激しい爆撃音が鳴り響き曲がり角に隠れた詩穂は背後の様子をうかがう。
ヒールが地面をたたく甲高い音と共に月夜に煌めく瞳がこちらへ向かってくる。
音が止まると同時に紫のエネルギーが輝き始めると再び詩穂は走り出す。
逃げても逃げても何度だって追いつかれた、それは過去が自分を追いかけ続けているかのように。
「何度逃げても意味がないわよ
私は何度だって追いつくから...」
その言葉通り先程から何度距離を離しても何度だって追いつかれる。
星守の力を取り戻す条件は私は達している可能性が高いと言っていたが未だその兆候は現れていない。
このままじゃ...再び足を止め振り返るとそこには彼女の姿はなかった。
「いったい...」
次の瞬間に背後に爆音と共に暴風に体が吹き飛ばされる。
受け身をとれずに地面にたたきつけられ痛みに視界がかすむ。
「もう鬼ごっこは終わりかしら...」
顔を上げると【レクイエム】が突きつけられている。
何もできない無力な自分...そんなのは終わりにすると決めた...だけど何も出来ない...
そう思うと自らの内側から何かがこみ上げる...
マタムリョクナアナタハウシナウノネ...
違う...私は...
マタヨワイクニエダシホニモドルノネ...
そんなのは嫌...もう何も手放したりしないと決めた、誓った...
内から溢れ出した真っ黒い闇に体が包まれ始めた詩穂であったが、次の瞬間に目を見開きその闇を振り払い立ち上がった。
「なぜそうしてまで苦しみたいの?
もう闇に身をゆだねて楽になればいいものを...」
「私は誓ったの...花音ちゃんに...みんなに...そして!!」
光が一点に収束し詩穂の手に再び【ギプス】が握られ、なおも取り付こうと渦巻いていた闇を振り払った。
「過去の私自身に!!」
過去に闇に呑まれた時もあった、自分自身が信じられず、大切な親友さえも信じられず伸ばされた手を振り払ってしまったこともあった...
だけどもう離したりしない、この胸に繋がれた絆を、想いを、誓いを。
溢れ出していた光が彼女を包み星衣を形作っていく。
「...あなたはもう大丈夫なのね...私がいなくても...」
レクイエムを地に突き刺し優し気な笑みを浮かべたもう一人の詩穂はそっと詩穂に近づき頬にそっと触れる。
「どんな苦難も乗り越えてきたあなたなら超えられる...この先どんなに悲しいことが起きても...
だから私の役目はここまでね...」
静かに頬を伝った雫が地に落ちると同時に彼女はそっと姿を消したのであった。