WORLD TRIGGER Beyond The Border 【完結】   作:抱き猫

41 / 95
其の二 決戦前夜 諸人の祈り

「はぁ……」

 

 真新しい家具が並べられた豪奢な部屋に、悩ましげなため息が溶ける。

 聖都の貴族街に立ち並ぶ大邸宅の一つ、グライペイン家の一室で、ゆったりとした部屋着に身を包んだメリジャーナが、ソファーに力なく腰掛け、鬱々と物思いに耽っていた。

 

「ともかく、フィリア様に休息が必要なことは、アルモニア総長も御承知の上だろう。ただそれでも、彼女には参陣していただかなくてはならない」

 

 そんな彼女に話しかけたのは、眉目秀麗な金髪の若者、イリニ騎士団第二兵団長テロス・グライペインである。

 

「それはわかってるわよ。ノマスとの戦いに出ないと、フィリアさんの立場が危うくなるってことぐらいは……」

 

 程なく婚礼を控えたメリジャーナとテロスは、時折こうして二人きりの時間を過ごすようになっていた。

 

 だが今日は、恋人同士の甘い語らいは無い。

 グライペイン家に新たに設けられたメリジャーナの私室。家財道具が運び込まれ、新生活に向けて万端整えられた部屋には、重苦しい空気が立ち込めている。

 彼女を悩ませているのは、友人にして妹分の少女、フィリア・イリニの変貌である。

 

「でも、あの子は普通の状態じゃないわ。……あんな事を言い出すなんて、どれだけ追い詰められているのか、もう今にも壊れてしまいそうで……」

 

 フィリアに絶縁を宣告されたメリジャーナは、顔面を蒼白にして呟く。

 少女の変貌は、騎士なら誰もが経験する思い煩いではなく、もっと根の深い病だ。あれは自暴自棄になった人間の姿である。

 早急に戦いから遠ざけねば、彼女は秋風に吹かれた木の葉のように命を落としてしまうだろう。己の生に頓着せぬものが、どうして戦地で生き抜くことができようか。

 

「フィリア様に手を汚させぬよう、私たちが守ればいい。あの子は聖都の防備に回された。隔離戦場に敵を押し留めれば、これ以上あの方が傷つくことはない」

 

 テロスはメリジャーナの隣に座ると、恋人を優しく勇気づける。

 その凛々しい横顔には一点の曇りもなく、少女を一心に案じているのが窺える。

 

「私たちが気をしっかり持たなくてどうするんだ。式にはフィリア様に介添えを頼むんだろう?」

 

 どこまでも爽やかで誠実なテロスの語調に、メリジャーナの胸の痞えも少しは和らぐ。

 二人の結婚式は、ノマス邂逅後の休戦期に行われる予定だ。その二人の晴れの日には、是非ともフィリアに列席してもらいたい。

 

「そうね……あの子は私の事、お姉さんみたいだって言ってくれたもの。妹の為に、私が頑張らないと」

 

 ぐっと両手を握りしめ、毅然と前を向くメリジャーナ。多分に空元気とはいえ、恋人の励ましは何よりの薬になったらしい。

 

「いいや、頑張るのは私たち、だよ」

 

 テロスはそう言って、婚約者の手に己の手をそっと重ねる。

 

「……うん」

 

 テロスとメリジャーナは頷きを交わし、恋人と心が通じあう喜びに浸る。

 そうして二人は、ノマス襲来を控えた最期の休暇を静かに過ごした。

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 貴族街の中でも一際目立つ、広壮なゼーン家の館。

 当主の執務室に、大粒の宝石を思わせる美貌の女性がいた。

 ゼーン家の若き当主にして、ゼーン騎士団総長ニネミア・ゼーンは、夜も更けたと言うのに、一人で書類の山と格闘している真っ最中であった。

 

「……ふう」

 

 投影モニターを操作する手が止まる。

 ニネミアは手を伸ばして机の上のグラスを手に取ると、琥珀色の液体を喉に流し込んだ。

 

 それなりの度数の酒だが、飲まずにはやっていられない。

 大貴族の領地運営と騎士団の切り盛りは、個人の手には負えない激職である。決裁を付けねばならない用務が山積しており、ろくに睡眠時間も取ることができない。

 

 本来ならば些事は部下に任せればいいのだが、ゼーン家は先代急死の折りに譜代の家臣を同時に失っている。未だに後釜は見いだせておらず、重要書類の殆どに、当主自らが目を通さなければならない有様だ。

 

「流石に、ずっとこのままって訳にはいかないわね」

 

 以前のニネミアは、その苛烈な性格と高い気位が災いして、部下に仕事を任すのを極端に嫌がっていた。他人を信用できなかったといってもいい。

 しかし、最近は彼女の態度も随分と和らぎ、それに伴って指導者たる貫禄も出てきた。配下の家々からも、徐々に信頼を集め始めている。

 

