戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~   作:大同爽

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戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~、前回までの3つの出来事

1つ!立花響はノイズ出現の影響で親友小日向未来との約束を果たすことができず、怒りと悲しみの中ノイズと戦う。そんな中翼と合流したところで謎の乱入者、『ネフシュタンの鎧』を身に纏った少女と遭遇。彼女はノイズを操る謎の力を持っていた。

2つ!鎧の少女の圧倒的な力の前にシンフォギア最大の『絶唱』で力で対抗しようとする風鳴翼だったが、さらに乱入してきた鎧の少女の協力者、グリードのカザリと彼のヤミーによって阻まれる。そこにヤミー討伐のためにオーズも現れた。

そして3つ!ヤミーを追い詰めるが、翼を人質にされ、抑止されるオーズ。そんな中、カザリによってオーズの協力者が暴き出される。その人物の顔は二年前に消息不明となった翼の相棒、天羽奏に瓜二つであった。



Count the Medals!
現在、オーズの使えるメダルは――



009~顔とコンボと同行拒否~

「やってくれるじゃないか、カザリ」

 

 ゆっくりと顔を上げ、カザリを睨みつけるアンク。

 その顔は二年前に消息不明となった天羽奏その人だった。

 

「かな…で……!?」

 

 呆然と困惑しながら翼はその名をつぶやくが、それに対しアンクは答えない。むしろそんな翼の様子に面倒臭そうに眉を顰めている。

 アンクの浮かべるその表情は翼の知る奏とはかけ離れたものであり、その身に纏う雰囲気も全くの別人のようだった。しかし、別人と言うにはその顔はあまりにも天羽奏そのもの過ぎた。

 

「カザリ、テメェとことんねちっこいやり方しやがって」

 

「君がコソコソしてるからどうせろくなことはないと思ってね。邪魔させてもらったよ」

 

「ろくなことしねぇのはテメェもだろうが」

 

 肩を竦めるカザリにアンクはため息をつく。

 

「テメェのせいで予定が狂った。だから――」

 

 言いながらアンクは右腕を掲げる。その手には黄色のメダルが一枚握られていて

 

「っ!そのメダルは!」

 

「ああ、お察しの通りだ――おい、オーズ!」

 

「っ!」

 

 カザリの言葉に不敵に笑ったアンクはオーズに呼びかける。呼ばれたオーズは鎧の少女や猫ヤミーの攻撃をかいくぐりながらアンクを見る。

 

「メダル変えろ!これを使え!」

 

 そう言ってアンクは手に持っていたメダルを投げる。オーズはそれを高速で駆けてキャッチする。

 

「これっ!?」

 

「いいから使え!」

 

「っ!あぁ!わかった!」

 

 アンクの言葉に力強く頷いたオーズは傾けられていたオーズドライバーを戻し、一枚目の赤いメダルを抜き、そこに受け取った黄色のメダルを抑めオースキャナーを構えて読み取る。と――

 

≪ライオン!トラ!チーター! ラッタ!ラッター!ラトラーター!≫

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 オースキャナーが高らかに発すると同時にその身を変えていく。タカが翼を広げたような意匠の顔はまるでライオンのたてがみを思わせるものへと変わり、直後オーズが雄叫びを上げる。と、その身体がまるで太陽の様に黄金の輝きを発し、オーズを中心に熱波の衝撃波が広がる。

 

「がっ!?」

 

「ぐっ!」

 

 その衝撃波に鎧の少女とカザリが弾かれたように吹き飛ばされる。

 

「くっ!」

 

「っ!?」

 

 その衝撃波に翼も吹き飛ばされ、響を襲っていたノイズやその他の周りに蠢いていたノイズたちが一瞬で炭へと変わる。

 

「な、何あの姿!?」

 

「あ、あれは、まさか……!」

 

 その力に困惑する響に、ダメージに苦悶の表情を浮かべながら翼は呟く。

 

「く……へぇ、まさかここでコンボとはね!しかも、僕のメダルで!」

 

「てめぇには丁度いい仕返しだろ?オーズ!遠慮はいらねぇ!やっちまえ!」

 

「ああ!」

 

 ニッと笑ったアンクは叫ぶと、それにオーズは大きく頷く。

 

「行くぞ!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 気合の声とともに駆け出すオーズ。そのスピードは先ほどまでよりも一層に速く、眼にもとまらぬ速さで駆け抜け

 

「セイッ!」

 

 その手に構えたトラクローで猫ヤミーを切り裂く。猫ヤミーの身体から大量のコインが散らばる。

 

「てめぇの好きにさせるか!」

 

