彼女達は晒したい   作:サボリーマン先輩

7 / 11
永遠の愛を誓った彼女達の二次創作物です。


彼女達は守護りたい

たとえばそれは、こんなお話--

 

「ふぅ。今日も一日大変でした。早く帰ってラーメン食べなきゃ」

吹けもしない下手くそな口笛をふゅーふゅーと鳴らしながら、ルンルンとスキップで歩を進める藤原を尻目に石上は「はぁ。」とまたひとつ溜息をついた。

「今月に入ってもう何杯目なんですか?少しは我慢すると言うことを覚えた方が良いんじゃないです?」

「良いんです!!今日はかなーりイライラしちゃいましたから、帰りに美味しいラーメン食べなきゃかえってストレス太りしちゃいます」

って事は実質0カロリー?やったね。と、ピースサインをして本気で喜んでいる藤原に対する石上の視線は、年長者に向けて良い類いのものでは無かった。

「だったらダイエットしてるなんて言わなきゃ良いんですよ。僕はちょっとくらい太っても良いと思いますけどね」

「ふっふーん。そうだよねぇ?そりゃ石上くんはそうだよねぇ」

「な…何がですか」

「私がガリガリに痩せちゃったら石上くんは困るもんねぇ?」

ニマニマと笑みを浮かべた藤原の視線も、後輩に向けるものとしては適切で無かった。

「今月に入ってもう何回しましたかねぇ?少しは我慢すると言うことを覚えた方が良いんじゃないです?」

「う……」

「安心して下さい。私は口が固い方ですから〜石上くんが約束を破らなければ誰にも言ったりしませんよ〜。さぁさ、今日は何ラーメンですかねぇ」

「塩とんこつ。口コミ評価は4.6。ふつう、濃い目、硬め、細麺、海苔増しが最適解。平日限定で18:00までミニライス付き」

「良いですね〜。今日はそこで決まりです」

油断。ふと晒した隙が命取り。そう、石上は藤原に致命的な弱味を握られ強請られていた。

 

『ラーメンマネージャー』

 

石上は都内のラーメン人気店をネットで詳細に調べあげ、その確かな情報だけをストックし、藤原がラーメンを食べたい気分になった際は、いつでもその要望に応えなければならない。

好み、店の傾向、移動時間、混み合う時間帯、予算、客層、その他諸々の要件を以って藤原を満足させなければならない。

そんな奴隷の様な扱いを受け日々、搾取され続けている石上では有るが……鞭があれば甘い飴もあるのが世の常。

「はぁ、僕はいつまでこんな事を続ければ良いんでしょうね」

「そりゃあ石上君に彼女が出来るまで……じゃないですか?まさか彼女が居るのに私との関係を継続する気じゃあないでしょうし」

「それは……」

「まぁ、石上君は本命の好きな人が居る癖に、優しい私に甘えてる最低野郎なんですから、今更そんな事を気にしなくても良いじゃないですか」

「言い方〜」

「否定出来るんですか?」

「う……」

「ですよね?さぁ、そうと決まれば善は急げです。早く行きましょう。でないと麺が伸びちゃいます」

「そんな訳ないでしょう。仮に僕らが行く前から湯搔き始めてたとしたら、店の正気を疑いますよ」

「うるさいなぁ。お腹減ってるんだから、ちゃきちゃき歩く!!グズグズする子はブツよ?それも強くね」

などと暴言を吐きながら背中を打つ。イッテーーと、抗議する可愛い後輩にあっかんべを返すお茶目な先輩。

献身と慈愛に満ち溢れた先輩は思う。あぁ、なんだかんだで、もう暫くは美味しいラーメンにありつけそうだなぁ、と。あの強欲と自愛に満ちた女達のおかげで………。

 

◆◆◆

 

「-と、まあ大体こんな感じです」

「「なにが!?」」

「いや、あなた方もいい加減、ちゃんとしないと、こうして天罰が下りますよ…と。そうした戒めを込めて今のエピソードを披露してみました」

 

この藤原と呼ばれてる子が騙ったお話は割とあたしの好みだわ。最初から性愛の対象として割り切ったお付き合いなら一々、下らない悩みで苦しまなくて済むしね。

まあ、あたし自身は絶対にやりたくないけど。でもどうせ他人事なんだし、それなら後腐れがない方が良いわよね。

 

「藤原ちゃんも優くんの事、好きなの?」

「いいえ全然。私の石上くんに対する恋愛感情は実質ゼロです」

「だったらなんで……」

「そうですよ。大体、こんなの不純異性交遊じゃないですか!!断じて認められません」

「え?ミコちゃんまだ風紀委員キャラで通すつもり?あんなヤラシイ願望展開しといて?」

「私のは不純じゃないから良いんです。純愛なので。あとキャラって何ですか、別にキャラ作りで風紀委員やってるつもりは無いです」

 

こんなのが風紀委員だなんてあたしの頃じゃ考えられないなぁ。あの頃はそれこそ異性交遊なんて厳罰対象。皆、慎ましく文通くらいしかしていなかったわ。……まあ、中には隠れてコソコソ致してた輩も居たみたいだけど。

 

「藤原…アンタさ、やけに生々しい話をしてくれたけどさ。何?陰でコソコソ優とヤっちゃってる訳?」

「ヤるとは?具体的に言ってくれなきゃ解らないですよー」

「その、セッ……よ」

「藤原さん。この子はSEXと言っています」

「わざわざ訳さなくて良いのよ。撥音が綺麗なのが余計に腹立つわね」

「それはどうも」

「んーふっふっふ。それはですね〜〜。秘密です!!」

「「はぁ!?」」

「私は口が固いので。他人様のプライバシーを漏らす様な真似はしません。なので、皆さんが都合の良い様に解釈して貰って結構ですよ」

「藤原さん、じゃあ今日もこの後は石上くんとラーメン屋さんですか?」

「ご想像にお任せします」

 

