私、鎖曽利朱音(サソリアカネ)は今、相棒のはるちゃんこと屠桜はるかと共に出てきたはずのケイサツ署にトンボ返りしている最中である。
二人で住むマンションに向かっているところに初仕事のメール、可愛いクール系な美少女とのめくるめく同棲生活を妄想していた私を現実へと叩きつけるこの仕打ち、訴えてやりたい。・・・やめよう、私が処される。
しかし、いつもの癖で死体を消してしまった。どう言い訳しようか、うまく切り抜けないとせっかくはるちゃんという美少女と出会えたのに刑が執行されて会えなくなってしまうぞ。むむむ!っと唸っているとはるちゃんが話しかけてくれた。
「・・・いきなり相棒が死ぬのは嫌、ですよ」
「わかってるよ、はるちゃん。何としても切り抜けて見せ「・・・それはそうと、着きましたよ。警察署」・・・早くない?」
「・・・しっかりと制限速度は守りましたよ?」
こんな私を心配してくれる・・・ええ子や。好き。と思っていたら、そのはるちゃんから無慈悲に告げられる到着コール。そんな無慈悲なところも好きだ。・・・ていうかヤバくない?時間を忘れるドライビングテクニックって何?私の嫁そんなに凄いの?まだ嫁じゃねえ、相棒だったわ。
バイクを駐車場に止めて、トランク片手にサイドカーを降りる。それを確認してからはるちゃんもバイクから降りて、鍵をかける。まさか報告の義務があるとは思っても見なかった。ハァ・・・憂鬱。
「ご苦労チャン」
「・・・お疲れ様です」
玄関を守ってるケイサツ官に軽く声をかけて、中に入る。
受付の泣き黒子の似合うおねえさんに私の所属を聞くと『捜査零課』らしい。マンガかな?なんだこのベッタベタな課は、一昔前の創作じゃないんだから。少し苦笑いを浮かべつつ案内板に従ってその・・・零課に向かう。つもりだったが、髭面のスーツの男と気のつよそーな可愛い女の人にはるちゃん共々取調室に連れ込まれ、備え付けの椅子に叩きこまれてしまった。はるちゃんはもっと丁重に扱え!
サテ、ここからは真面目な話だ。
「ところで、あんたらは誰さ」
「そういや初対面だったな。俺はお前らの上司兼お目付け役の御剣燈悟だ。そんで隣のがオレの部下の君原茶々」
「ほーん。では、末永くよろしくお願いします」
「こっちはあまり、よろしくしたくないがな」
なるほろ、ミツルギサンにキミハラチャンとな。よく見るとキミハラチャン、気を強く持ってるが内心に私に対する怯えを感じる・・・調教してぇ。こういう子はSのなかにMを隠してるタイプが多い。ので、彼女を全力でマゾにしてやりたい!ニマニマしていると内マゾちゃんが机をバンッと叩いて叫んだ。
「鎖曽利朱音さん!屠桜はるかさん!あなたたちのいた車両から不自然な大爆発が発生し、犯人の死体が跡形もなくなってました!どういう訳か、説明してください!」
やっぱりか。反省しているように見える様に少し神妙な顔をする。こっちにチラリと目線を向けるはるちゃんに「大丈夫」と小さくつぶやいて安心させておく。
「やはりそこですよね・・・。こういうことになるとは考えつかず、謝る事しかできません」
「・・・は?」
よし、つかみは上々。大丈夫、このままイケる。
「私がよく人を殺すのに毒を使っていたのはご存じですよね?」
「ええ。それは過去の事件の情報でこちらにも届いています」
「実は、今回は人がいない。ということで毒ガスを使いました」
「はぁ」
「この毒ガス、神経性のものなんですが、非常に爆発しやすいものでして・・・」
「つまり、その毒ガスに苦しんだ犯人がもがいた際に何らかの理由で火花が飛び散り、引火、爆発した。そう言いたいのですか?」
「・・・はい。まさかこんな結果になるとは思いもよらず・・・すみませんでした」
「はぁ・・・。わかりました。まったく、同じ死刑囚とはいえ、スローターとして紅守黒湖さんも彼女を見習ってほしいものです」
よっしゃぁ!うまく切り抜けたぁ!隣のはるちゃんにウインクして見せる。無表情ながらはるちゃんがこちらを見返してくる。いつかその表情に笑顔を浮かべさせて見せるぜ。
ミツルギサンのほうをチラッと見てみると、驚いた表情を浮かべている。初対面で好印象を植え付けることは出来たようだ。彼に向かってにっこりと笑顔を浮かべる。我ながら胡散臭い笑みだ。
「報告の義務があると聞いて少し憂鬱だったのですが、あなた方ケイサツとの信頼感や連携、そういった物がありますものね。至らぬところがあればすぐに言ってください、可能な限り改善します」
これでトドメだ!Perfect!
「よ、よくわかった。もういいぞ」
私の誠意の塊のような言葉の数々にミツルギサンも圧倒されたようだ。帰って良しの許しが出た。
「では。お騒がせしました」
「・・・また」
二人そろって取調室を出てすぐにバイクに向かって走り、そのままの勢いで乗り込む。はるちゃんがこっちを見て口を開く。心なしか嬉しそうだ。顔には出てないけど。
「・・・朱音さん。・・・嘘、つきましたね」
「嘘となんちゃらはイイ女の秘訣ってね」
彼女の問いにニヤリと笑って返す。そしたら、無表情で肩をすくめられてしまった。軽くショックである。だがそこがいい。今度こそ、今度こそは邪魔されずにはるちゃんとの愛の巣、もとい新居へと向かいたい!
同族を軽くからかってみたいしネ!
ほうこく なし