『ジオウ映画を見てルシエドが思った個人的考察』を、感想文じゃなくてそのまま小説にしました。
 後々公式設定と食い違う可能性が非常に高いですが、お許しください。

 Over Quartzerはいいぞ……!

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頑張って捻出した時間を全てジオウ映画視聴と睡眠とコレの執筆に使ってしまいました
重ねて書きますが、独自考察の塊です


少年は王様になる夢を見た。王様は少年の頃の夢を見た

 子供は早く大人になりたいと願う。

 大人は子供の頃に戻りたいと願う。

 子供は王様になった自分を夢見る。

 王様は未定な子供の自分を夢見る。

 辿った未来を変えたい少年が居て。

 過去の自分を肯定する老人が居た。

 

 

 

 

 

 平成は、平成31年で終わった。

 平成生まれの人間は、大まかに30歳以下の人間であると言える。

 世界人口の年齢構造は、各国統計調査によれば、15歳以下が28.3%。

 30歳以下ならば―――世界人口の、ほぼ五割に相当する。

 

 "かの日"に、平成に生まれた人間は全てが空に吸い込まれ、消えた。

 平成に作られた地球上の多くのものは失われ、街は廃墟に、風景は荒地へと変わった。

 Quartzer(クォーツァー)

 世界を最悪の形に成り果てさせた元凶。

 平成の人間と世界を吸い上げ、丸ごとリセットせんとした、歴史の管理者である。

 その本質は独善とも、邪悪とも言えるだろう。

 

 その野望は打ち砕かれ、組織としてのクォーツァーは既に壊滅している。

 クォーツァーが計画を完遂し、世界をその手に収めかけたその瞬間―――常磐ソウゴが真に覚醒の時を迎え、『オーマの力』が解放された。

 『オーマジオウ』と成ったソウゴの手により、クォーツァーの首領格は全滅。

 クォーツァーも潰走し、ソウゴは勝利を掴み取った。

 

 だが、それだけだった。

 

 世界人口の半分が死亡。

 平成生まれの全滅により、ソウゴの友は一人残らず死亡した。

 巨大ロボット・ダイマジーンによって世界は大規模に破壊され、残った物も多くが消滅。

 世界は荒廃し、政府も何もない滅びかけの世界に、オーマジオウ/ソウゴは君臨した。

 それから、約50年の月日が経過する。

 現在西暦2068年。

 

 かつて彼は、"最高最善の魔王になる"と誓った。

 その誓いは今もその胸の奥にある。

 けれども、今のこの世界において……オーマジオウは、『最低最悪の魔王』と呼ばれていた。

 

 まどろみの中、オーマジオウは目を覚ます。

 

「……」

 

 ミサイルが爆発する音が聞こえる。

 レジスタンスの攻撃だ。

 この時代において、一般人は例外なく「世界をこんな風にしたのはオーマジオウだ!」と認識していて、オーマジオウは世界の全ての敵だった。

 全てがオーマジオウを憎んでいた。

 全てがオーマジオウを恨んでいた。

 オーマジオウに感謝する人間などいやしなかった。

 

「オーマジオウだ!」

「殺せ!」

「世界を救うんだ!」

 

 オーマジオウをレジスタンスが囲む。

 

 何故こうなったのか。

 それは、オーマジオウが2019年にクォーツァーを皆殺しにしなかったことに起因する。

 クォーツァーは何人か生き残ってしまったのだ。

 もし『令和の世』でも来ていたなら、『令和ライダー』がクォーツァーの残党を倒してくれた……などという奇跡もあったかもしれないが。

 この世界は、令和の世には進まなかった。

 政府は崩壊し、ジオウが君臨し、ずっとずっと、荒廃の平成が続いてしまっている。

 

 クォーツァーは反ジオウ勢力を結成し、それはレジスタンスと呼ばれるものになった。

 更には情報操作を敢行。

 『世界をこんな風にしたのはオーマジオウだ』という情報を皆に信じさせる。

 そうやって、オーマジオウの味方を減らし、オーマジオウを憎み恨む者達を味方に付けることに成功した。

 今や、オーマジオウが世界をこんな風にしたことは、世界中の常識である。

 

 オーマジオウに最後に残っていた肉親がクォーツァーに殺されたことで、オーマジオウの味方は完全に0になり、クォーツァーの残党が企んだ計画は完了した。

 もうこの世界に、オーマジオウの味方はいない。

 もうこの世界に、クォーツァーの脅威を記憶している人間は居ない。

 オーマジオウ自身を除けば、誰も居ない。

 