-嘘じゃないですブラフですYO-

 

以前、この部屋で聞いた台詞が脳裏に浮かぶ。確かにこの子はこういう性格だったわ。あの子も、よく友達をやってるものだと思う。

『彼』は、あたしに似ていると言っていたけどあたしなら友達にならなかったでしょうね。まあ、そもそも友達なんて居た記憶が無いけど。

 

「あぁ、でもお腹が減って来ましたねー。今日はこの辺でお開きとしましょうか」

「ちょっと!なーにも解決してないじゃない。どう収拾付けんのよ」

「そんなの私は知りませんよー。もうなる様にしかならないんじゃないですか?」

「あんた……そんな無責任な!!」

「眞妃さん、少し落ち着いて下さい。そんなにピリピリしていたら幸せが蜘蛛の子散らして逃げていきますよ?」

「そうですよー。結局、三角関係なんてのは当人同士で折り合いつけて決着するしかないんです。こうなった以上は、お互いに恨みっこ無しで正々堂々と勝負するしか無いんじゃないですか?」

「それはそうかも知れないけど……」

「私は構わないよ。最初から負ける気も譲る気もないし」

「それで構いません。私が勝ちますから」

 

その後、ぎゃあぎゃあと騒ぐだけ騒いだ後輩達は皆、帰ってしまった……。

部屋が元の静寂に戻される。あたし達の世界には音が無い。

 

『おかえり』

『ああ、ただいま』

 

彼もまた、音を立てずに扉を潜り、部屋へと帰ってきた。

 

『随分と賑やかだったみたいだね』

『ああいうのは姦しいっていうのよ』

『そう?少し嬉しそうに見えるけど』

『気のせいでしょ。君は相変わらずわかってない』

『気のせいか。君も相変わらず素直じゃあないね』

『そうね。死んでも治らなかったわ。……ってうるさいわね。良いのよ今更、そんな話は。そっちはどうだったの?』

『ああ、あの男の子ね……。ちょっと見てきたけれど…かなり不味いね。どうにかしてあげないと僕の二の舞だ』

『でしょう?呪われてるのよ、あの子』

『君のお礼が半端だったんじゃないの?』

『言ってくれるわね。40年越しの怨念がちょっとやそっとで解消出来る訳がないじゃない』

『2人分だしね。だから君だけを責めるつもりはないよ。僕にだって責任はあるんだから』

『どうするつもり?』

『やっぱり守護霊になってあげるしか無いだろうね。僕たち2人で。でないと、あの子は死んでしまうよ。近いうち』

『あたしは嫌よ。面倒くさい』

『そんな薄情な……彼が死んだら、きっと彼女たちは哀しむよ?』

『そんなの知った事じゃあないわ。それにこっちの世界も案外、良いものよ。悪くない。ずっと若いままでいられるし』

『君もいよいよ、悪霊じみてきたね』

『なんとでも言えば良いわ。あたしは生来、性悪なのよ』

『まあそう言わずに考えてごらんよ。彼女もきっと彼を追って此方に来てしまうよ。彼だけならまだ良い。彼、一人なら部屋の隅っこで大人しく座っててくれそうだしね』

『そうね』

『けど後を追ってくる子はそうじゃない。2人が此方で再会した後はどうだろうね?それを僕らは見せつけられる訳だ』

『最悪じゃない』

『良い気はしないね。僕は君と……、君だけと静かに暮らしたい』

『君って、そんな事を言う人だっけ?』

『誓ったからね。君と永遠の愛を』

『そうね。願ったわ』

『僕は何も、彼が天寿を全うするまで守護霊やるつもりは無いよ』

『あら?何か考えてるのね』

『くっつけちゃうのさ』

『何を?』

『彼の不運を相殺するだけの気運の持ち主。こっちで選別して彼とくっつける。波乱万丈の恋愛だろうが何だろうが、死ななきゃ良い。後はその彼女に一生、守って貰えば良いさ』

『ふぅん。面白そうね』

『だろう?そう言う子をアゲマンって言うらしいよ』

『アゲマン?』

『彼等が読んでた雑誌に載ってた。最近はそう言うらしい。関係を持つ男の運気を上げる女の子を指すらしい』

『あたしはアゲマンかしら?』

『冗談でも良くそんな事が言えるよね…君は』

『君は今、不幸なの?』

『関係を持ってくれなかったじゃないか』

『拗ねてるの?やっぱり可愛いいよね、君は。それなら今からでも抱かせてあげようか?』

『無理を言うよね。君は意地が悪い』

『ふふ。良いじゃない。あたしの魂に触れたのは君だけよ』

『僕はそれで満足だよ』

『あたしもよ。なのに何故か成仏出来ていないなんて……。不思議よね』

『まだ僕らに何か役目があるのかもね。それが今回、果たせるかも知れない』

『だと良いけど』

 

一度乗りかかった船ではある。少しの間、守護霊の真似事をしてみるのも悪くは無いか。

道連れを自ら阻止するなんてね。我ながら『怪談』失格だと思うけど……。

あんな冗談みたいな怪奇を6つも吸い寄せた稀代の運無しは一体、どんな恋を経験するのかしらね。

少しも興味は持てないけれど、『彼』の願いでもあるのだから、あたしも力を貸してあげようと思う。

安心なさい。あたしが本気を出せばもう大丈夫よ。何せ、あたしはアゲマンらしいからね。




これにて本編完結です。
御拝読ありがとうございました。
宜しければ、最後まで読んで頂いた皆さまの感想をお待ちしております。


今後は番外編をコソコソと執筆するかも知れません。ifルート形式で。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。