感想を見るだけで続きを書こうと思えるチョロい人間が私だ。
唄乃先輩が消えた?!ドリンクなんか買いに行くんじゃなかった!しかも、凛子ちゃんまで見失う始末!こんなの朱音さんが見たらなんていうか。・・・とりあえず頭を冷やせ。朱音さんも言ってたじゃないか、ピンチの時こそ焦らず深呼吸して冷静に考えるって。まずは整理だ、唄乃先輩が『童謡歌い』なのは聞かされている。誰をターゲットにしているのか・・・。そうだ!朝から見ていた白いワンピースの女性!なら誰を狙う?!殺しやすい状況・・・は、一人の時だから・・・トイレとか?!私は一番近くのトイレに可能な限りの速さで駆け込む。やっぱりいた!・・・でも遅かった。ワンピースの女性は赤く染めた『てるてる坊主』になっていた。
「・・・見つけました!・・・唄乃先輩!」
「・・・」
唄乃先輩は答えてくれない。晴れているのに着ている黄色のレインコートのフードの奥からは、先輩のにっこりと美しく曲がった口だけが見えている。その口が開いた。
「すごいね。私のいるところ、分かったんだ」
「・・・はい。・・・殺人犯が好みそうなところは朱音さんに一通り教わったので」
「そう。『赤い靴 は~いてた お~ん~な~の~こ~』」
「ッ!」
先輩が血に濡れた鉈を私の足首を狙って振るう。それを『普通』の速度で認識した私はトイレの洗面台に跳びあがることで回避する。けどその隙に、トイレの外へ逃げられてしまった。大変なことになった!凛子ちゃんだけでなく、先輩までこの人だかりに逃げ込まれてしまった!
私もトイレを飛び出してこの遊園地で最も高い建物、観覧車へと猛ダッシュする。周りの歩いている人が『止まって』見える。そのまま観覧車の柱を駆けあがって、パルクールの応用で一番高いゴンドラへと到着し、周囲を見下ろす。・・・いた、見つけた!先輩はジェットコースターの近くにいた。・・・しかも、凛子ちゃんまでいた。凛子ちゃんに至ってはレールの上にいる、集めた情報が正しければ乗っている誰かを父親を狙っているのだろう。阻止せねば。
ゴンドラの上から思いっきりジャンプして、なんか回転する振り回されるやつのフレームに着地、回転の勢いを利用したダッシュジャンプでしょごたんハウスに飛び移る。そこから飛び降りるとすぐにジェットコースターを囲っているフェンスを駆けあがり、レールを支えるフレームを三角跳びで跳んで丁度通り抜けたコースターの上に乗り込む。『ゆっくり』進むコースターに乗ったお客さんを蹴っちゃわないように駆け抜け、一番前の親子連れに斬りかかろうとする凛子ちゃんをムーンサルトキックで蹴り上げる。・・・何があったのかは知らないけどバイクに乗ったひな子ちゃんがいきなり現れて私が蹴り上げた凛子ちゃんを上から引きつぶしていた、しかも空中で。手に切り傷があるからソレの仕返しかな?空中で先輩を探すべく周囲を見渡す。
「いた!!」
私の耳で『普通』に聞こえる速度でつぶやく。間にワンアクションはさんじゃったけどそんなに遠くに入ってない。フレームに着地せずそのまま先輩の死角から蹴りを打ち込む。
「?!」
ギリギリで気付かれた?!真っ赤に染まった鉈を私に向かって袈裟切りに切り上げる。・・・大丈夫!さっきと違って歌ってないから『遅い』!振りあがってくる鉈に乗っかってもう一回ジャンプする。『ゆっくり』と先輩の表情が驚愕の表情へと変化していく。顎に向かって回し蹴りを繰り出してバランスを崩し、落下と先輩の倒れこむタイミングが重なるところで鳩尾に膝蹴りを叩きこむ。と同時に先輩が口から大量の血を噴出した。なんで?!『私が見て普通の速度』で鳩尾に膝を入れただけなのに?!駆け寄って先輩の体をゆする。
「先輩!しっかりしてください!先輩!」
「屠桜!そいつから離れろ!」
「御剣さん!先輩は大丈夫なんですか?!」
「頼むから『ゆっくり』話してくれ!何を言ってるのか『早すぎて』分からん!」
何とか自分を落ち着かせて話す。凛子ちゃんのことですでに救急車を呼んでいたらしく、『ゆっくり』とした動作で担ぎ込まれていく。
「・・・御剣さん!・・・先輩は大丈夫なんですか?!」
「かなり・・・重症だな。検査待ちだが脳震盪と内臓に損傷があるかもしれん」
「・・・大丈夫・・・なんですか?」
「まぁ、死ぬことはないはずだ。その点は心配ねぇよ」
「・・・よかったぁ」
私はその場でへたり込んだ。
○○○
「・・・・・・そうですか。殺すことは可能・・・ということですね。それがわかっただけでも大きな収穫です。それに犯罪者に雇われるような殺し屋を始末できたのは僥倖でした。報酬は別途・・・えぇ・・・では・・・」
ツルさんから聞いた屠桜の二人に埋め込まれたGPSのマイクロチップ。紅守と鎖曽利は知ったうえで行動していると言っていた。逆に、屠桜の二人は両方とも知らない、とも。だから二つの事件が発生し、別行動する。と連絡が入ってきたところで、ツルさんと私は両方とも自分の命すらその程度の価値としか思っていない、そう考えていた。でも実際は紅守とは異なり、鎖曽利は自分の相方の屠桜に対して自身の持つ可能な限りの情報を与えていたのだ。これはつまり鎖曽利は自分と屠桜の命を軽く見ているのではなく、ある種の信頼関係を構築していると言えた。鎖曽利が情報と役割を与え、屠桜がその情報をもとに考えを構築し行動することで信頼に応える、そう言った関係が。
紅守とは違って鎖曽利の考えには理解できる。これは最終的に鎖曽利を手ごまにして紅守にぶつけるのもいいかもしれない。
なまえ 雨宮唄乃(アメミヤウタノ)
さつがいにんずう 10人(公式1人)
もくてき 父親の気持ちを理解するため
すきなもの 父親・文学・童謡
きらいなもの 自分
しょぐう 脳震盪と内臓の損傷を治療後、鎖曽利のもとへ
びこう 父親以上の才能を持つ高校生。文学少女のイメージを形にしたような存在で、黒く長い髪、おとなしい口調と性格をしている。が、彼女の殺人欲求はかつて大量殺人を引き起こした父親を超えるほど。その欲求の制御方法を学ぶため、鎖曽利のもとへ退院後引き取られることになる。(彼女の希望で名字は『雨宮』のままである)
はるかのかんそう ・・・朱音さんから言われなかったら殺人犯だなんて思えない。・・・退院したら一緒に暮らすんだ。・・・楽しみだな。