新年一発目の「戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~」です!
今年もよろしくお願いします!
さてさて、そんなわけで――
戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~、前回までの3つの出来事
1つ!『デュランダル』と5000枚のセルメダルと一枚のコアメダルを輸送する特異災害対策機動部二課。しかし、その輸送中に大量のノイズと鎧の少女、グリードのカザリの襲撃を受ける。
2つ!襲撃を掻い潜る響達の元にオーズも現れ事態は混沌を極める中、アンクはついに輸送途中だった自身のコアメダルを手にする。
そして3つ!乱戦の中響の歌で起動した『デュランダル』。それを手にした響はその圧倒的な力の前に暴走。暴走状態で放たれた響の一撃にあたり一面は瓦礫の山となり、そのどさくさでアンクは掴んだはずの自身のコアメダルを紛失してしまうのだった。
Count the Medals!
現在、オーズの使えるメダルは――
あの襲撃の一件から三日が経った。
あの一件は世間的には工場内での不慮のガス爆発と発表された。周辺が工場地帯だったのもあり被害者はゼロだったが、あの辺り一帯は瓦礫の山となった。この三日間日本政府による瓦礫の撤去作業が行われている。
俺もアンクも特に大きなケガはなく、次の日には問題なく過ごせるようになっていた。でも、肉体的には回復したが、精神面ではいまだ立ち直れていないらしい。
この三日間アンクは毎日朝早くから夜遅くまであの日失くしたコアメダルを探し続けている。あの日から日の出前には家を出て行き、日中の瓦礫撤収作業が行われている間は近くで監視し、作業員が来る前と撤収してからは夜中近くまでメダルを探し続けている。
俺もリディアンでの用務員のバイトが終われば現場に向かい、アンクを手伝っている。
だが、この三日で作業も進みかなり瓦礫の整理も行われているが、今だメダルは見つからない。作業の進みも早く、今日明日には瓦礫の残りもすべて撤去されるだろう。
まだ瓦礫の下にあるのか、はたまたあの日誰かが持ち去ったのか。少なくともコアメダルが破壊されればアンクにもわかるらしいのであの一撃で破壊された、ということはないらしい。
そんなわけでこの三日間アンクは憑りつかれたように家と現場とを行ったり来たりしている。あいつの〝身体〟にとってもこの生活はよくない。俺もある程度の時間でその都度斬り上げさせている。
そんなわけで、今日も俺はリディアンでに仕事を終え、アンクと合流するべく、そしてその前にアンクのための食糧を手に入れようと商店街に寄ったのだが
「あ……」
「ん?あぁ、未来ちゃん」
商店街の半ばで小日向未来ちゃんに出会った。なんだか以前会ったときより悲し気で元気がないように思う。
「映治さんは買い物ですか?」
「うん、まあね」
「おうち、近所なんですか?」
「うん。すぐそこのマンションなんだ。未来ちゃんは?確か響ちゃんと学生寮に住んでるんだよね?てことは未来ちゃんも買い物かな?」
「ええ…まあ……」
俺の問いに未来ちゃんは曖昧に頷く。
「……何かあった?」
「え?」
「いや、前に会ったときより元気ないから」
「……………」
「響ちゃんとなんかあった?」
「……なんでそう思うんですか?」
俺の問いに未来ちゃんは訊く。
「なんとなく、かな。いつも仲良しの二人が一緒にいなくて、未来ちゃんが元気なく悩んでるみたいだから。それに前に響ちゃんもなんか悩んでるみたいだったし」
「そうですか……」
俺の答えに少し考えこんだ様子の未来ちゃんは
「映治さん、今からって時間ありますか?」
意を決した様子で言った。
○
「いらっしゃい」
未来ちゃんの後に着いて行くと商店街の中にある一件のお好み焼き屋に着いた。お店の前には「ふらわー」という看板が掲げられている。
未来ちゃんが扉を開けて入ると店員の女性が笑顔で迎え入れる。
「こんにちは」
「おや?いつもは人の三倍は食べるあの子は一緒じゃないの?」
「今日はちょっといろいろあって……」
