「・・・訳が分からん。待て、逢魔の王? 創世の王? なんの話をしている」
「・・・」
黒い男の胸ぐらを掴みながらも、南澤は困惑した表情で男を睨んだ。
「・・・そうか、それについてはまだ知らないのか」
「いいだろう、教えてやる・・・」
――――南澤が生まれる前から更に何年か前のことだった。
第四次聖杯戦争が起きる前、それは突如として、冬木の端に“落ちてきた”。
彼――アナザー電王の変身者であるこの男は、主の命により、聖堂教会や、魔術協会よりも先に“落ちてきたナニカ”に辿り着いた。
『こ、これは・・・!?』
そこにいたのは――ボロボロの金と黒の鎧に覆われ、体の所々の装甲はグチャグチャとなり、顔の仮面が割れた、“ナニカ”だった。
そう、それは“逢魔の王”、“オーマジオウ”であった。
「その日から我々は、逢魔の王を保護した・・・まだ19ぐらいの年齢だったが、まるでその精神は本当に王の様だったよ」
「・・・ソイツと俺に、何の因果がある?」
「・・・」
「いやそもそも、何故その逢魔の王が、創世の王とやらに負けたと分かる?」
「それは・・・彼自身がそう言ったからだ」
「創世の王、その名は」
「―――“シンゲツバールクス”、そして、その王によって、倒されたと」
「バー、ルクス? ・・・」
「我が主も、そして逢魔の王もこの存在を消そうと必死なのだ」
「創世の王、この存在こそ、―――貴様の力の大元だ」
突然の告白だった。南澤は思わず胸ぐらの手を離し、顔を下に向けた。
自身の持つ力、バールクス。それと同じ名を冠する“シンゲツバールクス”。脳の処理が追いつかなかったのだ。
「クォーツァー、それもまたシンゲツバールクスの率いた軍勢さ。君はその力を何かしらのことが原因で引き継いだのだろう」
「理由は分からんが・・・君は“選ばれたのさ”」
男は、笑って南澤を見た。邪悪のような笑みは、正に悪魔そのものだった。
「逢魔の王は・・・どこへ行ったんだ」
「さあな、保護してから1週間後でどこかに消えたからな。我々には分からん」
「まあだが、我々にも目的があるのさ。それは我が主を」
「――王とさせること」
「我が主が王となった暁には、世界は救われる」
男の顔は、悪魔のようなものではなくなり、南澤の顔を覗いた。
男は手に握っていた“ソレ”を南澤に見せた。
「それは・・・ライドウォッチ、なのか?」
「そうだ、これは“アナザーウォッチ”。我が主によって作られた力だ。俺の場合、これは“アナザー電王”となる」
「まあ、そのことはいい・・・」
男は、一瞬フラッとしながらも、後ろを振り向き、歩き出した。
「また、会おう。次は主の元でな・・・」
「2日後、俺はお前の元にまた現れるだろう」
その一言だけを残し、男はその場からいなくなっていた。
南澤は呆然としたまま、ただ目の前を見続けていた。何が起こっていたのかも忘れるくらいにまで、先程の話が衝撃だったのだろう。
「・・・」
南澤も、重い足取りでその場から離れていったのであった。
――黒い空間、そこに、1人の青年がいた。
「・・・」
「どうなされた、“テオス”よ」
その青年――テオスの前に、4つの青い火の玉が現れる。どうやら、青年の部下であるようだ。
「お前たちに、どうか頼みがあります」
「肉体をお前たちに授けます。そしてある者を、影から守ってください」
「誰を?」
「“南澤真”、彼を影から守ってあげてください」
「どうなら何かが、彼を目標に動き出しているようです」
次回、一気に物語が動きます