The Armed Detective & Three Strikes 作:zwart
600便ハイジャックの後、なぜかまた俺達の部屋に戻ってきたアリアに辟易としながらも、繰り上げで退院できたおかげで戻ってきた平穏を甘受しようという気分になっていた。アリアのロックオンはキンジに絞られたので基本俺はフリー。この間全損したバイクの代わりを見繕うか、と。
―――なんてうまい話はそうそうない。なにせ初陣から数えて3回目の出撃で元大統領殺しの冤罪を着せられ、過去最悪の囚人として
「ごめんください!」
「・・・」
「ごめんください!」
「・・・キンジならいないぞ!あとアリアも」
特訓とやらで二人は外に出ている。一度見たときはキンジが焼きを入れられているようにしか見えなかったが、二人がそれでいいならいいのだろう。
「用があるのはあなたです、天羽蒼先輩!」
「・・・ああ、はい。今出ます」
なんとなく聞き覚えがある気がする声に嫌な予感を覚えながらも、鍵を開錠し玄関の扉を開く。先輩と、先ほど声がしたとおりそこに立っていたのはどうやら武偵高一年らしき女子がそこに立っていた。背は俺より低い、見下ろす感じだ。特に改造されていない武偵校女子制服の腰にウエスタンスタイルの皮製ホルスターを巻き、二挺の
もう玄関に施錠して部屋のベットで一日中をため込んだ雑誌漁りに使いたい衝動にかられたが、一応要件を聞いてみようと踏みとどまった。
「ええと、誰。俺が目当てみたいだけど、ご用件は?」
「私は1年A組、強襲科の稲垣バニラといいます。初日の授業ではお世話になりました」
んん――?
「・・・最後にあなたに押し倒されて負けたのですが、覚えてませんか?」
「・・・ああ、あの時俺を殺そうとした」
思い出した。羽田でSAT突入に先駆けてテロリスト相手に凸った次の日だ。蘭豹が初日のサボリをダシにして俺に全部押し付けてきた授業だ。真面目にやったはずだが面倒臭かったので具体的に何したかあまり覚えてないが、そういえば最後に活きのいいのがいた。後ろに回られ後頭部に弾が飛んできそうな感覚がしてちょっと本気出した気がする。うん、そういえばこんな奴だった・・・かもしれない。
「人聞きの悪いことを言わないでもらえる?」
「ああ、ごめん。で、要件て?」
「終わり際に課題を出したのはあなたでしょうに・・・いえ、今日来たのはそのことではないのだけれ・・・ですけれど」
「ああ、別に敬語はいいよ」
「あらそう。で、今日来たのは、これが理由なのだけれど」
「んん?」
ペラ一枚の紙を差し出され、仕方なくそれを読む。教務科の使用するタイプの紙とフォントだ。そういえばこの案件はチャン・ウー先生にせかされてた気がする。戦兄弟を作れと。
「私、稲垣バニラは、天羽蒼に
戦兄妹。一般的には
「あー、一応試験云々の前に理由を聞いても?」
「理由というと、何故あなたを選んだかとか、そういう?」
「そういう。ウー先生の推薦書があるのは分かったけどそれだけでほぼ初対面の先輩の部屋には来ないだろ。何かしら調べてきたはず。俺の戦徒になって君は何を学ぶつもりか、1年間教えを乞う相手として選んだ理由がききたい」
「まず、例の強襲科初日の授業で私が負けた相手だというのが一点。そしてあなたが強襲科でも数少ないSランクの武偵であることがもうひとつ」
「ああ、それ多分微妙に違う」
「え?」
「確かに俺は強襲科の学生でかつSランク武偵ではあるが、他の強襲Sランク連中ほど肉弾戦が強いわけじゃない。ただちょっと普通の武偵にはあまりない特技があるから判定がSランクになってるだけだ」
Sランクの連中は本当に頭のおかしい戦闘能力をほこる。撃たれた弾を刃物で斬ったり自由落下中に動く標的に正確に射撃したり素手の殴りでアスファルトの壁をぶち抜いたり・・・脳筋どもめ。
「普通ではない特技・・・。やはり、あなたは航空機の免許を持っているのですね」
知ってたか。まあ既に噂になってる頃だろうとは思ってた。クラス連中のいる中で武藤をさしおいて600便への指示を出していたわけだし。武偵校なんてのは探偵科や尋問科があるくらいだから噂の廻りも戦場なみに早い。
「あってる。だけどまだ弱い。他にないようなら―――」
「F-16,F-4E,JAS-39」
「―――戦闘機だな、それが?」
「あなたの乗っていた機体のはずです、ミスター・ハーリングキラー」
確定か。情報はどこからだ?時期的にオーシアあたりの諜報部?いやもう一つ可能性がある。
「お前、イ・ウーの関係者か?」
「いいえ、彼らを追うものです」
イ・ウーのことも知っていると。イ・ウーが俺のことをある程度は知っているのは分かっているが、そこから外の人間に漏れる理由がなんとなくわからない。オーシアかエルジアで事情を多少なりとも知っている人間に聞いたと考えたほうが自然だ。無人機のこともある。どのみち大陸戦争にイ・ウーがどこかでかかわっているのは確定だ。
「部屋に入って話そう。人に聞かれたい話じゃなさそうだ」
「いいのかしら。さっきは若い女が知らない男の部屋を訪ねるな、みたいなことを言っていた気がするのだけれど」
(耳年魔めざっくり言い過ぎだ)
「いいから入れ。それとも取って食われるのが怖いか?」
「―――ッ」
なるほど、煽り耐性は高くなさそうだ。・・・こんな言い回し本当に連れ込みみたいじゃねえか。しかも下級生相手に、何やってんだ俺?
