The Armed Detective & Three Strikes   作:zwart

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やってしまった。でも後悔はしてないっす。


Reminder

蹴って、掴んで、走って、跳ぶ。

それだけのことが今の自分には幸福だった。景色が上下左右に流れ、己の体は縦横無尽に(くう)を駆ける。

無人機の群れに対してももう何も感慨を持つことなどなかった。ふわふわと宙を漂いながらときおりこちらに追い縋ろうとして無様にもがく。それだけの障害物でしかなかった。

天羽蒼はメガフロートの上を駆け抜ける。

一時のみ全てを忘れて。

 

蒼とレキ、共に結果は首位だった。

蒼にしてみればただ空中散歩をしただけのことで、レキの場合も全長たかだか2キロ弱しかないメガフロートの中に置かれた固定目標を外すことのほうが難しかった。

アドシアードは順調に推移していた。目立った予定の遅延も事故もなし。空撮ドローンの映像回線が少しの間乱れたが、それは後で担当生徒が車輌科の江戸川にどやされる程度のささやかなトラブル。

そう、この瞬間までは平和そのものだった。

蒼が競技に興味がなかったので受付の手伝いでもしにいこうかと思い、校門の方に足を向けたとき彼のスマホが規則的に振動した。目立たないようにタイミングずらされてはいるが、どうやら他の生徒も何人か受け取っている。

(教務科からの連絡か?)

歩を止め画面を開くと、やはり東京武偵高の学内メールが一件。

(ケースD7発生)

どうやら真面目に読まなくてはならないと理解し、蒼は要点を頭に叩き込む。

星伽白雪が侵入者に誘拐された可能性あり。

侵入者は恐らくデュランダルと呼ばれる神出鬼没の犯罪者。

アドシアードは継続して行われる。騒ぎ立ててはならない。

一部関係者のみで情報を共有し、解決にあたれ。

他には諜報科が以前に教務科に提出したらしい関連するレポートへのリンクが貼られていたが今は時間がないのでそれは無視しキンジに電話を掛けた。ワンコールで繋がる。

『アリアか!?』

「天羽だ。今どこにいる?」

『アオか!白雪がデュランダルに誘拐されて――』

「深呼吸、三回」

『――悪い、冷静じゃなかった。アオのところにもD7の連絡が?』

「今来たところだ。多分お前と同室で白雪が警護下にあるのを知っていたからだろ」

『相手の情報は・・・いや。それより白雪を見てないか?』

「俺は見てないが、ちょっとそのまま繋いどいてくれ」

通話モードをグループに変更しレキの番号をコールする。同時に適当な建物の屋上に駆け上がる。レキほどじゃないが俺も視力には自信がある。

『――レキです』

「星伽白雪の最新の目撃情報を至急頼む」

『12分前に車輌科の格納庫区画K-6で確認しています。該当区画は現在使用されていません』

「キンジ」

『アタリだ。レキ。その周辺で何か異変はないか?』

『―――、第三備品倉庫の扉が開放されています。こちらもやはり使用されておらず、周囲に人の気配もありません』

「わかった。俺は武藤にドローンで空から探してもらうよう頼んでおく」

『第三備品倉庫には俺が行く。アオ、後で援護に来てくれるか』

「コピー」

電話が切れる。今頃は倉庫に向かい全力疾走しているだろう。

「武藤」

『アオか。どうした?』

「急ぎかつなるべく秘密裏に仕事を頼みたい、ドローンを飛ばしてもらえるか」

『それは構わないが、何をする気だ?』

「保護対象を探す。名前は星伽白雪、SSR専科の二年生」

『星伽さんだと!?何かあったのか!』

「その確認だ。間違っても騒ぎにするなよ?ケースD-7と教務科からのお達しだから」

『――わかった。これからドローンが映した映像を管理してる指揮車に向かう。見つけたら連絡する。だが今日はドローンカメラの調子が変だ。あまり期待はしないでくれ』

「わかった」

 

―――さて。

 

