The Armed Detective & Three Strikes   作:zwart

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サイドストーリー
Ultra Super Disaster


突然だった。本当に何の予兆もなく、彼等の足元はぐらりと揺れ、5度ほど傾斜をするに至った。台所に立っていた白雪と蒼はそれぞれ目の前の鍋と食器がひっくり返らないように抑える。ちなみに蒼は盆に乗った朝食の質量バランスを調整しただけだが、白雪はグツグツと火にかけられていた豚汁の寸胴を素手で持ち上げることになった。

「わっ」

「と、と」

「地震・・・じゃないな」

食卓に座って朝食を待っていた、――かなり前に台所から追い出されたともいう――キンジ、アリア、バニラ、レキは各々携帯端末を取り出して今の現象の情報を確認しようとしたり、飲んでたお茶を顔面に被って暴れていたり構わず寝ている先輩狙撃手にジト目を向けていたりと様々だ。

「また蘭豹がどっか踏み抜いたんじゃないのか?」

揺れが収まった頃合いに朝食を運びながらリビングに出てくる。キンジは相変わらず食い意地の張った野郎だと思った。ちなみにその相方はまだ起きない。

「・・・で、結局何があったのよ、学校から連絡は?」

東京武偵高ではマザコン女王で影の薄くなりつつある哀れなピンクブロンドヒロインことアリアが、キンジが投げて寄越したハンカチでようやく顔を拭き終えると椅子の上でふんぞり返って一同に聞く。同席中かつ覚醒中のご一行は自分の端末確認しろよと思いながら飼育係のキンジ君に回答を委ねた。

「ああ、テロだってよ。学園島の底に爆弾を仕掛けられたみたいだな」

「で、そのまま地下倉庫の押収品や使用期限超過の弾薬の一部にも引火したみたいですね。あと同時多発的に苦露来毛大学で立てこもり事件も発生したという情報があります」

説明をキンジから引き継いだバニラは出されたお茶をずずーっと一口。どうでもいいが氷菓子みたいな名前なのにこの一年生は何時も熱い緑茶派である。

「フムン、俺の聞いてたのと違うな」

蒼は自分の戦妹の情報に文句があるらしい。だが行儀が悪いから食べながら喋るな。というか今食べるな。

「俺のところに来た連絡だと東京湾に突如アリコーン級潜水艦が浮上してレールガンで色んな海上施設の剛芯やらをぶち抜いている騒ぎだと聞いたが」

「・・・ちなみに、俺が調べた情報だと公安局ビルが突然音信不通になったりスカイツリーから大出力レーザーが発射されて上空の衛星を薙ぎ払ったとか聞いたぞ」

「キンジ、頭でも打ったか?」

「叩いたら治るのかしら」

「そんな、キンちゃんが・・・ウワァァァァァァ!?」

「俺だけ気が狂ったみたいに言うなよ!?」

瞬間、キンジの眼前には重厚な金属フレームに包まれた9ミリ口径の銃口が覗いていた。ギャグではない。それは彼にも見慣れたジガナ自動拳銃だった。

「キンジ、少し静かにしてくれ。レキが起きたらどうするんだ」

「むしろこの非常時に何故起こさない・・・!」

「かわいいからだ」

・・・。

「にゃー・・・」

「そうかぁ、今日は猫レキかー」

哀れ三本線のパイロットは小柄ミント系女子に溺れて、推しを愛でるだけのロリコンとなり果てた。勿論かのベルカン・HENTAIマスター・シュローデルとはメル友である。だが彼は娘が無人機に乗ってどこかに飛び去って以降は部屋に引きこもってあたたかいピザを貪る毎日を送っている。

はよ独房いけ。

スカイツリーがエクスカリバっているかどうかはともかくとして、どうやらこの国の首都圏は一大事になっているようである。アリアが点けたテレビの中継ではアリコーン級のレールガンによってハエ叩きのごとく撃ち落される国防軍のF-15が映し出されているが実はこれはCGだ。外を見れば一目瞭然だが国防軍の航空機はひとつとして飛んでいない。彼等は皆うららかな春の訪れに歓喜して昨日は年度予算を使い切るべくアルコール摂取任務に取り組んでいたのだ。これは高笑いがASMRのように心地よい潜水艦艦長とその部下にも同じことで、彼等が酔っ払い運転のあげく東京湾で乱痴気騒ぎを起こしていることも当然ながら世界中の察するところだった。

『なんてことだ、もう助からないぞ』

と、どこかの食い倒れ空中管制官が言ったかどうかは知らないが彼もビストロの在庫を一掃したばかりなので人のことを言う資格などありはしない。

「あ、またメールだ」

どうやら東京武偵高に各地での事件の収束依頼が来たらしい。まあ呑んでないのは学生だけなので妥当な判断だろう。呑んでいても休業の言い訳にできないのも学生だけだ。国からの依頼なので報酬もそれなりに弾む。