リビングまで連れていき、ソファーの白雪が来たとき使ってるあたりに座らせる。俺やキンジの使う場所じゃないのは一応の配慮だが――。しかし、出された水には口ひとつ付けない。最初の授業の時もそうだったし今さっきの発言も合わせるとやっぱり俺と同じ入学前から武装していた人間だ。いや水云々は単に脅しすぎかもしれないが。
「で、イ・ウーを追うものだと。どこの組織だ。何故俺の罪状まで知ってる」
「いきなり質問責め?随分と知らないことが多いのね」
「見当はついている。雇い主はオーシアかユークトバニアの情報部だろう」
「候補にエルジアはないのかしら」
「連中に俺を探る理由はない」
「随分とはっきり言うのね」
「ああ」
エルジア上層部は俺がハーリングを殺したことになってるカラクリを知ってるし、機動エレベーターでの顛末は彼らの領内で起きたことだ。仮に諸々の口封じに俺を殺したいのであればそれは今更だし刺客も弱すぎる。態々言ってやる気もないが。
「あなたがハーリング殺しだという情報は、あなたの想像どおりわたしの上から与えられた情報よ。もっとも情報が下りてきたのはついこの間のことだけれど」
「上というのは」
「そこまで教える義理はないわ」
ごもっとも。ストレートに聞いても意味はないな。
「俺に接触してきた目的は」
「ねえ、まだ質問続くのかしら」
「じゃあ終わりにして食うか」
「は・・・?え?」
「ゴムは用意してないから、その辺はあきらめて・・・真顔で銃を出すなよ。冗談だから」
「・・・だったら真顔で言わないでほしいのだけれど」
失敗だったか。キンジとアリアの頭の痛くなる会話を反面教師にして上手く会話を繋げられると思ったのだが。カウント曰く男たるものオープンエロであれ、だったか。やはりあの伯爵様の言うことはアテにならん。
「ところで戦徒の件だが」
「えっと、どこまで話が戻ったのかしら」
「質問に答える気がないなら解決できる点からどうにかする。試験がいるんだろ?考える。何がいいか・・・」
「私はなんだか不安になってきたのだけれど・・・」
そりゃ自然な反応だ。試験前は大抵のやつは不安になる。会話にも疲れてきたしさっさと済ませてしまおう。
「何が得意?」
「早撃ち」
「じゃあ俺に弾中てられたら君の勝ち」
「はあ!?」
「俺は他のSランクほど強くないって言っただろ。やってやれんことはないと思うぞ」
「そういうことではなくて、.45ロングコルト弾が中って無事で済むわけないでしょう!?」
「俺は最近の怪我でイマイチ体の動きが鈍いし・・・じゃあ、反撃もナシ。射撃も打撃もなし・・・ああ、でも民間人に中る環境とこの寮室はナシで・・・」
民間人は防弾制服を着ていないし、この寮の部屋は俺以外にもキンジや白雪、アリアも使う・・・いや、後ろ二人はこの間派手に喧嘩して部屋を半壊させていたから別に気にする必要はないか。まあ流石に寝る時くらいはゆっくりしたいし。あと、撃たれるなら分かってて撃たれたほうが楽だ。
「じゃあスタート」
疲れた。気晴らしに強襲科行ってこよう。9パラなら安いし、精密分解したから撃ちまくって慣らしをするのもいいだろう。
で、その日の夜。寮の部屋に戻ってきたアオは体の至る所にバンテージを巻いて帰ってきた。
「おま、何があったアオ」
「昼間派手に撃ちまくられたんだよ」
「何?うわ、ボロボロねアンタ」
アオはアリアの方をみて微妙に顔を顰める。
「お前らが外にいる間に1年が来て戦徒申し込まれたんだが、失敗した」
「は、アンタ戦徒いなかったの?転入でもなし、しかもSランクでしょ?」
「色んな人が志願したけど全部逃げてたよね」
白雪がキッチンの方から会話に入ってくる。今度はアリアの表情が歪む。こいつらもトコトン相性悪いな。
「お前、面倒臭がってたもんな」
俺もだが。まあ情報源としては有用だから結果的にはプラス・・・いや、飯をたかられる分トントンか?