 追撃を掛けようとしたオーズに鎧の少女が鞭を振るう。が――

 

「っ!」

 

 その鞭をオーズは掴み

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 掴んだそのまま鎧の少女を引き寄せ

 

「セイヤァッ!」

 

「がはっ!」

 

 ブンブンとそのまま振り回し、少女を投げ飛ばす。

 少女の身は苦悶の声を漏らしながら地面を転がる。

 

「僕のメダル、返してもらうよ!」

 

「っ!」

 

 と、その隙をつく様にカザリが飛びかかる。が、オーズはそれを両腕のトラクローで受け止め、逆にカザリを蹴り飛ばす。

 

「ぐっ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 蹴り飛ばされたカザリは苦悶の声を漏らすが、オーズはさらに追撃を掛ける。

 オーズのトラクローとカザリの爪がぶつかり合う。どちらも強力で一進一退の攻防を繰り広げるが、微妙にオーズの方が優勢のようで少しずつオーズが押し始める。

 

「くっ!このっ!」

 

 焦ったカザリが大ぶりの一撃を放つがそれをオーズはその脚力で回避し両腕のトラクローで切り裂く。

 

「ぐっ!」

 

 オーズの一撃にカザリが地面を転がりながら倒れ伏す。その近くには猫ヤミーもいた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 カザリと猫ヤミーへとさらに追撃を仕掛けるオーズ。

 

「あたしを忘れんなぁ!」

 

「忘れてないよ!もちろんね!」

 

「っ!?」

 

 そんなオーズに鎧の少女は鞭を振るうが、オーズはそれを予測済み、むしろ待っていたとばかりに交わし、高速移動するその速度のままに反復横跳びの様に飛び退き方向転換し鎧の少女へと向かって行く。

 

「っ!」

 

 咄嗟に防御するために腕をクロスさせるが、オーズはその腕の上から殴る。その衝撃に鎧の少女は弾き飛ばされる。

 

「これで締めだ!」

 

 と、オーズはカザリと猫ヤミーに再び向き直り、オースキャナーを構え、再びオーズドライバーを読み込む。

 

≪スキャニングチャージ≫

 

 オースキャナーから高らかに音声が響き渡る。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 同時にオーズは駆け出す。オーズと、カザリと猫ヤミーとの間に三つの黄色の光輪が現れる。

 オーズはその脚力で全身から熱波を発しながら光輪へと向かって行く。

 一つ、また一つと光輪をくぐるたびにオーズの纏う熱波の勢いが増す。

 

「くっ!これはさすがにマズい!」

 

 目前へと迫るオーズにカザリはその脚力で跳び上がる。

 一瞬遅れてたどり着いたオーズは一瞬足を止め

 

「はぁぁぁぁぁっ!!セイヤァァァァァッ!!!!」

 

大きく広げたその両腕のトラクローで残っていた猫ヤミーをX字に切り裂く。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

 

 切り裂かれた猫ヤミーは断末魔の声とともに大量のメダルとなって爆発する。

 

「チッ……僕のヤミーが……!」

 

 寸でのところで躱したカザリは舌打ちをする。

 

「で?どうする?まだやるか?」

 

 そんなカザリをあざ笑うようにオーズの隣へと歩み寄ってきたアンクは訊く。

 

「………これは分が悪そうだ、今日のところは退散させてもらおうかな」

 

「お、おい!勝手なこと言うな!」

 

 肩を竦めるカザリに鎧の少女が叫ぶ。

 

「てめぇはしっぽ巻いて逃げりゃいい!あたしはまだ負けてねぇ!」

 

「ふ~ん、ま、好きにしたらいいさ。でも――」

 

 肩を竦めながらそのまま頭の後ろで手を組んだカザリは

 

「ここで君が引かなかったら、あいつはどう思うかな?」

 

「っ!」

 

「あぁ?」

 

「あいつ?」

 

 そう言ったカザリの言葉に鎧の少女は息を飲み、アンクとオーズは怪訝そうな声を漏らす。

 

「………チッ、覚えてやがれオーズ!この借りは必ず熨斗付けて返してやるからな!」

 

「僕のメダル、預けるよ」

 

 二人の疑問に答えないまま言うと、カザリがその爪で斬撃を放つ。それによって舞い上がった土煙にオーズとアンクが顔を背ける。その間に土煙に紛れてカザリと鎧の少女は姿を消していた。

 

「逃げたか……まあいい。行くぞ」

 

「あ、ああ……」

 

「あぁ?どうした?」

 

 肩を竦めて言うアンクに対し何か引っかかった様子のオーズ。そんなオーズにアンクが怪訝そうに訊く。

 

