5色の花を手に   作:カラメル

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2話

街中で千聖を追いかけてった日菜を必死に俺が追いかけるという、周りから見たら俺が悪者みたいな絵面だが、実際は誤解だということを十二分に理解して欲しい。

 

「クソっ!日菜のやついくらなんでも足速すぎんだろ!こっちはまだ千聖と顔を合わせる心の準備ができねぇってのに!」

 

こちとら息を切らして全力疾走で追いかけているというのに、距離は全く縮まらずに日菜の方はケロッとした顔で普通に千聖の所へと向かっている。

ここまで来ると俺が単純に足が遅い気がしてこなくもないレベルだ。

 

「おーい!千聖ちゃーん!」

 

「あれは日菜ちゃん?それに...千秋?」

 

ありゃもう俺らに気づいちまった感じだな、もう諦めて千聖に会う選択肢しか俺には残されてないようだ。

 

内心嬉しいような憂鬱なような、かなり複雑な気持ちが俺の胸の中で渦巻いていた。

 

「千聖ちゃん放課後?これからどっか行くの?お仕事?」

 

「えぇ、まぁそうだけど...そんなことよりなんで日菜ちゃんが千秋と一緒にいるのかしら?2人は知り合いだったの?」

 

千聖は不思議そうに平然とした日菜とがっつり息を切らしている俺の様子を伺っている。

 

まぁ正直その反応も無理ないだろう、昔の幼馴染と現同グループの人間という本来関わりがないように思える2人だからだ。

 

あるいは普通に今の息を切らした俺が変人に見えるからという可能性も無きにしも非ずだが。

 

まぁもし日菜か千聖のどちらかが俺の事を話していたら、と思ったがどうやらそんな淡い期待も儚く砕け散ってしまったようだ。

 

「私とちあ君の関係?んー、千聖ちゃんになら教えちゃってもいっかなー」

 

と、日菜はわざわざ含みあるような遠回しの言い方した。理由は全くもって分からないが。

いやほんとになんでそんないかにも特別な関係ですみたいな言い方するんですかね、普通に友達じゃダメなんですかね!?

 

「お、おい日菜、その含みのある言い方やめてくれ、千聖に誤解されちまう」

 

誤解を生まないうちにさっさと訂正しておいた方が良さそうと判断した俺は、すかさず日菜にやめるよう提案した。

 

「えー?誤解されるって何がー?」

 

「いや、だからその、なんだ、俺とお前がなんかこう...こ、こい...」

 

「こい?こいがなんだって?」ニヤニヤ

 

おい絶対こいつ分かっててやってるだろ、俺をこの場でからかってどうするってんだよ。

ほら、千聖もなんかそろそろ面倒くさそうに見てんだろ!

 

「やっぱなんでもねぇよ...」

 

ここはプライドとか色々投げ捨てて素直に負けを認めていた方が良さそうだな。とりあえずはこの状況を何とかしなくては。

 

「そこまで言ったんなら最後まで言おーよー」ニヤニヤ

 

なんでこいつ俺が大人しくサレンダーしたのにしつこくからかってくんの!?

ガチのKYなの!?マジで何が目的なんですか日菜さん!?あとそのニヤニヤ顔腹立つクセにちょっと可愛いからやめてくれ!

 

「あの...私そろそろ時間だからもう行っていいかしら?」

 

「あ、ごめんね千聖ちゃん」

 

「いや、何も謝らなくても良いのよ日菜ちゃん。それじゃ、私はこれで」

 

俺らがくだらないやり取りをしている間、千聖をすっぽかしてしまっていたのを俺らは忘れてしまっていた。

いや、俺は実際は忘れてなかったと思うがな?

そのくだらないやり取りをみて自分は邪魔者なので去りますみたいに千聖は歩き出してしまった。

 

「あっ、ちょっとだけ待ってくれ千聖!」

 

「...?まだ私に何か用?」

 

止まってくれたはいいものの、あからさまに面倒いみたいな態度に結局頭が真っ白になって千聖に何を話したらいいのか全く出てこなかった。

千聖と話さないうちにどう接したらいいのかとか全部忘れてしまったらしい。

 

「いや、その...引き止めてすまん、やっぱなんでもないわ」

 

「そう」

 

特に気に留める様子もなく軽くあしらわれてしまった。

一応仮にも幼馴染のつもりだったが、そんなことはまるでただの妄想だったのかもしれないと疑わせるような態度に俺の心は深く抉られてしまったかのような感じがした。

 

「千聖ちゃんじゃーね!また明日!」

 

「えぇ、また明日」

 

そう言って千聖は俺の方をちらりと一瞥して、すぐさま振り返り、逃げるかのようにこの場から去ってしまった。

 

あー、やっちまったなこりゃ。

もしかしたら本格的に千聖と俺は疎遠になってしまったかもしれない。

なんならもっと言うと、嫌われてしまったかもしれない。

そんなことを考えて俺はどんどん憂鬱な気分になっていた。

 

