戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~   作:大同爽

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戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~、前回までの3つの出来事

1つ!鴻上を監視していたアンクは近々大量のセルメダルと自身のコアが取引されることを知り、その強奪を計画。火野映治とオーズの力をその計画に組み込もうとする。

2つ!強奪を阻止しようとするも、アンクを止めることは難しいと悟った映治はなんとか落としどころを見つけようと模索する。

そして3つ!鎧の少女クリスとグリードのカザリと通じる謎の女性の存在。彼女たちも輸送への襲撃を計画するのだった。



Count the Medals!
現在、オーズの使えるメダルは――






012~輸送と成長と争奪戦~

 

「それでは、これが約束のセルメダル5000枚だ」

 

 早朝の鴻上ファウンデーションの地下駐車場にて黒いライダースーツ姿の男の言葉に目の前の大きなバンの後ろの扉を開けて中を確認する了子と響。

 

「はい、確かに♪」

 

「はぁ~、すごいですね。これ全部メダル入ってるんですか」

 

 二人の視線の先にはバンの中に並ぶアタッシュケースの山。その一つ一つにセルメダルがぎっしりと収まっている。

 

 

 

 先日、これまで「特異災害対策機動部二課」に何かと便宜を図っていてくれた広木防衛大臣が殺害されたという知らせが舞い込んできた。

 複数の革命グループから犯行声明が上がる中、直前に会っていた了子は広木防衛大臣からの受け取った政府からの機密指令を持ち帰った。

 その内容は『特異災害対策機動部二課の本部最奥区画にて厳重保管されているサクリストD「デュランダル」と近々鴻上ファウンデーションから提供される5000枚のセルメダルと一枚のコアメダルを日本政府所有の施設へと移送し、その解析を行う』というモノだった。

 そのために早朝5時より輸送することとなった。輸送の車を運転するのは櫻井了子、そして、その護衛として立花響が、またそのさらに護衛として複数の人員が同行する。

当日の作戦時間中は輸送ルートとなる公道は防衛大臣殺害犯の検挙のためという名目で検問を配備。政府所有の施設までそこを進む――了子曰く「天下の往来ひとり占め作戦」を行うこととなった。

 

 

 

そして今、二人はここまで乗ってきた了子のピンクの軽自動車からメダル輸送用の大きな黒いバンタイプの車に『デュランダル』積み替え、乗り換える。

 

「そして、これが約束のコアメダルだ」

 

 男は二人に向けて小さな白い箱を渡す。

 中を確認すると、そこには一枚の紅いメダルが納まっていた。

 

「これ……鳥?孔雀?」

 

 その模様に響が首を傾げる。

 

「もしかして、これが噂の鳥系グリードのコアメダル!?」

 

「そうらしいわね」

 

 驚愕する響に了子も興味深そうに覗き込む。

 

「ありがとうございます。会長さんによろしくお伝えください」

 

「ああ。健闘を祈る」

 

 響の言葉に男が頷いたのを見ながら響と了子は車に乗り込む。

 二人の乗り込んだ車を中心に十字に囲うように前方後方左右に一台ずつ、計四台の車が護衛としてつく。その上空には弦十郎の乗るヘリが飛ぶ。

 そのまま五台の車がバイパスを走る。

 周りを警戒したように視線を巡らせる。と――

 

「っ!?」

 

 進行方向の道路に亀裂が走り崩落を起こす。

 

「了子さん!」

 

 響の叫びに答えず了子はハンドルを切る。

 了子たちの車が寸前で崩落した個所を避ける中護衛の車が一台転落する。

 

「しっかり捕まってて!」

 

 転落していく車を呆然と見る響に了子が進行方向を見据えたまま言う。

 

「え……?」

 

「私のドラテクは凶暴よぉ!」

 

 速度を上げながら進みインターチェンジで降りる。

 

『敵襲だ!まだ確認できていないが恐らくノイズだろう!』

 

 通信機の向こうから弦十郎の声が聞こえる。

 

「この展開!予想より早いかも!」

 

 焦りを滲ませる声で了子が言う。

 と、街中を走っていると突如道路の真ん中のマンホールが水柱とともに吹き飛ぶ。

 寸でのところで響達の車は通り過ぎるがその後方を走っていた車が吹き飛ばされる。

 

「っ!」

 

『下水道だ!ノイズは下水道を進んで攻撃してきている!』

 

