他の奴らはどうやってあれだけ沢山の弾幕を制御しているのか気になる。
スペルカードの終わり際で更に数を増した弾幕に霧雨が被弾。俺がリードしたな。ただ素人の弾幕に被弾した霧雨が、本気を出しそうで怖いんだがな。
「うっ。当たっちまったぜ。ならどんどん上げてくぜ。黒魔符『 イベントホライズン』」
さっきよりも数がかなり増した弾幕が放たれる。回転する何かから内側に大量に放たれる弾幕。やばいな。後ろも既に弾幕でいっぱいで囲まれた。後ろにあっても能力の影響で位置は分かるのだが分かってしまうだけ圧迫感がある。
圧迫感に押されて前へ飛び出す。すると待ち構えていたかのように弾幕が螺旋を描いて変化しだす。性格が悪いというか予測されていたような気がしてイラついてしまう。この弾幕は頭で理解できない。経験が足りなさすぎる。ならその場で動くしかないか。
前へ移動してしまったせいで弾幕に挟まれてしまった訳だが能力を乱用してどうにかしようとする。背中を直撃しそうな弾をまずは上に飛んで回避する。上にある弾幕に当たらないように上の空間を固定して、空中で宙返りして蹴る。空中で自由に動けないのはきつい。上の空間を蹴ったせいで下に向かって移動する。そこへ飛んでくる次の弾幕。避けなければ腹に命中する。今の状態は足が固定した空間に触れておらず、自分で飛んでもいない落下状態。まともにやったら動けないが自分の傍の空間ごと上下をひっくり返す。この空間内は重力が逆に働くのでさっきまで下だった地面から空に落ちるように上へ引っ張られる。慣性はそのままだったので、スレスレだったし、身体も疲れたがようやく半分ぐらい。
今みたいに次を考えずに当たりそうな弾を考えて回避するのは、頭を使うというよりも精神的に疲れる。多分今からもう一度やると当たる。
なら勘に任せるしかないか。
俺は勘の良さには、自覚があるがそれは周りの情報をある程度頭で理解した上で、次の思考をせずになんとなくの行動に移せるということだ。全く情報がない状態でやるもんじゃないし、頭が疲れて集中しづらい。そんなことを考えてる内にもう迫ってきている弾幕。
もうやだーとか何このハードな遊びとか疲れたとかの思考をどっかに追いやる。
取り敢えず、能力を使って空間把握をする。
ただ最初みたく、移動速度や大きさ、形まで把握するんじゃなくて薄く大雑把に。頭の中に、ぼんやりとほんとになんとなくな感じで。
本当にこんなに少ない情報で勘によって予測できるのかは不安だがやってみるしかない。
わざわざ動き回ると認識しなければならない弾の数が増えるで、最低限の動きで回避する。
頭の中の思考も先程と違って考えてから動くのではなく、動いた後に思考がついてくる。
右前に移動…そして後ろにバック…左に躱して…上へ飛んで…
なんか避けれてるなとか思ったが、余計な思考が混ざったその瞬間に被弾。
思ったより痛くて痛みを想像してない身体が硬直する。人間の筋肉は意識するだけで多少硬くなるが、さっきは何を考えていたか今は分からないほど集中していた。そこへ直撃した一撃。
そうして痛みによって集中が途切れて動きが鈍ったからまた被弾。やっぱり痛いんだけど。
そしてやっと終わる弾幕。
次を放たれたら確実に負けるので、こちらも悪あがきのスペルカードを使う。
「…夢符『 夜中の白昼夢』」
このスペルカードは、『 鏡の中の世界』よりももっと能力を使う疲れる攻撃だ。けどここで当てないと、多分次で負けるから機会がないから使ってしまおう。
こちらはどんどん様々な形の弾幕を放ち続け、霧雨はそれを躱し続ける。だんだん数が増えていき、躱す数が増えてきたところで気づいたようだ。
この弾幕は、霧雨が躱した弾幕を転移させて空間に固定する。今では、霧雨の周りは今まで俺が放った形の弾幕が、固定されていて行動を阻害している。それを躱し続けている霧雨から思いついたこともあるが今は関係ない。そろそろこの技の締め時だ。
霧雨の周りに固定してある形がすべて霧雨に向かって交差するように動きだす。今まで躱してきた形を全て平面上に重ねて見ると簡単に抜けれるスペルカードだが、ここは3D、紙の上のような平面上じゃない。
またもや被弾する霧雨。これで2対2。次当てた方が勝ちなのだが、こっちはもう疲れて避けれる気がしない。
「これで決めるぜ!!
『 ファイナルマスタースパーク』!!」
細くないか?とレーザーを見て思った次の瞬間に俺の身体は、極太のレーザーに呑み込まれたのだった。
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「ッぅ」
眼を覚ますとようやく見慣れてきた新しい俺の部屋。身体を起こそうとすると鈍い痛みに顔を思わず歪める。あの最後の瞬間油断したな。
いつも使っているノートとペンを空間から取り出して、うつ伏せの状態で書き込み始める。
今回の反省点と目指すべき場所、霧雨の弾幕の特徴と、それを見て思いついたこと、そして自分が使ったスペルカードの感想を書き込んでいると、ノックの音が聞こえた。
ドアを音もなく開けて、入ってきたのは咲夜。
咲夜から伝えられたのは、霧雨は、今日はもう帰ったこと。また遊ぼうと言っていたことぐらいだった。咲夜からは安静にしていてくれと言われた。
そして音もなく閉まるドア。そんなことまで気にするようになったのか。
そしてまた霧雨との弾幕ごっこを思い出す。
今ノートに書いた反省点は、回避の意識の割き方。
軌道と規則性を見出して丁寧に避けるパターンと、土壇場でやった3割ぐらいしか意識せずに残りは身体に任せるパターンの使い分け。
これは、その日の調子や弾幕のわかりやすさで決めればいい。回避の仕方自体はその内慣れるだろうし、明日からの訓練だ。
目指すべき場所というか目標は、最後の霧雨の
『 ファイナルマスタースパーク』のようなものとは思わないが、切り札のようなスペルカードを作ること。そして単純な瞬間火力不足。
まあ目標については、今は後回しで回避が優先だろう。
回避で思いついたのは、空間内の相手の動作を完璧に把握すること。能力を本気で使えば1度に大量の情報が送られてきて相手の回避を知ることができる。なら、回避に無駄な動きが少ない知り合いの動きを真似よう。なら美鈴か。
明日からは美鈴とひたすら弾幕ごっこをするとしよう。
取り敢えず痛みが引いたら咲夜の手伝いをしてこようか。負けてごめんなさいってしてこないと。