そう、彼等は武偵。依頼がなければ事件に首を突っ込まなくとも、依頼があればどんなことだってする現代の万事屋なのだ。

「さて、行くか」

「行動開始よ、ASAP!」

「キンちゃんにお供します!」

「俺は車両科だ。先に出ててくれ」

「にゃー」

「先輩、行くわよ。ほらドラグノフ持って」

キンジとアリア、それから白雪は公安ビルの事件解決に、バニラはお猫様を飼い主から受け取って大学立てこもり犯を狩りに、蒼は潜水艦をシバきに出かけることになった。

蒼が機体に飛び込むと格納庫の偽装扉が開き、その先に広がる校舎前の並木が外向きに全て倒れた。そう、格納庫は下駄箱にあったのだ。舗装路をゆるやかな速度でタキシングすると武藤から停止の指示が飛ぶ。車輪がカタパルトに固定され、舗装路がスキージャンブ台のように斜めに競り上がった。ダンダバダバダバと、心躍るBGMに耳を傾けつつ、蒼は叫ぶ。

「ストライダーバード イズ ゴー!」

ちなみに彼の駆るホーネットは艦載機だがカタパルトから斜めに射出するようには出来ていないので全て演出である。ハイカットー。次のシーン行くぞーと気の抜けた声と共に機体は元の位置に戻され、ホーネットは普通に離陸していった。

 

一方、キンジ、白雪、アリア組は尺の都合で移動時間はカットされ、既に公安ビルの前に立っていた。ビルの回りには明らかにワルモノな連中と囚人たちの作ったバリケード。

「突入準備!」

アリア達の前には腰の高さほどのドローン。その上部に取り付けられた頑丈そうなハッチが開き、冷却ガスの抜ける音と共に三丁の銃の銃把が躍り出た。各々が一丁づつを握り込む。

『携帯型心理診断・鎮圧執行システム ドミネーター起動しました』

本人にしか聞こえない指向性音声が各々のIDを照合し、セーフティーを解除したことを伝える。アリアが監視官でキンジと白雪が執行官だった。

「総員、突にゅっ!?」

鈍い衝撃がアリアの後頭部に炸裂した。人間の物理限界を超えた衝撃にアリアは成すすべなく意識を手放し、崩れ落ちる。

「アリア!?」

「安心して、峰打ちだから」

星伽白雪執行官による痛烈な反逆行為を目の当たりにしたキンジは、しかし固い決意で己の職責を全うすることを誓い、手にする銃を同僚に向けた。

『犯罪係数 オーバー300 刑事課登録臨時執行官 任意執行対象です』

「すまない、白雪・・・」

引き金は引かれ、ここに一つの悪が成敗された。サヨナラ!

 

猫と氷菓子については特筆すべき事態は起こらなかった。テロリストと大学生は血の海に沈み、全ては無事に鎮圧された。

 

このくだらない茶番のトリを飾るべくトリガーこと武偵天羽蒼ことロリコンは単機でアリコーン型潜水艦に挑む。かの潜水艦は溶融金属型原子炉を2機も搭載しているので存在しているだけで憲法違反である。よって沈めなければならない。これは多分大統領命令である。

『必要なのだ!100万のトリガーの死が!』

『俺とこの舟の救済と鎮魂のために死ねぃ!』

VLS、機関砲、レールガンの全てがロリコンの機体にむけて発射される。彼はキャノピーから冷めた目でそれらを眺めつつ、無線に一言だけつぶやいた。

「敵は東京湾・東京武偵高空き地島東30m。支援砲撃を要請する。オーバー」

直後、墨田区に設置された最終兵器から内閣総辞職ビームが発射されアリコーンの飛行甲板中央部に直撃。黒い潜水艦はリチウムイオン電池に発火したことにより赤い炎を吹き出しながら盛大に爆沈した。

 

爆心地を中心に一帯は汚染された。

東京は死の街となった。

 

 

 

 

 

 

「―――お、天羽蒼。起きて下さい」

「・・・ああ、おはようレキ」

「緊急事態です。C装備で女子寮屋上に集合と・・・顔が青いですが」

「い、いや。なんでもない」

酷い夢を見た気がする。と同時に蒼は自分の性癖に一抹の不安を感じた。

(・・・いや待て、レキは同級生だぞ。つまりセーフ。アイムノットギルティ。オーケイ?)

誰にともなく心中で言い訳する彼が平静を取り戻すには、今少しの時間を要しそうだった。

「って、そうだ。緊急事態だ。事件は?」

我に返り飛び起きて、インカムを付けようとする蒼の腕をレキがそっとおさえた。そのまま以外に強い力で手繰り寄せ、蒼の横顔を自分の顔の前までもってくるとその耳元で囁く。

「エイプリルフールです」




酒は飲んでも飲まれるな


この話はそのうち本編から消します。
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