WORLD TRIGGER Beyond The Border 【完結】   作:抱き猫

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其の十一 神の御坐にて 虐殺

 神の御家に、赤い雨が降る。

 

 麗しいステンドグラスを打ち振るわせるのは、荘厳な賛歌ではなく魂切る絶叫。

 善良なる神の僕らが憩うはずの大聖堂には、心を持たぬ殺戮機械が跋扈する。

 ノマスの砲撃によって陥落した教会では、侵入したトリオン兵によって、情け容赦ない虐殺が行われていた。

 

 市民たちは迫りくる敵の手から逃れようと、算を乱して逃げ惑う。

 ある者はさらに教会の深部へと逃げ込もうとし、またある者は教会に見切りをつけて外を目指そうとする。

 

 だが、教会へ避難した市民たちの数は余りにも多く、円滑な逃走などできようはずが無かった。そこかしこで将棋倒しが起こり、また市民兵の一部が恐怖に駆られて銃を乱射し、避難民が誤射されるという事態が起きている。

 

 まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。

 防衛陣地に詰める筈の衛兵たちは、この危局にも一向に姿を現さない。先の砲撃によって陣形が崩れたところを強化クリズリ率いるトリオン兵に襲撃され、衛兵たちはほぼ全滅の有様となっていた。

 そして、市民の希望である騎士はといえば――

 

「な、なんだあれ……」

 

 市民の口から驚愕の呻きが漏れる。

 

 教会に空いた大穴から入ってきたのは、確かに「誓願の鎧(パノプリア)」を纏った騎士たちだ。だが、純白の鎧には漆黒の輝線が葉脈のように走り、その歩みは人形のようにちぐはぐだ。

 何より市民たちを絶望へと追い込んだのは、護国の戦士であるはずの騎士たちが、なんと敵のトリオン兵と並び立っていることだ。

 

 知識の無い一般人でも、事態の異常性は直ぐに感じ取れた。彼らは最早、市民の守護者ではない。

 長剣や銃を掲げて襲い掛かる騎士に、市民たちが悲鳴を上げて逃げだす。

 

 奮戦虚しく敗北した騎士は、ノマスのブラックトリガー「悪疫の苗(ミアズマ)」によって敵の傀儡へとなり下がった。

 防衛部隊は壊滅である。教会にまともな戦力はもう残っていない。

 にもかかわらず、ノマスのトリオン兵たちは無害な市民たちを執拗に追いまわし、次々に殺害していく。

 これは(ブラック)トリガーの出現を防止するための処置だ。

 

 原則として、近界(ネイバーフッド)では互いの国の存続が危ぶまれるような絶滅戦争は行われない。

 たとえ一方が明らかに優勢であっても、窮地になれば、敵方にも命を捨てて抵抗する者が現れる。

 そうして造られた(ブラック)トリガーは、仮初の優位など容易くひっくり返すほどの戦力を持つ。

 勝利寸前まで攻め込んだ大国が、敗北の憂き目にあう事など珍しくも無いのだ。

 

 また長期的な観点から見ても、他国に戦略級の兵器が増えることは望ましいことではない。人間やトリオンはどこででも得られるが、(ブラック)トリガーは滅多な事では手に入らない。みすみす敵に利するような真似は、どこの国も行わない。

 これらの事情から、近界(ネイバーフッド)の戦争にはある種の暗黙の了解があり、限定的な規模の紛争になることが多い。

 

 だが今回、ノマスがエクリシアに仕掛けた戦争は、紛うことなき全面戦争であった。

 怨敵の命脈を絶つため、ノマスは敵の中枢を掌握するべく国庫が空になるほどの大軍を繰り出した。エクリシア側に余裕を残してやるように、などという配慮がある筈がない。

 となれば、敵方に(ブラック)トリガーを造らせない手段は只一つ。皆殺しである。

 