 オーマジオウは何度か見ている。

 レジスタンスの中に、クォーツァーの人間がまだ現役で動いていることを。

 クォーツァーの仮面ライダーが使っていたベルトが、独自のウォッチと共にレジスタンスの若者に渡されるのも。

 レジスタンスをクォーツァーの人間が率いているのも。

 だから、殺すのだ。

 

「ふん」

 

 オーマジオウが腕を振るう。

 ただそれだけで、周囲の全てが弾け飛んだ。

 レジスタンスが死んでいく。

 その中のクォーツァーも死んでいく。

 だが死んでいくのはほとんどがこの時代の人間、オーマジオウが庇護する民であった。

 

 だが、"しょうがない"とオーマジオウは割り切る。常磐ソウゴではありえぬほどに。

 

 民であろうと、殺すのを躊躇えばクォーツァーが必ず残る。

 これは、摩耗し擦り切れた常磐ソウゴ/オーマジオウが自分に定めたルールの一つ。

 世界を守るため、自分に課した苦しみのルールであった。

 そうでもしなければ守りきれないと思える、そんな世界がここだった。

 

 オーマジオウは圧倒的な力で、襲いかかってきたレジスタンス戦力をすり潰していく。

 

「……撤退したか」

 

 とても敵わない、と思ったのか、レジスタンスとクォーツァーは撤退していく。

 オーマジオウの言うことなど誰も信じない。

 レジスタンスはクォーツァーが混ざっている事に気付かない。

 だから、どうにもならない。

 オーマジオウにできることなど、殺して壊す以外に何も無い。

 クォーツァーの嘘が世界の形を固定する。

 

 全ての仮面ライダーの歴史を乗っ取り奪ったオーマジオウの歴史は……皮肉にも、クォーツァーに全て乗っ取られ、全て奪われてしまっていた。

 

 彼が人々を守った歴史など、もうどこにも存在しないのだ。

 

「ふう」

 

 オーマジオウは、開けた土地の真ん中にポツンと置かれた玉座に腰を降ろす。

 彼は普段ここに腰を降ろし、体を休めている。

 レジスタンスは、いつもそこを狙って攻撃を仕掛けていた。

 

 あまりにも違和感のある玉座であった。

 建物の奥にある玉座ですらない。

 まるで山の中の拓けた平地に、適当に玉座入りの小屋を置いているかのよう。

 おかしい。

 何か理由があるのだろうが、レジスタンスはその理由を推察できなかった。

 だが、それも当然と言えよう。

 

 彼がここに小屋の玉座のようなものを置いているのは―――自分を狙ってレジスタンスが攻撃してきた時、関係のない人を巻き込まないためなのだから。

 

 それはクォーツァーの嘘に覆い隠され、レジスタンスの誰もが気付けない真実であった。

 

 クォーツァーは事実を嘘で塗り潰さんとした。

 織田信長の歴史を、捏造したどこかの誰かのように。

 けれども、嘘で言い伝えを捻じ曲げても、人の心は捻じ曲げられない。

 オーマジオウは常磐ソウゴなのだ。

 なればこそ、彼は民を慮っている。

 

「……」

 

 玉座の肘掛けに頬杖をつき、オーマジオウは体を休める。

 50年間ずっと孤独に戦い続けてきたオーマジオウは、70歳目前の老人とは思えないほどの生気に満ちている。

 だがその体と心は摩耗し、疲弊していた。

 

 オーマジオウの力をもってすれば、自身に反抗する人間を皆殺しにすることなど容易い。

 反抗勢力の根絶も難しくはない。

 二度と逆らう気が起きないよう徹底的に民を痛めつけることだってできる。

 やろうと思えばどこまでだって残酷に行ける。

 だが、オーマジオウは最後の一線を越えない。

 

 彼は常に、自分に襲いかかる者のみを皆殺しにする。

 最悪の事態にならないよう、民の中のクォーツァーをドラグレッダー達に処理させる。

 それだけだ。

 的確ではあるが生ぬるい。

 だからこそ、レジスタンスは絶えないのだ。

 