 今では騎士団の中にも彼女を認め、力になろうとする者も多い。そんな彼らの中から側近を育てることを、ニネミアもようやく考え始めている。

 この心境の変化は、彼女の私生活に起きた出来事と無関係ではないだろう。

 

「む、何よこんな時間に……」

 

 ニネミアがグラスを干したその時、モニターに着信が入った。

 私用回線で、送り主はメリジャーナである。

ざっと目を通すと、婚約者との胸焼けする惚気が少しと、あとは共通の友人である少女、フィリア・イリニの心境を案じた内容である。

 

「私にどうしろっていうのよ」

 

 酒の所為か、思考がつい口を突いて出る。

 

 フィリアの起こした騒動のあらましは、ゼーン家でも把握している。

 女を道具のように扱う相手貴族の粗暴なやり口に、ニネミアも当然ながら義憤を覚えたのだが、所詮は他家で起きたこと。彼女に口を差し挟む権利はない。

 また、胸の痛む出来事ではあるが、事件そのものは近界(ネイバーフッド)では珍しい話ではない。他国に連れ去られた捕虜が自ら命を絶つことは、この世界では間々ある事なのだ。

 

「……まあ、あの子なら気にするわよね」

 

 とはいえ、当事者がフィリアだということが問題だ。

 少女が一際繊細な心の持ち主だと言うことは、付き合いの短いニネミアとて十分に知っている。知人同士の喧嘩に立ち会っただけで、身も世も無く取り乱す子供なのだ。

 

「っていうか、私に話しちゃダメでしょうに」

 

 メリジャーナが持ちかけた相談は、イリニ騎士団が誇るエースの不調という軍事機密である。それを他家のニネミアに話すと言うのは、本来なら許されることではない。

 彼女とてそれを分かったうえで相談しているのだから、ニネミアを友人として深く信頼しているのだろう。乙女は面はゆさに頬を掻く。

 

「そういえば……」

 

 と、ニネミアは思い出したように投影モニターを操作し、過去の通信ログを表示する。

 同じく友人であるフィロドクス家のオリュザから、少女を案ずる旨の通信を受け取っていたのだ。

 オリュザとは一時は顔を合わせると喧嘩ばかりする仲であった。それが今や、不思議と馬が合う友人になっている。

 

 それもこれも、フィリアが骨を折って仲を取り持ってくれたお蔭だ。

 

「…………」

 

 ニネミアは暫し黙考し、丁寧に返信を認めた。

 自らも少女を案じている事。そしてどうにかして彼女の心労を取り除いてやりたい旨を、美文で記す。

 ニネミアは少女に服を見立ててやる約束をしており、会うための口実ならいくらでも作れる。ただ、肝心の少女を元気づける内容が思い浮かばない。

 

「――まったく、暇みたいで羨ましいわ」

 

 返信を送ると、すぐさまメリジャーナとオリュザが長文を書いて寄越してきた。

 ニネミアは苦笑いを浮かべて通信を読む。酒を注ごうと思ったが、自然とその手は止まってしまった。友人の苦境に思いを馳せると、自然と身が引き締まる。

 

「全部、ノマスを何とかしてからよ」

 

 ニネミアはそう呟くと、頬杖をついて投影モニターを眺めた。

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 エクリシアでも最古の家柄を誇るフィロドクス家。

 風格漂う品々に彩られた荘厳な正餐室で遅めの夕食を取っているのは、フィロドクス家当主クレヴォと、養女オリュザである。

 

「オリュザ、浮かぬ面持ちだがどうしたのかね?」

 

 鷲鼻に白い滝髭を蓄えた老人クレヴォは、眼鏡をかけた灰色の髪の女性に声を掛ける。

 

「大丈夫かね。また具合が悪くなったのか?」

 

 食事の手を止め、虚空を茫と眺めているオリュザに、クレヴォは心配そうな眼差しを向ける。この若い女性は進行性の病を抱えており、突如として眩暈や吐き気を起こして倒れることも少なくない。

 トリオン体ならその心配も無いはずだが、不調の兆しはどのように表れるか分からない

 クレヴォが常勤医を呼びつけようと腰を浮かしかけたところで、やっとオリュザが我に返った。

 

「いえお父様。私は至って健勝です」

 

 と、オリュザが平静な声で応える。

 

「ただ、少し考え事をしていたもので……」

 

 乙女の表情は能面のように微動だにしないが、実の父親のように彼女を養育してきたクレヴォには、彼女が明らかに心配事を抱いているのがはっきりと分かった。

 

「さて、どうしたんだねオリュザ。私では力になれぬことかな?」

 

 一先ず健康面での問題ではないことを確かめると、クレヴォは小さな目を細め、孫娘に接する好々爺のように優しく話しかけた。

 

