私、鎖曽利朱音(サソリアカネ)は今、一つ屋根の下で暮らすことになった可愛いクール系美少女屠桜はるかと共に新居たるマンションの一室へと来ていた。部屋番は804、同業者とお隣らしい。うーん、なかなかいいところだなここ。家賃、水道代、光熱費、その他もろもろが警察持ち。悪いはずがない。部屋もデカいからカワイ子ちゃんを連れ込んであんなことやこんなことも出来るナァ、ぐへへ。
持ち込む物など特にないので引っ越しはつつがなく完了した。というか運ばれてた。・・・私はともかくはるちゃんの荷物が少なすぎる気がする。また今度服とかゲームとか買ってあげようかな?お友達が出来たときとか話題がないと困るしね!
「ネェ、はるちゃん」
「・・・なんですか、朱音さん」
「何か欲しいものとかない?何でも買ってあげるからさ。ゲームとか、服とか」
はるちゃんが流れるように私のトランクを回収し、コートをハンガーにかけかけた状態で無表情のまま軽く天井を見上げる。できた嫁だ。・・・相手はまだ中学生だぞ!せめて後3年待とう!?私!はるちゃんって考えるとき上を向く癖があるのか・・・可愛い。おっと、何か思いついたみたいだね。
「・・・では、調理器具を買ってほしいのですが」
「調理器具か。もしかしてはるちゃんって料理好きなの?」
「・・・はい。・・・実は家事が趣味でして」
マジか。これは良妻確定ですわ。・・・ん?ちょっと待て、これもしかして私、ダメ人間になるのでは!?でもマァ、いっか!はるちゃんに介護されるのも悪くないかもしれん!
「じゃあ、今度私がコーヒー豆とミルを買うときに一緒に行こっか」
「・・・朱音さん、コーヒー好きなんですか?」
「うん。好きだよ。時間のある時は仕事道具いじってるかコーヒー挽いてるかのどっちかだったし」
「・・・そうですか。・・・では、その時にお願いします」
実は毒殺の他にコーヒーが趣味なのだ。あの香りが非常に好みでね、コーヒーと共に読書をたしなむのが文化人としての到達点の一つだと私は思うね!
さて、お隣の同業者に挨拶しに行こうか!ケイサツの人が置いたんだろうか?律儀にテーブルに置かれた引っ越しそばを片手にいざ行かん!
お隣の同業者、紅守黒湖と屠桜ひな子の部屋のインターホンのスイッチを押す。ひな子ちゃんとはるちゃんの名字が一緒だったから姉妹かと思ったけど、聞いてみると遠い親戚にあたるらしい。でも、初対面だから名字がたまたま一緒だっただけの他人として接したいらしいのでその通りにしておこう。
少し待つと、パタパタと小さな足音が近づいてきた。ひな子ちゃんだ。玄関がゆっくりと開き、はるちゃんと同じ桜色の長髪のカワイ子ちゃんが顔を出した。それと同時に奥のほうから体液の匂いがしてきた。コウモリのだろうな。真昼間からサカってんなおい、サルかよ。
「だれ?」
「今日お隣に引っ越してきた鎖曽利朱音と屠桜はるかです。こちらの方が同業者と聞いたのであいさつしに来たのですが」
「!くーちゃーん!けーさつの人が話してた人が来たよー!」
ピンっと来たのか玄関を開けたままドタドタ遠くの方へ戻っていく。少し待って、腰まで伸ばした黒髪の女がくねくねした動きでやって来た。デカいうえにキメェ。なんだその動きは。あと目がヤバい、そんな目ではるちゃんを見ないでくれませんかねえ?こいつが紅守黒湖だな。そしてその後ろに赤髪の長髪くせ毛縦ロールの女性が赤くなった顔のまま現れた。知らん顔だ。マァ、たぶん彼女がコウモリの性欲のはけ口なんだろう。
「知ってると思うけど、あたしが紅守黒湖。この子が屠桜ひな子。よろしくねん」