「ドローンの不良。恐らく一時的かつ極めて局所的なECM。これを対人レベルで使用したことのある組織・・・その残党に一つ心当たりがある。いつから連中の狗になった」

自分の心臓が早鐘を打っているのがわかった。緊張だ。気配も殺気もないが、勘だけが警鐘を鳴らしている。奴がいる。そこに、俺のすぐ後ろに。

「別に狗になったわけではない。私がここにいるのは奴らとはまた別の理由があってのことだ」

いた、ほんとうに。返事なく無様な独り言で済めばどれだけ良かっただろう。デュランダルなど霞む最悪の犯罪者だなんて、唐突に表れていい存在じゃない。

「奴ら、ね。誰と誰のことだ」

「それはお前の方が詳しいだろう?なにせ四六時中付きまとわれているようだしな。こちらとしても邪魔だったので少し片付けてきたがね」

「それはどうも。でほんとに何しに来た。ウーアを追って来たなら1年ばかり周回遅れだ」

「あんなものに今更興味はない。1年前のあの事件にしても、ラングレーの一部が暴走し失敗しただけのつまらない芝居だった」

「だがお前はここにいる。アンタはまだ師匠との決着を諦めていない、そうだろう――」

振り返るといつの間にか背後に現れたその女は、やはり想像どおりの相手だった。かつて世界を震撼せしめた犯罪組織『蛇』のリーダー。世界各国の首脳部と報道陣が集まり行ったとある対テロ国際会議すら食いものにしたテロリスト。

俺の師匠と同じ傭兵に兵士として育てられ、しかしその傭兵を切っ掛けに今なお師匠と血生臭い因縁で結ばれた孤独の名を持つもの。

 

 

 

 

「アルファルド・アル・シュヤ。ここにカナン(師匠)はいないぞ」

「久しぶりにお前の顔を見た。随分と腑抜けたな、アルマ・クレイマン。それとも三本線(トリガー)と呼ぶべきかな?」

 

 

 

 

全く嫌になる。最後に会ってから4年は経っているはずで、こちらは体が成長し身体能力も向上したはずなのに、馬力からして負けているようにしか思えない。

キンジの足ならもう地下倉庫に入ってしまったか。アテにされてると思いたいがここで背を向けるわけにはいかない。慎重に、ヤツに隙を見せないようにインカムを取り出して耳に、そして通話機能をオンにする。逆の手はいつでもジガナを抜き打ちできる位置に。トーラスはだめだ。動きが重すぎてまず銃口に捕捉できないだろう。

「稲垣」

『先輩?どうしましたか』

「使い走りしてもらいたい。今すぐ地下倉庫入り口J-14で銃を撃ってこい」

『・・・は?』

「反響音モールスだ。やり方分かるな?俺が来ないと伝えろ。ただ間違っても保管物資に引火させるなよ」

『あの、あたしだって暇じゃないんですけど』

(人のいい奴め。走り出してるのが足音で丸わかりだぞ)

「上手く出来たらご褒美が欲しいか?」

『いい加減にしないとぶっ殺――

ブチン。

(わーお直球でキレた)

「楽しそうだな」

本当は隙などいくらでもあったろうに、結局奴はこちらの通信が終わるまで動かなかった。余裕のつもりか、それともここで師匠の代わりに俺と勝負するのが目的なのか。

「『孤独』には目に毒だったか?」

「ハン―――」

ファイブセブンが引き抜かれる。ジガナで対応、いや負けた。奴のが速い。

「グッ!?」

「何を馬鹿正直になっている」

来たのは蹴りだった。一足飛びに接近され長い脚先で側頭部を弾かれ横なぎにされた。吹き飛ばされ転がされる。間を置かずに起き上がろうとするが、既に5.7ミリの細い銃口が目の前にあった。

「相変わらず頑丈な奴だ」

(グワングワンしてるっつーのこの馬鹿力が)

トリガースプリングにテンションがかかる音。ファイブセブンのポリマー製フレームに拳を振り抜く。すかされる。銃口は下を向いていて右足に激熱が走った。やられた。だが防弾制服のおかげでまだ走れる。痛みを堪え床を蹴り今度こそジガナを構え距離を取る。向こうも同じ。付き合うつもりか?