「イリニ家のフィリア様について……あの方を、どうにか元気づける手段はないだろうかと考えていました」

 

 騒動の後、騎士団に復帰したフィリアが、未だに精神の安定を欠いている事を、オリュザは友人のメリジャーナから聞かされた。

 同じく友であるゼーン家のニネミアと共に、少女を元気づけるための方策を練っているのだが、あいにく社交性の著しく欠如したオリュザには、これといって上手い手段が思い浮かばない。

 ノマスとの大戦を控えた時期にも関わらず、彼女の頭は小さな友人のことで一杯になってしまっている。

 

 訥々と胸の内を吐露するオリュザを、クレヴォは暖かな眼差しで見守る。

 情緒が欠落していると方々で陰口を叩かれた彼女が、今では友の傷心に頭を悩ませ、何とかその心情に寄り添おうとしている。

 

「フィリア殿とは本当に善き友情を築いたのだな」

 

 感慨深げに呟くクレヴォに、

 

「はい。大切なお友達ですから」

 

 オリュザは平然とした様子でそう告げる。その耳が微かに赤く染まっているのは、改めて友という言葉を使ったことに、気恥ずかしさを感じているからだろうか。

 

「うむ。戦場で負った心の傷というのは、身体の傷にも劣らぬ程に厄介だ。アルモニア殿が知らぬはずもあるまいが、それを専門としている医者も我が国にもいる。まずは彼ら専門家に相談したうえで……」

 

 と、クレヴォは経験と知識に裏打ちされた所見を縷々と述べる。それはあくまで一般的な症例に対する見解であったが、オリュザは熱心に耳を傾ける。と、その時、

 

「失礼いたします。ご当主様」

 

 クレヴォが話している途中、正餐室に訪問者が現れた。

 現れたのは四十半ばほどの怜悧そうな男性である。彼はクレヴォの嫡男、ジンゴ・フィロドクスだ。

 

「お食事中の所失礼いたします。早急にお耳に入れていただきたき議が御座います」

 

 血のつながった息子にしては余りにも事務的な態度で、エンバシアがそう言う。

 クレヴォとその息子は、領地と騎士団の運営に関して反目を抱えており、親子の仲は冷め切って久しい。

 クレヴォが老齢にも関わらず、未だに家督をジンゴに譲らないのはそのためだ。とはいえ、彼が有能であることには変わりなく、フィロドクス家を実質切り盛りしているのはこの息子である。

 

「……うむ。分かった。ではオリュザ、話の続きはまた今度にしよう。あまり思いつめて、お前まで身体を壊すことのないように」

 

 クレヴォはオリュザに優しくそう言って、正餐室を後にした。

 不仲で有名なクレヴォとジンゴだが、最近は二人きりで膝を交え、秘密裏に意見を交わす事も多い。

 エクリシアを取り巻く情勢の緊迫化がそうさせているのか、それとも二人の仲に雪解けが訪れたのかは定かではないが、オリュザはそれを悪い事とは思わなかった。

 

「……」

 

 一人きりとなったオリュザは、豪勢な食事を黙々と片付け始めた。

 無心にナイフとフォークを動かしながら、脳内では様々な考えが湧いては消えていく。

 

 彼女が戦場に立つのは、自らに人生を与えてくれたクレヴォに報いるためだ。だが、フィリアを初めとした友人たちを得てからというものの、彼らと、彼らの属する国を護りたいとの思いが生まれ始めた。

 恩人と国家を護るため、友と戦場に轡を並べる。

 

 それは先の短い己にとって、望むべくもない幸せではないかとオリュザは思った。

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 その日、聖都のイリニ屋敷は上を下への大騒ぎであった。

 

 はしゃぎまわっているのは、この屋敷に住む三人の子供、サロス、アネシス、イダニコたちだ。

 彼らは稼業が終わるや否や、そろって家人に外出のおねだりをして街へと繰り出した。買い求めるのは自分用の品ではなく、贈り物や飾り付けのである。

 彼らが大騒ぎをしているのは、およそ二年ぶりに、母パイデイアが聖都へと帰ってくるからだ。

 

「え~お前が作るのかよ。大丈夫?」

「失礼ね、ちゃんとできるわよ! まあ、シェフさんに教えてもらいながらだけど……」

「お姉ちゃん、僕も手伝うよ」

 

 イリニ家の広い厨房で、黒髪の元気な少年と赤髪の可愛らしい少女、そして金髪の和やかな少年が、和気あいあいと夕食の準備に取り掛かっていた。

 神の候補パイデイアは病気療養の為、郊外のイリニ家本邸で暮らしている。少年たちは月に一度、車両に乗って母に会いに行くのを何よりの楽しみとしていた。

 フィリアの誕生日を祝うという特例を除いては、パイデイアはイリニ家の所領を出ることなく暮らしていた。

 