 最高最善の魔王であろうとするがゆえに、決定的な一手を選べない。

 最低最悪の魔王と呼ばれながらも、最低最悪の魔王らしい手段を選べない。

 それが、オーマジオウの限界だった。

 それは、疲弊した優しさだった。

 そこに、摩耗した慈悲があった。

 

 すり減って、すり減って、すり減って。

 摩耗して、摩耗して、摩耗して。

 色んなことを忘れて。

 色んなことを見失うようになってしまった。

 

 かつては、クォーツァーに利用されている民を殺せなかったのに。

 今は、躊躇わずいくらでも殺せるようになってしまった。

 オーマジオウに成り果てた自分を、常磐ソウゴは静かに見つめる。

 

 寂しいけれど、寂しいと誰にも言えないから。

 言う相手がいなくなってから、もう何十年も経ってるから。

 もうこの世界に、オーマジオウが心の内を見せられる相手なんて一人もいないから。

 

 オーマジオウは、人の痛みが分からない王様になりつつあった。

 

 

 

 

 

 殺して、殺して。

 壊して、壊して。

 クォーツァーの人間が混じったレジスタンスをすり潰していく。

 そんな毎日。

 

 50年間終わらず続く地獄の中、オーマジオウは思い出す。

 クォーツァーは、平成というものそのもののリセットを企てていた。

 平成は出来損ないだと。

 この時代は石ころだらけの出来損ないだと。

 こんな凸凹だらけの時代は消して、最初からやり直すべきなのだと。

 彼らの野望はオーマジオウに粉砕され、平成の消去は未達成に終わった。

 平成は終わらず、世界もまた終わらなかった。

 

 ただ、視点を変えれば、クォーツァーの企みは中途半端に達成されたと言える。

 

 この時代は"平に成ったまま"だ。

 

 凸凹だらけの時代であったはずの平成は、何もかもが平らな時代になってしまった。

 過剰な幸福も、過大な不幸もない。

 大きな希望も、大きな絶望もない。

 ただただ、真綿で首を締めるような苦悶の時間が続く、起伏の無い平らな苦痛。

 『終わらない平成』。

 次の時代が永遠に訪れないという閉塞。

 

 瞬間瞬間を本気で生きている人間の人生には必ず凸凹がある。

 成功もあれば、失敗もあるからだ。

 そういう人間が集まって出来た世界は、とても綺麗な凸凹を成している。

 なのに、この時代はどこまで行っても平らに成ったままの世界で。

 

 どこまでも間違った世界に、手遅れなほど間違ってしまったオーマジオウが君臨していた。

 

「未来が見えても、時を自在に操れても」

 

 オーマジオウは呟く。

 

「未来を自分一人の思い通りにすることなど、誰にもできない、ということか」

 

 オーマジオウは知っている。

 自分が最高最善の魔王であることを。

 最高最善を名乗っていることを。

 いつまでも最高最善で在ることを意識し続けていなければならないことを。

 そして、自分が最強であっても、全能ではないことを。

 

 何も思い通りにできない。

 死んだ人も蘇らせられない。

 世界も元の形に戻せない。

 何も直せない。できるのは、壊すことだけ。

 

 オーマジオウは、何でもかんでも直してしまっていた大叔父のことを思い出す。

 

 最初に忘れたのは声だった。

 次に忘れたのは笑顔だった。

 50年経った今では、大叔父と交わした会話の中身すら思い出せない。

 時計屋なのに、何でも直してしまう大叔父だった。

 

 何も直せない自分。

 それがひどくみじめに思える。

 それでも、敵を壊す手は止められない。

 世界の歯車を壊すことはできても、直せないからこそ、彼は魔王なのだから。

 

 

 

 

 

 何かの計画が進んでいる。

 オーマジオウは、最近傘下に加わったウォズなる人物から情報を得ていた。

 どうやらレジスタンスが時間改変を目論んでいるらしい。

 

 オーマジオウはその情報の裏を理解していた。

 過去改変を目論んでいるのが、クォーツァーであることも。

 ウォズという男が、オーマジオウのスパイと、過去のジオウの誘導の役割を担う、クォーツァーの一員であることも。

 全て見えている。

 彼は最高の王であるからだ。

 だからこそ放置した。

 最高の王であるからこそ、彼にはクォーツァーですら見えてないものが見えていて……オーマジオウから見れば過去にあたる『この先の未来』を良くするために、あえて邪魔をしない。

 

「放っておくがいい、ウォズ。些事だ」

 