「お前に撃てるのか?」

「ッ!」

射撃。肩、膝、手にする銃をランダムで射撃する。だが中らない。ただの一発も掠ることすらない。銃口が追い付く前に走り抜かれ、屋上に備え付けられた通用口の扉に隠れられた。扉を抜けるか試すが、流石武偵高だ。こんなところまで防弾とは。

追跡して扉の向こう側を確認。いない。どうやら室内に移動したらしい。この建物は演習用の無人の建物だ。5階建てのオフィスビルを想定していたはず。

(電源は落ちてるな。この階はブラインドも全部閉じてる)

通用口から階段を降り、偽物だが使い古された机が並ぶ事務室がある。よく見れば撃ちまくって放置された9mmや.45ACPがそこいらに埋まっているだろうが、今は関係ない。

(机の裏か・・・?それとも―――ッ)

後ろ、そう思った時にはヤツの足が首を固めるように巻き付いてきた。階段裏にぶら下がっていたらしい。眼前にカランビットナイフが迫る。腕を押さえどうにか突き刺されずに済むがいくらか額を斬られる。

「こ、の!」

押し切られる前に掴んだ腕を起点に上半身で反動をつけ奴を投げた。引きはがすことは成功したが普通に着地されている。だが手にしているのは刃物。こっちはまだジガナを落としてしまってもトーラスが残っている。いや、それでも奴のナイフのが速いか――。

しなやかな動きでカランビットナイフのカギ爪のような刃先が迫る。トーラスの銃身で受け流し、重量差で弾いて逆手で腕を取りにいく。ない、違う。ナイフだけ銃身に叩きつけて手からは既に放りだしているのか――。

腹に轟音。続けて脇腹、胸、首元と弾丸が次々に撃ち込まれる。

首元はマズかった。体の運動が止まった。つんのめる。呼吸が止まる。

「この程度。この体たらくでよくも『引き金』などと呼ばれたものだな。ただ流されるままの筏のようじゃないか。お前の意思はどこにある」

「―――!――、」

「なるほど。お前では奴の理想にはなれんようだ」

(ああ、それは全くその通りだ。なにせ片腕のお前にこの1分で2度も転がされる始末。俺は師匠のようにはなれなかったらしい)

死ね。もうお前に用はない。その言葉の代わりに樹脂で覆われた銃口が今度こそ動けない俺の頭につきつけられた。奴に慈悲も躊躇もあるわけがない。狙いが定まると速やかに撃鉄は落とされて5.7ミリFMJ弾が右眼球に向けて飛来するのがスローモーションで見えた。

(くそったれ。誰だこの女にSS190系の弾寄越した横流し野郎は)

どうでもいいことを考え、やがて馬鹿馬鹿しくなり、せめて空を見て死たかったと室内まで追って来てしまったことを後悔する。

『―――!』

「―――ッ!!」

激しい金属音と共に目の前で5.7mm弾が弾かれる。いや弾いた。トーラスの下にホルスターを連結して持っていたガーバーMK2ダガーナイフで弾道に横から刀身を滑り込ませた。左側に差してたのが幸いして弾道は右に逸れたので首を捻れば弾は後ろに抜けていく。だが次弾が来れば終わりだ。ハイキックで奴の手からファイブセブンを蹴り飛ばすことを試みるが、避わされてもう一度銃口が向けられる。それならそれで手はある。

「レキ!」

「なに!?」

(ブラフだよ!)

後ろの窓に向かって声をかけはしたが彼女はまだここにはいない。銃声と異変に気付いてこっちに向かって来て最中だろう。ナイフを低く振って足を凪ぐ。気付かれて靴裏で止められはしたが銃口は逸れた。トーラスを拾い銃撃する。

「チッ」

初めてアルファルドの口から苦悶の声が出た。ポリマーフレームの破片が飛び散る。

(もう一発だ)

ただ、流石に中らない。上手く机の向こう、カバーに入られてしまった。だがそれでいい。時間は稼いだ。

『状況を教えてください』

「Support me!」

残りの全弾でブラインド上部の固定を破壊し落とす。目がくらむような光が差し込む。そして外からの視界が通った。2051m必中を誇る狙撃手はもうそこにいた。

・・・、

・・・・・・・・・、

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

『ロストしました』

「そうみたいだな」

奴はもうこの部屋には居なくなっていた。俺だけじゃなく、レキも見つけられない以上確実だ。恐らく奴が最後にカバーにしていたはずの机を見ると、一通の血濡れた手紙が裏向きに置かれていた。無駄に凝った装丁と封蠟、切手はなし。宛先はただの番号だが、これはストライダー隊1番機だった頃の認識番号。つまり俺宛てだ。

(もう乾きはじめている。奴の血じゃないし俺でもない)