 そんな彼女が聖都へと戻ってきた理由。それはノマスとの邂逅を前に、神の候補者を安全地帯へ避難させるためである。

 有り得べからざる事態だが、万が一にも敵の攻勢を支えきれず、隔離戦場を突破された場合、地方に駐屯している戦力ではこれを迎え撃つことができない。

 聖都は堅牢な城壁と無数の防衛装置を有する城塞都市である。騎士団の本営もあり、有事の際はすぐさま騎士が駆けつける。その防御力は正に金城鉄壁だ。

 代替の効かない神の候補の安全を確保するなら、聖都に留め置くのが最善と言えた。

 

 以上の理由から、イリニ家のみならず他の騎士団が擁する神の候補も、続々と聖都に集まってきている。そしていざノマスとの邂逅となれば、神の候補の身柄は揃って教会へと移されることになっていた。エクリシアの中心であり、(マザー)を護る教会は、この国で最も堅固な城塞である。

 

 だが、未だ幼い三人の子供たちに、そうした事情は関係ない。

 母がしばらくの間、自分たちと同じ家で寝泊まりをするという事実だけで、歓喜雀躍するには充分である。

 少年たちは母を出迎えるべく、一日がかりで準備万端を整えた。

 そしてその夜。

 

「「「お母さん、お帰りなさい!」」」

 

 仲良く重なった声が、屋敷のエントランスに響く。

 

「ありがとう。みんな」

 

 子供たちの歓待を受け、喜びの声を上げるのは、麦穂のような金髪と、翡翠のような瞳を持つ麗人、パイデイア・イリニである。

 彼女は子供たちを抱擁し、久々の再開を心より祝う。

 

「ね、お母さん、今日の夕食は私たちで作ったの」

「まあ本当に? 楽しみだわ」

 

 子供たちに引っ張られるようにして、パイデイアは正餐室へと連れて行かれる。

 喜びと愛情に満ちた家族の一時。だが、フィリアの姿はどこにも無かった。

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 子供たちとの夕食を終えたパイデイアは、宛がわれた客室へと向かっていた。

 荷物の運び込みは家人が行ってくれたので、身一つでの移動である。サロスたちは会場の後片付けがあるため、後から部屋に来ることになっていた。すると、

 

「壮健でなによりです。パイデイア」

 

 客室の前に、人の頭ほどの大きさをした白いトリオン兵が浮かんでいた。魚の尾ヒレのような突起を持つそれは、彼女たちの家族、自律型トリオン兵ヌースである。

 

「ごめんなさいヌース。あなたに色々と押し付けてしまって……」

 

 この古い友人に会うなり、パイデイアは心痛に顔を歪めて謝罪の言葉を口にする。

 神の候補として訓練に励む彼女に代わって、ヌースには子供たちの世話を頼んできた。

 

「いいえ。謝るのは私の方です。私では、フィリアの力になることができませんでした」

 

 そう言って、ヌースは客室への入室を請う。サロスたちが来る前に、フィリアの今後について詳しい話をしなければならない。

 そして二人は密室で、少女の身に起きた悲劇を語らう。

 

「そう、そこまであの子は……」

 

 ヌースから詳しい事情を耳にすると、パイデイアは顔を伏せ、沈鬱な声を漏らした。

 フィリアの計らいで楽隊の仕事に就いたオルヒデアが、物言わぬ遺体となって帰ってきたことは知っている。また、その騒動の渦中に娘がいたことも聞かされていた。

 少女がその事件を切欠に心の平衡を崩してしまったことも、アルモニアを通じて伝えられてはいたのだが、ヌースの口から語られる生々しい実情に、母の胸は千々に乱れた。

 

「フィリア……」

 

 家族との接触すら拒み続け、痩せ衰えた娘の姿を想像すると、パイデイアは今にも涙を溢さんばかりに顔を歪めた。

 しかも、現在フィリアは何事も無かったかのように騎士団に復帰し、以前にもまして精力的に働いているという。

 

「気鬱の反動だろうと言うのが医者の見立てですが、ともかくフィリアの精神が未だ完治していないのは確かでしょう」

 

 平静な、しかしどこか気落ちしたような声でヌースが言う。

 

「彼女は謹慎が解けて以降、私やサロスたちの誰にも面会しようとしていません。現在は騎士団の砦で寝泊まりし、この館にさえ戻ってこない状況です」

 

 あれほど家族を大事にしていた少女からは考えられない行いである。

弟妹たちも姉の振る舞いには大層ショックを受けたようだが、姉の抱える事情を慮り、じっと耐え忍んでいるという。

 

「なんとか、騎士団に行けないかしら?」

「訪れることはできるでしょう。ただフィリアがあなたに会うかどうかはわかりません」

 

 娘の苦悩に何かできないかと思うのは、母親として当然の感情だろう。だが、パイデイアの切なる問いかけに、ヌースは抑揚のない声で応えた。

 