「あー、ごめんねちあ君。なんか私だけ盛り上がっちゃって」

 

日菜はらしくもなく、素直に俺に対して謝ってきた。

だが今ここでらしくもないとか言うと流石に怒られそうなので心の中に留めておくことにした。

 

「いや、日菜は何も悪くねぇよ。むしろ俺の方こそ変な雰囲気に巻き込んで悪かったな」

 

「んーん何もだよ、そうだなー...気分転換にどっか適当に寄ってから帰ろっか!」ニコッ

 

「あぁ、そうだな」

 

正直なとこ帰りたい気持ちの方が大きかったが、このまま帰っても部屋でさらに憂鬱な気分に溺れるだけな気がしたので、今は日菜の提案に乗ることにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

とりあえず俺と日菜は適当なファミレスに入ってフライドポテトとドリンクを1杯だけ頼むことにした。

 

店員に案内されたテーブルに日菜と向かい合うような形で座り、決めていたメニューを店員に伝え、しばらく注文の品が出てくるのを待つ。

 

待っている間俺と日菜の間にほぼ会話はなかったが、何故か不思議と気まずくはなかった。むしろこの状態に心地良さを覚える程であった。

どうやらそれほどまでに俺は気持ちがダウンしてしまっているらしい。

人ひとりにここまで心を動かされる俺に少し嫌気がさした。

 

なんて考えているうちに注文していたフライドポテトとコーラとメロンソーダがテーブルの上に置かれた。

 

さっそくフライドポテトを1本取ろうと手を伸ばすと俺の指先と、同じくフライドポテトを1本取ろうとした日菜の指先が偶然触れてしまった。

 

「あっわりぃ...」

 

「こ、こっちこそごめん」

 

ん?なんだ?日菜のやつ急にしおらしくなって...らしくもないな、いつもなら大体のことはるんってきた!とか意味のわからんこと締めようとすんのに今日は一体どうしたってんだ?

それに心なしか顔がちょっと赤くないか?

 

妙に気まずい時間がほんの5秒程度流れた。

 

い、いやまぁそれは置いといて、そもそもこういうのって最後の1本とかで起きるイベントだろ、なんで最初の1本なんだよ。冷静に考えると普通にすげぇ確率だな、これ。

 

「「ぷっ...あははっ!」」

 

日菜も同じことを想像したのか、言葉を交わしていないにも関わらずお互いに何だか可笑しくて笑えてきてしまった。

ただそれだけなのに、俺の気分は少しマシになった気がした。

俺の心はどうやら小さなことで簡単に揺れ動く、随分安い心らしい。

 

それから約30程雑談に花を咲かせている時に、急に日菜は少し真面目な顔つきになった。

 

「それでさ、さっきのことなんだけどさ」

 

「っ...あぁ」

 

気分転換にここに誘ったのは日菜の方なのに、ここぞとばかりに日菜はさっきの話をまた戻してきた。

だがまぁ今なら問題ない気がしたので、日菜の話を止めることなく聞くことにした。

 

「私、周りの人の気持ちとか察せない人間だけどさ、これだけは言えるよ。千聖ちゃんは別にちあ君のこともう興味ないだとか思ってないと思うんだ」

 

「それはまたなんで、日菜はそう思ったんだ?」

 

俺は単純にその考えに疑問を持った。さっきまでの俺なら誤魔化していたと思うが、何故か今の日菜の発言には根拠はないが、説得力に強さがある気がしたからだ。

 

「その理由は、まだ言えないかな。でもいつかきっとちあ君もわかる時が絶対に来るよ」

 

「そ、そうか」

 

理由も根拠も何も無いが、何となくほんとにそんな気がしなくもなかったのだ。まぁあまりに曖昧すぎるが故にあとから不安になるかもしれないが。

 

「でさ、私から1つ提案があるんだけど」

 

「提案?」

 

「そう、明日私達...じゃなくてパスパレの皆でCiRCLEってスタジオでプライベートでの練習するんだけどさ、もし良かったらなんだけど...ちあ君にも明日の練習来て欲しいんだ」

 

「なるほど、明日パスパレの練習に付き合うのか.....って、は、はぁ!?」

 

「ちょっ、ちあ君流石に声でかいって!」

 

「あ、す、すまん...」

 

思わず驚いて店内で声を思い切り荒らげてしまった。

店員や他の客からの視線が刺さりまくって、流石にこの場にとどまっていられるような状態じゃなくなってしまった。

で、でもしょうがないよね!?最近人気のアイドルグループの練習に付き合えだなんて言われてもね!?問題点が多すぎてどこから突っ込めば良いのかすら判断が追いつかないんですが!?

 

いや、そんなこと考えるよりとりあえず今は早急に店を出た方が良さそうだな。

 

急いで残りのジュースを飲み干し、フライドポテト口に突っ込んで、日菜の分もまとめて会計してすぐさま俺は日菜の手を引いては店をでた。

 

 

 

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