5色の花を手に   作:カラメル

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1話

人間、自身がどのような本性を隠しているかなんて蓋を開けてみないとわからないものだ。

 

例えばこんなことを経験したことはないだろうか。

普段自分は大人しい人間であると分析していたが、友人と喧嘩になり激情して、急に普段の自分の知らない部分が表れたりすることなど。

 

実際俺自身がそうだった。

 

俺は自分のことを少なくとも色恋沙汰にだけに関わらず、何事にも誠実な人間だと認識していた。

 

根拠は知人にそう言われることが少なくなかったからだ。

 

別に友人と喧嘩して出てきた本性というわけではないが、でも確かにこれは今までの俺は知らない部分であった。

 

自分のことはある程度理解があるつもりだったが、ただ今までその本性が見える機会がなかっただけだった。

 

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俺の名前は朝日奈千秋(あさひな ちあき)、今年で17になる。ついこの間までごく平凡な男子高校生だった。ここを今説明すると長くなるから今は置いておこう。

 

簡潔に家族構成を説明すると、家は父、母、俺、妹。

両親は普段仕事であまり家にいることは無い。だからまぁ実質16歳の妹との二人暮しみたいなものだ。

 

そして俺には家が隣同士でお互い両親の仲がいいということもあり、同い年の幼馴染みが居る。

 

名前は白鷺千聖。幼少の頃から子役として芸能界に入っている今は立派な女優兼PastelPalettesというアイドルグループのベース担当だ。

 

昔はよく妹を含めた3人で公園や家とかで遊んでいたが、中学に入ったぐらいから仕事が増え、あまりプライベートに時間を費やせなくなった千聖とはどことなく疎遠になりつつあった。

 

そして千聖と疎遠になってから俺はようやく気付いたことがある。

 

俺は白鷺千聖に好意を抱いていた。勿論恋愛的な意味でだ。

 

だが千聖の仕事が忙しかったり、受験シーズンということをあり、何とか俺の気持ちだけでも千聖に伝えたかったが、どうすることもできずに、この距離感が続いたまま呆気なく俺は中学時代を終えたのであった。

 

何より今思えばあのころの千聖は常に仕事に専念していて、なんかもう既に話しかけれるような雰囲気ではなかった。

 

結局それぞれ別の高校に進学してからはほぼお互いに連絡を取るということは無くなっていて、俺自身も千聖のことは叶わない恋だともう諦めることにした。

 

ほぼ連絡を取らなくなった今でも、家が隣同士ということもあり、たまに千聖の姿を見かけることもあった。目が合ったりしても勿論話しかけることなんて出来ないし、話しかけれるようなことも無いのだが。

 

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俺は今羽丘学園に通っている。元は女子高だったが、ほんの数年前から共学になったらしい。

元女子校ということもあって女子生徒の比率が非常に高い。

 

本当は千聖と同じ学校に行きたいとも思ったが、冷静に考えたら普通に気持ち悪いし、千聖の選んだ高校は花咲川女子学園というがっつり女子高だった。

 

仕方なく家から結構近くて学力的にも俺に見合っていたから選んだが、正直この圧倒的女子率は盲点であった。

 

だけど今まで千聖や妹の楓(かえで)と一緒にいることが多かったこともあり、女子と話すことに対してそこまで苦労しなかった。

これに関しては本当に2人に感謝している。

 

「ねーねーちあ君ー、朝から寝てないで私の話し相手なってよー」

 

「やめてくれ日菜...俺が低血圧なのは日菜も知ってると思ってたんだがな、俺は朝は弱いんだ、これ大事、しっかり覚えておけよ、んじゃおやすみ」

 

「あーもう!やっと起きたと思ったらまた寝た!ねー起きてよー!」

 

HR前に机で伏せて寝ている俺をゆさゆさと揺らしながら話しかけてくるのは、1年からクラスが一緒で隣の席の氷川日菜だ。

そして俺がこの高校に入学して1番に出来た友人でもある。

 

あとこれは普段あまり見ないテレビを見て最近ようやく気付いたことだが、彼女もPastelPalettesのメンバーだったのだ。

 

確かに今思えばそんなことを何度か口にしていたことがある気がしなくもない。

 

正直どれも俺が眠たい時に言っていた気がするので、別に話を全く聞いていない訳では無い。むしろ普段はしっかりと聞いているのだ。そう、ただ単にタイミングが悪かっただけなのだ。

 

だが流石にこれを口にしたら氷川日菜に対して失礼だろうから、できるだけ前々から知ってた風に装った。

 

「ったく仕方ないな、んで?付き合って欲しい話って何さ」

 

「そう言えばこの前千聖ちゃんが 「ち、千聖!?」うわ!どしたの?ちあ君てばいきなり食いつくね」

 

「あぁ、いやすまん。ちょっと取り乱した」

 

千聖の話題が出ただけでここまで動揺してしまうとは、どうやら俺はまだ千聖のことを忘れられないらしい。なんと女々しいことやら。

 

「もしかして千聖ちゃんとちあ君てやっぱ知り合い?いやそれ以上の関係かな?あははっ!てかその様子からあからさまだよねー」

 

「っ...あぁ、そうだよ。俺と千聖は幼馴染だ。それこそ今となってはほぼ他人だけどな」

 

「ふーん...ほぼ他人ねぇ、ほんとにそうかなー」

 

「?...そりゃどういう意味だよ」

 

「んー、やっぱまだ教えなーい」

 

「えぇ...なんだよそれそこまできたんなら教えてくれよ」

 

「だーめっ!ほら、HR始まるよ!」

 

結局うまいことはぐらかされてしまって、もやもやした気持ちのままその日の授業を終えるのだった。

 

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学校を終えて校門を出てあとは帰宅するだけか。

 

「んーっ...はぁー、今日の授業も疲れたねーちあ君」

 

「嘘つけ、正直お前が疲れてる姿なんてとても想像つかないぞ」

 

「あははっバレた?んじゃ帰ろっか!」

 

「そうだな」

 

そんな会話を交わしながら俺達は歩き出した。

 

「そういや毎回思うんだが日菜、お前一応アイドルなんだからその、変装とかしないまま俺となんか歩いてて良いのか?」

 

「んー?なになにー?ちあ君は周りから私とそーゆー関係に見られるかもとか心配してくれてたりするのかなー?」

 

「まぁ確かにその通りなんだが、その言い方といいニヤニヤしながら言うのやめろ、なんか腹立つんだが!」

 

「なんも心配しなくても大丈夫だよ、なんたって私にはこの変装メガネがあるからね!」

 

メガネだけで変装とかこいつ芸能界舐め腐ってんだろ、てか第一こういう時にそのメガネかけないでいつかけるんだよ。

 

「そーですか...もーお好きにどーぞ」

 

「えー...反応うっすーい、なんかもっとあっていいんじゃない?人気アイドルのメガネだよ?」

 

「自分で言ったら台無しだろそれ」

 

「ま、私はちあ君とそういう関係だと思われてくれた方がありがたいんだけどね」ボソッ

 

「ん?今なんか言ったか?」

 

「んーん、なんでもない!...ってあれ、あそこにいるの千聖ちゃんじゃない?おーい!千聖ちゃーん!」

 

「へっ?千聖...?あっちょ待て日菜!」

 

あぁ畜生!あいつ足速すぎんだろ!クソっ、全然追いつけねぇ!

流石にいきなり千聖とご対面とか心の準備がまだっ!

 

 

 

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