「ですが、手は尽くすべきです。私もあの子には笑顔でいてもらいたい。それにはパイデイア。あなたの力が必要です。機械人形の私では、あの子の心を解きほぐすことはできませんから」

「ヌース……」

 

 二人は頷きあい、少女の心を救うべく方策を練りあった。

 とはいえ、何はなくとも娘に直接会わなければ始まらない。一先ず聖都滞在の挨拶も兼ねて、遠からぬうちに騎士団を訪れるべきだろう。

 

 

   ×   ×   ×

 

 

「ええと、勝手に入っていいものかしら?」

「家人が行っていることを、母親のあなたが遠慮する必要はないでしょう」

「いえ、でも、母親だからというか何というか……」

 

 その翌朝、パイデイアとヌースは、フィリアの私室の前にいた。

 ロックを外し、無人の部屋へと立ち入る二人。

 あれこれ話し合ったのだが、面と向かって騎士団に会いに行っても、フィリアに避けられることは間違いない。

 

 とすると、娘に会うためには策を弄する必要がある。

 一切家に寄り付かなくなったフィリアだが、着替えやらの何やらの生活用品は家付きの女中に騎士団まで運ばせている。

 その役目に成り代われば、娘とも自然に会う事ができるに違いない。そう考えた二人は、早速実行に移したのである。しかし――

 

「…………」

 

 娘の私室に立ち入ったパイデイアは、呆然として立ち尽くした。

 部屋は貴族の令嬢に相応しく、壁には精緻な飾りが施され、豪奢な家具が設けられている。また、主が不在でも女中は完璧に仕事を行っているようで、ベッドは整然と整えられ、室内には塵一つなく、花瓶には瑞々しい花が活けてある。

 だが、その部屋にはあって当たり前の、生活の匂いが無かった。

 

「フィリアはこの二年間、安息の時間を殆ど持ちませんでした。この部屋には寝に帰るだけ。それさえ叶えられぬ日も多かったのです」

 

 母の驚愕を察したヌースが、滔々と説明する。

 此処まで空疎な部屋の主人が、僅か十二の幼子だろうとは、一体誰が信じるだろうか。

 パイデイアは改めて、フィリアの過ごした二年の歳月の酷烈さを思い知った。

 

「……ともかく、服を用意しましょう」

 

 そう言って、二人はウォークインクローゼットに入ると、チェストから肌着など替えの衣類を物色する。女中に纏めさせれば間違い無いのだが、少しでも母親らしいことをしたいというパイデイアの希望である。

 

「他には……あの子、化粧品やオイルは使ってるのかしら?」

「以前はメリジャーナ・ディミオス様に教わっていたようですが、女中へ要望した品目に記載はありません」

 

 静々と部屋を巡り、頼まれた品を整える二人。

 ふとパイデイアが、ベッドの隣、サイドテーブルに置かれたポプリの小瓶に気付いた。

 

「これは……」

 

 その小瓶は、嘗てオルヒデアが見せてくれた物と同じであった。

 この部屋で、フィリアは一人でオルヒデアの死と、世界の残酷さに向き合ったのだろう。煩悶の末に、彼女は何を思い、どんな考えに至ったというのか。

 埒も無い想像に捕らわれるオルヒデア。するとその時、彼女はまるで何かに呼ばれたかのように、窓際の机へと視線を向けた。

 

「…………」

 

 母親の感というには、余りに不明瞭な動機。

 机には特に少女の必要としている物はなく、またいくら娘であろうと、無闇に部屋を漁るべきでないことは重々承知している。

 しかし、パイデイアは机へと進み、誘われるかのように引き出しに手を掛けた。

 そこに納められていたのは、鍵を模した銀のペンダントである。

 

「――っ!」

 

 パイデイアは口元に手を当て、言葉を失う。

 それはサロスたち弟妹が、フィリア為に手ずから作った贈り物だ。

 少女が如何にそのペンダントを大切にし、肌身離さず身に着けていたかは知っている。それを部屋に置き去りにした意味。その不吉さに、母は慄然となった。

 

 そして、それ以上にパイデイアを驚愕させたのは、銀の鍵にはめ込まれた真珠のようなトリオン球だ。それは十余年前のあの日、涙と希望と共に生まれた――

 

「お願いレギナ。あの子を護って……」

 

 パイデイアは銀の鍵を胸に抱き、祈るようにそう呟いた。

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 墨を流したような暗黒が、茫漠と広がっている。

 時折、まるで拍動のように淡い緑の燐光が空間を照らす。毛細血管のように壁中を走る輝線は、トリオンを供給するラインだ。

 

 教会の地下深く、神の御座所にして(マザー)トリガーへと通ずる縦坑の最奥に設けられた、広大な円球状の広間。

 エクリシアで最も厳重に警備された大深度地下区画。

 その中央、直下にある(マザー)トリガーに拝跪するかのように、片膝を付いて座る巨大な人型があった。

 