「で、どんな奴だったんだ」
「SAAを二挺ぶら下げたツインテ女子」
ああ、なんとなくアリアを見てうんざりした顔をしている理由がわかった。きっと身長も低いんだろう。
「アリアみたいだね」
「ちょっと白雪それどういう意味?」
食卓に座るアリアとキッチンの白雪の間で火花が散るのを幻視した。どうやらアオにも見えたようで慌てたように口を開いた。昨日白雪が部屋に突撃してきて発生したの二人の喧嘩でアイツの冷蔵庫も逝ったからこたえてるんだろう。
「――俺に弾を中てられたら合格って試験やったんだが、期限切るの忘れてな」
「天羽君てたまにとんでもないドジ踏むよね・・・」
「それでSAAの弾を貰ったのか。随分撃たれたな」
「あ?100年以上前のロートルの弾が俺に中るわけないだろ」
「おい待て、じゃあその怪我はなんだ」
「ジガナの分解整備したから強襲科で撃ち慣らししてたら、蘭豹に目をつけられてこの間押収したUZI使って追い回された」
「地獄か!」
そもそもそのUZIは武偵殺し事件の重要証拠物件じゃないのかよ。本当に適当だなウチの教師は。
「そういえば午後になってから強襲科の方角が騒がしかったわねぇ・・・というか、アタシのガバも丁度100年くらい前の設計だけど、試してみましょうか」
「初速1.0以下だろ?」
「は、1.0?何のことよ」
「マッハ数だろ、たしか」
アリアの使うコルト1911の使用する.45ACP弾は音速換算でざっくりM0.8から0.9だ。ちなみにUZIの初速はM1.2程度。SAAは弾にもよるが大抵はもっと遅い。
「アンタも白雪みたいに
「天羽君は超能力者じゃないよ」
「なんでそんなことが分かるのよ!」
「そんなことアリアには関係ないと思――」
「落ち着けふたりとも。アオが超能力者じゃないのは俺が保証する。アオも適当なこと言うなよ、弾が見えるわけじゃあるまいし」
「・・・ああ、そうだな。悪かったよ」
「それでその1年はどうしたんだ」
「期限切るの忘れたから、まだどっかから狙ってるかもな」
「おい」
「ここでは撃つなとは言ってあるから」
「なら問題ないわね」
「ご飯できたよ、キンちゃん。天羽君」
言って白雪が俺達の座る食卓に夕食を運んできた。俺、アオの順にけっこう手の込んだものが運ばれてくる。白雪も慣れたもので天羽の分は増量されている。だがアリアの席には何も運ばれてない。
「ねえ、私のゴハ――」
「ところでなんか部屋の荷物増えてないか?」
おい馬鹿、今アリアの言葉を遮ったら――。
「ああ、それは私の荷物。アドシアードまでの間だけキンちゃんに護衛を頼んだから。あとアリアにも」
「何かあった?」
「ちょっとね。でも一応の措置だから」
「そう」
「シ ラ ユ キ!アタシの分は!?」
「はいこれ」
ドン、と茶碗が机に叩きつけられた。白米に箸がぐさりと刺さっている。
ああ、終わったな。ガバメントがほら、出た。また壁に穴があくのか。とりあえずベランダに逃げよう。アオは――ってホントに弾避けながら普通に飯食ってるし。やっぱSランクは化け物だわ。
ストレンジリアル世界とアリアの設定のざっくりした整合調整① 国家編
米国→オーシア
ロシア→ユークトバニア
ドイツ(旧ドイツ)→ベルカ
ウスティオ→フランス
英国→エメリア
スコットランド→エストバキア
※なんとなくのため予告なく変更する可能性あり というか多分しょっちゅう変わる