生徒会に入り一週間が経過しようとしていた。あれから変わったことと言えば桜内さんが千歌説得されスクールアイドル部(仮)に入部することになった。桜内さんはピアノをやっているらしく作曲ができるみたいだ。とても心強い。あれから練習も始めて今日は理事長に呼ばれてるため早く出てきた。何故か俺も一緒に。
今現在桜内さん、千歌、曜とバスに乗り学校へ向かっている。
優馬「それにしても桜内さんありがとね。桜内さんが入部を決めてくれてすごい嬉しいよ。これから千歌と曜が迷惑かけるかもしれないけどよろしくね?」
梨子「ううん。そんなことないよ。千歌ちゃんの真剣な気持ちに私も勇気を貰えた。だから私も自分を変えたい。感謝してるのむしろ私の方だよ。ありがとう。」
千歌「梨子ちゃーん!!」
梨子「きゃっ!?」
千歌が桜内さんに抱きついてスリスリしている。まるで子犬だ。
曜「よっぽど梨子ちゃんが入ってくれて嬉しいんだね!私も梨子ちゃんが入ってくれてすごい嬉しいよ!」
千歌「これから頑張ろうね!二人とも!」
梨子「アレ?神崎くんはスクールアイドル部じゃないの?」
桜内さんは俺に向かって聞いてきた。
優馬「俺は違うよ?俺はただのお手伝いさんだ。みんながちゃんと活動できる様に手助けは出来る限りして行く。でもそれ以上のことは俺には出来ない。俺は近くで見守ってあげることしかできない。」
梨子「じゃあ、なんで理事長は神崎くんも呼んだんだろう?」
優馬「それが俺にもわからないんだよね…。まぁ行けばわかることだしそれでいいと思う。」
梨子「それもそうね。」
そこからはこれからの活動をどの様にして行くか話し合いを進めた。すると、あっという間に学校に着いたので俺たちは理事長室へ向かった。
今更なのだが、理事長とはどんな人なのだろうか?
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理事長室の前に着いた俺達はノックをして部屋に入った。
優馬「失礼します。」
俺は中に入るとダイヤさんがいたので挨拶をした。
優馬「おはようございます。ダイヤさんも来ていたんですね。」
ダイヤ「おはようございます、優馬さん。私も昨日連絡を頂いて参りましたの。」
優馬「それで、理事長はどこにいらっしゃるんですか?」
俺はダイヤさんに聞くとダイヤさんは軽く溜め息を溢しながら視線を移した。その視線の先には俺達と同じく制服に身を包んだ綺麗なブロンド髪の女の子がイスに座っていた。
優馬「まさかとは思いますけど…この方が…。」
ダイヤ「はい…。浦の星女学院理事長。小原鞠莉さんですわ。」
鞠莉「チャオ♪アナタが優馬ね♪とてもクールな少年ね!私がこの浦の星女学院生徒にして新理事長の小原鞠莉よ♪マリーって呼んでね♪」
優馬「っ!?よろしくお願いします。ところで自分達が呼ばれた理由は何ですか?」
俺は理事長の名前を聞いて少しだけ動揺した。だが、すぐに落ち着いて小原理事長に質問した。
鞠莉「そうそう、この浦の星にスクールアイドルが誕生したと知ったんだけどダイヤの事だからスクールアイドル部は認めませんとか言ってるんじゃないかと思って今回来てもらったの。」
鞠莉「それじゃあ、可哀想だから私が出す条件を満たしたらスクールアイドル部設立を認めようと思って今回呼ばせてもらったの。」
優馬「なるほど…。その条件を満たせば無条件で部の設立を認めてくれると?」
鞠莉「そうよ♪」
理事長がウインクをしながらこちらに笑いかけてきた。
正直こちらとしては好都合だ。ダイヤさんとは少しは打ち解けて来たけどまだスクールアイドル部の設立は認めてもらってない。でも理事長の許可があれば設立できる。この好機を逃すわけには行かない。
優馬「どうする三人とも?」
千歌「私は…やりたい!!こんなチャンスもう無いかもしれないし!」
曜「私も…やる!!」
梨子「もちろん、私もやるわ!」
三人は真剣な表情で俺を見据えてきた。俺は三人を順番に見て理事長に向き直る。