 弦十郎の言葉の直後再びマンホールが飛ぶ。今度は二人の乗る車の目の前の車が吹き飛ぶ。それは弧を描いて響達へと振ってくる。

 

「ぶっ!ぶつかるぅ!?」

 

「っ!」

 

 絶叫する響の言葉に答えず再びハンドルを切る了子。が、その先に道に積まれたゴミの山がありそれお蹴散らしながら車は進む。

 

「弦十郎君!?ちょっとヤバいんじゃなぁい!?この先の薬品工場で爆発でも起きたら…『デュランダル』は!」

 

『わかってる!』

 

 了子の言葉に上空からヘリで見下ろす弦十郎は答える。

 

『さっきから護衛車を的確に狙い撃ちしてくるのは、ノイズが「デュランダル」損壊させないように制御されていると見える!』

 

「チッ」

 

 弦十郎の言葉に了子は人知れず舌打ちをする。

 

『狙いが「デュランダル」の確保ならあえて危険な地域に滑り込み、攻め手を封じるって寸法だ!』

 

「勝算は!?」

 

『思い付きを数字で語れるものかよっ!』

 

 弦十郎の叫びに頷いた了子は車のギアを切り替える。

 そのままスピードを上げ、進行方向にそびえる薬品工場へと向かう。

 薬品工場に入るその直前、マンホールが三度はじけ飛び、今度はその穴からナメクジのような深緑のノイズが飛び出す。

 そのノイズたちは響たちの車の前方を走る護衛車を襲う。

 寸でのところで車に乗っていた面々は飛び出すが、そのまま車は制御を失い目の前の紺店へとぶつかり爆発し、その炎にノイズたちが怯んだような様子を見せる。

 

「狙い通りです!」

 

 その様子に響が嬉しそうに言う。が、その爆発で飛んだ瓦礫がぶつかり響達の車が横転、ひっくり返って地面をすべるように数度回転してやっとのことで止まる。

 

「うぅ……」

 

 ひっくり返った車からなんとかはい出した響と了子だったが、視線を上げれば周りはノイズに囲まれていた。

 慌てて響はコアメダルの入った小包をポケットにねじ込み、後部から『デュランダル』の入ったアタッシュケースを取り出し抱える。

 

「りょうこさん、これ、重いぃ!」

 

「だったら、いっそここに置いて私たちは逃げましょう?」

 

「いいねそれ。ついでにそのポケットのも置いてってくれる?」

 

 と、冗談めかしたように言う了子の言葉に賛同する声が聞こえる。

 そこにはノイズが道を譲るように開けたところから歩いてくるグリード、カザリの姿があった。

 

「だ、ダメです!そんなのできません!」

 

「そう……まあそりゃそうだよね」

 

 響の言葉にカザリは特に残念そうにも思えない口調で肩を竦め

 

「じゃ、予定通り奪うことにするよ」

 

 そう言ったカザリの言葉の直後、ノイズたちはその身そのものを弾丸のように変化させ二人を狙って飛んでくる。

 

「っ!」

 

 慌てて飛び退く二人の後方で車に突き刺さったノイズたちによって大爆発が起きる。

 その爆風で響は弾き飛ばされ持っていたアタッシュケースが転がる。

 そんな響達にノイズが再び襲い掛かる。が、それに向けて仁王立ちした了子が右手をかざす。

 と、了子の目の前に半透明な紫色の障壁のようなものが広がり、弾丸のように飛んできたノイズを弾く。

 その衝撃に眼鏡が飛び、纏められていた了子の髪がほどけ、長い茶髪が風にたなびく。

 

「了子…さん……?」

 

 その様子に呆然と呟く響。

 

「しょうがないわね」

 

 言いながら了子は傍らの響へ視線を向ける。

 

「あなたは、あなたのやりたいことを、やりたいようにやりなさい!」

 

「っ!」

 

 了子の言葉に息を飲んだ響は立ち上がり

 

「私…歌います!」

 

 と、宣言し大きく息を吸い込むと

 

「――Balwisyall nescell gungnir tron」

 

 響の聖詠があたりに美しく響き渡る。

 と、響の身体が光りに包まれ、その身をシンフォギアが包む。

 

「っ!」

 

 力強い歌を口遊みながら響は身構える。飛んでくるノイズたちを避け、拳で殴り炭へと変えながら駆ける響。しかし、直後地面のくぼみにブーツのヒールが引っ掛かり転ぶ。

 