 死人は何も生み出さない。

 敵を捕虜に取ることさえ考えず、とにかく出会った者は全て殺す。特に、(ブラック)トリガーを作れそうな優秀なトリオン能力者は逃さない。

 まともな人間なら精神的に耐えがたいような任務でも、人形兵器であるトリオン兵には関係ない。彼らは組み込まれたプログラムに忠実に従い、エクリシアの民を丹念に殺していく。

 それが、教会で行われた虐殺の理由であった。

 

「…………」

 

 酸鼻極まる有様となった大聖堂に、従容と足を踏み入れる二人の人影がある。

 視界を埋め尽くさんばかりに散らばった大量の人間の残骸。そして噎せ返るほどに濃密な血糊と臓物の臭いに、ユウェネスは盛大に顔を顰めた。

 

「時間が惜しいわ。早く取り掛かって頂戴」

 

 一方、モナカは凄惨な光景に眉一つ動かさず――むしろどこか昂揚した面持ちで――死体の山を踏み分けて進んでいく。

 トリオン兵による徹底的な蹂躙によって、聖堂内には彼ら以外の生存者の姿はない。

 避難民たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行ったし、生き残ったであろう衛兵たちも、教会の地下区画へと撤退したようだ。戦列を立て直し、地形戦で敵を迎え撃つつもりに違いない。

 

「……」

「今更、気が乗らないなんて言わないわよね」

 

 死体の山に触れぬよう歩度を緩めて歩く青年に、モナカが鋭い声で叱責する。

 

「……分かってるよ。どっちみち、此処で死ぬか後で死ぬかの差しかないんだ」

 

 ユウェネスは吐き捨てるようにそう言うと、聖堂の中央へと急ぐ。

 

 ノマスの作戦目標は、エクリシアの(マザー)トリガーの奪取ないし破壊である。

 首尾よく(マザー)トリガーを抑えられれば、星の命を人質にしてエクリシアを属国化し、長期的なスパンで国力を削いでいく。

 奪取が不可能となった場合は、とにかく(マザー)トリガーを破壊し、エクリシアという国そのものを完膚なきまでに破壊するという計画だ。

 

 星の命脈が絶たれれば、その上で暮らす人々も息絶えるしかない。

 近界(ネイバーフッド)でも有数の人口を抱えるエクリシアの民の全てが、他の惑星国家に移住するなど不可能だ。

 また、たとえ占領が上手くいったとしても、ノマスはエクリシアの反抗の芽を摘むため、国土を矮小化するつもりでいる。

 

 どちらの未来に進んでも、エクリシアは膨大な数の死者を出すだろう。

 つまり、ユウェネスはこの作戦が成功裏に終わったその瞬間、史上類を見ない大量殺人者として歴史に名を刻むことになるのだ。

 

「……憐れんでやる必要なんてどこにもないわ。こいつらは生かしておく価値もない連中よ。この国が私たちに何をしたか、忘れた訳じゃないでしょう?」

 

 エクリシアにただ事ならぬ怨念を抱いているモナカでも、ユウェネスの任務の過酷さには同情せざるを得ない。

 祖国では燦々たる英雄として扱われるだろうが、この気優しい青年にとっては、そんな名声など何の慰めにもならないことだろう。

 

「この選択は私たちの、いいえ、ノマスの民の総意よ。決してあなただけが、責任を負う訳じゃない」

 

 ユウェネスの重荷を少しでも分かち合おうと、モナカは先を行く青年の背中に語りかける。

 だが、彼は力なく頭を振ると、

 

「なんか、行きつくとこまで行っちゃたんだよな、ノマスとエクリシアって。どっちから始めたのかも分かんねえほど昔から殺し合いしてさ。――んで、もうお互い我慢できなくなっちまったんだな」

 

 と、諦念を滲ませた言葉を吐く。

 

「ユウェネス、あなた……」

 

 悄然とした青年に、駆ける言葉が見つからないモナカ。だが、

 

「まあ、どっちか選ぶってんなら、自分()取るさ。……大丈夫。やれるよ」

 

 ユウェネスはそう言って、寂しげな笑みを見せる。

 