恐らく響ちゃんのことを言っているのであろう女性の言葉に未来ちゃん答える。
「そうかい……。そっちのお兄さんははじめまして、ね」
「はい。はじめまして。火野映治です」
「いらっしゃい。私のことは『おばちゃん』でいいよ。みんなそう呼ぶしね。さ、どうぞ、座ってちょうだい」
女性――おばちゃんに促され、俺と未来ちゃんはカウンターに座る。
そのまま俺たちはお好み焼きを注文する。
「今日はあの子は何か用事?」
「そんなところです……」
「じゃあ、今日はおばちゃんがあの子の分まで食べるとしようかねぇ」
未来ちゃんの言葉におばちゃんはおどけて言う。
「食べなくていいから焼いてください」
「あら。アハハハハ~」
未来ちゃんの返しに照れたように笑うおばちゃん。
「……お腹空いてるんです。今日はおばちゃんのお好み焼きを食べたくて、朝から何も食べてないから……」
うつむいたまま未来ちゃんが言う。
「よくないよ。お腹空いたまま考え事すると悪い方悪い方に考えちゃうよ」
そんな未来ちゃんに俺は優しく微笑みながら言う。
「……そうかもしれません。最近、響がずっと何かしてるみたいで、でも、何も相談してくれなくて。私が勝手に思い込んでるだけなのかも。ちゃんと話してみれば……」
「うん、それがいいよ。まずはお腹いっぱい食べて見方を変えてごらん。ちょっと考え方が変わるだけで実は何でもないことかもしれない」
「はい。そうします」
俺の言葉に少し元気の浮かんだ笑顔で頷く未来ちゃんに俺も笑顔で頷く。
「ふふ。映治君、いいこと言うね。お兄さんの言う通りよ。何かあったらいつでもおいで。おばちゃん、腕を振るって美味しいお好み焼き焼いてあげるから」
「はい。ありがとう、おばちゃん、映治さん」
笑顔で言う未来ちゃんに頷く俺とおばちゃん。
笑顔を浮かべながら、俺は考える。
恐らく響ちゃんが未来ちゃんに隠れてやっていることというのは『シンフォギア』関連の事だろう。あれは国家機密とか絡むからおいそれと言うことは出来ない。下手をすれば未来ちゃんを巻き込む可能性もある。だから響ちゃんもこそこそと動くしかなかったが、それが逆に未来ちゃんには不安だったのだろう。
でも、きっとこの二人なら大丈夫だ。ちゃんと話し合えば、きっと。
○
それから小一時間ほど「ふらわー」でお好み焼きを堪能した未来ちゃんは会ったときよりも数倍元気の浮かんだ顔で帰って行った。
俺もそんな未来ちゃんを見送り、お好み焼きをテイクアウトしてアンクの元に向かう。
俺もそろそろ一度アンクと話してみよう。このままじゃよくないだろう。
と、お好み焼き片手に歩いていた俺は
ズドォン!
「っ!」
響き渡った大きな音に慌てて視線を向ける。
土煙の上がっているそこは、市街地のはずれの森と自然公園の方向で――
「あっちは確か、未来ちゃんが!」
俺は慌てて駆け出そうとする。そんな俺の前に
「っ!」
一台のバイクが止まる。
バイクに乗っていた主がヘルメットを取って俺を見る。
「アンク!?」
「ちょうどいいところにいたな」
「お前今日は探し物はもういいのか?――もしかして!見つかったのか!?」
「いや……」
俺の言葉にアンクは苦渋の表情で顔を顰める。
「つい今しがた最後の瓦礫が撤去されて作業員どもが撤収していった。あらかた探したが、メダルは無かった」
「え……それって……」
「あそこに無かったってことは、あの時もう既に誰かが持ち去ったんだろうなぁ――チッ!」
アンクは憎々し気に舌打ちをしてバイクのタンクを叩く。
「あの場にいたのは俺たち以外には『特機部二』のやつら、それにカザリとあの鎧のガキだけだ。つまり――」
「そのどちらかが回収した可能性が高いってことか?」
「ああ」
アンクは頷き、わきからタブレットを取り出し操作し
「見ろ」
その画面を俺に見せてくる。そこには自然公園の森の中で戦う響ちゃんとあの鎧の少女の姿が映っている。
「このタイミングで二組とも揃ってんのは好都合だ。今から行って確かめる。お前も来い」
「確かめるって、響ちゃんたちはともかくあの鎧の子が素直に教えてくれるのか?」
「まあ十中八九言わねぇだろうな」
「だったら――」
「だからお前も行くんだろうが。聞き出すためにまずは無力化する。ほら」