「っ!ヒールが邪魔だ!!」

 

 叫びながら地面を強く踏みしめ両脚のヒールをへし折る。

 そのまままるで中国拳法のような構えを取りながら深く息を整え歌う響。

 この数日、自身の無力を痛感し、映治と親友である未来の言葉に覚悟を決めた響は、弦十郎に教えを請うた。

弦十郎によって厳しくもどこかで見たことのある修行の数々を乗り越え、数々のアクション映画を見て戦闘シーンを見て模倣した響は自分の中で戦闘スタイルを編み上げつつあった。

 構える響に一匹のノイズが飛びかかる。が、それを響は力強く地面を踏みしめ拳を突き出す。

 響の拳を受けたノイズはその衝撃にはじけ飛びながら炭と化し霧散する。

 その光景に後に続く様に飛びかかってくるノイズたちを拳を振るい、蹴り上げ、肘打ちを叩き込み、次々と炭へと変えていく。

 数日前とは別人となった響。

 了子はその様子に呆然と眺めている。と、了子の背後で電子音とともに『デュランダル』の入っていたアタッシュケースの隙間から蒸気が上がる。

 

「この反応、まさかっ!?」

 

 驚愕する了子の目の前で響はノイズたちを蹴散らしていく。

 

「っ!?」

 

 ぞわりと感じた嫌な予感に咄嗟に響は飛び退く。と、一瞬前に響がいたところに背後から現れたカザリの拳が叩き込まれ地面が抉れる。

 

「へぇ…この数日でこんなに動けるようになるなんて、人間にしてはやるじゃん。でも、それはあくまで人間としては、だよ。僕らグリードにはそれじゃあ遠く及ばない」

 

「くっ!」

 

「さ、君の持ってるコアメダル、渡してもらおうか!」

 

 唇を噛む響にカザリは身構え再び飛びかかり

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 突如響き渡った声とともに高速で走ってきたバイクがカザリを襲う。

 一瞬踏みとどまり飛び退いたカザリを尻目にバイクはドリフトをしながら停車する。

 バイクに跨ったままカザリを警戒したように見るのは

 

「お、オーズさん!」

 

 頭はライオンのたてがみを思わせる形状に、腕にはトラの詰めのような籠手、脚はチーターのような模様のある姿で現れたオーズ。猫系のメダル、ライオン・トラ・チーターによるコンボ『ラトラータ』である。

 

「へぇ、今日は最初からその姿なんだ。僕にそのメダル返しに来てくれたのかな?」

 

「このメダルを渡すとあいつの機嫌が悪くなるから渡すわけにはいかないんだ。あと彼女の持ってるメダルもね。悪いけど、ここは手を引いてくれないか?」

 

「それは無理な相談だね」

 

「だと思ったよ」

 

 カザリの言葉にオーズはため息をつく。

 

「で?どうするんだい?戦う?」

 

 そんなオーズにカザリは問う。

 

「コンボの力は確かに強力だ。今の不完全な僕らでは苦戦を強いられるくらいに。でもそれだけの大きな力をそう何度も長い時間使えるのかな?この二年で君はオーズとして成長したかもしれないが、そんな君でも、いったいどれほどその負荷に耐えられるのかな?」

 

「………確かにお前の言う通りだ」

 

 カザリの言葉にオーズは頷く。

 

「長引けば長引くほど俺が不利かもしれない。でも、俺にも引けない理由がある。だから、出し惜しみはなしで行く!」

 

 そう言ってオーズは一本の缶を取り出す。

 

「それは……」

 

 警戒したように睨むカザリを尻目にオーズはその黄色の模様の描かれた缶のプルタブを開けて放る。

 と、放った缶はバイクの全面の円形の装飾にコツンとぶつかり地面へと転がっていく。

 と、円形の装飾が真ん中で割れて開き、前輪も同様に左右に開きながら後輪の脇に並ぶように固定される。

 そして、バイクの前で止まった缶は見る間に大きくなり、転がりながら前輪のあった位置に収まる。その缶から前足のようなものがせり出し、缶の側面から開いていた円形の装飾に収まるようにパーツがせり上がる。

 缶とバイクが合体したそれはもはや別のモノ、まるで大きなトラを思わせる見た目に変化していた。

 

 ギャオォォォォォ!