 そうして彼は、死体が小山を成す大聖堂の中央へと陣取った。

 その場にしゃがみ、辛うじて見えている床面に両手を付ける。そして暫し瞑目の後――

 教会を構築するトリオンの流れを掌握した青年は、目的地までの最短経路を探り出した。

 

 ユウェネスの両手が輝くと同時に、大聖堂の床面が砂のような粒子へと変化した。否、大聖堂だけではない。教会の最深部まで続く数十もの階層を構築するトリオンが、一斉に砂と化したのだ。

 

 まるで砂時計を反したかのように、砂になった床が奈落へと滑り落ちていく。

 その上に乗せていた信徒席や祭壇、はたまた神の僕たちの遺体が、音も立てずに何処までも続く立坑の中に消えていく。

 見る間に、青年が蹲る地点とそこに繋がる床の一角を残して、大聖堂には真円状の巨大な穴が穿たれていた。

 

「ここまで、だな。ちょっと距離が有りすぎて、流石に(マザー)トリガーまでは一発で開けられねえや。もう少し下まで降りねえと」

 

 一仕事終えたユウェネスがそう言って立ち上がり、大深度地下へと続く直通経路を見遣る。

 

 敵の防衛部隊がどんな防備を整えていようと、これで全部ご破算だ。面倒な隔壁や罠はほとんど全て解除した。教会に立てこもる兵力で、強化トリオン兵を防ぎきることはまず不可能だろう。

 

 佇むユウェネスを尻目に、強化クリズリや傀儡騎士が次々に縦抗へと飛び降りていく。

 まずはトリオン兵によって地下階を偵察。そして制圧の後に、ユウェネス、モナカが続く手筈だ。

 護衛用のクリズリを二体だけ残し、粗方のトリオン兵が降下を終える。

 ――その瞬間を、息を殺して待ち続ける者がいた。

 

 大聖堂の静寂を打ち破るけたたましい発砲音。

 突如として放たれたトリオン弾の雨が、屹立するユウェネスへと浴びせかけられる。

 

「な……!」

 

 残敵はいないと思い込んでいた青年にとって、その攻撃は完全な奇襲となった。

 身を屈めることもできぬまま、弾丸が右ひじと右腿の付け根に撃ち込まれる。その瞬間、異変は起きた。

 

「――っ!」

 

 トリオン体にめり込んだ弾丸が、膨大なトリオンを撒き散らして爆発したのだ。

 余りの威力に、ユウェネスの右腕は肩ごと吹き飛び、胴体部は臍から下が完全に失われる。

 壁や柱に当たった流れ弾も、ただのトリオン弾とは思えぬ規模の破壊をもたらしている。

 

 炸裂弾でも用いられたかと思いきや、実はそうではない。ただ、異常な出力のトリオンで撃たれただけなのだ。

 大聖堂の片隅にうず高く積まれた死体の山。人々の亡骸の下から、漆黒の銃口が覗いている。

 小銃トリガーを抱えたパイデイア・イリニが、同朋の血に塗れてそこに居た。

 

 

   ×   ×   ×

 

 

「――ユウェネスっ!」

 

 思いもよらない襲撃に、モナカが悲鳴を上げる。

 強烈な弾丸をまともに喰らった青年は、まるで木の葉のように吹き飛んで足場から転落する。

 が、強化クリズリが凄まじい反応速度で飛翔し、奈落に落ちんとする青年を救い出した。

 

「っ、仕留めなさい!」

 

 モナカの下知を待つまでも無く、銃撃の方角に向けてもう一体のクリズリが突進する。

 死体の山から現れた金髪の女は灰色のマントを羽織っている。レーダーを無効化するトリガーだろう。あれを用いて、女は不意打ちの機会を窺っていたに違いない。

 