『それは?』

表に返すと、差出人はサミュエル・ドレットノート。ダガーナイフを拾い封を切ると中から三つ折りの紙が出てきた。

(オーシア秘密情報部・第三分室か。クソッタレめ)

今、俺はレキに背を向けていた。彼女からは手紙の中身は見えないはずで、それは僥倖だった。アルファルドがこれを持っていたのは恐らく道すがら殺したらしいエージェント達の、その死体のどれかから拾って来たのだろう。恐らくアルファルド自身にはオーシアとのつながりはない。

「なんでもない。キンジ達はもう出てきた?」

『・・・いいえまだです。恐らくは今もデュランダルと戦闘中かと』

じゃあ、遅ればせながらキンジ達の援護に行くとするか。アルファルドが仕掛けたECM装置も探さなきゃならないが、どうせとっくに動作を停止している。

「ありがとうレキ、おかげで助かった」

あの時、彼女が声を張って生存欲求を刺激してくれなければ今頃は頭の中がミックスジュースになってたことだろう。

『私は何もしていません』

そんなわけあるか。

全ての武装を無事に回収すると俺は地下倉庫区画に向かった。

 

結局、キンジ達は俺らが到着する前にデュランダルを逮捕しており、白雪含めなんとか皆無事で帰ってきた。

アルファルドの持ち込んだECM機材や侵入経路については分からないままだ。アドシアードの混乱を突いたんだろう程度の推論は立つがそれだけであり、奴が殺したと言っている恐らくはオーシアのエージェントについても今はまだ死体が上がっていない。アルファルドかエージェントの仲間がさっさと処分してしまったのだろう。仕事熱心なことだ。

随分とバカスカ撃たれ、蹴られた俺の怪我についても痛む場所にテーピングをしたくらいで特に入院するようなことはなかった。

そうそう、稲垣は十全に仕事を果たしたようで俺はピンクツインテトリガーハッピー(思いついてから自分のTACネームを貶めてしまったような気がしてなんだか悲しくなった)にサボった罰を与えられ今回の事件にかかわった全員に夕飯を奢ることになった。アルファルドのことは厄ネタ過ぎて教務課に箝口令を出されてしまったから俺以外は知らない。レキも相手の素性は知らされなかったはずだ。

武藤や稲垣も含め事件関係者全員に奢ることになった話だが、流石にやってられないので俺の貸しガレージに集合させて自炊したカレーでお茶を濁すことにした。ちなみにピカピカの新車たる我がZX-10Rは当然退避済だ。代わりに全員分の椅子と馬鹿デカい寸胴鍋が置かれている。前菜付け合わせ飲み物等は適当に買ったり作ったりしたものをビュッフェスタイルでその辺に並べてある。

「もうすぐ出来るぞー」

「マズかったら風穴だから!」

「気をつけろよ、コイツ本気で撃ってくるぞ」

「アオ、俺のは肉マシマシで頼む」

「男の子の料理って初めてかも・・・ハッ!?わたし、キンちゃん以外に初めてを!?」

「いやお前外でメシ食ったことくらいはあるだろ!?男が作ったもの食ったことないわけねーだろうが!」

「あ、そっか」

「センパイなんで私も手伝わされてるんです?」

「後輩だから」

「横暴な人だわ・・・」

(うるせえ黙って手伝ってくれてるレキを見習え。さっきニンジン一本おろしにされちゃったけど)

目を擦りながら玉ねぎ切る様子はそれはかわいかったさ。ゲスト(邪魔者ども)を呼ぶ前だったのでその光景をまじまじ見てても誰にも咎められなかったから肉の下味を付け忘れそうになったが。あとおろしになったニンジンはスープにした。

(フムン。カレーもこのくらいで完成でいいか)

「ごはんも炊けました」

「ウワ、すごい量だねー。研ぐの大変だったんじゃない?」

「人数多いからな。武偵は基本量を食うし」

「いやいやー、それでも8人分でこの量はけっこうあるよー?」

「男子が三人いるし―――ん?」

なにかおかしい。ここには7人しかいないはずだ。

キンジと神崎のドタバタコンビに、星伽が混ざって3人。

最初からガレージにいる俺とレキで2人。

ここに武藤と稲垣が混ざって、さらに2人。

最後にそこでカレーに指突っ込んで味見しようとしてレキに止められている理子を入れて合計8人か。オマエどっから沸いたんだ。

「なんでいるんだコイツ・・・sigh」

「ブーブー、つまみ食いさせろー!ってあれ、えっと。レキュ、なんでおろし金もってこっちにくんの?ちょ、ちょいちょい。ストーップ!?」

「あ、ダメだよレキちゃん。そういう不届きな輩をこらしめるにはおろし金じゃなくてそっちのキッチン鋏のほうが効果的だから。それベルカの会社のいいやつだから、骨とかも切れるよ」