 

 大きな雄叫びを上げるバイクのハンドルを握りながら『メダジャリバー』を構えたオーズはカザリを見据え

 

「行くぞ、カザリ!」

 

 叫びながらハンドルを切る。と、トラバイクが雄叫びを上げながら急発進する。

 

「くっ!」

 

 バイクとオーズの攻撃を避けるカザリ。その背後にいたノイズたちがトラバイクの突進に炭へと変わる。

 そのままドリフトしながらあたりを囲うノイズを蹴散らしながら逃げるカザリを追うオーズ。

 

「カザリたちの相手は任せて!君はその人を連れて逃げるんだ!」

 

「は、はい!」

 

 オーズの言葉に響は頷き、踵を返そうとした。が――

 

「私もいるんだよぉ!」

 

 叫び声が聞こえると同時にピンクのとげとげとした鋭い鞭が響へと飛来する。

 それを飛び退いて避ける響だったが

 

「今日こそはものにしてやる!!」

 

 そう言ってどこからともなく飛び込んできた鎧の少女――クリスの蹴りが響の喉元に突き刺さるように叩き込まれ吹き飛ばされる。

 その衝撃で響の元からポロリと何かが転がり落ちる。

 キンッと小さく澄んだ金属音を上げながら転がっていくそれは紅いコアメダルで――

 

「俺のメダル!」

 

 と、建物の陰から一人の人物が躍り出る。

 それは長いふんわりとしたボリュームのある金髪を携えた天羽奏そっくりの人物、アンクと呼ばれている少女だった。

 アンクは地面を跳ねながら転がるその赤いメダルに手を伸ばし

 

「っ!」

 

 右手が寸でのところで空を切る。が、そのまま今度は左手を伸ばし

 

「よっしゃぁ!」

 

 アンクの伸ばした左手の中に紅いメダルが納まる。

 嬉し気にそのメダルを掲げる様に顔の前まで上げたアンク。

 そんな中その様子を見ていた了子の背後でアタッシュケースが突如内側から爆ぜる様に壊れ、中から何かが飛び出す。

 それは光り輝きながら空中で制止する。

 

「っ!?」

 

「あれって……?」

 

「あぁん?」

 

 その光景に一瞬戦闘を繰り広げていたカザリとオーズ、加えて興奮した様子だったアンクが困惑したようにそれを見上げた。

 

「覚醒……!?起動……!?」

 

 同じく驚いた様子で見上げる了子。その場の全員の視線が集まる中

 

「こいつが『デュランダル』……!」

 

 最初に動いたのはクリスだった。

 大きく跳躍したクリスは空中に制止するそれ――『デュランダル』へ手を伸ばし

 

「たぁっ!」

 

 それを阻止するように響が背後からクリスに身体ごとぶつかる。

 

「渡すものかぁぁぁぁぁ!!」

 

 そのまま勢いで『デュランダル』へ手を伸ばし、その柄を掴む。と――

 

キィィィィン!!

 

 澄んだ、しかし、確かに響き渡った音。

 

『っ!?』

 

 その場の全員が一瞬寒気を感じるほどの圧がその音と共に『デュランダル』から発せられ、その輝きが見る間に増していく。

 その『デュランダル』を抱えたまま地面に降り立った響は――

 

「うぅぅぅぅうぅぅぅぅうぅぅ……!!」

 

 低くまるで獣のような唸る声を漏らしながらまるで何かを抑え込もうとするように歯を食いしばる。

 しかし、そんな響と『デュランダル』から眩い光が溢れ出す。

 それはまるで響が初めて『シンフォギア』を起動したときのような、しかし、その何倍も眩い光の柱が天へと昇っていく。

 全員の驚愕の視線の集まる中心で響は天へと掲げる様に『デュランダル』を構える。

 と、一層眩く輝いた『デュランダル』は一瞬で欠けていたその切っ先を再生させ、石のように灰色だったその身を黄金色に変える。

 

「うぅぅぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 低く獣のようなうなりをあげ、理性の飛んだ淀んだどす黒い感情の渦巻く視線で響はただ虚空を見る。

 

「こいつ、何をしやがった……!?」

 

 困惑しながら呟いたクリスはそっと視線を外し別の方向へ向ける。

 そこには恍惚とした表情でその光景を見る了子の姿があり

 