 女はクリズリの襲来に気付くと、小銃を乱射しながら側廊へと走り出した。どうやら奥の通路へと逃げ込むつもりらしい。

 猛追するクリズリだが、流石に飛来するトリオン弾を無視することはできず、回避行動に動作を切り替える。いくら頑強な装甲を有するとはいえ、あの超絶威力の弾丸をまともに受けては一溜まりもない。

 

 その隙に、金髪の女――パイデイアは大聖堂の隅にある非常扉の前までたどり着いた。

 鐘楼から狙撃を行っていた彼女はしかし、殺到するクリズリの猛攻に耐えかね教会内部へと避難した。

 凄まじい轟音と共に、教会の正門が消し飛んだのは直後の事だ。

 彼女はオーバーパワーの狙撃銃から小銃へとトリガーを換装し、内部に侵入したトリオン兵を相手に抵抗を続けた。

 

 だが、所詮はトリオン機関に恵まれただけの素人に過ぎないパイデイアに、悪鬼のようなトリオン兵たちを止めることなど不可能だった。

 殺害される市民たちに混じって右往左往する最中、彼女の脳裏に一つの策略が閃いた。

 幾ら優秀とはいえ、トリオン兵のみで母(マザー)トリガーを攻略することはできない。戦闘が一段落すれば、敵の主力トリガー使いが現れるだろう。

 その人物を撃破すれば、敵の作戦目標を挫けるかもしれない。

 

 民草の亡骸に身を隠し、敵の隙を襲うという非道にも、パイデイアは頓着しなかった。

 ここで彼らを撃退できなければ、エクリシアの未来が、子供たちの将来が潰えてしまう。それは子を持つ親として、断じて受け入れられることではなかった。

 

(――やった、当たった、これで……)

 

 パイデイアは息せき切らせて、非常扉に手を掛ける。

 困難な狙撃ではあったが、弾丸は確かに黒髪の青年を捉えた。

 胸や頭といった重要部位には命中しなかったが、それでも胴体の三分の一を吹き飛ばすことには成功した。トリオン漏出によって、間違いなく戦闘不能に追い込んだはずだ。

 

 彼らの交わしていた会話を盗み聞き、そして床面を砂へと変える能力を目の当たりにすれば、あの青年がノマスの切り札であることは明白だ。

 これで敵は撤退せざるを得ない。あとは彼女自身が逃げ延びるだけだ。だが、

 

「――そ、そんな!?」

 

 非常扉を勢いよく開いたパイデイアの表情が、驚愕に染まる。

 扉の先には、ただ真っ白な壁が聳えているだけだった。

 避難路に続く道が完全に塞がれている。それも即席でバリケードを組んだ訳でもなく、扉が付いていたことが設計上の誤りであったかのように、非常扉が忽然と消え去ってしまったのだ。

 

「――っ!」

 

 勢い余って拳を叩きつけるパイデイア。しかし、壁はビクともしない。

 咄嗟に彼女は小銃を向け、引き金を引き絞った。

 閃光が間近で弾け、穴だらけになった壁面が残される。その弾痕の後には、確かに先へと続く通路が見て取れた。しかし、

 

「な、どうして……」

 

 彼女の眼前で、壁に空いた風穴が見る間に塞がっていく。

 パイデイアは咄嗟に背後を振り返り、怪現象の理由を知った。

 

 視線の先、聖堂の入り口側の床に、半身を失ったユウェネスの姿がある。彼は残った左手を床に付き、彼女へと鋭い視線を送っていた。

 青年の持つ「万化の水(デュナミス)」の能力は知らずとも、教会の床を消失させた場面ははっきりと目にしている。

 彼が何らかのトリガーを用いて教会の構造を変化させ、彼女の逃走を阻んだのだ。

 

「くっ――」

 

 パイデイアは焦燥に奥歯を噛みしめる。

 俄かに信じがたいことだが、あの青年は未だにトリオン体を保っている。

 

 彼女は知り得ぬことだが、あらゆるトリオンの操作を可能とする「万化の水(デュナミス)」は、当然ながら起動者のトリオン体をも自在に操ることができる。

 ユウェネスは射撃を受けた瞬間にトリオン体を操作し、欠損部分を塞ぐことでトリオンの漏出を最小限に抑えたのだ。

 