「わかりました」

「ギャー!?」

(雑な悲鳴だなー)

なんでもいいがとりあえず皆文句が出ない程度に調整してカレーをよそって配っていく。文句あるなら食うな・・・とは言わん。死んでも食え。それで奢りはチャラだ。それに言ってはなんだが空軍とて軍人ならば自炊は基本中の基本だし、師匠のところにいた時も家事は二人分俺がやってたからそれなりに自身はある。

ちなみに予備の皿を使ってちゃんと8人前用意した。理子は面倒な女だが食ってるうちは黙るだろうと思ったから。女という生き物をナメていたと後に実感させられたが。

カレーの出来上がり?寸胴とメシは全部空になったからそれなりに美味しかったんじゃないだろうか。

(大勢で食卓を囲むとビストロを思い出すな。ロングキャスターの大食いは見てるだけで腹が減った)

洗い物も酷い量になっているが、まあ大したことはない。大体の連中は各々感想を言いながら帰った。まだガレージに残っているのは相変わらずここで寝泊まりしているレキと今はごみを捨てに行ってくれている稲垣だけだ。彼女は後で女子寮まで送ることになっている。流石にこの時間にバスはもうなかった。

レキは借りてきた椅子を台車に乗せている。彼女も拙い手料理をなかなか気に入ってくれたようで何時ぞやに劣らない食欲を見せてくれた。理子やアリアが唖然としていたのが記憶に新しい。

「おいしかったです」

「ありがとう」

実際に口に出してくれるのはやはりうれしいものだ。

こちらも寸胴と炊飯器を洗い終わったので明日纏めて車輌科の軽トラ(これも借り物だ)で返しに行く。レキが纏めてくれた椅子も一緒だ。

「片付け、手伝ってくれてありがとう。助かった」

「怪我人に全部押し付けるわけにはいきませんから」

ああ、そうか。テーピングとかは全部制服の下だけど、彼女は俺がボコられたの知っているんだった。かっこ悪いところを見られたな。

しかしあれだ。カレーけっこう辛く作ったしビストロなんかを思い出してしまったから、ビールとか飲みたくなってきた。ウォッカでもいいけど。向こうでは――、アルマ・クレイマン大尉だった頃は成人した正規の軍人として生活していたから当然酒を飲むことだってあった。もうすぐ2年前になるのか。

ストライダー隊はいいところだった。444だって最悪ではなかった。メイジのクラウンも食えないやつだったが、空では自由にやらせてくれた。

多くの出会いと戦場、競い合う空。

嫌でも思い出してしまう。アルファルドにTACネームを呼ばれ、オーシア情報部が寄越したあの手紙を読んでからずっとだ。都合よく忘れて心を落ち着かせていたのに。

いや、忘れることなどできるはずもなかった。

操縦桿とスロットル、ラダーペダルを通じて全身が金属の翼と一体になる感覚。

後方から迫るミサイルや機関砲弾を捉え軌道を掌握した時の高揚感。

キャノピーから見る千変万化の空の表情。

空中で戦闘機が爆発する閃光すら、今は遠く焦がれている。

 

もうすぐ一年になるのか、最後に空を飛んでから。




今更ですが当SSのクロスオーバー作品はエスコンと緋弾のアリアだけではありません!
以下に現状で投下されている元ネタの一覧を記載します。

エースコンバット7スカイズ・アンノウン(世界観・登場人物)
緋弾のアリア(世界観・登場人物)
グリザイア・ファントムトリガー(極一部のキャラクターのみ。ほぼオリジナルキャラクターとなっており参照不要)
CANAAN(一部事件に関わる設定及びキャラクター)


クロスオーバー作品はタグにも追記いたします。また、上記内容は全て作者の趣味であり順次追加される可能性があります。
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