言いながらアンクは俺に向けて三枚のメダルを差し出す。
「無力化って…俺にあの子たちと戦えって言うのかよ!?」
「嫌だって言うなら無理強いはしねぇ。俺がやるだけだ。だが、俺は俺のものを盗む泥棒に優しくしてやるつもりはねぇ。相手がガキでもな」
「で、でも今のお前じゃあの二人を相手にするのは……」
「ああ。だからこの〝身体〟にも配慮する余裕はねぇかもなぁ。下手すりゃ大ケガを負うかもしれねぇ……」
「っ!お前!約束忘れたわけじゃないよな!?その〝身体〟を雑に扱わないって!」
「忘れたわけじゃねぇさ。ただ、お前が手伝わないならそうなるのも仕方が無いって話だ」
「くっ!」
「さ?どうすんだ?俺はどっちでもいいぜ?」
「――あぁもうわかったよ!その代わり手荒なのは無しだ!なんとか取り押さえて話を聞くだけ!」
「ああ、それでいい」
頭をガシガシと掻きながらアンクの差し出すメダルを受け取る。そんな俺にアンクは満足そうに笑う。
「なんか全部お前のいいように手のひらの上で転がされてる気がする……」
「はっ!いまさら何言ってんだ?いいか、よく考えろ?お前は戦えるがバカだ。俺という頭が無きゃお前だけじゃやっていけねぇ。鵜飼いってのは鵜じゃなくて飼ってる方が偉いんだよ」
「俺は鵜じゃねぇよ!だいたい鵜は鳥なんだからどっちかというとお前の方じゃねぇか……」
「ぐちぐちうるせぇな。とっとと行けよ。でねぇとあのガキどもで潰し合っちまうぞ」
「はいはい、わかったよ!」
言いながら俺は取り出した『オーズドライバー』を腰に当て、それに受け取った三枚のメダルを収める。
「変身!」
掛け声とともに『オースキャナー』で傾けたベルトに沿わせて読み取らせる。と――
≪クワガタ!ゴリラ!チーター!≫
高らかに発せられた声とともに俺の姿が変わる。
顔は緑のクワガタの模様の浮かぶマスクに変化しクワガタの顎が角のようにそびえ、腕と胸は白銀に腕をグローブのような『ゴリバゴーン』で覆い、脚は黄色いチーターの模様が浮かんだ姿に変わる。
「クワガタにゴリラにチーターって、お前テキトーに渡しただろ?」
「んな訳ねぇだろ。その足で高速でけん制してその頭の広い視野で見通してその腕の怪力で戦うんだろうが」
「なるほど、ちゃんと考えてあんだな」
「わかったらとっとと走れ。俺もこいつですぐ向かう」
「ああ!あ、お前は無茶するなよ!あと、俺はあくまでも話を聞くだけであの二人に手荒なことはするつもりはないからな!忘れんなよ!」
「チッ!わかってるからとっとと行けよ!」
アンクの言葉に頷いて俺は走り出した。
○
森の中を駆ける響。その後ろから追う鎧の少女。
逃げる響に鎧の少女の鞭が飛ぶ。が、それを響は腕を顔の前でクロスさせて受ける。
「どんくせえのがやってくれるッ!」
「どんくさいなんて名前じゃない!」
「あん?」
鎧の少女の挑発に響が叫ぶ。
「私は立花響、15才!誕生日は九月の十三日で、血液型はO型!身長はこないだの測定では157cm!体重は…もう少し仲良くなったら教えてあげる!趣味は人助けで好きなものはごはん&ごはん!あとは…!彼氏いない歴は年齢と同じッ!!」
「な、なにをトチ狂ってやがるんだお前……」
突然の自己紹介に鎧の少女が困惑した様子で言う。
「私たちはノイズと違って言葉が通じるんだから、ちゃんと話し合いたい!」
「なんて悠長!この期に及ん――で!」
鼻で笑いながら鎧の少女が鞭を振るうが、響はそのすべてを軽やかに避ける。
「こいつ、何が変わった…?覚悟か!?」
その響の変化に鎧の少女は驚きの声を漏らす。
「話し合おうよ!私たちは戦っちゃいけないんだ!」
「っ!」
「だって、言葉が通じていれば人間は――!」
「うるせぇ!!」
響の必至の言葉。しかし、それを遮って鎧の少女は叫ぶ。
「分かり合えるものかよ人間がッ!そんな風に出来ているものかッ!気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえッ!!わかっちゃいねえことをベラベラと知った風に口にするお前がぁッ!!!」
鎧の少女は怒りに満ちた目で響を睨みつける。