「はっ」

 

 このウォズという男はスパイだ。

 クォーツァーの一員として、常磐ソウゴのオーマジオウが誕生する可能性の消失、そしてクォーツァーのトキワソウゴが王となる未来の確定を主な役目としている。

 オーマジオウは、ウォズにとって敵でしかない。

 敵でしかない、はずなのだが。

 ただ、時折……見たこともないものを見るような目で、オーマジオウを見ている。

 過去の常磐ソウゴにも興味津々のようだ。

 オーマジオウは、感覚的に思考する。

 

 このウォズという男が、若き日の自分と出会うことは、きっと良い未来に成るはずだと。

 

 特に理論的な理由はない。

 根拠もない。

 "なんかいける気がする"と思った。

 ただ、それだけだ。

 されどオーマジオウにとってそれは、迷いなくその選択をするに足る理由であった。

 

 いずれ過去に飛ぶウォズを、王は王の眼で見定める。

 ウォズは見上げ。

 ジオウは見下ろす。

 だからこそ、ウォズとオーマジオウは本当の意味で『仲間』になることはない。

 

「若き日の私を任せた」

 

「はっ。わが魔王」

 

 過去改変を止めない。

 それは、この未来が消滅するとしても、別の未来の可能性を望むということ。

 過去の自分に、今のこの世界より少しはマシな未来を創る可能性を期待するということ。

 最善を尽くしてきた自分よりも上手くやる常磐ソウゴが居ることを認めるという、自身の頑張りを否定しながら希望を探すような、苦しみの選択だった。

 

 オーマジオウは若き日の自分に期待する。

 今ここにいる自分に対して以上に期待する。

 そこには、『世界をちゃんと守りきれなかった自分への失望』が、少なからず見て取れる。

 だからこそオーマジオウは、この2068年の未来の世界の荒廃っぷりを見ながらも、自分自身が過去に赴いて世界を思い通りに変えてやろうとしない。

 自分以外が行くのを認めるのに、自分だけは決して過去を変えに行こうとしない。

 

 "自分には世界を最悪に荒廃させることしかできない"という、悲しい確信。

 

 "自分が世界を良くできるはずがない"という、汚泥のようにへばりつく自己認識。

 

 50年という年月が、常磐ソウゴから『大切なもの』を根こそぎ削ぎ落としてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めてだった。

 オーマジオウのウォッチを盗もう、なんて勇気のある人間を見たのは。

 クォーツァーですら、いやクォーツァーだからこそ、こんな無謀はできない。

 オーマジオウは虚を突かれて盗まれた、ゴーストのウォッチとドライブのウォッチを握り締める男を見て、心中でその勇気を称賛する。

 その男の腰に巻かれたベルトが、クォーツァーの仮面ライダーのものであることだけが、オーマジオウの気に入らない要素であった。

 

 男は逃げに徹している。

 オーマジオウが本気を出して追えば、すぐに死体も残らず消し去れるだろう。

 全てを消し去る手を男に向けて、けれどすぐに思い留まり、オーマジオウは攻撃ではなく言葉をその男に投げかける。

 

「何故ウォッチを奪う?

 何故過去を変えてまで私を消そうとする?

 この未来の可能性が消えれば、お前達は消える。

 つまりお前達は自分のために過去に飛ぶのではない。

 自分の命を捨ててでも、過去に飛び過去の私を殺そうとしている。何故だ?」

 

 不器用そうな、真面目そうなその男は、二つのウォッチを握り締めて叫ぶ。

 

 必ずやオーマジオウを倒し、世界を救うという意志が声にこもっていた。

 

「お前を倒し! ―――この世界を、少しでも良くするためだ!」

 

「―――」

 

 男は逃げる。

 オーマジオウはその背中をいつでも撃てた。

 けれど、撃てなかった。

 攻撃する気が、まるで湧いてこなかった。

 

 世界を良くするのだと。

 そのためなら、自分が消えても構わないのだと。

 愚直なくらいにまっすぐに、その男は言い放っていた。

 懐かしさと。

 虚無感と。

 悲しみ。

 それがオーマジオウの胸の奥に渦巻き、すり減った心が揺れる。

 

 わけもなく、"ずっと昔の自分を見たかのような感情"が、胸の奥に湧いていた。

 