 膝を付いていても尚十メートルを超える高さ、立ち上がれば二十メートルに届くだろうという巨神像は、当然の如くトリオンで形作られており、一切の虚飾を排した無骨な拵えは、古代の甲冑を纏った軍神を思わせる。

 

 否、それは正しく鎧であった。

 エクリシアが誇る騎士甲冑「誓願の鎧(パノプリア)」にも相通じる意匠のそれは、(マザー)トリガーを守護するために造られた決戦用トリガー「恐怖の軛(フォボス)」である。

 

「お前の出番が無ければいいんだけどなぁ……」

 

 その時、安穏とした少年の声が広間に響いた。

 見れば、強大無比な巨神の前に、不釣り合いに小柄な人影がある。

 冴えわたる蒼穹のように青い髪と瞳をした十二、三歳ほどの少年が、虚空を眺めるような遠い目で、物言わぬ巨神を見上げていた。

 

「ここに御出ででしたか。猊下」

 

 少年に背後から声を掛けたのは、荘厳な僧衣を纏った老齢の男性、枢機卿ステマ・プロゴロスである。

 

「鐘楼から地下まで歩かされましたぞ。少しは老骨の身を慮ってもらいたいものですな。誰も彼も、あなたのように若々しい訳ではないのですから」

 

 ステマは深い皺の刻まれた顔をさらに顰め、少年へと苦言を呈す。

 

「御免ね。久々にコイツを見てやろうと思ってさ」

 

 御小言に首をすくめながら、少年は軽く謝罪する。

 

「ともあれ通信機はお持ち下され。あなたはこの国で最も尊貴な立場に在らせられるのを、未だに理解しておられんようだ」

「だから御免って。通信機は持ってるけど、操作の仕方がよく分かんないんだよ」

 

 まるで孫を叱る爺のようなステマと、頭を掻きながら言い訳交じりに弁解する少年。寒々しい地下空間で、妙に和んだ会話が繰り広げられる。

 

「それで、何の用だっけ?」

「対ノマスの防衛計画書に、あなたの一筆がいるのですよ」

「そんなの机に置いといてくれればいいのに」

「最後に執務室に入ったのは何時のことでしたかな?」

「……ごめんなさい」

 

 皺だらけの老人と空色の少年は、巨神の前で他愛のない雑談を続ける。すると、

 

「此度のノマスとの邂逅……「恐怖の軛(フォボス)」が必要になりますか?」

 

 と、緊張を面に滲ませてステマが尋ねた。少年は緩く頭を振って、

 

「もう世俗を離れて久しいんだ、僕には何も分からないよ。表向きの事はみんな君と騎士団がやってくれてる。――ただ、僕はこの国の為に、義務を尽くすだけさ」

 

 と、老人のように凪いだ瞳でそう呟く。

 

「ああ、ノマスとの戦争も、もう何回目になるんだったかな。駄目だなあ、ちゃんと覚えていなきゃといつも思うんだけど……」

 

 少年はそう言って、寂しげに笑う。

 

「いつまで続くんだろうね。この憎しみと流血の連鎖は」

「……執務室にお戻りください。猊下」

 

 ステマに促され、教皇アヴリオ・エルピスは地上へと続く昇降機に向けて歩き出した。

 教会へと戻るその途上、少年の脳裏に一人の少女の姿が浮かんだ。

 夕焼けに染まる世界を眺め、近界(ネイバーフッド)の酷薄さに涙を流した、無垢なる彼女。

 アヴリオは大戦に身を投じるであろうフィリア・イリニに、せめてもの救いがあることを切に願った。

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 深更の聖都。人の気配も絶えたイリニ騎士団の修練場で、舞うように剣を振るうフィリアの姿があった。

 薄明かりに照らされた大広間の空間を、白刃の軌跡が縦横に奔る。闇色の軍服を身に纏い、雪のように白い髪を靡かせる少女は、まるで戦女神のようにどこか侵しがたい、神聖な気を発している。

 

「――っ!」

 

 鋭い呼気と共に、フィリアが踏み込んだ。横薙ぎに放たれた紫電の一閃は、目で追う事さえ不可能な速度に達している。

 速度、精密さ、威力。そのどれもが昔日の剣ではない。ほんの僅かの内に、少女の剣は更なる進化を遂げていた。

 

 トリオン体の構造を熟知し、限界まで能力を引き出して操縦する。理屈としては余りに単純だが、数多のトリガー使いが挑み、遂には成し遂げられなかった難行である。

その超常の技術を、僅か十二歳の少女は見事に体得していた。

もはや少女を上回る技量の持ち主は、近界(ネイバーフッド)中を見渡してもそうざらにはいないだろう。(ブラック)トリガーでもなければ、彼女を止めることはできない。

 

「……」

 