「お前を引きずってこいと言われたがもうそんなことはどうでもいいッ!!お前をこの手で叩き潰すッ!!今度こそお前のすべてを踏みにじってやるッ!!」
「っ!私だってやられるわけには――!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
身構える響の目の前で鎧の少女が大きく飛び上がりその鞭の先に球体のエネルギーを形成し大きく振りかぶる。
「吹っ飛べッ!!!!」
叫びながら鎧の少女は必殺の一撃――『NIRVANA GEDON』を放つ。
「くぅっ!」
響はそれを真正面から受け止める。少し後ろに押されながらもなんとか耐える響。
「もってけダブルだぁ!!」
鎧の少女はさらにダメ押しとばかりにもう一発『NIRVANA GEDON』を放つ。
それは響へと向かって行き
「おぉぉぉぉぉっ!!」
と、横合いから現れた人影がその攻撃の間に入り拳を振るう。
その二発目に放たれた『NIRVANA GEDON』が弾かれあらぬ方向に飛んで行く。さらにその乱入者は
「こっちも!!」
さらに拳を振るい、響が受け止めていたそれも叩く。と、それによって方向がそれたそれは響の元から離れ爆発する。
「てめぇはっ!!」
「オーズさん……ですよね?」
その乱入者に鎧の少女は唇を噛み、響は自分の記憶と少し装いの違う姿に首を傾げる。
「うん、オーズで間違いないよ。ちょっと悪いけど、君たちに聞かなきゃいけないことがある。戦いの手をいったん止めて話を聞かせてもらえないかな?」
「チッ!てめぇもそこのバカと同じことを言うつもりか!?人間が話し合いで解決できる?そんな夢みたいな綺麗事を言うつもりかぁッ!!?」
鎧の少女は憎々し気な表情でオーズを睨む。
「途中からだけど君らの話は聞こえてた。確かに彼女の言ってることは夢物語の綺麗事だ。世の中そんなに甘くない。世界はもっと残酷で酷いことで、暴力で溢れてる」
「っ!」
鎧の少女の言葉に頷くオーズに響は俯く。
「でも、それでいいじゃないか」
「「っ!?」」
オーズの言葉に響と鎧の少女は揃って意味が分からず困惑の表情を浮かべる。
「そうだよ。確かに彼女の言ってることは綺麗事かもしれない。でも、だからこそ、現実にしたいんじゃないか。本当は綺麗事が一番いいんだ。暴力でしかやり取りできないなんて、悲しすぎるからさ」
「う、うるさいうるさい!!だからって拳を向けられて、銃突きつけられても戦わないなんて言うやつはバカだ!!そんな耳障りのいいことを言ったって、そんなものは戦う覚悟の無いやつのいい訳だ!!あたしはあんたたちとは違う!!あたしには、覚悟があるッ!!」
そう言って鎧の少女はオーズへと鞭を振るう。それを転げるように避けるオーズ。
「覚悟……」
鎧の少女の言葉に何かを考えるように自身の拳を見つめる響。しかし、すぐに何かを決めたように表情を引き締め
「私にも覚悟はある!」
そう言ってお腹の前で両手を開き
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その手の間で光が集まり眩いばかりに輝き始める。
「ああっ!!」
しかし、その光は霧散し集まっていたエネルギーが爆ぜる。
「この短期間に『アームドギア』まで手にしようって言うのか!?」
驚く鎧の少女の前で響は再び、今度は右掌の中でエネルギーを集め、それを握り込む。と、それに合わせて響の右手の籠手がスライドし煙を吹いた。
「させるかよぉ!!」
鎧の少女はそれを遮るように鞭を振るう。が――
「っ!!」
その飛んできた二本の鞭を響は右手で掴む。
「なんだとッ!?」
困惑する鎧の少女の目の前で響はその鞭を握りつぶすように掴み
「雷をッ!!握りつぶすようにぃぃぃッ!!」
それを大きく引き寄せ、同時に腰のブースターを吹かせ加速する。
そのまま大きく右手を振りかぶりながら、自身が鞭を引いたことで体の浮いている鎧の少女へと向かって行き
「最速で!!最短で!!真っ直ぐに!!一直線に!!胸の響きを!!!この思いを!!!!伝えるためにぃぃぃぃぃッ!!!!!」
振りかぶったその拳を鎧の少女へ叩き込む。
「これが私の覚悟だぁぁぁぁぁッ!!!!!!」
