私、鎖曽利朱音(サソリアカネ)は今、滅茶かわなおにゃのこ屠桜はるかと共に愛の巣・・・もとい新しい住処向かっている最中である。イヤァ、ゴーグルをかけた凛々しい横顔がたまらんね。可愛いクール系女子、サイコーやな!
しかし、彼女のドライビングテクニックえげつねえな・・・。見た感じ中学生ぐらいじゃろ?免許取れるような年じゃないけどいいのか?白バイ乗りぐらいの腕はあるよなぁ・・・マァいっか!かわいいは正義!
「・・・いいんですか?・・・さっきメール、来たみたいですけど」
スッゲ、この状況で着信音が聞こえるのかよ。たぶんケイサツだ。いくらなんでも仕事が速すぎやしませんかねぇ?もう少しはるちゃんの凛々しい横顔を眺めていたかったなぁ、ハァ。・・・とりあえずメール開こ。
「なになに・・・環状線内で精神病院から逃げ出した殺人犯が暴れとるのでコレの処刑とな?」
「・・・環状線、行けばいいの?」
「そうそう。向かってくださいな、はるちゃん!」
とりあえず新居はお預け、まずは仕事だ。仕事道具のトランクとトレンチコートもあるし、問題はなかろう。相手が気になるけど、しょせんは人間、殺れば死ぬ。変わりはない。
「・・・着きました。・・・最寄りの環状線です」
「了解、はるちゃんは待っててね」
おぉ、早い。もう着いちゃったよ。サテ、脳を仕事脳に切り替えてと、殺りますかね。トランクを左手に持って、コートを翻しながらサイドカーを飛び降りる。
「ご苦労様です!お待ちしておりました。人払いは済んでおりますので」
「ご苦労チャン」
見た目は五十路ぐらいだろうか?ベテランにはどのような人であれ敬意を払わねば。
「とりま、ソイツの情報をオクレ」
「了解しました。性別は男。凶器はナイフ、もしくは包丁。それから・・・」
「ン。もういいよ。それだけで大丈夫」
フムフム。チェーンソー持ってるとかそんなんじゃなかったぜ。トチ狂った通り魔とかそんなんじゃろ、どうせ。・・・そろそろ来る頃か、血の匂いがする。しかし、爆走する列車に飛び乗れとかケイサツは正気か?出来るけどさ。
「朱音様には後続の車両から飛び乗っていただき「いやいいよ」・・・は?」
「直で乗る」
右手首につけたワイヤーシューターから少し取り出した錘付きのワイヤーを振り回しながら不敵に笑って見せる。目の前を列車が通り過ぎ、最後尾の車両の窓に向かってワイヤーをぶん投げる。パリンっという音が鳴り、固定されるのを確認する。久しぶりにやったけど、うまくいったようだ。
「んじゃま、行ってきます」
ベテランのケイサツ官に挨拶をして、線路に身を投げ出すと同時にシューターの巻取りスイッチを押す。ワイヤーでたたき割った窓のお隣をドロップキックで粉砕し、車両内に侵入する。
・・・すまん、トチ狂った通り魔とかって言ったよな?あれは嘘だ。訂正する。頭おかしいんじゃねえの?死体をバラバラにしてそれでオブジェ作るってどうなの?趣味が合わんな!私の趣味は死体を残さないことなのだ。生き返るかも知らんしね。
マァいいや、こんな芸術性のない殺人犯サッサと殺って帰ろ。ターゲットは列車の一両目にいるらしい。ラスボスかな?