「くっ!そんな力を見せびらかすなぁぁぁぁ!!!」

 

 叫びながら響へと杖を向け、光弾を放つ。

 その光弾はノイズとなり響へと向き

 

「うぅぅぅっ!」

 

 響はそれに反応するように視線をノイズへ、さらにその先のクリスへと向ける。

 

「っ!?」

 

 その言いようもない圧にクリスは息を飲み数歩後退る。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 雄叫びを上げながらその輝く『デュランダル』を振りかぶる。その動きに合わせて空に立ち昇る光も動き、そのまま響はそれをノイズへ、さらにその先のクリスへと向けて振り下ろす。

 

「ヒッ!?」

 

 目前へと迫る圧倒的な力の奔流の前に息を飲むように悲鳴を漏らしたクリスは逃げる様に飛び退く。

 そのまま響の振り下ろしたそれはノイズを一瞬で消し飛ばし、その延長にあった塔のような建物を破壊しながら爆発を巻き起こし

 

「こりゃヤバそうだ」

 

 その様子にカザリは逃げ

 

「っ!」

 

 その衝撃にアンクは顔を守るように両手を掲げ

 

「アンクゥゥゥゥ!!」

 

 そんなアンクにトラバイクで駆けるオーズは手を伸ばす。

 

「っ!」

 

 その伸ばされた手をアンクは掴む。その直後――

 

 ズドォォォォォォン!!!!

 

 大きな爆発が辺りを包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――せぇい!!」

 

 濛々と煙の上がる中大きな瓦礫を押しのけながらオーズが姿を現す。

 

「これ……」

 

 瓦礫の中から外に出たオーズの目に映るのは先程までと一変した光景。あちこちで煙を上げ、あたり一面に瓦礫の散らばる惨状だった。

 

「っ!っ!」

 

 その光景に諤々と震えるオーズだったが、そんなオーズの背後で

 

「っ!無い!!無いぞ!!!」

 

 突如声が上がる。

 

「っ!?ど、どうしたんだよ!?」

 

 我に返ったオーズは慌てて振り返るとそこでは血相を変えて慌てふためいた様子で瓦礫をひっくり返すアンクの姿があった。

 

「どうした?何が無いんだよ!?」

 

 普段の冷静な様子から打って変わって我を忘れるアンクの様子に困惑しながら訊く。

 

「メダルが!メダルがねぇ!!」

 

「は?メダルってどの?」

 

「俺のだよ!」

 

 オーズの問いにアンクは睨みつけるように顔を上げて叫ぶ。

 

「確かに!確かにこの手に掴んだんだ!!なのに!!!」

 

「えぇ!!?」

 

 アンクの言葉にオーズは驚愕の声を上げる。

 

「ま、まさかさっきのあの爆発で落としたんじゃ……!」

 

「突っ立ってないでテメェも探せ!」

 

「お、おう!」

 

 アンクの剣幕に慌ててオーズも近くの瓦礫をひっくり返し探し始める。が――

 

「っ!――まずいぞアンク!『二課』の人たちが来る!急いで逃げないと!」

 

「メダル!俺のメダルが!!」

 

 オーズは慌てて言うが、アンクにはその言葉は耳に届かない。

 

「何やってんだよ!まだ『二課』に拘束されるわけにはいかないんだろ!?すぐ逃げないと!!」

 

「うるせぇ!!ここに俺のメダルがあるはずなんだ!!諦められるか!!」

 

 瓦礫の中からバイクを起こしたオーズの言葉に、アンクは叫び返す。

 

「俺の!!俺のコアメダル!!!」

 

「あぁ、もう!!」

 

 我を忘れて這い蹲って探し回るアンクにオーズは頭をがりがりと掻き

 

「ほら行くぞ!とりあえず今はここから離れないと!!」

 

「ッ!テメェふざけんな!!離しやがれ!!」

 

 バイクに跨ったオーズはバイクを操作しそのトラの顔のような全面部分でアンクを加え上げる。

 暴れるアンクだったが強靭なバイクの力に振りほどくことができない。

 

「ふざけんな!!やっと!!やっと見つけた俺のコアなんだぞ!!離せ!!離せぇ!!」

 

 藻掻きながら叫ぶアンクを連れてオーズはバイクを走らせる。

 

「離せぇ!!!俺の!!!俺のコア!!!くそぉ!!!ちきしょうぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

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