そのままスライドしていた籠手のパーツがガシャンと引き戻る。
「がはっ!!?」
その威力に鎧の少女の口から苦悶の声が漏れそのまま後方へと吹き飛ぶ。
「す、すごい……」
その光景にオーズも唖然と呟く。
「くっ……」
二人の視線の前で抉れた地面の先、倒れ伏していた鎧の少女が身を起こす。
少女の鎧のお腹部分は割れ、下の白い肌が見えていた。
その鎧がまるで少女の皮膚も一緒に取り込むように、まるで少女の皮膚に喰らいつく様に徐々に再生していく。
「かぁっ!」
その痛みに少女が苦悶の表情を浮かべながら顔を上げる。と、そこには構えを解き、だらりと脱力し手を下ろした状態で立つ響の姿があった。
「お前ッ!バカにしてんのかッ!?あたしをッ!雪音クリスをッ!!」
「っ!?」
怒りに満ちた顔で睨み叫ぶ鎧の少女――クリス。その名前を聞いて人知れずオーズは息を飲む。
「雪音……クリス……?」
「そっか!クリスちゃんって言うんだ!」
「っ!?」
呆然と呟くように少女の名を呼ぶオーズ。しかし、それに気付かない響は笑みを浮かべて言う。
「ねぇ、クリスちゃん。こんな戦い、もうやめようよ」
困惑した様子のクリスに響は優しく呼びかける。
「ノイズと違って私たちは言葉を交わすことができる。ちゃんと話をすればきっと分かり合えるはず!だって私たち!同じ人間だよ!」
そう微笑みながら言う響。しかし――
「……お前くせえんだよ」
クリスは俯いたまま憎々し気に吐き出すように言う。
「ウソくせえッ!青臭えッ!」
そう吐き捨てるように叫んだクリスは駆けて響へ拳を振るい――
「っ!」
一瞬早く二人の間に割り込んだオーズの太い腕に防がれる。
「うらぁ!!」
そのまま回し蹴りを加えるクリス。
「くっ!」
その勢いにオーズは少したたらを踏むが抑え混む。
「邪魔をッ!すんなッ!!」
「っ!ごめん…悪いけど、君にこれ以上戦わせるわけにはいかなくなった!」
「はぁ!?意味わかんねぇんだよ!!」
そのままクリスは拳を振るい蹴りを放つがそれをすべてオーズは守り受け流す。
「オーズさん!クリスちゃん!」
「いいから!ここは俺にやらせてくれ!」
二人を止めようと響が足を踏み出そうとするがオーズがそれを制す。
「ふざけんな!なんでテメェは戦わねぇんだ!なんで攻撃して来ねぇ!?」
「君とは戦えない!」
「ざけんなぁぁぁぁッ!!」
オーズの言葉にさらに怒りに顔を歪ませクリスが拳を振るう。
それを避けてオーズが飛び退く。
「どいつもこいつも!あたしをバカにしやがって!!あたしは!!あたしはぁぁぁ!!」
「待ってくれクリスちゃん!!俺は君を――」
「うるせぇんだよ!!吹っ飛べよッ!!『アーマーパージ』だぁぁぁ!!!」
オーズが何か言いかけるがそれを遮ってクリスが叫ぶ。
と、同時にクリスの身体が光り輝き、その身を包んでいた白銀の鎧がはじけ飛ぶ。
そのパーツが周囲に飛び散り響やオーズを襲う。
「くっ!」
「響ちゃん!!」
顔の前で腕をクロスさせて身を守る響。そんな響に高速で駆け寄りその身を抱えて距離を取る様に駆けるオーズ。
鎧による攻撃が止み、一瞬の静寂とともに周囲が土煙に包まれる。と――
「――Killter Ichaival tron」
「「っ!?」」
澄んだ唄が響く。
「見せてやる、イチイバルの力だ!」
言葉とともにオーズと響の目の前で土煙が吹き飛ぶように晴れ、その中心から光が溢れる。
「クリスちゃん……私たちと同じ……!?」
「シンフォギアの…力……!?」
困惑する二人の目の前で光が晴れるその中心には先程までと装いの違うクリスの姿があった。
その身を黒を基調とした胸元の大きく空いたボディスーツに包み、腰には赤と黒の装甲のブースター、腕にはブースターと同じ配色の籠手、頭には額から耳を覆う赤いヘッドギア、脚は太腿の半ばまであるハイソックスのようなスーツに赤いリボンのような飾りのついたハイヒールを履いている。
「歌わせたな……!」
「え……?」
呟く様に聞こえたクリスの声に響が困惑の声を漏らす。
「あたしに歌を歌わせたなッ!」
クリスは二人を睨みつけながら叫ぶ。
「教えてやる……あたしは歌が大っ嫌いだッ!!!」