優馬「みんなやりたいみたいなので条件を教えて貰っていいですか?」
理事長は不敵に笑みを浮かべ言葉を発した。
鞠莉「オーケー!じゃあ説明するわね。そんな難しい事じゃ無いわ。これから二週間後にライブをしてもらいます。そこで今から行く会場を満員に出来たら部の設立を認めるわ!でも、出来なかったら今後何があってもスクールアイドル部の設立は認めません。」
優馬「なるほど…。どうする千歌、やめるか?」
千歌「ううん。やめない!折角のチャンスを無駄にしたく無い!梨子ちゃんと曜ちゃんは?」
曜「もちろん!やるよ、私も諦めたく無い!」
梨子「私ももちろんやるわ!」
俺は三人を見て笑みが溢れた。三人の真剣な気持ちが嬉しかった。
優馬「わかった!理事長その提案、是非受けさせて頂きます。」
鞠莉「いい覚悟ね!それじゃあ説明するわね。会場はこの学院の体育館。そこを満員に出来たら部の設立を認めるわ!」
この時俺は理事長の出した条件に冷や汗をかいた。
千歌「わかりました!」
鞠莉「それからもう一つ…。優馬、アナタもしっかり彼女達をサポートしなさい!」
優馬「えっ、俺もですか…?」
鞠莉「もちろんデース!その為にアナタをここに呼んだのよ♪」
優馬「わかりました…。出来る限り務めさせて頂きます。」
こうして俺達の部の設立をかけた二週間が始まった。
理事長室を出て教室に向かってる最中桜内さんが不安そうに口を開いた。
梨子「さっきの理事長の条件なんだけどさ…。」
優馬「桜内さんも気がついた?」
梨子「うん…。」
曜「どう言うこと?」
優馬「全校集会は結構やってるからわかるよな?」
千歌「もちろん!体育館以外に広いから…あっ。」
どうやら千歌と曜も気づいたみたいだ。
優馬「そう…。この体育館は全校生徒が集まっても全然埋まらない。つまりは外部の人達にも来てもらうことが、必須事項って事だ。」
千歌「そんな…。」
梨子「私も今考えて気づいたの…。」
曜「どうすれば…。」
真実に気づいた三人は落ち込んでいた。
優馬「でも、やるんだろ。スクールアイドル。」
俺の言葉に三人は俺の方を見る。
優馬「確かに理事長が出した条件はかなり厳しいと思う。だからと言って諦めるには早いぞ。諦めるのは簡単だ。でも、俺は三人なら出来るって信じてる。」
千歌「ゆうくん…。」
優馬「千歌、それでも諦めるか?」
千歌「ううん…。私諦めない!!絶対満員にしてスクールアイドルやる!!」
優馬「曜と桜内さんも諦めるのか?」
曜「諦めない!!優がいるんだもん!何だって出来る!」
優馬「おいおい、俺がいたってやるのはお前らだ。」
梨子「そんな事ないよ?」
優馬「桜内さん?」
梨子「私も不安だけど、神崎くんがいると不思議と出来る気がする。だから、私も頑張る!」
どうやら俺の思ってる事は杞憂だったらしい。みんなこんなにも強いんだ。きっと乗り越えられる。
優馬「わかった。俺も出来る事は全力で助ける。何だってやってやる!頑張ろうな!」
俺は一人ひとりの顔を見て笑いかける。
ちか、よう、りこ「「「うん!!!」」」
こうして俺たちは二週間後のライブに向けて動き出した。
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放課後、千歌達は早速曲作りをしに千歌の家へと向かった。俺はダイヤさんに色々聞きたい事がある為、生徒会室へ向かった。
優馬「失礼します。ダイヤさんいますか?」
ダイヤ「はい、いますよ。どうされました?」
優馬「ちょっと聞きたいことがありまして…。今朝の事何ですけど、ダイヤさんはどう思いますか?」
俺は直球に聞いてみた。
ダイヤ「正直このままでは厳しいと思います。スクールアイドルは自らが作詞作曲を手掛け披露する必要があります。ましてや全くの未経験でしたら尚更作詞作曲が課題になると思いますわ。」
優馬「なるほど…。それにしても、ダイヤさんはスクールアイドルに詳しいんですね?もしかしてやっていたんですか?」
ダイヤ「なっ!?そ、そんなことありませんわ!一般教養ですわ!」
