それは突如始まった。
町外れの廃墟地域、未だに再開発が進んでいないこの地域を最近は見回りがてらロードワークのルートにしていたゆりの耳に遠くから悲鳴が聞こえた。
声の方に駆け付けるとそこには大量のイロウスに囲まれた数名の少女の姿があった。
「何をしてる、逃げるんだ!!」
ゆりの声に驚きながらも涙をこらえ必死に叫ぶ。
「もう囲まれっちゃてて逃げ道がないんです...」
辺りを見渡すとそこには数えきれないほどのイロウスがにらみを利かせている。
望が星衣を取り戻したことは聞いている。
それなら自分だって取り戻せるはずだ。
そう思っていた。
だがいくら念じようとも星守の力は戻ってこない。
じわじわと少女に近づくイロウス達。
「なぜなんだ...なぜ望には出来て私には出来ないんだ!!」
焦りだけが募っていく。
無理やり飛び込んで救出に向かうこともできるが、無傷とはいかないであろうこのイロウスの数に足がすくんでしまった。
かつてはこんなことはなかったのに。
自分が弱くなってしまったのだと自覚してしまった。
心とは弱さを感じると一気に崩れていくもの。
体の震えが止まらなくなりぎゅっと押さえつけようとするが治まらない。
「こ...こんなことが...」
そうしているうちにイロウス達が少女たちを捉えていた。
「ま...まて...
その子たちから...はなれろ...」
大きな爪を振り上げる。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉっ」
イロウスは容赦なく少女たちを切り裂いた。
その瞬間ゆりの中にどす黒い何かが生まれた。
黒い渦が一気に心を飲み込んでいった。
「ぅ...うあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
闇を右腕に纏い一閃。
一撃でほとんどのイロウスを薙ぎ払った。
意識がどんどん飲み込まれていく。
まずい、そう思っていても沈みゆく意識をコントロールすることは出来ず深い...深い闇に沈んでいった。
火向井ゆりの失踪
その情報はすぐさま神樹ヶ峰女学院の皆に伝わり騒然としていた。
「ゆり先輩が行方不明なんて...」
「目撃情報だとロードワークに出ていたことが目撃されている。
でもそのまま帰宅しなかったそうです」
星守復帰しなかったもの達も集まり緊急会議が執り行われていた。
仲間の行方不明とあって以前はいなかった残りのメンバーであるf*fの2人も集まっている。
「ゆりがいなくなる理由...なんて思い当たる人なんていないわよね...」
神妙な面持ちで皆に問う『煌上花音』
当然頷くものはいない。
何かが崩れていく、全員がそう感じているのであった。