「いや……なんて言うか、あの鎧の子、どこかで……」

 

「あぁ?なんだそりゃ?」

 

「うん、俺もよくわからないんだけど、どっかで会ったことがあったのかな?」

 

「知るか。んなことよりさっさとずらかる――」

 

「待って!」

 

 と、この場を去ろうとする二人に後ろから声がかかる。

 見ると、鎧の少女やカザリから受けたダメージの残る身体に鞭打って剣のアームドギアを杖の様にその身を支えて立ち上がった翼がいた。

 

「奏…なの……?」

 

「「……………」」

 

 翼が困惑した表情で、震える声で訊く言葉に、その仮面で表情のわからないオーズは、しかし、どこか物憂げに、対してアンクは面倒臭そうにため息をつき

 

「行くぞ」

 

「え?いやでも彼女早く治療しないと――」

 

「じゃあどうする?あの女助けてそのまま俺ともども二課のやつらに拘束されるか?」

 

「それは……」

 

「俺たちが助けなくても二課のやつらがどうせすぐに来る。グズグズしてると結局捕まるぞ」

 

「で、でも!」

 

 翼の言葉に答えず去って行こうとするアンクだったが、オーズは翼の様態が気になるようで食い下がる。

 

「くっ!」

 

 そんな中限界だったのか、翼は倒れ伏す。

 

「っ!」

 

「翼さん!」

 

 そんな翼に響は駆け寄る。

 

「翼さん!翼さん!!」

 

「かな…で……ガフッ!」

 

 倒れたままアンクとオーズに手を伸ばす翼の口から咳とともに血が溢れる。

 

「っ!」

 

「おい」

 

 オーズは一瞬翼に駆け寄りそうになるが、アンクがギロリと睨む。

 

「でも、アンク!」

 

「いいから行くぞ」

 

「でもこの子を見捨てることは俺には――」

 

 有無を言わせぬアンクの雰囲気に納得できない様子でオーズが食い下がる。と、そんな二組の間に一台の車が割って入る。

 

「無事か、翼!?」

 

 車の運転席から飛び出したのは弦十郎だった。遅れて助手席から了子が出てくる。

 

「叔父…様……」

 

 そんな乱入者に翼は息も絶え絶えの様子で言い

 

「っ!オーズ!それに君は――」

 

「奏ちゃん!?」

 

 反対側にいる人物に弦十郎と了子が驚愕の声を漏らす。

 

「チッ!てめぇがモタモタしてるせいで増援が来ちまったじゃねぇか!」

 

「あ、いや……その……」

 

 叫んでオーズの頭を右腕で叩くアンク。その腕は先程から同様に異形のままだ。

 

「君は、君たちは何者だ?いったい何が目的――」

 

「おい、俺たちばかりにかまけてていいのか?」

 

 口論する二人に訊く弦十郎だったが、そんな弦十郎に異形の右腕を向けてアンクが言う。

 

「その女、ほっとくと死ぬぞ?」

 

「っ!翼っ!」

 

 アンクの言葉に慌てて弦十郎は翼に駆け寄る。

 

「おら、行くぞ。あの女はもうあいつらに任せときゃ大丈夫だろうよ」

 

「あ、ああ……」

 

 それを尻目に踵を返すアンク。オーズもその言葉に頷きながら

 

「っ!」

 

 何か思うことがあったようで振り返り

 

「あ、あの!」

 

『っ!』

 

 オーズに声を掛けられたことに響、弦十郎、了子の三人が少し動揺する。

 

「あの……彼女のことお願いします!彼女、俺がヤミーと戦えるようにカザリ相手に時間稼ぎしてくれて、そのせいでこんな大怪我負って……!本当にすみません!」

 

「あ、ああ。それはもちろん全力を尽くすが……」

 

「ありがとうございます!それじゃあ!」

 

「ま、待て!君たちには聞きたいことが山ほどある!我々に同行を――」

 

「すみません、今はまだそれはできません。失礼します」

 

 お礼を言うオーズだったが、弦十郎の言葉を遮って同行することを拒否し、オーズはアンクを追って歩き始める。

 

「あ、オーズさん待って――」

 

 オーズを引き留めようと声を掛ける響だったが、オーズは振り返ることなくそのままアンクに追いつく。嫌そうな顔でその様子を見ていたものの何も言わないアンクをお姫様抱っこの体勢で抱え上げ、オーズは振り返ることなくそのまま去って行った。

 その後弦十郎たちによって手配された救護班がすぐさまやって来て、翼は急ぎ救急で運ばれていったのだった。その様子を響はただ見送ることしかできなかった。

 

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