 伝達脳と供給機関さえ無事ならば、手足がいくらもげようとも行動は可能である。

 そして「万化の水(デュナミス)」の能力を以てすれば、トリオン体の修復さえ容易い。

 青年の身体が緑色の燐光を放つ。教会の壁からトリオンを収奪し、見る間に何の瑕疵もない五体を取り戻していく。

 パイデイアは決死の攻撃がまったくの無駄に終わったことを悟る。それでも、絶望に打ちひしがれている暇はない。

 

「……っ!」

 

 注意をそらした数秒の間に、先ほど追い払った強化クリズリが間近まで迫っていた。

 咄嗟に小銃を向ける。動目標とはいえ、敵は三メートル余りの大きさをしている。これだけ大きな的なら、外す心配はない。

 

 銃口を察知したクリズリが、巨体をピクリと反応させる。回避行動に移るか、それともシールドを張るか。どちらにせよ毎秒数十発、しかも超常の威力で放たれる弾丸の嵐を、この距離で防ぐことなどできない。

 パイデイアは必殺の意思を秘めて引き金を絞る。しかしその時、

 

「――きゃあっ!」

 

 聖堂内に突如として凄まじい突風が巻き起こった。ジェット噴射もかくやという殺人的な気流は、パイデイアの身体をまるで木の葉のように吹き飛ばす。

 彼女は小銃を取り落とし、荒れ果てた床面を跳ね転がると、教会の壁へと強かに身体を打ちつける。

 ――と同時に、彼女の体を弾丸の雨が引き裂いた。

 

「な…………」

 

 爆風と共にトリオン体が四散し、生身となったパイデイアが地面に投げ出された。

 我が身を襲った出来事に咄嗟の理解が及ばず、彼女は瞬時我を忘れてしまう。

 そんな彼女の前に、クリズリが悠然と歩を進める。

 

 パイデイアを襲った一連の攻撃は、すべてクリズリが行ったものだ。

 二対ある腕の内、下に生える短腕。

 五指を揃えた太い腕は、相手の攻撃を防ぐ盾となるほか、掌からトリオン弾を発射する砲門にもなる。そしてまた、掌から圧縮されたトリオンを噴出することで、強力な衝撃波を放つ機能を有していた。

 

 トリオンを用いて起こした衝撃波とはいえ、結局はただの気流である。いかに高性能なシールドでも、ただの空気塊を完全に防ぐことはできない。敵の体勢を不意打ちで崩せるという、近接格闘に於いて非常に高い効果を発揮する武装である。

 

 衝撃波をまともに浴びたパイデイアは、続く射撃によってトリオン体を失ってしまった。

 彼女は迫りくるトリオン兵から逃れようと、尻もちをついた姿勢まま後退るが、到底逃げおおせるものではない。

 

 得物の息の根を確実に止めんと、クリズリが鋭利なブレードを備えた長腕が振りかざす。

 まさに万事休す。数秒の後に訪れる死を前にして、パイデイアの脳裏に浮かんだのは、やはり愛する家族の姿であった。

 

「~~っ!」

 

 彼女は恐怖に硬く身を強張らせる。しかし死の刃は一向に振り下ろされない。

 みれば、眼前に立つ人形兵士は蜥蜴のような頭部を真横に向け、聖堂に空いた大穴を凝視しているではないか。

 

 そこでようやくパイデイアも異変に気付いた。

 早鐘のような心臓の鼓動に紛れて、怪鳥の鳴き声のような甲高い異音が聞こえる。

 猛烈な勢いで大きくなるその音は、「誓願の鎧(パノプリア)」のスラスターの駆動音に似ている。しかし、耳をつんざく轟音、空気を震わす振動は騎士の纏う鎧の比ではない。

 神の御家を揺るがす轟音と共に、奈落へと続く立坑からソレは現れた。

 

 

 

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