優馬「そうですか。でも、小原理事長と話してる時ずっと悲しそうな顔をしていたのは何でですか?」
ダイヤ「な、何の事でしょうか?」
とぼけた顔をするダイヤさん、その表情はやはり少しだけ悲しそうな顔をしていた。
優馬「わかりました。今は聞きません。でも、いつか話して下さいね。頼りないかもしれませんが、相談にも乗りますよ。」
ダイヤ「ありがとうございます。話す時が来れば必ずお話します。」
優馬「お願いします。あと一つだけ聞きたいことがあるんですけどいいですか。」
ダイヤ「私で答えられることでしたら。」
優馬「実は俺ダイヤさんの事結構前から知ってたんですよね。」
優馬「かなちゃん。松浦果南って言えばわかりますか?」
ダイヤ「っ!?優馬さん…果南さんを知っていますの…?」
ダイヤさんは驚きの表情を浮かべ俺に尋ねてくる。
優馬「はい、俺と兄貴はかなちゃんと小さい頃から仲が良くて一緒に遊んでたんですよ。千歌と曜ももちろんいたんですけど、たまにかなちゃんは俺達と違う友達と遊んでた。それが、ダイヤさんと小原理事長。ですよね?」
コクっと小さくダイヤさんはうなずいた。
優馬「その時にかなちゃんからよくお二人の話を聞いてたんですよ。嬉しそうにかなちゃんは話してくれるんでお二人の事とても大切に思っていたんでしょうね…。」
優馬「でも…。」
優馬「かなちゃんが高校生になって少し経って、俺もようやく普通の生活を送れるようになってきた頃からですかね…。かなちゃんの様子が変わってきたんですよ。何だか辛そうで…。俺自身余裕が無くてかなちゃんに理由を聞けなかったんですけど、もしかしてダイヤさんは何か知ってるんじゃ無いですか?」
声を出さないダイヤさん。
優馬「沈黙は肯定と受け取っていいですか?」
尚も沈黙をダイヤさんは貫く。
優馬「今は何も聞きません。でも、俺はかなちゃんが本当の笑顔で笑ってくれる日を待っています。だから、俺に出来ることがあったら何でも言ってください。俺と兄貴の様に悲しい結末にならない為に…。」
ダイヤ「わかりました…。少なからずこの一週間で優馬さんがお優しい方だと言う事は分かりました。貴方を信じてお話致します。」
ダイヤさんは俺の目を真剣に見据えて語ってくれた。
※※※※
優馬「そうだったんですか…。かなちゃんは小原理事長の為に…。」
ダイヤ「この事は鞠莉さんも知りません。どうか内密にお願いします。」
優馬「分かりました。約束します。」
ダイヤ「本当は私もまたスクールアイドルをしたい…。あの頃の様に三人揃って…。」
俺はダイヤさんの悲痛な言葉に胸を締め付けられた。
ダイヤさんはこの二年間辛い思いをし続けて誰よりも心を痛めている事を知った。この人が固く見えてしまうのは不器用が故だ。本当は誰よりも友人思いで優しい。ただそれを表に出せないだけなのだ。
俺はダイヤさんに近づき抱き寄せた。
ダイヤ「なっ///破廉恥ですわ!?///」
優馬「破廉恥で構いません。ダイヤさん…辛かったですよね。悔しかったですよね。」
ダイヤ「な…何を言って…。」
優馬「俺はダイヤさんの味方です。俺の前では強がる必要はありません。今は全部吐き出して俺にもその辛さを分けてください。俺も一緒にその辛さを背負います。」
ダイヤ「う…うっ…。また果南さんと…鞠莉さんと…スクールアイドルがしたい…!辛い…辛いよ…。私は…どうしたらいいの…。助けて…。」
優馬「辛かったですね…。大丈夫…俺もこれから支えます。きっと三人が笑ってスクールアイドルが出来る日が来ます。俺の大切な幼馴染達がきっと離れてしまったダイヤさん達を繋いでくれます。だから…俺を…俺達を頼ってください。」
ダイヤ「うっ…うわぁぁん!!」
ダイヤさんは俺の胸でたくさん泣いた。泣いて泣いて泣きまくった。この人が背負っていた辛さは到底俺には想像できない。だからこそこんなにも辛そうに、悔しそうに、苦しそうに泣いている。そんなダイヤさんを抱きしめながら俺は涙をグッと堪えて強く抱きしめた。