「処刑の時間だオラァ!」
ドアをヤクザキックで蹴破って侵入・・・しようと思ったけど思ったよりも丈夫だったので普通に開けた。そしたらターゲットがナイフをよりにもよって顔に投げてきやがったので、顔を傾けて避ける。見た感じいいナイフだった、後でパクッとこ。
「おねーちゃんが警察の人なの?」
「いんや、違うよ。おねえさんはね、君を殺しに来たの」
後、おっさんかと思ったら高校生くらいの子供だったわ。うーん、殺人衝動を抑えるか殺害対象さえ絞れたらまだましに生きれたものを。惜しいなぁ。顔も別に悪くないのに。
「サテ、これから私は君を殺すけど。最後に言い残すことはあるかい?聞くよ?」
「じゃあ、おねーちゃんのオブジェが見たい」
言い終わると同時にナイフを構えて接近して来た。邪魔なトランクのスイッチを一つ押してターゲットにぶん投げる、そして直撃すると同時に前蹴りを蹴りこむと、トランクと一緒に吹っ飛んでいった。が、平然と起き上がり、トランクを横に掘り投げる。おっとぉ?大してダメージはいってないな?痛覚の消えてるタイプか、面倒な。
「こんなの痛くもかゆくもないよ。おねーちゃん!」
「みたいだねぇ」
このタイプはどんなにダメージを与えても怯まないからめんどくさいのだ。しかも疲れ知らずと来た。ナイフを振り回して暴れまくっとる、避けれるからいいけど。拳銃にナイフもあるけど、最初に仕掛けたトラップにかかるのを待つほうが速いな。・・・ほら来た、だんだんと動きが鈍くなってる。
「どうしたどうした?動きが鈍くなってきたぞ?オブジェを作るんじゃなかったのか?」
「かっ、体が痺れて・・・なんっでっ・・・」
「そりゃあそうでしょうよ。神経性の毒ガス撒いてんだもの」
少年が膝から崩れ落ちる。もう息をすることすらつらいだろう。
「毒・・・ガス・・・?なぜ・・・おねーちゃんは平気っなの・・・?」
「そ。さっき君が投げたトランクから撒いてる。何故って、効かないから」
そう。理由は知らないが私に毒の類は通用しない。飲んでも、吸っても、血液に直接打ち込んでも効かない。だから死刑も薬じゃなくて電極を使って殺すタイプだったし。ちなみにこの毒ガス、ちゃあんと致死量分まき散らしてるからほっとけば勝手にターゲットは呼吸困難で死ぬ。その前にもう一度聞いておこう。
「最後に言い残すことは?」
「こ、殺して「駄目だ。惨めに死に絶えろ」」
チャンスは二度もやってこない、それを死ぬ間際に教えてやる。
「んじゃね・・・あ、そうそう言い忘れてた。この毒ガス、火ぃつけると爆発するんだよね。君なんて跡形もなく消し飛んじゃう。ばぁい」
ガスをまき散らしていたトランクとナイフを回収し、3分で爆発するようにセットした爆弾をトランクから取り出して設置、後2分ほどで絶命する少年をしり目に最後尾の車両に戻った後、列車から跳び降り・・・ようとしたらはるちゃんのバイクが並走していた。はっや。
「あれ?呼んだっけ?」
「・・・いえ。・・・そろそろかな、と思いまして」
ヤバい。良妻。結婚しよ。その思いと共にサイドカーへ飛び乗る。と同時にドリフトで反転する。すげぇ。
「・・・では、警察署に戻って報告ですね」
「出たところに戻るのかぁ」
「・・・はい。新居はまだお預けです」
私の溜息は、後ろから聞こえる爆発音で有耶無耶になった。
なまえ 萩村天斗(ハギムラタカト)
さつがいにんずう 106人
もくてき 自らの芸術
すきなもの 自分の作品
きらいなもの 芸術性を理解しないもの
しょぐう 毒ガスによる呼吸困難で絶命
びこう 芸大志望の高校生だったが、自らの才能に限界を感じてしまう。そこで、一から作るのではなく完璧な作品を壊し、作り変えるという方法を模索。彼の見つけた完成された作品が人間であったため、人を殺し、オブジェに作り変えるという凶行へと至った。
はるかのかんそう ・・・かわいそうな人。・・・人を壊す発想に至ったところで間違いに気づかなかったのかな。