WORLD TRIGGER Beyond The Border 【完結】 作:抱き猫
発売日を、指折り数えて待つ漫画がある。
すっかり大人になってしまった今でも、読むたびに心が躍る作品がある。
賢い犬リリエンタール。そしてワールドトリガー。
葦原大介先生が描かれる素晴らしい世界は、いつも私に感動と活力を与えてくれました。
本作 WORLD TRIGGER Beyond The Border は、葦原先生の病気療養中、深刻なワートリ欠乏症に苛まれた私が、半ば逃避で書いた作品です。
最初は鉄板のボーダートリガーのオリジナル構成を妄想。次に、あんなトリガーやこんなトリオン兵があったら面白いな。それが進むと、
並行して原作漫画と解説本、アニメを何度も見続けるうちに、矢も盾もたまらなくなって執筆を開始した。という次第です。書いててなんですが、断酒日記みたいなもんですねこれ。
創作はまったくの初体験、それどころか文章すらまともに書いたことがなかったので、最初は人様に見せるつもりもなく、完全に自己満足の為だけの暇つぶしでした。
そうして五章まで書き上げたところで、葦原先生の御病気が寛解し連載が再開。
私も無事にたしかなまんぞくするようになったのですが、折角書いたものをハードディスクの肥やしにするのももったいないかな、と思い、こうして皆様のお目を汚すことになりました。
書いていてやりすぎと思うような設定も多々あり、原作が進めば齟齬も出てくると思われますので、どうぞ、その時は指をさして笑ってやってください。まあ、こんな妄想が生まれてしまうのも、ワールドトリガーの懐が深い証だと御海容くだされば幸いです。
さて、フィリアの旅路は、これで一時閉幕となります。
第二部以降の話。ボーダーでの日々と、原作で起きた様々な事件、そしてエクリシア、ノマスとの因縁の決着も頭の中におおまかな構想はあるのですが、何分憶測の上に妄想を積み重ねたような作品ですので、これ以上原作のイメージを損なわぬよう、暫く筆をおきたいと思います。
「厳しめの世界」で、如何に「正しい方法」を見つけ出すか。
執筆にあたりテーマに据えたのは、私がワールドトリガーで最も感興を覚えた言葉です。
未来を掴み取る手段を、そしてそれを為し得る人々の心を、如何に描けばいいのか。
その疑問に答えをくれたのは、同じく葦原先生の著作、賢い犬リリエンタールでした。
天の時も地の利も、人の和には如かず。不条理な世界を覆し得るのは、人の心の有り方のみ。
思いだけでは力に勝つことはできない。しかし、前に進み続ける意思があれば、或いは。
才智溢れるが故に孤独であった子供が、長い彷徨の果てに他者を頼ることを知る。
全てを失った人間が、それでも己が何者であったかを知り、再び前を向いて歩き出す。
本作のメインストーリーは、そんな風に出来上がりました。
たったそれだけを書くのに文庫本換算で六冊分もかかってしまい、苦笑するばかりです。
実は手段の方にも私なりの解を用意し、既に伏線は作中に張ってあるのですが、はてさて回収できるかどうか。キャラクターたちのその後共々、いつか続きが書ければと思います。
原作キャラは出ないわ、読みにくい上に量だけやたら多いわ、一体誰がこんなの読むのか自分でも不思議な小説でしたが、蓋を開けてみれば、思ってもみなかったほど多くの皆様にお読みいただくことができました。
丁重な感想を頂戴し、またマイリスト、評価、誤字報告をくださり、まことにありがとうございました。本作を無事に完結させることができたのは、偏に皆々様のお蔭です。
あらためまして感謝の意を述べさせていただきます。
これまでお付き合い下さり、本当にありがとうございました。
これからも創作は趣味として続けていこうと思いますので、いつかまたどこかでお目にかかれることを楽しみにしています。
それでは、葦原大介先生の御病気平癒と、ワールドトリガーのより一層の発展を心より祈って。
抱き猫