「はい。よろしくお願いします。あ、私が鎖曽利朱音で、この子が屠桜はるかです」
「・・・よろしく」
「というわけで、引っ越しそばです」
「あ、ドーモ」
「よろしければ私の家に来てくれませんか?招待します」
そばを渡した後、軽く上目づかいで顔を赤く染める。当然演技だ。となりの赤髪女性がコウモリを睨んでいたがこっちの事情じゃないので知らん。
「行かせていただきましょう」
「ありがとうございます!」
うーん、チョロい。欲求が性欲に来ると来たらこの手しかなかろう。
自分の家の玄関を開けて3人を招き入れる。
「昨日越したばっかりで何もないですがゆっくりしてください」
「はぁーい」
テーブルの椅子を引いて3人を座らせる。コウモリの返事がキモい。
「ひな子ちゃん以外はコーヒーでいいかな?」
「大丈夫です」
「ひな子ちゃんにはオレンジジュースだよ」
「ありがと!」
私が飲み物の準備をしている間に、はるちゃんがお茶請けの準備をしている。出来た娘だなホントに。ただ、コウモリがそれを目でをってるのが気に食わん。おい、こっちも見んな!気づいてるぞ!
赤髪女性はまともな人のようだ、昼間からヤってる様な人だけど。そういや名前聞いてねえな。
「あのー、すみません。名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「あ!私?そういえば名乗ってなかったわね。私、柳岡千代。よろしくね」
フム・・・、ヤクザに確か柳岡会ってのがあったな。娘か親族か、もしくは年の離れた嫁か。いや、ないな嫁は流石に。よし、コーヒーも淹れ終えたし後はコウモリの分に青酸カリを入れるだけ・・・っと、完成!
仲良くできているのか心配だったけど、はるちゃんたちも問題はないみたい。「名字が一緒なんてすごい偶然だね!」っという声が聞こえてくる。
「おまたせ。お手製ブレンドコーヒーだよ。・・・おっと、砂糖とミルクを忘れた。ちょっとまってて!」
「わぁ。美味しそう!一から淹れたの?」
「そうだよ。今回は事前に挽いてたやつだけどね」
「・・・」
コウモリだけ反応が違う、分かりずらいけど『死』の匂いが強くなった。たぶん気づいてるだろうな。さて、私は砂糖とミルクのために視線を外す。そのあとにはどうなっているのかな?
「ごめんね、出し忘れちゃって」
「いいよいいよ。私ブラックも平気だし」
千代さんが笑って許してくれた。見るとコウモリの顔もニマニマと笑っている。そのうえ、私のカップから『死』の気配を感じる。なるほど、すり替えたか。では、その術中にわざと入ってやろう。普段通りにコーヒーを楽しむ、自分の毒で死ぬ馬鹿な生物はいないからな。余裕の笑みでコウモリのほうを見てやるとさっきの笑顔の裏に愕然の顔が見える。軽く突っついておくか。
「コウモリさん、口に合いませんでした?」
「・・・いや。大丈夫」
そう言ってちびちびと飲み始めた。美味いだろう?
しばらくして夕食の時間になったため話し合いを終了し、3人は私たちの家を後にした。ひな子ちゃんと千代さんは笑顔を、コウモリは残虐な笑顔を私に向けた。
コウモリとサソリの化かし合いは、サソリの勝ちだ。
なまえ 紅守黒湖(コウモリクロコ)
さつがいにんずう 715人
もくてき できたから
すきなもの 女?
きらいなもの 男?
しょぐう 国選処刑人となること
びこう 朱音の同族にして同業者。『死』を感覚的に察知することが出来る。ただし、間接的な殺気には対応できない弱点がある。
はるかのかんそう ・・・朱音さん曰く同族らしい。・・・私たちを見る目が気持ち悪人。
・・・彼女の相棒のひな子ちゃんはいい子。