戦闘シーンあります
んーと、雨宮さんのお宅はー・・・ここか。うわ、でっかい武家屋敷。柳岡サンのとことそんなに変わらないんじゃないかな?儲かってる小説家ってすごいねぇ。とりあえず近くのトイレで着替えてっと・・・よし、準備完了。カモフラージュ用のケイサツ手帳もミツルギサンから借りてきてるし問題なし。インターホンを鳴らしてお邪魔しまーす。
50代ぐらいの和服を着たじいさんが現れた。どんなDNAが混じればあんな美人なおにゃのこが生まれるのだろうか、生物学にケンカ売ってるんじゃないか?
「はじめまして。警視庁捜査一課、特殊犯捜査係の志田(シダ)と申します」
「ご苦労様です。どうぞ、入ってください」
「はい。では遠慮なく」
なるほろ。家の中は小綺麗に片づけられてるし、家族写真にも唄乃ちゃんとも仲良さげに映ってる。ぱっと見普通の家庭だ。
でも隠しきれてないんだよなァハルヒコサン。『死』の気配が駄々洩れだぜ?しかも昔のじゃない、ごくごく最近のだ。それも一番新しいので2,3日前の。これは誘拐事件のほうに合致する。
「志田さん。まずワシは何をしたらいいのですか?」
「そうですね・・・、まずはお使いの携帯やパソコンのメールを確認させてください。犯人が身内の可能性もありますので」
「そんな知り合いはいないはずですが・・・分かりました」
ハルヒコサンの後ろから覗き込むようにメールを確認する。マァ、来てるはずがないんだけどな?私がアンタの後ろに回りたいから誘導しただけで、理由はなんだっていいのさ。周囲はただの住宅街だからな、発砲音はマズい。ので、裾の内側から毒でてらてらと鈍く輝くナイフを取り出して首筋にそっとあてがう。あまり慌てないところを見ると私が誰か理解できているようだ。
「最近起きてる誘拐事件、あんたが起こしてるんだろ?」
「最近サソリが警察の子飼いになったという噂は本当だったか」
リアリティーを出すのに顔を近づけていたのが仇となった、いきなりハルヒコサンの肘打ちを避けることは簡単だったが距離をとられてしまった。速攻で勝負つけとけばよかったな。
「誘拐事件だと?奇妙なことを言うね。警察はワシのことを『童謡歌い』として捜査しているのではないのかね?」
「いや。『童謡歌い』はあんたの娘、雨宮唄乃だ。アンタは小説家として人を家に招き、この家のどこかで自分の殺人欲求を満たしてる」
「ほう、この家の?!どこでそんなことを行っているというのかね?」
私に対してしらばっくれるとはいい度胸じゃないか。つま先で書斎の床を叩く、この下から常人にはわからないレベルの血の匂いがプンプンするのだ。
「ここの床下の空間だろう?」
「その根拠は?」
「私にはわかるぜ、うっすらと地の匂いが漂ってきている。私にとっては嗅ぎなれた匂いだからな、すぐにわかるさ。死体が見つかってないことを鑑みると、どうせ童謡に倣って殺した死体をロウかなんかで固めて保存してんだろ?」
「流石はサソリだ、正解だよ」
ぱちぱちと手を叩き褒めたたえてくる。私にとっては当然のことなのであんまりうれしくない。ナイフを構えなおすと同時にアメミヤサンが歌いだした。昔聞いたことのある歌いだしだったが、まったく知らない歌詞を口ずさんでいた。
「サッちゃんはね 線路で足を なくしたよ」
「へぇ」
そんな歌詞あったんだと感心していたが、私の左足に気配を感じたからとっさに体をよじって回避すると、さっきまで目の前にいたハルヒコサンが私の左足を切った後の、刀を振り下ろしてしゃがんだ体勢で目の前にいた。どこからそんな刀持ってきたんだ!机の下か?!
どうやら『童謡歌い』とはここからも来ているらしい。歌っている間、その歌詞に含まれている意味の行動をとろうとすると、例えどのような状況であっても確実に実行できるようだ。少なくとも私はそう感じた。
「ほう。ワシの『童謡』を避けるとは」
「気配を感じるからね。アンタのソレ、自己暗示みたいなものでしょ」
「まあ、言ってしまえばそうだ・・・ッ?!」
あんたの話を聞くと言ってないんだよなァ。顔面に思いっきり膝を叩きこんで鼻っ柱をへし折ると、歌わせないようにスリッパのつま先で口の中に蹴りを入れる。何かがはずれる音がした、たぶんいきなりスリッパが叩きこまれたからあごの骨が外れたんだろう。ハルヒコサンが刀を振り下ろしてくるがタイミングよく側面から蹴り飛ばし完全に無力化する。・・・ん?何か言いたいことがあるらしい。ポケットからメモとペンを取り出して貸してあげる。
『娘はワシと同じ、いや、それ以上だ』
「殺しの才能が?それとも文才?」
『両方ともそうだ。しかし、それ以上に自己暗示の才能が飛びぬけている。ワシなど足元にも及ばぬほどにな』
「ふーん。で、どうしてほしいの?」
『娘を、貰ってくれんか。あの子には未来がまだある。君は自身の殺人欲求を制御できるのだろう?ワシは17年間、何とか耐えてきたがそれが限界だった・・・。だから君に娘の欲求を制御する方法を教えてやってくれんか?』
お父さん公認!!!キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!唄乃ちゃんを私にやるからかわりに欲求の制御方法を教えてやってくれと。こんな取引駄目だよ!プラマイプラスじゃないか!ありがとうございます!
「いいよ。制御方法をしっかりと叩きこんどいてあげる」
『すまない、養子縁組に出す書類にはサインはしてある。あとはワシの介錯をお願いしたい、あの子にはもうこんな父親がいる必要はない。それにワシが死んでいた方が養子に出すきっかけが作れるからな』
「さっさと楽にしてやるから目を閉じてな」
『助かる』
私みたいなやつが来た時ようにそういう書類にはサインしていたらしい、というかこの事件を起こしたこと自体がその為のマッチポンプなんだと私は思う。首元にナイフをあてがい一気に切り裂く、あたり一面が血の海になり私も真っ赤に汚れてしまったからシャワーを借りて帰ろう。死体を消したい衝動にかられたが後でケイサツに提出するのだ。流石にまずい。
私は養子縁組の書類を片手にウキウキ気分で家を出た。あとははるちゃんからの吉報を待つのみかな。
なまえ 雨宮春彦(アメミヤハルヒコ)
さつがいにんずう 74人 (公式69人)
もくてき 童謡の真実を伝える
すきなもの 娘
きらいなもの 替え歌
しょぐう 鼻の骨を砕かれ、あごを外された後、首を斬りおとされ絶命
びこう 30年前に発生した童謡をモチーフにした連続殺人犯『童謡歌い』その人。17年前に出所し、自らの欲求を小説という形でぶつけていたが耐えきれずに失踪事件に見せかけた殺人を行っていたと言われている。しかし、その事件の本質は娘にまっとうな人生を歩んでもらうために、自身よりも強烈な殺人欲求を持つ娘の欲求の制御方法を教えさせることのできる可能性のある鎖曽利朱音に託すためにあった。
はるかのかんそう・・・とっても娘思いな人。・・・殺人欲求さえなければ幸せな家庭を築けたんじゃないかな。