 少女は残心の構えを取り、型稽古を終える。

 ここまでトリオン体を動かせるようになったのは、長きにわたる煩悶を乗り越えてからのことだ。自らを機械と定義し、家族の幸せ以外の望みを捨て去った時、少女は剣の理に開眼した。

 

 型が存在する意味。それは一片の呵責容赦なく、対手を確実に斬るためだ。数々の技と体捌きは、全てそれを実現するためにある。その要求に、機械となったフィリアは完全に応えることができた。

 一見すると流麗な剣舞は、そのすべてが冷酷無情な殺し技である。一切の思索を捨て去り、剣の理に身を委ねれば、ただ斬ったという結果だけが世に現れる。

 これこそ、無謬にして至高の剣。少女が願った己の有り様そのものだ。

 

「……」

 

 静寂に包まれた訓練場。

 全ての人々との繋がりを捨てたフィリアは、祈るように両手で剣を構え、静かに瞑目する。そして、

 

「――全て、斬ってしまえばいい」

 

 ノマスへの、世界への狂猛な敵意を漲らせ、少女は一人そう呟いた。

 

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

 雲一つない蒼天を、一羽の鷹が悠々と風を切って飛んでいく。

 太陽は眩しく輝き、大地は青々とした草原が見渡す限りに広がっている。

 緑の海に浮かぶ白い点々は、長閑に草を食む羊の群れだ。如何にも牧歌的なその情景を眺めながら、ユウェネスは誰に憚ることなく大きな欠伸をした。

 

 馬を模したトリオン兵ボースの背にあおむけで寝転がっているのは、褐色の肌に癖のある黒髪をした二十そこそこの若者である。

 ユウェネスは手だけでボースの鞍袋を探り、揚げ饅頭を取り出すと、寝ころんだまま大口を開けて齧り付く。

 

 照りつける陽光は暑いほどだが、吹き抜ける風が肌に心地良い。

 饅頭を食べ終えた青年は油の付いた指を舐めると、腰に掛かっていた刺繍布をぞんざいに顔に被せ、日差し除けにした。どうやらこれからひと眠りするらしい。

 腹がくちくなった青年は、すぐに軽いいびきを立て始めた。

 暫くして、だらしなく腹を掻いて眠るユウェネスに、同じくボースに騎乗した人影が音も無く近寄った。そして、

 

「何やってるんですかユウェネスさんっ!」

「――うおッ、何だ」

 

 青年の耳元に口を寄せ大声で怒鳴りつけたのは、青年と同じ褐色の肌をした十五歳ほどの凛々しい少年である。

 ユウェネスは驚いて目を覚ますが、勢い余ってボースからまっ逆さまに落ちる。

 

「今日はノマス中の部族長が集まる会議なんですよ! こんなところで油を売っている暇がありますか!」

「だからって怒鳴らなくてもいいだろうが! 下手すりゃ首の骨折って死んでるぞ」

 

 立ち上がった青年が、たれ目がちな金色の瞳に涙を浮かべて抗議する。

 

「さっさと城市に帰りますよ! 会議をさぼろうとしたなんて知れたら、我がドミヌス氏族末代までの恥になります!」

 

 だが、少年は眦を決し、なおも語調を強めて青年を叱責した。

「レグルスよぅ、お前本っ当に頭コチコチだよなあ」

「ユウェネスさんが緩すぎるんですよ!」

 

 能天気に反論するユウェネスに、レグルスと呼ばれた少年が憤激する。

 

 少年の雪のように白く輝く髪と、黄金で拵えたかのような瞳は、ノマス最大の勢力を誇るドミヌス氏族の直系たる証である。同じく黄金の瞳を持つユウェネスもまた、傍流ではあるがドミヌス氏族に名を連ねる者だ。

 

 この日、ノマスの首都では主な部族長すべてを招集しての会議が執り行われることとなっていた。

 議題は勿論、邂逅差し迫った怨敵、聖堂国家エクリシアへの対策である。

 

「会議っても親父さんの一声で仕舞じゃねえか。態々端っこに座っとく意味もないだろ」

 

 と、ユウェネスが口を尖らせてそう言う。

 ドミヌス氏族は既に、エクリシアへの総攻撃を決定している。ノマスの事実上の盟主であるドミヌス氏族が提言すれば、諸部族はほぼ間違いなくその案を承認するだろう。

 

「「国宝」の担い手が会議に不参加とか、言い訳できると思ってるんですか」

 

 少年レグルスはユウェネスの荷物を勝手にまとめて鞍袋に突っ込むと、ボースの自動運転機能を操作し、行先を首都へと決定する。

 

「あ~、出兵に散々っぱら反対した手前、あんまり親父さんに会いたくねえんだよなぁ。あんな馬鹿みたいにトリオンつぎ込んで、勝っても負けてもしばらく極貧生活間違いなしなんだぜ」