 男は逃げ切った。

 オーマジオウからウォッチを盗んで逃げ切った人間など、この50年で一人もいない。

 あの男はさぞかし英雄扱いされるだろう。

 

 レジスタンスに対し手心を加えたのは、果たして何十年ぶりだっただろうか。

 オーマジオウ自身ですら思い出せない、遠い昔のことだろう。

 そのくらいずっと、ずっと、容赦なくオーマジオウは敵を屠っていた。

 

 逃げて行った男に、無言のオーマジオウは思いを馳せる。

 あの男も過去に行くのか。

 ウォズとあの男と若き日の自分の運命が、遠い過去にて絡むのだろうか。

 仲間になるのか。

 友達になるのか。

 敵になる可能性だって低くはない。

 オーマジオウは想像の翼を羽ばたかせ、思いを馳せる。

 

 自分とは違う人と出逢い、自分とは違う選択をすれば、若き日の自分はオーマジオウとは別のものになるだろう。

 オーマジオウより弱い?

 オーマジオウより強い?

 それとも……オーマジオウよりも善く、オーマジオウより素晴らしい、オーマジオウを超えた最高最善の魔王になる?

 可能性は、いくらでもあるだろう。

 

 オーマジオウは思考する。

 

 もしも、いつか自分が消える時が来るとすれば。

 

 それは自分よりも最高で、自分よりも最善の魔王が現れた時。

 

 自分が最高最善の魔王でなくなった時である、と―――そう思い、ソウゴは瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 ひとりぼっちの静寂の中、オーマジオウは夢を見た。

 自分ではない、自分であって自分でない常磐ソウゴが迎えた、オーマの日の夢だ。

 

 人は夜になる直前の時を、『魔物に逢う時間』と書いて『逢魔(おうま)が時』と呼んだ。

 逢魔(オーマ)の日……あの日、常磐ソウゴは悪と出逢い、対決した。

 そしてオーマジオウとなった。

 魔と逢い、彼の覇道は穢され魔道となった。

 

 けれど、オーマジオウではない常磐ソウゴは、仲間と分かり合っていた。

 大切な仲間と。

 寄り添ってくれる仲間と。

 その仲間と出逢えたことを心から感謝し、オーマジオウと少し違う道を進んでいた。

 

 それは逢魔の日ではない、仲間と出逢う逢間(オーマ)の日。

 

 夢は終わる。

 常磐ソウゴであれば少しは涙を流していたかもしれない夢が終わり、その瞳が開かれる。

 オーマジオウの瞳から、涙が流れることはなかった。

 

 

 

 

 

 生きている限り夢は見る。

 オーマジオウは夢を見た。

 若い時の自分と相対する夢だ。

 過去の自分と時に戦い、時に語り、時に言葉をやる夢だった。

 摩耗も諦めもしていない若い時の自分はどこまで行っても眩しくて。

 ついつい、余計なことまで言ってしまいがちだった。

 

 最後には、若い時のジオウが"オーマジオウ"を継承して少し驚いた。

 彼はずっと継承する側だったから。

 彼はずっと貰う側だったから。

 "オーマジオウを継承したかのような常磐ソウゴ"が『オーマジオウではないもの』に進化するのを見て、心の奥底が震えるような想いを抱いた。

 

 若き日のジオウは、過去の自分を見て夢を思い出し、未来の自分の夢を背負っていた。

 

 『世界を良くしたい』という、叶わなかったオーマジオウの夢があった。

 

 時を操るオーマジオウの、未来を見るような夢があった。

 

 夢の中で若い時の自分と何度か交差し、最後に。

 

 かつての自分に対し、何を選んだか。

 

 それは、オーマジオウ自身にしか分からないことだった。

 

 

 




 いくら捏造を繰り返しても、織田信長やオーマジオウの人物像を、創作した人物が自由に捻じ曲げて創り上げたとしても。
 その人達はその時代を生き、己の意志で戦い続ける。
 彼らの過去の意思を、嘘で欺くことはできない。絶対に。

 未来の行方は自由自在だから、諦めかけた夢にリベンジしたいなら、託せばいい。
 過去の自分に。
 ジジイにも若者にも、老若男女プライドがあるから、繋いでやりたくなるものもある。
 受け継いでやりたくなるものもある。

 『Over "Quartzer"』と『P.A.R.T.Y. ~ユニバース・フェスティバル~』の歌詞は、見たことがない人は一度見た方がいいと思います。



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