 

 動き出したボースの上で、ユウェネスが身体を伸ばしながらそう言う。

 そんな青年に、馬を並べたレグルスは不服そうに声を尖らせ、

 

「……そりゃあ、言い分もわかりますよ。でも、トリオンを費やすならなおの事勝たなきゃ意味ないじゃないですか。相手はあのエクリシアですよ。ノマス百年の安泰の為には、全身全霊を尽くさないと」

 

 と、真面目くさった表情でそう言う。

 ドミヌス氏族は今回のエクリシアとの邂逅にあたって、史上類を見ない大掛かりな侵攻計画を立てている。遠征につぎ込まれるトリオン量はノマスそのものを傾かせかねないほど膨大で、今後の市民生活にも間違いなく悪影響が出るだろう。

 しかし、当の市民たちはエクリシアへの侵攻に極めて肯定的であり、積極的に計画を後押ししている。ユウェネスのような反対意見の持ち主はごく僅かであった。

 

「まあ何せ、前回の負け戦が酷過ぎた。刺し違えてでも殺してやろうって皆が考えるのは、分からなくもないんだけどな」

 

 その理由は、先の戦争でエクリシアが働いた暴虐の凄まじさである。

 ノマスに攻め込んだエクリシアは、その強大な兵力を以て寇掠の限りを尽くした。

 侵されなかった土地は寸土として無く、人死にの出なかった家は存在しないほどの被害を受けたのだ。市民たちこの十余年もの間、ひたすらエクリシアへの憎悪を滾らせ、復讐の機会を待ち焦がれていたのである。

 

「レギナ様も、彼の国の捕虜となられたんですよね……」

 

 沈鬱な面持ちで、レグルスが呟く。

 少年の叔母にあたるレギナも、先の戦役の被害者の一人だ。

 ノマスを代表するドミヌス氏族の、それもトリオン工学の天才と名高い才媛の喪失は、国家と国民の全てを深く傷つけた事件である。

 

「お前は小さかったから覚えてないだろうけど、滅茶苦茶いい人だったぜ。……親父さんだって妹の事は忘れらんないだろうし、モナカなんか、あれ以来すっかり人が変わっちまった。まあ、因縁積る相手ってのは事実なんだが、それでもな……」

 

 ユウェネスは遠い目をして呟くと、馬腹を蹴ってボースを襲歩で走らせる。

 

「だったら尚更勝たなきゃ駄目じゃないですか。レギナ様を探して連れ帰らないと!」

 

 青年の背を追いながら、レグルスは大声で呼びかける。

 そうしてボースを走らせていると、広大な草原に不釣り合いな物体が見えてきた。

 

 緑の海に現われたのは、トリオンでできた巨大な建築群である。

 円柱状の壁に丸屋根が乗った形状は、一般的な遊牧民が起居するテントを思わせたが、その大きさが異常であった。

 

 周囲に比べる物が無いため実寸を量りにくいが、差し渡しは小さい物でも数百メートル、高さも百メートル近くはあろうか。

 それらの巨大な建築物が、見渡す限りの草原に、十、二十と点在しているのだ。遠目からみれば、白い亀の甲羅が並んでいるようにも見えよう。

 

 しかもそれらの建築物は、ユウェネスたちの目の前で、ゆっくりと草原を移動しているではないか。

 それを可能にしているのは、建築物の外縁から伸びる、これもまた亀の足を思わせるような巨大な円柱である。

 これらの建物群こそ、ノマスが誇る機動城塞都市である。

 

「まったく、動かすだけでもトリオン喰うだろうに……」

 

 ボースの歩度を落としながら、ユウェネスがぼやく。

 本来、この城市に移動機能が付いているのは家畜の放牧地を変えるためだ。このように一所に集まっているのは、敵の襲撃に備えて戦力を集中する為である。

 

「誰も彼もが本気です。ノマスの皆が、エクリシアに鉄槌を下す事を望んでるんです」

 

 青年の隣に馬を進めたレグルスが、真剣な面持ちでそう言う。

 既にエクリシアに対する工作活動は一年も前から行われている。戦争への準備という意味であれば、あの屈辱の敗北からの十余年すべてがそうだ。

 塗炭の暮らしを耐え忍び、爪に火をともしてトリオンをかき集め、血を吐くような不断の努力で戦力を高めてきたのは、偏にエクリシアに復仇する為だ。

 

「まあ、ここから和平って話はないよな」

「はい。僕たちで、忌まわしい歴史に終止符を打つんです」

 

 嘆息と共にそう言うユウェネスに、レグルスが凛々しく同意する。

 

「でもよ、(ブラック)トリガーあるだけ突っ込んで戦争ってのは、いくらなんでも思いきりが良すぎねえかな」

 

 やる気に満ち溢れた少年を横目に、青年は肩をすくめてため息をついた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。